Essay エッセイ
2006年05月11日

アテネ三日目のハプニング

物事はスムーズには進まないもので、いきなりアテネ3日目にしてハプニングです。

朝、いつもの通り、近くの地下鉄の駅・エヴァンゲリスモス駅に行くと、完全にシャッターが下りて、中に入れません。あれ、ここの入り口は工事中かなと思い、もう片方の入り口に行くと、また同じことです。え~、水曜日って地下鉄はお休みなの?とあたりを見回すと、バスすら走っていないではありませんか。見かけるのは、観光バスか自家用車。

なんか変だぞと思いながら、タクシーをひろおうとすると、タクシーは何台も通るものの、空車がまったくいないのです。しょうがなくホテルの正面玄関に戻ると、「今日は、地下鉄もバスも全部ストライキだから何も動いてないよ」とのこと(ギリシャ語のローカルニュースなんて見ていないから、こちらはそんなことなどまったく知りません!)。

まあ、ホテルのことですから、タクシーの一台や二台はいつもいます。それに乗ってめでたく最初の目的地、鮮魚・青果市場に向かいました。
 この中央市場は、市内でも一番大きなもので、鮮魚と精肉のセクション、それから、お向かいには野菜を売る一画もあり、市民の台所となっているようです。この時期は、お魚が人気のようで、精肉の並びは閑古鳥。


さて、ストライキの方ですが、なんでもこの日、バス・地下鉄だけではなく、国営の銀行や郵便局なども一斉にストだったそうです。中央市場の近くの広場では、ストの人たちが賑やかな集会を開いていたし、市の中心部オモニア広場では、デモ行進に出会いました。聞くところによると、医療保険などの待遇アップを要求していたらしいです。

実は、以前、パリでも似たような目にあったことがありました。14年前、パリからフロリダへ戻る日の朝、列車の駅で突然ストライキがアナウンスされたのです。わたしたちはフランス語がまったくわからないので、けげんな顔をしていたら、隣に立っていた人が、ここで待っててもしょうがないよと、親切に英語で教えてくれました。

このときは、代替としてバスが空港まで出されたのですが、今思うと、駅から離れた停留所だったのに、よくもまあ方向を間違わずにバスに乗れたものだと、自分で感心してしまいます。(バス会社の窓口では、担当者がフランス語で道順を教えてくれたのですが、紙に地図を書いて説明してくれたので、とても助かりました。)


さて、アテネのハプニングは続きます。この日は、中央市場のあと、国立博物館に行って、エーゲ海全域の遺跡から発掘された出土品などを見て過ごしました。
 ここには、ギリシャ中から集まった、土器などの出土品、金細工、大理石の彫刻、青銅の像など、数々が展示されています。過去にギリシャに存在した文化には漏れなく触れることができるのです。

午後2時頃、もう十分に堪能したからと、今度は、展望台のあるリカヴィトス山のケーブルカー乗り場に向かおうとしました。すると、朝と同じことで、タクシーがまったくつかまりません。空車どころの騒ぎではなく、全部相乗りタクシー化しています。そして、人を乗せたタクシーは止まってはくれるものの、誰もリカヴィトスの方向へは行きたがらないのです。

まあ、アテネの中心部はそんなに広くはないので、歩くのは不可能なことではありません。でも、ちょっと遠いし、見なくてもいい道路の汚れなどは見たくもないので、博物館から少し離れた場所で再度トライです。けれども、なんとなく感触はよくなさそうです。

ちょうどそのとき、誰かがビルの前でタクシーを降りているのが見えたので、そのタクシーに乗せてちょうだいと頼みました。すると、運転手は、「今日はもうおしまいだよ。だからここで別のタクシーを待ってよ」と言うのです。
 ここで彼を逃したら、二度とチャンスはないと思い、「だってさっきから30分も待ってたけど、誰も止まってくれないんだもん」と懇願します。あちらはちょっと迷った末、う~ん、仕方ないかと、乗っけてくれることになりました(別に5分と待ってはいませんでしたが、そこは大げさに言わなくっちゃ)。

彼は、朝からもうてんてこ舞いの忙しさで、今日は十分に働いたので、もうお家へ帰るところだったのです。午後の2時に。でも、客を乗せたらそこは商売、機嫌よく、ストライキのことなどを説明してくれました。そして、ケーブルカーの駅に着いたら、いくらでもいいから、好きなだけ払ってくれと言います。とってもいい人なのです。


実は、この午後2時という時間は、一旦商売が終わる時間なのです。前の日、街中の薬屋でもこういうことがありました。シャンプーだのコンディショナーだのを買い物していたら、突然、店員さんがこう言い出すのです。「午後2時に閉まるから、早くしてくれ」と。それまでは、これがいい、あれがいいと手助けしてくれたのに、午後2時を回ると、態度が豹変するのです。シンデレラの午前零時の鐘みたいに。

地元の人曰く、火曜、木曜、金曜は、小さな商店は午後2時に一旦店を閉め、休んだ後、午後5時半から8時半まで営業するそうです。その他の曜日には、午後3時に閉店とか。大きなお店は遅くまでやっているみたいですし、観光客相手のお店は、夜中まで開いていたりします。でも、小さな個人商店は、今でも昔からのルールを守っているようです。

まったく、ギリシャ人の生活サイクルというのは、ちょっと不思議です。普通、地元の人がディナーを食べるのは、午後9時を過ぎてからです。10時を過ぎてメインディッシュなんていうのも珍しくありません。
 そして、ギリシャ人は言うのです、自分たちは、遅く食べて、遅く寝て、早く起きるのだと。だから、お昼休みという習慣が出来上がったようなのです。


話がちょっとそれてしまいましたが、親切なタクシー運転手さんに連れて行ってもらったリカヴィトス山の展望は、最高のものでした。アテネ全土が四方に見渡せるし、アクロポリスなどの名所もたくさん見えます。観光スポットの位置関係も手に取るようにわかるのです。

それにしても、帰りにわかったのですが、このケーブルカーに向かう道は、かなりきつい勾配なのです。下からハーハーと息をきらしながら登って来る人もいましたが、それを見ていてこう思ったのでした。タクシーに乗せてもらってほんとによかったなと。

リカヴィトスのパノラマに味を占め、その晩は、ホテルの最上階にある展望バーに行って、夜景を楽しみました。

ちょっと空気がくすんでいましたが、これは、ストで増えたタクシーや自家用車のスモッグなのでしょうか?


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