Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2018年10月30日

市民の「足」になれるかな?:スクーター再開の日

Vol. 218



一度はサンフランシスコの街から姿を消した、電動スクーターのシェアサービス。先日、新たに市から認められた2社が営業を再開しています。今月は、そんなお騒がせなシェアサービスのお話をいたしましょう。



<スクーターが消えた日>

今年4月号でもお伝えしましたが、近頃アメリカの都市部では、新しい「足」が大流行しています。それは、貸し自転車に代わる、電動スクーター(electric scooter、e-scooter)のシェアサービス。スマートフォンアプリを使って、どこでも好きな場所で乗り降りができる、便利なサービスです。

車に乗るまでもない、でも歩くのにはちょっと遠い。そんなダウンタウン周辺の悩みをうまく解決してくれます。



サンフランシスコの街では、3月末に初登場したものの、翌月には、もう10年も存在していたかのように大きな顔をして走り回り、街角には何台ものスクーターが乗り捨てられ、歩行者の邪魔になるだけではなく、安全性の問題も指摘されていました。

この無秩序な状態に頭を痛めたサンフランシスコ市当局は、5月末、電動スクーターを運営する3社に対して「新たに営業認可を与える審査プロセスに入るので、6月4日までに、一旦すべてのスクーターを撤去しろ」と行政命令を下しました。

そう、この日の深夜以降は、街角からすっかりスクーターが消えてしまったのでした。



同様の悩みを抱える街は多く、サンフランシスコばかりではなく、コロラド州デンヴァー、テキサス州オースティン、そしてハワイのホノルルでも、このような行政命令が下されたと聞きます。



さすがに急に「足」が消えてしまったので、不便を感じた一部のユーザは、「マイスクーター」を購入して対応したようです。一度味を占めたら、便利なものは、なかなか手放したくない! だったら、少々高くたって、なかなか良い投資になるのでしょう。



<スクーターが再開した日>

そして、8月末、12社が参加した市交通局による業者選定プロセスが完了し、それまで営業していたスピン(Spin:本社サンフランシスコ)、ライムバイク(LimeBike:サンマテオ)、バード(Bird:南カリフォルニア・サンタモニカ)の3社は見事に落選し、新しくスクート(Scoot)とスキップ(Skip)という2社が選ばれたのでした。

両社は625台ずつのスクーターを市内に設置し、1年間の試験運用の後に、台数を倍に増やせるとのこと。市は最大6社までは認可するということでしたので、なかなか厳しい選択なのでした。

シリコンバレーのサンノゼ市などでも人気を博しているライムバイクは、「市の選定プロセスは偏っていて、選定条件も不明瞭だ」として裁判所に申し立てをしましたが、あっさりと却下され、10月15日のスクーター再開の日を迎えました。



こちらは、その再開当日に撮影したものですが、業者が並べたばかりなのか、スクートの赤い電動スクーターがお行儀よく並んでいます。

再開して3時間ほどしかたっていないので、利用者はごく少数でしたが、実は、この会社は、市内での営業は初めてではありません。



2012年にサンフランシスコで起業されたスクートは、今年に入って市内で電動バイクのシェアサービスを開始していました。赤のイメージカラーで街角でも目立つ存在ですが、スペインのバルセロナとチリのサンティアゴでは、電動自転車と電動スクーターのシェアサービスを展開しているとのこと。

市内に設置される電動バイクも、いつも整然と並べられていて、そんな生真面目な企業体質が市当局に認められたのかもしれません。



一方、こちらは、スキップの電動スクーター。イメージカラーの青が鮮やかですが、名前には馴染みがありません。なんでも、本社はサンフランシスコのようですが、オレゴン州ポートランドで電動スクーターのシェアサービスを展開している様子。

ポートランドは山に囲まれ、坂道が多いので、傾斜のある場所でも利用状況は実証済み。ですから、坂の多いサンフランシスコでも、平たいダウンタウン地区だけではなく、西側の丘の多い住宅街でもサービスを提供するそうです。



実際にスキップに乗っているところを見ていると、ボードには、小さなヘッドライトとテールランプが付いていて、薄暗い路上を照らしてくれると同時に、車からも見やすくなっているようです。他社との差別化を目指す工夫のひとつなのかもしれません。



このように、これまで営業してきた3社ではなく、スクートとスキップが選ばれた背景には、事前に市当局にお伺いを立てて、ともにシェアサービスのあり方を協議してきたからだとか。そう、これまでの3社には無許可で好き勝手に営業され、市民からの苦情が相次いだことが、当局にとっては腹に据えかねたのかもしれません。

実際、3社のうちライムバイクとバードに対しては、怪我をさせられた歩行者やスクーターの不具合で怪我をしたライダーが集団訴訟を起こしていて、企業体質というのは、営業認可の重要条件だったようです。



けれども、運営する側がどんなに品行方正でも、「ライダーはヘルメットをかぶり、歩道ではなく車道もしくは自転車レーンをゆっくりと走行し、指定された場所で返却する」という最低限のルールが守られるかどうかは、なんといっても利用者次第。

そう、スクーターを使い終えたら、歩道の端に設置された自転車ラックで安全に返却するのがルールです。このように、路上にはステンシルで自転車のイラストと「市交通局指定の自転車ラック(SFMTA Bike Rack)」が描かれ、スクーター再開の日に備えています。



が、時がたてばルールなんて忘れてしまうこともあるでしょうし、最初からルールを守らない人が多いのも現状です(そうなんです、ヘルメットをかぶらない利用者も頻繁に見かけます)。

新たに営業を許可されたスキップは、無料でヘルメットをライダーに配布していましたし、使い終わって駐車したところを写真で報告するルールになっていて、違反者には罰則を与えるとしています。



ところが、蓋を開けてみると、規則はなかなか徹底していないのが現実です。こちらは、再開からちょうど一週間たった夕方の様子。メインストリート・マーケット通りにある地下鉄(BART)駅に向かおうと、利用者はここでエイッと乗り捨てたようです。



ルールは、利用者と街の秩序を守るためのもの。それをどれだけ浸透させられるのかが、電動スクーターシェアサービスの成功の鍵となるのでしょう。



夏来 潤(なつき じゅん)



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