Essay エッセイ
2019年03月31日

スーパーブルーム(Super Bloom)!

いきなり、カタカナの題名ですが、「スーパーブルーム」。



ブルーム(bloom)というのは、花盛りのこと。



それが、スゴい(super)花盛りなので、スーパーブルーム。



これは、今カリフォルニアじゅうを騒がせている話題です。いったい何が満開なのかというと、カリフォルニア州の花「カリフォルニアポピー(California poppy)」。



あまり日本では馴染みがありませんが、ポピー(ケシの花)の中でも、ひときわ鮮やかなオレンジ色の花びらを持つ、野に咲く花。つやつやとした、一重(ひとえ)の花びらが特徴です。



もともとカリフォルニア州の野原に咲く在来種で、ヨーロッパから来たスペイン人たちが初めて足を踏み入れようとしたとき、「あのオレンジ色の花はなんだろう?」と心を奪われたとか。まるで、野原が燃えているかのように見えたので。



カリフォルニアは、「夏が乾季で、冬が雨季」という二季。雨季は、だいたい10月から4月頃まで続きますが、このときに山々が茶色から緑に変わります。



ところが、近年どうしたことか、なかなか雨の降らない「干ばつ」状態にありました。とくに2011年秋から2016年初春の5シーズンは、観測史上で一番雨の少ない雨季となっています。



幸いなことに、2016年秋には雨が戻り、大雨で地滑りなどの災害に見舞われたものの、貯水池の水も安定して保たれるようになり、給水制限も解かれるようになりました。



すると、逆に、今シーズンの雨季は、ひどく雨が多いのです。



Too much rain!(雨が多すぎるよ!)という不満を耳にするくらいで、なかなか「カリフォルニアの青い空」が顔を覗かせてくれません。



その雨の影響なのか、昨年まで姿を隠していたカリフォルニアポピーが、今年はいっせいに花を咲かせています。



野原全体がオレンジ色! という場所も現れました。



それが「スーパーブルーム」として話題になっているわけですが、みなさんを騒がせているポピーの大群生は、おもに南カリフォルニアにあるようです。



ひとつは、レイク エルシノア(Lake Elsinore)。ロスアンジェルス近郊のレイクサイド郡にある淡水湖の名で、同時に街の名でもあります。



そして、もうひとつはロスアンジェルスから北へ、ランカスターという街にあるアンテロープ バレー(Antelope Valley)。ここには、ポピー群生の保護区(Poppy Reserve)があるそうです。



どちらも花の季節ともなると、野原がオレンジ一色に彩られ、それはもう絶景とか。



レイク エルシノアは、あまりの人気のため、3月中旬から市当局が自家用車の乗り入れを禁止しています。見学者は近くの駐車場からシャトルバスに乗って、ポピーの群生地まで連れて行かれるそうですが、週末ともなると、バスに乗るまで1時間以上待たないといけないとか!



いまだカリフォルニアは雨季とはいえ、ひとたび雨が上がると、鈍色(にびいろ)の空が真っ青になる。その鮮やかなブルーを背景に、野原の花もいっせいに輝きを増すのです。



「そこを逃したくない!」と、見物客が殺到するわけですが、このスーパーブルームの大騒ぎは、日本の花見とまったく同じですよね!




わたしも自分の目で見てみたいとは思うのですが、なにせ南カリフォルニアは遠い。



ですから、まずは近所の野原に目を向けると、この辺りでもポピーが満開です。



我が家の近くにある自然遊歩道(nature trail)を行くと、急な斜面にはポツポツとオレンジの花が咲いています。



南カリフォルニアの群生地にはかないませんが、それなりに風情があるのです。



そして、わたしの出身大学の花壇にも、オレンジ色の花が顔を覗かせています。



いえ、在学中はこのようなオブジェや花壇はなかったんですが、きっと芸術学科の学生が協力して制作したのでしょう。



モノクロマティックな色彩のオブジェが、オレンジ色で引き立っていますね。



こちらは、サンノゼの地元で話題になっている個人宅、名付けて「Bulb guy(球根ガイ)」。



なんでも、10年前から庭にたくさんの球根を植え始め、庭づくりの楽しさを伝えることをミッションとしてきた、リッチ・サントロさんのお庭(緑色のマントを着た方がリッチさん)。



今年は、1万個を超える球根が花を咲かせているそうですが、3月23日から31日まで庭を一般公開して、見物客を自慢の裏庭へと招き入れました。わたしも最終日を控える土曜日に見学に行きましたが、まあ、みなさんどこで知ったのか、次から次へと見物客がやって来るのには驚きました。だって、あくまでも個人の家なんですもの。



まあ、こちらの「球根ガイ」は、地域のガーデニング界では有名人だそうですが、わたしのようにガーデニングとは無縁の方々だって「花を見るならここ!」とネットの情報でつられてやって来たのでしょう。(緑色の車は、リッチさんの宣伝車。自身の the-Bulb guy.com というウェブサイトや花を育てる楽しみを伝えて回ります)



こちらの庭には、カリフォルニアポピーだけではなく、チューリップやアネモネといった春の花も植えられていて、色とりどりの景色が目に飛び込んできます。



こういうのを、英語で a burst of colors と言うのでしょう。まるで色とりどりの風船が破裂したみたいに、目の中でたくさんの色がはじけること。



きっとそれが、雨季の晴れ間に感じる、カリフォルニアの自然なんでしょう。




というわけで、今日のお題は「スーパーブルーム(Super Bloom)」。



実は、この言葉は、ごく最近の造語だそうです。(名詞なので単数形は a super bloom、複数形は super blooms)



たとえば、月が地球に近づいて明るく大きく見えることを「スーパームーン(Super Moon)」と言いますが、そこから転じた表現なのかもしれません。



近頃は、みなさんソーシャルサイトで写真を載せるのが流行っているので、お月さまのスーパームーンも、お花のスーパーブルームも絶対に逃せない題材なのです。



スーパーブルームは、そんなネット上の習慣から生まれた造語なんでしょうね。



けれども、「きれいな花が見たい!」と願うのは、古代より受け継がれた人の本能とも呼べるもの。



「花鳥風月を愛でる」ことは、時代と文化を超え、人と人をつなぐ共通言語なのかもしれませんね。



追記:

こちらのカリフォルニアポピーをよく見ると、花の真ん中から、小さな生き物が顔を覗かせているようにも見えるのです。



アンデルセンの童話に『親指姫(おやゆびひめ)』というのがありますが、花の中からお姫さまが生まれたというストーリーも自然に感じるのでした。




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