Essay エッセイ
2006年10月16日

芸術品

先日、芸術品が手に入りました。

なんのことはない、甥っ子が描いたコガネムシの絵です。

でも、封筒から引き出し、二つ折りの紙を開いた途端、これは芸術だ!って思ってしまったのです。

なんといっても、力強い。迷いもなく引かれた線には、自信すら感じます。

まだ、小学校1年生なので、輪郭はかなりデフォルメされ、説明の字もおぼつかない。でも、題材に対する思い入れが充分に出ている。
 まるで、芸術家が対象物に抱く、深い鑑識眼と愛着のように。


甥っ子は、小さい頃から虫が大好きで、近所でも「昆虫博士」として有名なんだそうです。地元の新聞でも取り上げられたくらい。
 だから、お誕生日に、コガネムシの標本がモチーフとなったブレスレットを贈ったら、喜んで絵にしてくれました。

何かを贈ってあげると、いつもお姉ちゃんとお母さんと一緒に礼状をくれるのですが、甥っ子は、決まって虫の絵。

一度、こんな折り紙の作品を送ってくれました。ちょうちょ、せみ、くわがた、るりぼしかみきり、だそうです。

小さなことにはとらわれず、自分の表現したいように表現する。
 そんな豪快なところが、やっぱり、連れ合いの家系の血をひいているんだなあと、ちょっとおかしくなってきます。


子供が描く絵って、育った文化の影響があるのかもしれませんね。

こちらは、アメリカの女の子が描いた絵。その子の家では猫を飼っているので、猫が大好き。描いてくれたのも猫ちゃんたち。

でも、なんとなく、日本の女の子が描く猫ちゃんとは違いますよね。

第一、猫ちゃんたちが立ってる!それに、体が雪だるまみたいに、何段にも分かれている!

きっと、雪のタホ湖で描いてくれたので、雪だるまのイメージとも重なっているのかもしれません(アメリカの雪だるまは、通常、三段に分かれているのです)。


こちらは、そのお兄ちゃんが、即席で作ってくれたお礼のカード。黄色いポストイットを2枚張り合わせ、お礼のメッセージを書いてくれています。

彼らのお家で、折り紙の鶴を折ってあげたら、これあげるって、持って来てくれたものです。
 きっと、お母さんに言われたのでしょうね。ちゃんとお礼を書きなさいって。


ちなみに、こちらは、日本人だけれど、アメリカで育った女の子の作品。

彼女曰く、わたしの絵だそうですが、きっと、そのときしていた赤いペンダントと指輪が印象的だったんでしょうね(髪にはリボンなんかしていませんでしたけど)。

お目目ぱっちりのお人形さんの絵とは、また違った感じですよね。
 とくに、目と眉が違っていて、なんとなく、アメリカ風。


小さい頃、わたしはお絵描きを習っていました。

父の家系は、みんな絵や彫刻に長けているのに、わたしも姉もそうでもなかった。だから、ふたりして絵画教室に通わされていたんです。

でも、わたしは、いつも先生に言われてましたね。もっと豪快に描きなさいって。小さい描写はいいから、もっと自由にって。
 そういうのって、あんまり得意じゃなかったんです。木登りはお得意でしたけど。

で、あるとき、みんなで近くの公園に写生会に行きました。

わたしは、どうしても、コンクリートの階段の色が気に入らなくって、何度も何度も違った色のクレヨンで塗り直していました。そしたら、何ともいえない、黒っぽい色になってしまって・・・。自分でも、恥ずかしいくらいに。

すると、先生が寄って来て言うんです。「あ~、これはいい色だねぇ」って。そして、わたしの絵を掲げて、「みんなも、こんな風に、思った通りに描いてみなさい」って言うんですよ。
 こっちにしてみたら、偶然の産物とでもいうんでしょうか。でも、先生には、そんなことは何も言えなかったですけどね。

そのとき、芸術ってわからんものだぁって、子供ながらに悟りましたね。幼稚園の頃だったと思います。

で、今は、あの色を出そうと思っても、出せるものではありませんね。なかなか常識というやつが邪魔してしまって。


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