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2014年09月23日

「メイドさんのティップ」キャンペーン

今日は、ティップ(tipgratuity)のお話です。

日本では「チップ」と言いますが、ホテルやレストランなどで、接客の方々にお渡しする「心づけ」のことですね。

3年前にも『慣れないティップの習慣』と題して、アメリカ、ヨーロッパ、そして列車オリエント急行のティップの習慣を三部作でご紹介しておりました。

基本的に、何かしらサービスを受けたら、ティップを払うのが欧米諸国の慣例ではあります。

アメリカ編では、ホテルに宿泊したときには、荷物を運んでくれるベルボーイや、タクシーを呼んでくれるドアアテンダントだけではなく、部屋の掃除をしてくれるメイドさん(room attendant, housekeeper)にもティップを置いておく習慣があることもご説明しました。

ところが、なんです。

なんと、アメリカ人もこの習慣を知らないのか、意識的に守らないのか、とにかくメイドさんにティップを置かない人が多いとか!!

そこで、アメリカの名門ケネディー家出身で、テレビレポーターも務めるマリア・シュライヴァーさんが、キャンペーンを始めたそうです。

マリオット系列のホテルには、メイドさんにティップを忘れないようにと、封筒(envelope)を置いておきましょう、と。


これは、9月中旬に始まった『封筒をどうぞ(The Envelope Please)』というキャンペーン。
 マリオット系列のホテルの部屋に封筒を置いて、ティップを忘れないでくださいねと、宿泊客に促す試みです。

封筒には「わたしたちの客室係が、ご宿泊を心地よいものにするためにがんばりました」といったメッセージとともに、実際に部屋を掃除してくれたメイドさんの名前も書かれているとか。

キャンペーンの発案者マリアさんは、多くの宿泊者がメイドさんに置くティップの習慣を知らないし、習慣を知っていても置く方法を知らないことを指摘し、「もっともっと旅行者を教育する必要があるわね」と述べています。

封筒を置いておくことで、ティップの習慣を思い出すし、やり方を知らない人も置きやすくなるだろう、というのがキャンペーンの意図なのです。

マリオット系列には、マリオット(Marriott)を始めとして、コートヤード(Courtyard)、レジデンスイン(Residence Inn)、リッツカールトン(Ritz-Carlton)といったブランドがあり、世界で4千軒以上のホテルを持つ巨大なネットワークです。

アメリカとカナダでは、千軒近くのホテルがキャンペーンに参加し、16万もの部屋に封筒が置かれることになるそうで、そうなると教育(education)の力も多大なものになることでしょう。


3年前もご説明していますが、ティップは一泊につき「一人1ドル」が目安です。

けれども、広い部屋に泊まったり、ちょっと汚したと感じたりしたときには、多めに置くのが習慣です。

たとえば、宿泊レートが高いホテルでは、多めに置くのが常識ですし、リビングルームとベッドルームが分かれている「スイート(suite)」や「コッテージ(cottage)」に泊まったときにも、二人で5ドルなどと増額します。

そして、ティップは滞在中に置くのが慣例ですので、一泊お泊まりして、翌日お出かけするときに枕の上などに置いておきます。封筒に入れるか、メモを添えて置くのが原則ではあるようですが、現金をそのまま置いてもいいと思います。

メイドさんは、毎日違う方がやって来ますので、「昨日あげたからいい」という理屈は通りませんから、毎日お出かけするときに置いておきますね。

一人1ドルが相場なら、街角で絵葉書一枚を買うのと変わりませんので、そんなに敷居は高くないのです。


それで、どうして何回もティップのお話を書いているのかというと、アメリカでは、サービス分野の給与体系が「ティップをもらうこと」を前提に組まれているからです。

つまり、「ティップをもらうであろう分」を差し引いて、もともとの給料を低く設定してあるということです。

よく日本人の方から、「もう面倒くさいわねぇ、ティップの制度なんかやめちゃえばいいのに」という感想を聞きます。

個人的には、この意見に賛成ではあるものの、現行の給与体系を根本的に変えない限り、一番損をするのは「メイドさん」や「ベルボーイ」や「レストランのウェイトスタッフ」といった接客係であり、一番得をするのは「雇い主」ということになってしまいます。

ですから、気持ちよく接してくれた方には「ティップをはずんでサービスに対してむくいる」というのがティップの根本思想であり、最低限のエティケットなのです。


実際のところ、アメリカの調査では、3割の宿泊者がメイドさんにはティップをまったく置かないそうですよ。

残る7割は、「だいたい(usually)」もしくは「ときどき(sometimes)」置くと答えるそうです。

ところが、じかにメイドさんにインタビューしてみると、「そうねぇ、ティップを置いてくれるのは、15人から20人に一人かしらねぇ」という答えも返ってくるとか。

たぶん「僕はちゃんと置くよ」と答えておきながら、実際は違う、というのが現状なのかもしれません・・・。

とくに顔を合わせることが少ないメイドさんは、舞台裏で「見えない仕事(invisible task)」をしてくれる方々です。

地味な役割ではありますが、多くのホテルでは一番たくさん人が働いている職種であり、メイドさん自身が家計を支える一家の主(breadwinner)であることが多い職業でもあります。

ですから余計にキャンペーンを広げて、みんなの意識を高めなければいけないんですよね。

余談ではありますが: キャンペーンの発案者マリア・シュライヴァーさんは、前カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーさんの「元奥さん」でもありますね。

離婚の原因のひとつに、自宅で雇われていたメイドさんが隠し子を生んでいたのが何年もあとになって発覚したことがありますが、マリアさんご自身は「女性の地位向上」に務める方で、キャンペーンの母体であるA Woman’s Nationという団体も「家庭でも職場でも女性はもっと認められ、尊敬されるべき」という意識から生まれたものだそうです。

そして、このキャンペーンを知って、「宿泊客のティップではなく、雇い主がちゃんと給料を支払うべきよ」という巷の声も聞こえます。

その一方で、この問題はサービス分野全体に反映するもので、メイドさんだけの問題ではない。ティップの習慣には、「サービス料」と「サービスに対する感謝の気持ち」の両方が含まれるので物事は複雑化している、と指摘する声もあります。

たしかに、一律にサービス料を取ったら、「あの素晴らしいサービスをしてくれた人には、どうやって感謝の気持ちを伝えればいいの?」とか「え~、あのサービスに15%のサービス料を取られるの?」と、べつの問題が出てくるのかもしれません。

が、とにもかくにも、ホテルのメイドさんには、ティップをお忘れなく!

参考文献: Tipping envelopes for maids: Marriott launches new campaign with Maria Shriver, by Beth J. Harpaz, the Associated Press, September 21, 2014

The Envelope Please: AWN & Maria Shriver launch Hotel Room Attendant Initiative in Partnership with Marriott, A Woman’s Nation, September 15, 2014


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