Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2011年04月14日

カリフォルニアの今は?

この「ライフinカリフォルニア」のコーナーでは、前回、前々回と、太平洋を越えてカリフォルニアに放射性物質がやって来るのではないかと、人々が神経質になっているお話をいたしました。

そして、前回のお話の最後では、出張中の東京で大地震に遭遇した連れ合いが、まだアメリカに戻っていないとも書きました。

お陰さまで、次の日曜日には無事に日本から戻ってまいりましたので、ホッとしたところです。(そして、大好きな日本のパンが食べられたので大満足なのでした。)

もうその頃になると、サンフランシスコ空港では日本からの乗客の放射線測定なんてやっていなかったそうです。きっと、一日くらいやってみて「無駄だ」と思われたので、すぐに止めたのでしょう。
 あまり長くやっていると、「人権侵害である!」と、非難が上がりそうでもありますしね。
(サンフランシスコ空港が乗客の放射線測定を始めた日には、ロスアンジェルス空港は、測定なんてやっていなかったそうです。その後は、南でもやってみたのでしょうか?)

でも、街の声は、両方ありましたね。ひとつは、「測定なんて必要ないんじゃない?」というもの。
 そして、もうひとつは、「日本から戻って来る乗客は、サンフランシスコに到着したあと全米に散っていくので、ちゃんと調べて欲しい」というもの。

まあ、アメリカ人の場合は、自分が知らないこと(知らされていないこと)が一番イヤなので、「ちゃんと調べて、問題があったら発表しろ!」という意見も理解できないわけではありませんが。

たとえば、「遺伝子組み換え」の作物が良い例となるでしょうか。多くのアメリカ人に言わせると、「遺伝子組み換え種」自体が悪いのではなくて、それが自分の口に入る可能性があることを知らされていないのが悪い、という論理になるのです。ですから、遺伝子組み換え作物が使われている場合は、それをちゃんと表示しろ! と主張するのですね。それを口にするか、しないかは、消費者である自分自身が判断するからと。


前回のお話では、バークレー(カリフォルニア大学バークレー校)で測定した雨水には、放射線物質は入っていなかったことも付記いたしました。が、同じくこの日(3月18日)サンフランシスコで採取された空気からは、微量ながらも放射線物質が測定されたということです。

けれども、なんともトボケた話で、米国環境保護庁(the U. S. Environmental Protection Agency)がこのニュースを発表したのは、採取から4日後(3月22日)のこと。

その頃には、カリフォルニアの住民や報道陣の頭の中では「大気中の放射線量」なんて陰が薄くなっていて、このニュースは、そんなにセンセーショナルな話題とはなりませんでした。

それに、環境保護庁も強調していたように、見つかったのはごく微量。
 「カリフォルニア州とワシントン州で測定された量は、問題にすべきレベルの数十万分の一から数百万分の一の低さ(The radiation levels … are hundreds of thousands to millions of times below levels of concern)」ということです。

平均的なアメリカ人は、毎日、これよりも10万倍高い放射線を自然界から浴びているんですよ。飛行機の国際線で往復した方が10万倍高い放射線を浴びるんですよ、と合わせて力説していたのでした。

そうそう、環境保護庁の発表が遅れたのは、べつに調査結果を隠していたわけではなくて、調査自体に時間がかかるんだそうです。

なんでも、だいたいの数値というのは現地ですぐにわかるそうですが、どの放射性物質がどのくらい、といった精密なデータを得るには、アラバマ州にある国の研究機関にサンプルを送らなければならないそうです。
 ですから、地元のカリフォルニア大学が一日でわかるところが、環境保護庁にとっては数日かかる、という仕組みなんだそうです。

ちなみに、このときのサンフランシスコの測定結果は、以下のとおりです。(環境保護庁の3月22日付発表より。単位は、一立方メートル当たりのピコキュリー)
セシウム(Cesium)-137: 0.0013
テルル(Tellurium)-132: 0.0075
ヨウ素(Iodine)-132: 0.0066
ヨウ素(Iodine)-131: 0.068

それから、全米各地の最新データは、こちらの環境保護庁のウェブサイトで公開されております。

分析結果は「大気、雨水、牛乳、飲み水」の順番になっていて、州ごとの観測点での結果が掲載されています。たとえば、カリフォルニアで大気の観測点となっているのは、アナハイム、リヴァーサイド、サンバーナーディノ、サンフランシスコの4箇所です。

(こちらのサイトでは、「お客さま満足度調査にご協力ください」というメッセージ画面が出てくる場合がありますが、「No Thanks(いえ、結構です)」のボタンを押すと、すぐに消えてくれます。政府機関だって、顧客サービスにがんばっているんですね!)


というわけで、ようやくカリフォルニアの人々も、太平洋を越えて影響が少ないことを理解し、落ち着きを取り戻したわけではあります。が、今度は、べつの心配が頭をもたげてくるのです。

そう、ご察しのとおり、カリフォルニアにある二つの原子力発電所。

現在、南カリフォルニアで二つの原子力発電所が稼働していて、これがまた、地震の起きそうな断層の近くに建っているのですよ。そんな例は、全米でもここだけ!

ひとつは、サンルイスオビスポ郡にあるディアブロ・キャニヨン発電所(Diablo Canyon Power Plant)。もうひとつは、サンディエゴ郡にあるサン・オノフレ原子力発電所(the San Onofre Nuclear Generating Station)。

どちらも、風光明媚な海岸線に建っていて、太平洋の海原(うなばら)を見渡せる絶景の場所なのです。(写真は、ディアブロ・キャニヨン発電所近くのアヴィラ・ビーチ(Avila Beach)。海には長い埠頭が突き出ていて、先端にはレストランと魚市場があるのです。)

どうしてそんな場所に原子力発電所が建ったのかは存じませんが、とくにディアブロ・キャニヨンの方は、大きな地震を起こすことで有名なサンアンドレアス断層(the San Andreas Fault)が近くを走っています。

この巨大な断層は、カリフォルニア州を北から南へと縦断し、サンフランシスコの乗っかった内陸側のプレートは南東へ、ロスアンジェルスの乗っかった海側のプレートは北西へと、毎年、3センチほど動いているのです。
 「だから、いずれはサンフランシスコとロスアンジェルスはお隣同士になるのさ」というのが、わたしが大学の地質学の先生から学んだ唯一のお話でしょうか。

そして、1973年にディアブロ・キャニヨン発電所が完成したあとは、すぐ近くの海底(発電所の4キロ沖)にホズグリー断層(the Hosgri Fault)という活断層も発見されています。

ホズグリー断層が見つかったあと、発電所の建物は強化され、マグニチュード7.5の地震にも耐えられるようになったということです。

福島第一原子力発電所で問題が発生したあと、ディアブロ・キャニヨンの持ち主である PG&E(通称ピージーイー:パシフィック・ガス&電力の略称、おもに北カリフォルニアに電力・ガスを供給)は、こう力説します。

マグニチュード7.5の地震のあとに、津波が来たって大丈夫! ちゃんと、補強工事だってやってるし、なんたって発電所は海抜26メートルの場所にあるからね!

でも、それを聞いている方は、なかなか安心はできないのです。

だって、もしマグニチュード9.0の地震が来たらどうするの?

津波がもっと高かったらどうするの?

それに、今まで誰も知らなかった活断層が近くに見つかったらどうするの? 現に、2008年には、ショアライン断層(the Shoreline Fault)という誰も知らなかった断層が間近(炉心から600メートルの海底)に見つかったじゃないの!!

と言うよりも、発電所が建っている場所は「断層の宝庫」とも言える地域で、近隣には、科学者が認識しているだけで十数の断層が存在するのです。
 マグニチュード6以上の地震も起きていて、まるで、あちらこちらに地雷が埋まっているような状況でしょうか。

(こちらの図は、PG&Eが発表したショアライン断層に関する報告書より抜粋。DCPPというのがディアブロ・キャニヨン発電所で、赤い線が海岸沿いにあるショアライン断層です。)


そんなわけで、発電所の安全性に関してはふつふつと疑問が湧いてくるわけですが、現在、ディアブロ・キャニヨンを所有する PG&Eは、操業認可の更新申請をする前に、地下の構造を徹底的に3次元解析するとしています。

そして、周辺住民や地域の政治家からも、「国の原子力規制委員会(the Nuclear Regulatory Commission)は、ちゃんとした地質調査が終わったあとに、じっくりと操業認可の更新を審議すべきである」という声が上がっています。

周辺には、アヴィラ・ビーチやモロ・ベイ(Morro Bay)といった有名なビーチもありますし、ここを母港とする漁船もたくさん操業しています。発電所の建つ海岸線は、人々の生活や心の糧(かて)でもあるのです。

PG&Eも、地域の憂慮は十分に理解しているみたいで、4月13日には周辺住民を招いて、発電所のオープンハウス(外部の人に施設を公開するイベント)を開いています。


先日、カリフォルニア選出のバーバラ・ボクサー上院議員は、原子力に関する議会の公聴会でこんな発言をしています。

「自然界がなし得ることを考えると、わたしたちはもっと謙虚でなくてはならない(We are not humble enough in the face of what Mother Nature can do.)」

この言葉は、いろんな災害に対する人の無力さを如実に表していると思うのです。

そして、このことは、どんな立場の人だって心の底ではわかっているのかもしれません。

今は、カリフォルニアの大部分の住民は、原子力発電所に関して静観しているようではあります。国の指導者であるオバマ大統領は「原子力推進派」でもありますし、そんなこんなで、きわだった批判も聞こえてはいないように思います。

けれども、そんなデリケートな均衡も、何かが起きれば、すぐに崩れてしまうのかもしれませんね。


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