Essay エッセイ
2015年12月09日

ゆっくり行きましょう

ある朝、カーテンを開けると、なんとも幻想的な風景が広がっていました。

 

 朝から濃い霧がかかり、世の中すべてが「優しく」見えます。

 

 あ~、綺麗だなぁと、のん気に写真を撮っていたものの、

 

 この日は、近くで災難がありました。

 

 この写真を撮るちょっと前、近くの道路で、車が大破したのでした。

 我が家の辺りから幹線道路に出ようとすると、どの方角も「下り坂」になるのですが、ここは、とくに丘をぬって曲がりくねる、急な下り。

 

 その下り道で車がスリップして、中央分離帯の木に激突したのでした。

 

 そのときは、もっともっと濃い霧で、視界も悪いし、道路が霧粒で濡れていたのでしょう。

 

 近隣コミュニティーのソーシャルサイトでは、警告の意味で写真を掲載した方がいらっしゃいましたが、赤い二人乗りの車がぺしゃんこで、救急車を待つ警察官がかけたのか、座席には黄色いビニールシートがかぶせられていました。

 

 男性ドライバーは亡くなったそうですが、翌日、現場を通ると、傷ついた木の根元には花やロウソクが手向けられ、痛々しい光景です。

 

 そう、普段から誰もが気をつけないといけないクネクネ道なのに、濡れた路面でスピードを出し過ぎたようでした。

 


もう10年以上も前になりますが、このクネクネ道の下り坂で、こんな光景を目の当たりにしました。

 

 (片側2車線の左側の)追い越し車線を女のコがゆっくりと運転しています。

 

 制限速度は45マイル(72キロ)ですが、30マイル(50キロ弱)ほどのスピードで「ノロノロ運転」と言ってもいいくらいです。

 

 きっと、お父さんから運転を習っているティーンエージャーの女のコなんでしょう。初めて下り坂を運転するのか、後ろから見ていると「おっかなびっくり」な感じもします。

 

 そこに、後ろから「あおる」黒いポルシェのスポーツカー!

 

 あれよ、あれよと言う間に女のコの車に追いついて、後ろから「早く行け!」とばかりに接近するのです。

 

 それが、何メートルか続いたかと思ったら、女のコは「わたし、もうダメ!」と急ブレーキをかけ、道路に斜めになって止まってしまいました。

 

 いやぁ、ものすごく怖かったんだと思いますよ。

 

 だって、後ろから「あおられている」のはわかっているものの、運転に慣れなくて、クネクネ道では簡単に車線変更なんてできなかったのでしょうから。そうなると、もう道の真ん中で止まるしかない!

 

 連れ合いと二人で見ていたわたしは、「まあ、あのポルシェって、どうしようもなく意地悪ね~、オトナのくせに恥を知りなさい!」と、大いに憤慨したのでした。

 

 幸いなことに、このポルシェ以外は、みなさん「運転見習い中のコ」だと理解していたので、事故に結びつくこともなかったのですが、それよりも、彼女の「心の傷」を心配してしまいました。

 

 このことがトラウマになって、運転が怖くなったり、逆に乱暴なドライバーになったりと、影響が出なければいいのになぁと願うばかりなのでした。

 


 この忙しい師走、サンフランシスコ・ベイエリアのフリーウェイでは、こんな電光掲示板を見かけるようになりました。

 

 Drive slow and save a life

 ゆっくり運転して、命を救いましょう

 

 なぜかしら、歳末商戦の時期って、道路が混みますよね。

 

 けれども、どこも渋滞しているからって、先を急ごうとすると、危ない目に遭うかもしれません。

 

「一分、一秒を争うよりも、命の方が大事だよ」

 

 「まっすぐに突き進むばかりじゃなくて、深呼吸をして、まわりを見まわそうよ」


 

 そんな風に教えてくれている電光掲示板なのでした。

 


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