Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2009年07月31日

従業員は羊さん

5月の中頃、家の近くのゴルフ場から帰って来た連れ合いが、「ねえ、ねえ、羊さんがいるんだよ」と、真っ先に報告してくれました。

なんでも、ゴルフコースの脇の雑草の生い茂る野原で、羊がわんさと放し飼いになっていて、メエ、メエという鳴き声がゴルフのバックグラウンドミュージックになっていると言うのです。

それは、さっそく見に行かなきゃと、カメラを持って出かけたのですが、言われた通りに、羊の群れがおとなしく柵に囲われ、みんなでハムハムと雑草を食べているではありませんか。最初は、まさか、こんな住宅地の真ん中で?とは思いましたけれど、これは連れ合いの悪い冗談ではなかったんですね。

群れの中には、かわいい子羊たちもいて、お母さんの真似をして、一生懸命に草を食べています。なにやら、こちらの黄色い花がお好みのようで、子羊たちは、枯れ草よりもこっちの方に気を取られています。

いったい何匹いるのかはわかりませんが、みんな好き勝手に鳴く声が、辺りに響き渡っています。

そして、そばでよ~く聞いてみると、鳴き声はメエ、メエではないんですね。どちらかというと、バアァァァ、バアァァァという風に聞こえるのです。

もしかすると、大人の羊(sheep)は「バアァァ(baa)」と鳴き、子羊(lamb)の方は、かわいく「メエ(meh)」と鳴くのかもしれませんね。

ちょっと滑稽ではありますが、アメリカ人が真似をするときも、「バアァァ、バアァァ」と言っています。(動物の鳴き声を真似するのは、万国共通の現象ですね。)


ところで、どうしてこんなにたくさんの羊さんがいるのかというと、べつに誰かの趣味で飼育しているわけではありません。この羊さんたちは、立派に「従業員」として動員されているのです。

そう、ご察しの通り、枯れ草を食べる従業員として雇われているのですね。

カリフォルニアは、夏の間、丘や山肌が黄金色の枯れ草に覆われてしまうのですが、住宅地に近い場所では、火事にならないようにと、せっせと枯れ草を刈らないといけません。ひとたび枯れ草が発火すると、火はどんどん燃え広がり、家に引火して大事な財産を焼き尽くしてしまうからです。

そこで、5月も中頃を過ぎ、雨季が完全に終わる頃になると、住宅地のまわりの雑草を刈る「草刈り隊(mowing crew)」が雇われるのです。けれども、中には急な斜面もあって人が仕事をするには危ない場所もあるし、第一、草刈り機の火花が原因となって山火事を引き起こすケースも多々あるのです。
 なんでも、カリフォルニアの山火事の9割以上は、自然発火ではなくて、たき火だとかエンジンのスパークだとか人為的な原因によるものなんだそうです。だから、火花を起こさない四本足の動物は、ありがたい助っ人となるのですね。

というわけで、今年からは、我が家のまわりでは、人間の草刈り隊に代わって羊さんたちが雇われたということなのです。


ところが、実際に羊さんを雇ってみると、ちょっとした問題が起きるのですね。それは、羊さんは好みがうるさくて、雑草の食べ残しが出てくる場合がある。そう、連れ合いが最初に羊さんを見かけたときにも、一緒にゴルフをプレーしていた方が、こうおっしゃっていたそうです。

「羊もいいけれど、ヤギの方が好き嫌いなく何でも食べるから、いい仕事をするんだけどね。」

すると、2週間もしないうちに、今度はヤギさんも雇われることになりました。

こちらは、一生懸命に仕事をするヤギさんのご一行です。カメラを向けると、はて何だろう?と、顔を上げてこちらを観察しています。あまり、人を恐れる風でもなく、興味津々といった感じです。

もちろん、野生のヤギではないので、人には慣れているのでしょうけれど、ペットでもない動物と近くで顔を合わせると、こちらはおっかなびっくりになってしまいます。

でも、ひととき立ち止まって観察してみると、あちらにもお父さん、お母さん、子供といった家族構成があるみたいで、お母さんは子供の世話をする係、お父さんは家族や群れを見守る係と、役割分担があるようなのです。
 そして、子供にはやっぱり子供の特権があるみたいで、お母さんのそばで甘えています。

それにしても、これだけ枯れ草があれば、食べる物には困りませんよね。彼らは、機械で刈るよりも徹底的に美しく食べ尽くしてくれるそうです。(そして、食べ尽くされたあとには、みんなが見失った「ロストボール」が50個、100個・・・)

しかも、水飲み場さえ確保しておけば、あとはここで食べて、ここで寝てくれるのです。手がかからず、とっても楽ちんなのです。(それに、彼らの排泄物は、いい肥料になるではありませんか!)

けれども、羊さんやヤギさんのような優しい動物は、ボブキャットやコヨーテの標的になり易い。だから、野生の恐~い動物が彼らを襲わないようにと、まわりには弱電流を通した柵がめぐらされています。羊たちが逃げ出さないようにという意味もあるようです。

もちろん、ここでも環境に優しいようにと、電気だって太陽電池で発電しているのです。


5月中旬に姿を現した羊さんの群れは、18番ホール、17番ホール、16番ホールと順番に場所を変えていきます。ヤギさんの方は、6番、7番、8番と移動して、我が家からは見えなくなってしまいました。

そして、6月中旬、向いの丘には、羊さんの第二集団が現れました。きっと、羊さん第一集団では歯が立たないので、第二集団を追加で雇ったのでしょう。

というわけで、草刈り隊が3つもいるので、いつしか我が家の裏庭にも来てくれるだろうと、ウキウキしながら待っておりました。
 子供たちは裏庭の羊たちに名前を付けて、親しく呼んでいるなんて話も耳にするので、自分だったらどんな名前を付けてみようかと、手ぐすねを引いて待っていたのです。

ところが、6月の終わり、朝早く騒音で起こされて窓の外を見てみると、なんと人間の草刈り隊が雑草を刈っているではありませんか!

うるさい上に、勝手に雑草を刈れてしまったなんて!と、その日一日、ご機嫌斜めで過ごしておりました。人間が3人いると、ものの20分でそこら中を刈ってしまうのですが、それでは風情がではないではありませんか。


そんなわけで、わたしはがっくりと肩を落としたわけですが、その一方で、裏庭に羊やヤギがやって来るのも考えものだと言う人もいるのです。どうしてって、バアァだのメエだのと鳴き声がうるさい。最初のうちはいいけれど、四六時中鳴かれるとやっぱり気になってくるのでしょう。

それに、羊の方だって柵に囲われているのは嫌なときもあるみたいで、先日、お向かいさんが「羊の脱走」に遭遇したのです。
 羊がどっと柵を乗り越え、裏庭の向こう側のゴルフコースに逃げ込もうとしたので、自分たちとまわりにいた人間10人ほどで通せん坊をしたと言うのです。

そして、急遽、カウボーイと羊飼い犬(sheep dog)を呼んで、無事に「脱走犯たち」を柵の中に連れて行ったのですが、さすがに羊飼い犬はよく訓練されていて、脱走犯たちも犬の指示にはおとなしく従っていたそうです。

なんでも、カウボーイさんの方は、インディアナ州から来られた元トラック運転手だそうで、今はトラックの仕事が少ないから、カリフォルニアに来て期間限定のカウボーイをやっているということでした。

今は、住宅地の裏の小屋に仮住まいしているそうですが、「大変だ、脱走犯がいる!」と電話があったときには、近くのスーパーマーケットでお買い物をしていたそうです。いったい誰がカウボーイのケータイ番号なんて知っていたんでしょうね?

ちなみに、羊やヤギに雑草を食べさせるのは昔から行われていた手法だそうで、何も近年の「エコ発明」ではないそうです。

追記: きっと、羊とヤギの鳴き声をご存じない方も多いのだと思いますが、以下のサイトでお聞きになれます。
 羊は、こちらをどうぞ。上にメニューが並んでいるのが羊で、その下が子羊です。
 ヤギは、こちらをどうぞ。右側の「Playlist(プレーリスト)」でいろいろと選べます。どちらかと言うと、8番目の「Goat」というのが普通の感じでしょうか。

ちなみに、我が家の近くの草刈り隊は、羊さんがバアァァで、ヤギさんがメエですね。
 それにしても、バアァだのメエだのといった騒音の中でゴルフをするのも、かなりの試練だそうですよ。「無我の境地」の訓練にはいいかもしれませんね。


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