Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2010年10月18日

ピンクの戦士たち

前回は、「ピンク色の東京タワー」と題して、「乳がん月間」に行われるピンクリボンウォークのお話をいたしました。

この記事を掲載した翌日、新聞にはアメリカでピンクリボンウォークに参加したコラムニストの文章が載っていましたので、ここでちょっとご紹介いたしましょう。

彼は、マイアミ・ヘラルド紙のコラムニストなのですが、10月10日の週末、首都ワシントンD.C.で開かれた「スーザン・コウマン・ウォーク(Susan G. Komen 3-Day for the Cure)」に参加したそうです。


前回のお話に出てきた「エイヴォンウォーク(Avon Walk for Breast Cancer)」と同じく、こちらの「スーザン・コウマン」も代表的なピンクリボンウォークなのですが、こちらは3日間で60マイル(およそ100キロメートル)を歩くので、男性でも体は疲れ果て、足はマメだらけになるというような、かなり過酷なウォークらしいです。

けれども、キャンプをしながら首都を歩き回る厳しい行軍の中でも、アメリカ人は楽しむことを忘れていません。
 横断歩道では、ピンクのバレエチュチュを着た男性群が「緑のおばさん」をやってくれましたし、小さな女の子が道行く参加者に「M&M」のチョコレートを手渡して「がんばってね」と励ましてくれました。

きつい登り坂になると、映画『ロッキー(Rocky)』のテーマ曲が流れ、みんなを鼓舞してくれましたし、乳がんの化学療法から髪を短く刈り込んだ参加者は、ここぞとばかりに、ユーモアたっぷりのプラカードを掲げます。
 「あなたたちは、わたしのために歩いているのよ(You’re Walking for Me)!」

一日の行程が終えると、スポンサーが提供してくれたステーキのディナーでスタミナをつけ、誰が考え出してくれたのか、マッサージチェアーという天国のような発明品に感謝をします。

そして、冷たい夜がふけると、男女の区別もなくテントにもぐり込み、ヒソヒソと名前も知らない相手との身の上話に花が咲くのです。


このコラムを書いたレオナード・ピッツ氏(Leonard Pitts Jr.)は、もしかすると、途中で何度も棄権したいと思ったのかもしれません。だって、一般的に、忙しいジャーナリストがスポーツ万能だとは考え難いですから。

でも、どうしてもギブアップできない理由があったのです。それは、読者という味方がいたから。
 なんでも、彼がピンクリボンウォークに参加すると宣言したら、514人の読者がスポンサーとなって28,000ドル(約230万円)を寄付してくれたそうなのです。
 そんな人たちを裏切りたくないという使命感が、ピッツ氏の中にはずっと燃えていて、それが行軍を続ける励みにもなったのでしょう。

みんなからの寄付金は、乳がんの治療法や原因を探る研究費や、医療費を支払えない人々の診察や治療に使われるのです。ピンクリボンウォークには、女性たちや家族の乳がんに対する意識を高めることと同時に、こういった寄付金をつのるという目的もあるのですね。

ウォークへの参加者は、おのおのが寄付金をつのることが条件となっていて、「スーザン・コウマン」の場合は最低2,300ドル(約19万円)、「エイヴォンウォーク」は1,800ドル(約15万円)をつのって初めて参加できるそうです。
 そういう意味では、参加者はみんな、組織力を持った戦士といったところでしょうか。

ピンクリボンウォークばかりではなく、寄付金をつのる別の方法として、「スーザン・コウマン」財団などは、使い古しの携帯電話なども集めています。(上の写真は、携帯電話を入れてポストに投函できるビニール袋です。切手を貼る必要もないので、寄付しやすくなっています。)


それで、どうしてこのピッツ氏のコラムをご紹介しようと思ったかというと、ピンクリボンウォークに対して、自分自身と似たような感想を抱いていらっしゃったからなのでした。

わたしは、東京のピンクリボンウォークの長い行列を見て、こんな感想を持ったのでした。
 「ひとりひとりの歩みは小さいけれど、みんなで歩くことで、何千倍の規模になる。そして、個々が抱いた思いもそれだけ大きくなる」と。

ピッツ氏は、参加者や彼らを陰で支えるボランティアの方々を見て、小さなアリを思い浮かべたとおっしゃいます。

人間というものは、何か大きなことを成し遂げようとするときに、「自分にはできない」などと何かしら否定的なことを考え始め、それが妨げともなる。
 けれども、アリたちは、そんな余計なことは考えない。アリは、地下に築き上げる都市という大きな目的にのみ邁進する。

彼らは、互いに協力し合い、一度にひと粒ずつ土を動かしながら、目的を遂行するのだと。

ま、人をアリさんにたとえることに眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、おっしゃっていることは何となくジワッと伝わってきますよね。


そうそう、男性のコラムニストがピンクリボンウォークに参加するなんて意外に思われたかもしれませんが、こういった催しには、男性だって少数ながら参加なさるんですよ。

そして、前回のお話でもご紹介したように、みんなが集まるスポーツイベントでも、男性の選手たちが大いに協力してくれるのです。

昨年の秋、サンフランシスコの対岸、オークランドにプロ野球を観に行ったときのことでした。この日は、「乳がん啓発の日」となっていて、選手たちも胸にかわいいピンクリボンをつけてプレーしていました。(こちらはご存じ、シアトル・マリナーズのイチロー選手。小さくてわかり難いですが、胸にはピンクリボンがついています。)

中には、試合前のウォーミングアップに、ピンク色の子供用リュックサックを背負って登場した方もいらっしゃって、そのとぼけた様子に「さすがはアメリカ人! 何でも楽しみに変えてしまうんだから」と、感心してしまったのでした。

試合が始まる前、フィールドの女性たちがピンク色の風船を一斉に空に放ったのですが、ひとつひとつの風船にはこんな希望が託されていたのでした。

「早く乳がんを根絶する方法が見つかりますように!」

追記: 前回のお話で、何年か前にマンモグラフィの再検査を受けたことを書きました。再検査の通達から良好な検査結果を受け取るまで、ひどく恐い思いをして過ごしたのですが、そのことを主治医に告げると、こんな答えが返ってきたのでした。
 「そんなの心配しなくていいよ。マンモグラフィを受けた人の3割は再検査になって、その大部分は何でもないんだから」と。

どうやら、X線写真を観察する時点で、どうしても白黒つけられない部分があるようですが、それでも、「疑わしいものがあれば再検査」という方針は良心的ではありますよね。


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