Essay エッセイ
2016年03月15日

「りんちゃん」という先生

いつの間にやら、今年も、もう三月目。

 

 我が家の八重桜も、そろそろ濃いピンクの花を開かせています。

 

 三月は、日本では卒業式のシーズンのようですが、卒業というと「別れ」がさびしい季節でもあるでしょうか。

 

 そんな、ちょっとほろ苦いシーズン、インターネットを経由してNHKの早朝ニュースを観ていたら、こんな話題が紹介されていました。

 

 なんでも、高知県南国市にある農業高校には、犬の教員がいるそうな!

 

 その名も「りん」教諭。

 

 県立高知農業高校の畜産総合科に所属する「先生」で、職員室の片隅に席(座布団)を置き、生徒たちと接する合間は、こちらで休憩なさっているとか。

 

 休憩する合間にも、先生たちのお相手をして「癒し」効果をかもしていますが、卒業アルバムの職員欄や、PTA向けの職員紹介欄にも、立派に顔写真入りで紹介されるほどの公認の先生です。

 

 なんでも、13年前の2003年初夏、近くの舟入川で流されていたところを小学生に助けてもらって、農業高校に運ばれたのが、先生となるきっかけ。

 

 りん担当の畜産総合科、萩原 陽子教諭によると、最初は保健所に連れて行こうかと思っていたけれど、あまりに生徒たちがかいがいしく世話をするので、そのうちに情が移って、学校に住まわせることに。翌年には、晴れて「学校公認」となったとか。

 

 最初は、「捨てられた」ことにショックを受けていたようですが、学校で生徒や先生たちと接するうちに心を開いていって、今では、りん先生よりも在籍の長い人は、あまり見かけないほどのベテランとなりました。

 

運動会では、「動物 借り物競走」に出場して、かけっこをするし、学校で収穫した農作物を売り出す「高農ふれあい市」では、お客さまの「苦情係」を担当します。(写真、高知新聞)

 

 ま、けなげに働くりん先生が相手では、誰も苦情など言えるわけはありませんよね!

 

 「借り物競走」では、一緒に出場した牛さんが怖くて、かけっこにならなかったそうですが、そんな愛くるしい弱点のあるりんちゃんは、やっぱり、学校の人気者。

 

 べつに当番を決めていなくても、放課後に入れ替わり立ち替わり生徒がやって来ては、散歩に連れ出してくれるし、好物の食べ物も持ってきてくれるそうです。

 

 「りんちゃんがいると癒される」「学校になくてはならない存在」とは、まわりのみなさんがおっしゃることですが、とくに畜産科のある農業高校ですから、生き物と接して、命の大切さを学ぶことは大事ですよね。

 


りんちゃんを見ていて、ふと思い出したのですが、そういえば小学校の頃、学校に犬がいたような気もするのです。

 

 ずっと前のことなので、おぼろげにしか覚えていませんが、用務員のおじさんが世話をしていた犬が、校庭を走り回っていたような・・・。

 

 わたしが通った小学校は、とっても大きくて、犬がいても親しく接する機会はなかったのですが、もしもそのときに犬と仲良く遊んでいたら、子供の頃の「犬恐怖症」も消えてなくなっていたのかもしれません。

 

 そう、何事も、実際に接してみると、それまで持っていた(否定的な)考えは、すぐに吹っ飛んでしまうものなのです。

 

 ちなみに、りん先生のいる高知農業高校は、1890年(明治23年)に創設された伝統校なんだとか。

 

 残念ながら、高知県を訪ねたことはありませんが、緑の平野にあって、農業・畜産業を学ぶには最適な環境なのだろう、と想像しております。

 

 そして、りんちゃんが助けられた舟入川というのは、1658年(江戸時代の万治元年)、新田開発のためにつくられた人工の川だそうです。

 

舟入川ができたことによって、土佐藩の中心部にある高知城(現在の高知市、南国市の左隣)とも鏡川を通して結ばれたので、農業用水路としてばかりではなく、高知城下との水運にも重宝されたということです。

(ウェブサイト『高知の河川』舟入川の項を参照。写真は、1936年に撮影された天守古写真、毎日新聞社所蔵)

 

 人気者のりん先生ゆかりの地って、由緒あるところなんですねぇ。

 

 そして、りん先生が送り出した生徒さんたちは、きっと高校時代のことを心の中に大切にしまって、荒波だって凛(りん)として乗り越えられることでしょう。

 

 

<追記>

 こちらの「りん先生」のお話は、3月15日早朝(日本時間)に放映されたNHKニュース『おはよう日本』で紹介されたものです。

 合わせて、高知新聞の紹介記事(1月27日付)も参考にさせていただきました。

 

 『おはよう日本』は、早朝4時半から8時までやっている全国ニュースで、日本にいると早すぎ(!)なんですが、アメリカ西海岸では、日本の午前4時半が昼ごろになるので、観やすい時間帯です。

 

 日本各地の話題が満載なので、海外在住者にとっては、ちょうど「寅さん」で有名な映画『男はつらいよ』みたいに、日本を感じる番組でしょうか。

 

 


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