Life in California
ライフ in カリフォルニア/歴史・習慣
Life in California ライフ in カリフォルニア
2008年06月04日

キューポラのある風景

キューポラ。なんとなく、かわいい響きですね。

英語では、cupola。同じく、キューポラと発音します。

昔から耳にしたことはあったけれども、長い間、その正体が何なのかは知りませんでした。

調べてみると、キューポラにはふたつの異なる意味があるのですが、どうやら、わたしが知りたかった方は、建築用語だったようです。屋根やドームの上に付いた、飾りみたいな、円型の小さな部屋のことだそうです。

そう、ちょうど、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂のドームに付いているような、帽子みたいに、チョコッと乗っかった部分です。

多くの場合、キューポラは単なる飾りではなく、見張り部屋として使われたり、灯台のような役目を果たしたり、通気孔として利用されたりと、かなり実用的なものだったようです。そんなキューポラの先端には、十字架や風見鶏のような飾りが付いていて、キューポラをもっと大きく、華麗に見せるような効果もあるようです。

名前のキューポラとは、ラテン語の「小さなカップ」に由来するそうで、ちょうど上品なカップを伏せたような形から来ているようですね。

なるほど、そうやってヨーロッパの写真を見直してみると、キューポラはいろんな所で使われているようですね。

たとえば、こちらの写真。これは、スイス中部にあるルツェルン湖です。湖畔に建ち並ぶホテルなどの建物に、つんつんと飛び出た部分がありますが、これが、キューポラの一種のようです。ちょうど、日本の「物見やぐら」のように、遠くが良く見えそうですよね。


どうして突然、キューポラが気になったかというと、家の外観をリモデル(リフォーム)する番組を観ていて、「キューポラ」という言葉が出てきたからなんです。

そのお家は、大きな道に面した角地にあって、もうちょっと外見でアピールしたい。だったら、持ち主の大好きなカウボーイ風の外観にして、屋根の上に、トタンで作ったキューポラを置きましょうと。職人さん手作りのキューポラは、四角い家の形をしていて、しっかりと固定するために煙突にすっぽりとかぶせ、その上に風見鶏の飾りも付きました。

さあ、これで、外観のアピール度もグンとアップです!

(こういった外から見た家のアピール度を、curb appeal 「歩道から見たアピール」と言い、アメリカでは、結構大事な要素なんですね。ちなみに、このときのキューポラは単なるお飾りで、本来のキューポラではありません)。

実は、ヨーロッパだけではなく、アメリカでも、キューポラは昔から人気のあった建築様式らしく、ニューヨーク州の北部やニュージャージー州、そして、ペンシルヴァニア州北部でも、頻繁に使われていたそうです。
 一説によると、先住のインディアンの部族に備えるため、「見張り台」として使われていたということですが、それよりも、遠くまで風景を眺めるための「見晴台」という意味合いの方が強かったのでしょう。


なるほど、キューポラとは、アメリカの東側の建築様式のようではありますが、その正体がわかった今、カリフォルニア北部のサンフランシスコやシリコンバレーの写真を見直してみると、キューポラは西海岸でも健在なのですね。

たとえば、こちら。これは、サンフランシスコの市役所( City Hall )です。何とも立派な建物ですが、数年前、改築工事を経て、さらに美しく仕上がりました。金色の繊細な飾りは、そのときに付けられたものです。

こちらも、サン・ピエトロ大聖堂よろしく、立派なキューポラが空に向かってそびえ立っています。逆に、これがないと、かなり間抜けなドームになってしまいますよね。

こちらは、キューポラの拡大写真です。よく見ると、土台は円形で、本体は四角のようですね。そうなんです、キューポラは必ずしも円形ではなく、正方形や長方形、そして八角形のものもあるそうです。

おまけに、手すりが付けられているところを見ると、やはり見晴台、もしくは見張り台の意味合いが強いようですよね(何かのイベントのとき、ここに登れるのでしょうか? ぜひ登ってみたいものです!)。


「シリコンバレーの首都」とも自負するサンノゼ市にも、こんなキューポラがありました。こちらは、ダウンタウンにある聖ヨセフ・バシリカ聖堂( the Cathedral Basilica of St. Joseph )です。
 ダウンタウンの目抜き通り、マーケット通りには細長い公園( Plaza de Cesar Chavez )がありますが、その道を隔てた反対側に建っています。
 1803年、まだまだサンノゼが村だった頃、この場所に最初の教会が建てられましたが、その後、地震や火災で何度か建物が崩れ、現在のバシリカ聖堂は、1877年に再建されたものだそうです。

この場所がサンノゼの中心地となったのは、1797年のこと。当時は、レンガ造りの家がいくつか集る小さな村でしたが、わずか数年後には、ここに教会が建てられました。そんな古い歴史から、バシリカ聖堂は、サンノゼのカトリック教会の中でも、中心的な存在となっているのです。

たしかに、聖堂の正面階段も立派なものだし、屋根に乗っかるキューポラも、まるで背の高いウェディングケーキのように、青い空にそびえていますよね。こちらのキューポラは、どちらかというと、建築上はドームとキューポラの中間みたいな位置付けなのかもしれませんね。


歴史的な建物に限らず、キューポラは現代の建築にも生きています。こちらは、シリコンバレーのど真ん中、マウンテンヴュー市にある市役所と劇場です。同市の中心部ともいえる、賑やかなカストロ通りに建っています。

左が市役所で、右が劇場ですが、市役所の方には、四角いキューポラが付いています。
 建物全体がいくつもの層に分かれ、何となく複雑なデザインですが、このキューポラからの眺めは、さぞかし素晴らしいものでしょう。なぜって、シリコンバレーには、サンノゼのダウンタウンを除いて、ほとんど高層ビルがないからです!

現代のキューポラ探し。その気になってみると、結構いろんな場所で見かけるものなのです。

こちらも、そうでしょうか? 近くの小学校の屋根に付いた、飾りのような突起物です。夕日に映えて、なかなかいいシルエットです。でも、こちらは、厳密にはキューポラではないかもしれません。想像するに、ここは吹き抜けになっていて、見晴台ではないはずなので。

けれども、「屋根に何もないと寂しいから、飾りを付けましょう」といった観点から考えると、キューポラみたいな役目を果たしているのかもしれませんね。

そうそう、これは勝手な推測なのですが、きっと家計に余裕ができると、屋根の上にキューポラを付けるというのが、昔の流行りだったのではないでしょうか。ご近所さんに対しても、ちょっと鼻高々みたいな。そういう意味では、日本の「うだつ」と同じことかもしれませんね。

そう、「うだつが上がらない」の「うだつ」。これは、どこから来ているかご存じでしょうか。実は、「うだつ」とは、屋根の上に一段高く取り付けた小屋根のことでして、これを上げるには、ある程度の財産が必要だったのですね。だから、うだつが上がった家は、財をなした家。そして、うだつが上がらない家は、残念ながら、ぱっとしない家。あまり好ましくない表現ではありますが、そういったところから、「うだつが上がらない」という言葉が生まれたのですね。

だから、西洋でも同じように、キューポラのある家は、「うだつが上がった家」だったのかもしれませんね。

この「キューポラとうだつの類似説」って、かなり説得力があるんじゃないかと自分では思うのです。が、いずれにしても、歴史的な建築様式ひとつ取っても、いろんな意味が隠されていて、「いったいどうしてだろう?」と想像を膨らましてみると、なかなかおもしろいものですよね。

追記:キューポラには、もうひとつ別の意味があって、鉄を溶かす熔銑炉(ようせんろ)のことを指します。きっと、日本で一般的に使われているのは、こちらの意味がほとんどなのかもしれません。
 たとえば、『キューポラのある街』という映画の題名を聞いたことがありませんか。児童文学者の早船ちよさんの同名の原作をもとに、1962年に公開された映画ですが、鋳物職人のお父さんを持つ少女が、数々の問題に直面しながらも、まっすぐに生きていくお話なんだそうです。鋳物職人が使う熔銑炉という意味で、『キューポラのある街』という題名が付けられたのでしょうね。
 主人公ジュンには、デビューしたての吉永小百合さんが扮しているそうですが、17歳の高校生だった彼女の名演技が光る、とてもいい映画となっているのでしょう。機会があったら、ぜひ観てみたいと思います。


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