Essay エッセイ
2017年07月19日

「ギャップイヤー」はやめました!

img_4130昨年の夏、「ギャップイヤー(一年の中休み)」と題して、こんなお話をいたしました。



高校を卒業して大学に入る前に、一年ほどタイムオフを取り、いろんな冒険や体験を積んで学校に戻る。



そんな「ギャップイヤー(gap year)」の習慣が、アメリカでも広まりつつあるんですよ、と。



そして、ご近所さんの娘さんも、15歳半で高校卒業の資格を取ったけれど、18歳まで待って大学に行こうとプランしている、ともご紹介しておりました。



ところが、先日、この娘さんのお母さんがおっしゃるに、16歳になった今、8月から大学に通うことになったそうです。



なんでも、最初は長いギャップイヤーを取る予定だったところ、名門私立のマサチューセッツ工科大学(通称 MIT)に入学願書を出したら受かったので、「それじゃ、もう行っちゃいましょう!」と心変わりをしたんだとか。



1280px-mit_building_10_and_the_great_dome_cambridge_maどうやら、彼女が進みたいのはエンジニアリング(工学)部門のようですが、MIT は、この分野では最先端の大学。



そして、両親とも MIT のビジネススクールの卒業生ですので、彼女自身も MIT か、同じくマサチューセッツの名門私立ハーヴァードに行きたいと、子供の頃から考えていたようです。



それで、二校のいずれかに受かりやすいようにと、ホームスクール(学校には行かずに自宅で学習すること)のかたわら、テニスとピアノをがんばって、文武両道プラス情緒教育にいそしんでいたのでした。



そんなわけで、せっかく MIT に受かったし、一年はギャップイヤーを取ってリフレッシュしたことだし、そろそろ大学に入りましょうか、ということになったようです。



(Photo of MIT’s Building 10 by John Phelan, from Wikimedia Commons)


このニュースを聞いたランチの席には、孫が MIT に通うレディーもいらっしゃって、



この男のコのケースがまた、異質なんですよ。



彼は、小さい頃から教育者が「天才」と呼ぶ域に達していたので、ホームスクールでグングンと飛び級をして、12歳でコミュニティーカレッジ(2年制大学)に入学しました。



まあ、賢い彼のことですから、自宅のホームスクーリングでどんどん勉強を進めてもよかったんですが、コミュニティーカレッジに進んだ理由は、学校という環境で(年上の)学友たちと親しく接して、人生経験を積んだ方がいい、というものでした。



その頃から、彼は人間の脳の働きと人工知能(artificial intelligence、通称 AI)に興味を抱いていて、14歳でコミュニティーカレッジを卒業したあとは、カリフォルニア大学バークレー校に進み、16歳で修士号を取得。



その次のステップとして、東海岸の名門 MIT に進学。脳・認知科学科(Department of Brain and Cognitive Sciences)では、学部史上最年少の博士候補生となりました。



修士号を取ったバークレーでも、同じような研究はできたそうですが、もっと実験がしてみたいと、MIT を選択。両親とともに、カリフォルニアからマサチューセッツに引っ越して行ったのでした(だって、まだ16歳の未成年でしたからね)。



google-self-driving-car-1人工知能といえば、ロボットとか、運転手なしで動く自動運転車(automotive car)などを思い浮かべますが、複雑な人間の脳と比べると、まだまだ「おバカさん」。



人から「こうしなさい」と指示されると、物事をお上手にこなしますが、自分から「これがしたい!」と判断できるようになるには、稚拙さが残ります。



ですから、23歳になった今は、フィアンセと友達と小さな会社を経営するかたわら、少しでも人工知能を人間のように「お利口さん」にしようと、研究にいそしんでいるのです。




というわけで、ギャップイヤーをやめて16歳で大学に進学する女のコと、16歳で博士課程に挑戦した男のコ。



さすがに、MIT には面白い学生さんが集まってくるようですが、こんなエピソードもありました。



mit_east_campus_aerialなんでも、ご近所さんは、娘が入学前のオリエンテーションに出席するからと、彼女に付いて母校 MIT に戻ってみたそうですが、そこで何組かの親たちと話していて驚いたとか。



なぜって、「せっかく娘(息子)が MIT に受かったんだから、自分たちも一緒にマサチューセッツに引っ越すのよ」と聞かされたから。



居住地は、南部のジョージア州あり、中西部のインディアナ州あり。もちろん、北東部にあるマサチューセッツからは遠いので、子供たちが気がかりだ、という親心なんでしょう。 (Photo of MIT’s eastern campus by Nick Allen, from Wikimedia Commons)



けれども、新入生はみなさん、「オトナ」と称される18歳。



アメリカでは、18歳になったら親元を離れるのが普通なので、ビックリのエピソードなのでした。



わたしも呆れて、「それって overprotective(過保護)なのかなぁ」とつぶやけば、ご近所さんは「こういうのを過保護って言うの?」と困惑顔。



じゃあ、emotional attachment(子供への精神的な依存)?



それとも、separation anxiety(離れるのが怖い)?



と、いろんな呼び名を提案してみたんですが、結局のところ、その場では結論は出ませんでした。



アメリカには helicopter parent(ヘリコプター・ペアレント)という言葉があって、まるでヘリコプターのように、いつまでも子供のまわり(上)をウロチョロして、心配し過ぎる親を指すんです。



ま、気持ちはお察ししないでもないですが、それにしたって、子供はもう18歳になっているのに、一家で MIT のあるマサチューセッツ州に引っ越すなんて、ちょっとやり過ぎじゃない?・・・と、昼下がりの話題になったことでした。



1280px-simmons_hall_mit_cambridge_massachusettsちなみに、ご近所さんは、「あなたは引っ越さないの?」と問われて、「まさか!」と一笑に付されていました。



近年、MIT の新入生は、一年間はキャンパス寮に住むルールができたそうですが、だったら、なおさら一家で引っ越さなくてもいいんじゃないの? という気もするのです・・・。



(写真は、キャンパス内にある大学生寮のひとつ、シモンズ・ホール:Photo of the Simmons Hall undergrad dormitory by Daderot, from Wikimedia Commons)


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