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2009年08月26日

「Flu buddy」というインフルエンザの相棒

早いもので、8月ももう終わりに近づきました。

もうすぐ日本の子供たちの夏休みも終わりとなりますが、アメリカでは、一足先に今週あたりから学校が始まります。
 そう、アメリカの場合は、夏休みが終わると、新しい学年の始まりとなりますね。ちょっとだけお兄さん、お姉さんになったような晴れ晴れとした気分の新学期なのです。

そんな新しい学年の始まりとともに、今年はちょっと気がかりなことがあります。新型インフルエンザの流行ですね。これから秋に向かって、学校を中心に広がりが予想されているのです。

そんな中、国内の病気の広がりを監視している米国疾病予防管理センター (Centers for Disease Control and Prevention、通称 CDC)は、こんな警告を出しました。
 大学では、「Flu buddy 制度」つまり「インフルエンザの相棒制度」を徹底するようにと。


日本と比べてちょっと暢気なアメリカでも、さすがに新型インフルエンザとなると、国を挙げての対策に追われています。その先鋒となるのが、CDC。いかに大流行を防ごうかと、頭を悩ませています。

今が冬の南半球のオーストラリアやニュージーランド、アルゼンチンなどでは、すでにかなりの流行が見られ、学校や劇場などの閉鎖が続いています。それが北半球で起きない保証はまったくないのです。

アメリカでは「swine flu(豚インフルエンザ)」もしくは「H1N1 flu (H1N1型インフルエンザ)」と呼ばれる新型インフルエンザは、夏の間にも確実に全米で広がりを見せていたようです。

アメリカでは、CDCに発症例が報告され始めた4月15日から7月24日の3ヶ月間で、4万4千件が確認されています。その後、広がりがあまりに急だったので、7月以降は、いちいち感染ケースを数えるのを止めたそうですが、少なくとも100万人が感染したのではないかとも言われています。

現在CDCは、入院件数と死亡数だけの統計を取っていて、これを書いている時点では、全米での入院件数は約8,000件、死亡は522人だそうです。
 カリフォルニアでは、亡くなった方は100人近いと聞いています。まだ大流行と言うほどではありませんが、国に対するカリフォルニアの人口比率からすると、ちょっと多いような気もします。

州別に見ると、人口が密集して流行の兆しのあるカリフォルニアやフロリダなどよりも、北のアラスカ州とメイン州が、もっとも大きな広がりを見せているそうです。


そんな現状をふまえて、先日、こんな恐~い予測も発表されました。

もしかすると、今年の秋冬には、米国民の3割から5割が新型ウイルスに感染し、2割から4割の人(約6千万人から1億2千万人)に症状が出るかもしれない。
 最悪の場合は、全米で180万人が入院し、そのうち30万人が集中治療室に入ることになるだろう。そして、死者は3万人から9万人に上るかもしれないと。(科学者たちで構成されるオバマ大統領の諮問機関の発表)

これに対して、1957年のインフルエンザ大流行(「アジアかぜ」と呼ばれるH2N2型インフルエンザ)のときでも、アメリカで亡くなったのは7万人くらいなので、医療技術が進んだ今、「死者9万人」というのは大袈裟だろうと評論する方もいらっしゃいます。
 毎年、アメリカでは、高齢層を中心に3万人から4万人が季節性インフルエンザ(seasonal flu)で亡くなっていることを考えると、むやみに国民を怖がらせるのもよろしくないのではと。

けれども、新型インフルエンザの恐さは、新しいゆえに謎が多いこと。今のところ、ウイルスの変異は見られないものの、いつ「猛毒」に変身するやもしれません。だから、みんなで流行させないように気を付ける必要があるのですね。


さて、表題に出てきた「flu buddy(インフルエンザの相棒)」という変な名前の制度ですが、これは、今週から始まる大学が多いことを受けて、CDCが全米の大学に向けて発した警告なのです。

大学への警告とは穏やかではありませんが、たとえば、こんなものがあるのです。

いろんな人が出入りする大学の寮では大流行が懸念されるので、もしも新型インフルエンザにかかった寮生がいたら、なるべく別の部屋に移すなどして、ルームメイト(同室の寮生)から隔離すること。
 この場合、実家が近い寮生は、公共の交通機関を使わずに、タクシーや自家用車で自宅に戻るのが望ましい。

感染した寮生は部屋からは出ないように心がけ、食事を運んでくれたり、講義内容や宿題を知らせてくれたりする「flu buddy」を指定すること。
 そのflu buddyが部屋を訪れるときには、感染者はきちんとマスク(surgical mask)を着用し、接触した人にうつさないように留意すること。部屋を出られるのは、熱が下がって平熱に戻った24時間後とする。

病院が急増した患者の対応に追われることが予想されるので、大学側は、医師の診断書がなくても「病気欠席」を認めること。そして、講義や試験に無理矢理出て来るように強制しないこと。

これからシーズンが始まるフットボールの試合やコンサートなど、人が集まる場所には感染者が出て来ないように徹底すること。

こまめに消毒液(hand sanitizer)を使い、共用のコンピュータのキーボードなどは、使用前に使い捨て消毒布(disinfectant wipes)でぬぐうよう心がけること。

などなどと、かなり細かいガイドラインが定められているのです。

アメリカの場合、大学に入ったら家を出るのが基本なので、実家が近くても学校の寮に入る人も多いのです。それに、そもそも家を出たいからと、わざと遠くの州の学校を選ぶ学生もいるくらいなのです。
 ですから、大学構内で寮生活を送る学生が圧倒的に増えるわけですけれども、これがインフルエンザの拡大に災いすると懸念されているのですね。


もちろん、大学だけではなくて、幼稚園、小学校、中学、高校と「K-12 (Kindergarten to 12th grade)」と呼ばれる初等・中等教育でも、生徒の間で急激に蔓延する可能性があります。ですから、こちらに対しても、CDCはちゃんとガイドラインを出しています。

けれども、こちらも大学へのガイドラインと同じく、基本的には、学校に出て来ないようにと「隔離」を呼びかけているのですね。

感染した生徒は自宅療養するように指導すること。具合の悪そうな生徒や先生の早期発見につとめ、早めに家に帰すこと。

そして、手洗いや手の消毒を励行し、むやみに目や鼻や口を触らないように徹底すること。咳をするときには、口と鼻を覆うようにエチケットを指導すること。


この手洗いや咳のエチケットに関して、サンノゼのある小学校では、こんな指導をしているそうです。

「手を洗うときには、ハッピーバースデーを2回歌いましょう」
 「咳やくしゃみは、ドラキュラみたいにしましょう」

もちろん、ひとつ目のルールは、Happy Birthday を2回歌うほどに、長くしっかりと手を洗いましょうということなのですが、ふたつ目の「ドラキュラ」というのは何だかおわかりになりますか?

よく映画に出てくるドラキュラは、日の光を目にしたり、ニンニクを突き付けられたりすると、しかめっ面をして腕とマントで顔を覆うではありませんか。ちょうどそんな風に、咳やくしゃみをするときには、曲げた片腕を顔の前に持って来て、腕のくぼみで口や鼻を覆いましょう、ということなのですね。

言うまでもなく、ウイルス感染者の唾液が咳やくしゃみで飛沫となって飛ぶのを防ぐ意味があるのです。

そして、ウイルスの感染ルートは、ドアの取っ手やパソコンのキーボードと「触ること」でもありますので、手洗いの励行も必須条件ですね。とくに新型ウイルスは、「手」が大きな感染経路とも言われているそうなので。

それにしても、「ドラキュラみたいにハクション(sneeze like Dracula)」とは、うまく考えたものですね。こうやって教えてあげると、小さい子たちは喜んで練習するそうですよ。

(こちらの写真は、8月24日付のサンノゼ・マーキュリー紙に掲載された小学生の練習風景です。ドラキュラの咳を実演してくれているのは、カーラ・ラミレズちゃん、6歳。ハッピーバースデー手洗いのあと手の汚れをチェックしているのは、ヤディラ・ラミレズちゃん、8歳。)

けれども、学年を追うごとに、だんだんと素直じゃなくなってくるので、中学生ともなると先生の言うことをなかなか聞かないらしいです。「そんなに言うことを聞かないなら、幼稚園児を呼んでお前たちを指導させるぞ」と、脅しをかけた中学校の先生もいるんだとか。


たぶん、これから秋冬に向かって、日本でも学級閉鎖などが増えていくのではないかと思われるわけですが、アメリカでは、なるべく学級や学校を閉鎖しないで、「flu buddy制度」「自宅待機」「ドラキュラの咳」、そして、新型予防接種(swine flu vaccine)などで難を乗り切ろうという方針のようです。

「一斉に学校を閉鎖すると、どうしても勉強の遅れが出てくるので、デメリットの方が大きい」というのが、CDCや国の立場のようですね。(これに対して、「甘過ぎる!」と批判する人もいるようですが。)

ところで、気になる新型予防接種は、アメリカでは8月初頭から実地テストに入っていて、今のところ「腕が痛くなる」以外は、さしたる障害は報告されていないようです。(大人へのテストは8月7日から、子供へのテストは8月19日から行われています。9月に入ったら、妊婦さんへのテストも始まるそうです。)

テストも順調に進んでいることだし、10月になったら、広く一般市民にも接種できるのではないかと予測されているようです。が、なにせ新型ワクチンは3週間あけて2回受けないといけないらしいので、大部分の人の接種が終わるのは、11月後半ではないかとも言われています。
 そして、ちゃんと予防効果が出てくるのは、その2、3週間後・・・。

新型インフルエンザのシーズンは、早ければ9月初頭に始まり、10月中旬には猛威を振るうかもしれないということなので、予防接種は時間との闘いかもしれません。

「Flu buddy制度」も「ドラキュラの咳」も、単なる杞憂に終わってしまえばいいのですけれどね。


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