Life in California
ライフ in カリフォルニア/季節
Life in California ライフ in カリフォルニア
2006年10月13日

食欲の秋、ワインディナー

秋。日本では、食欲の秋。秋刀魚や栗やお芋がおいしい季節。

秋。カリフォルニアでは、ワインの秋。ぶどうの収穫が最盛期となり、ワイナリーは新しいワインの仕込みに入ります。

そんな秋の訪れを感ずるカリフォルニアでは、真夏はビールに押され気味だったワインも力を盛り返し、あちらこちらで「ワインディナー」が開かれるようになります。


前回は、ワインの産地、ナパにあるふたつのワイナリーのお話をいたしました。

けれども、カリフォルニアのワイナリーは、何もナパには限りません。ナパのお隣のソノマ郡も、カリフォルニアワインの双璧ともいえる場所です。

そして意外にも、シリコンバレーにも、あちらこちらにワイナリーがあるのです。昔っからの伝統を守るワイナリーもあるし、ほんの数年の歴史の新しいものもある。
 IT業界を制覇したら、お次はワイン造り。そんなシリコンバレーの住人たちもいるのです。

飲む人にとっても、造る人にとっても、ワインは常に、夢とチャレンジ精神を駆り立ててきた飲み物なのですね。(写真は、そんな新手のシリコンバレーのワイナリー、クロア・ラシャン(Clos LaChance)です。)

そして、そんなワイン好きの集まるカリフォルニアでは、「ワインディナー(winemaker’s dinner)」というのが頻繁に行われます。こちらがわざわざ遠いところにあるワイナリーに出向くかわりに、向こうが出向いてくれるのです。

たとえば、地元のワイナリーがコース料理をお出しし、自分たちのワインをペアリングするという形式もあります。
 そして、近くのレストランがワイナリーを招き、ワイン造りの苦労話とともに、彼らのワインを堪能するというイベントもあります。


9月下旬、そんなワインディナーに出席しました。近くのクラブハウスのレストランで開かれたものです。

我が家に近いので、酒気帯び運転なんか怖くない、という嬉しい利点もありました。

今回、招待されたワイナリーは、ソノマ郡にある Dutcher Crossing Winery (ダッチャー・クロッシング・ワイナリー)というところです。
 ソノマ郡のドライクリークバレー( Dry Creek Valley )という、有名なぶどう栽培地域にあります。

正直に言って、こんなワイナリーなんて、今まで聞いた事がありませんでした。それもそのはず。ここは、ほんの5年前にできたばかりのワイナリーです。
 オーナーのブルース・ネヴィンズさんとジム・スティーヴンズさんは、30年前から「ペリエ」をアメリカに紹介した立役者だとか。やはり、水がわかる人は、ワインの味もわかるのでしょうか。


ディナーはまず、立食のオードブルから始まります。ピアノの演奏が流れる中、シャルドネを味わいながら、楽しい会話に花が咲きます。ちょうどお向かいさんも来ていたので、話し相手に不足することはありませんでした。

そこに、オードブルのトレイが回ってきます。イチジクのパイ包みに、梨とブルーチーズののったクロスティーニ(イタリア風トースト)。メインロブスターとダンジェネスクラブのフリッター(揚げ物)もありました。

シャンペンなんかではなく、甘味のあるシャルドネでオードブルというのも、なかなかおもしろいものですね。

ワイングラスがチンチンと鳴らされ、そろそろテーブルに着席する合図。そこで、お向かいさんと一緒に、8人がけのテーブルに座ります。

ワインディナーのテーブルは、丸テーブルの場合が多いようで、初対面の人でも、会話がスムーズに進むようになっているのです。



レストランの中央には、ワインボトルが美術品のように飾られています。お出しする赤ワインはすでにコルクが開けられ、白ワインは氷で適度に冷やされています。


まず、コースひとつ目は、帆立。セロリのピューレが入ったバターソースがけです。
 これに合わせるのは、白のソーヴィニョン・ブラン(Sauvignon Blanc)。香りも、酸味も、ほどよいくらい。ぶどうの味がうまく引き出されていて、よくできたワインです。

お次は、鴨の胸肉。外側をこんがりと焼いた鴨に、プラム・チャトネー(ジャムみたいなもの)がのっていて、緑茶入りのソースがかかっています。

これに合わせるのは、赤のジンファンデル(Zinfandel)。日本では、あまり有名ではありませんが、アメリカの固有種で、カリフォルニアでは、とってもいいものが栽培されているのです。

ダッチャー・クロッシングのあるドライクリークバレーも、このジンファンデル品種で名高い所なのです。
 近くの「メイプルぶどう畑(Maple Vineyard)」で採れたジンファンデルを使っていて、香りが高く、口の中でとろけるような、まろやかなお味です。

このぶどう畑はメイプルさん夫妻の経営で、ふたりとも自分のトラックを運転し、しょっちゅう畑で働いている、ということでした。毎年、いいジンファンデルを提供してくれているんだと、ダッチャー・クロッシングの責任者が力説していました。

わたしも、ジンファンデルは大好きな品種のひとつで、これこそは!と思っているものが何本かあります。お手頃な値段のわりに質が高い、これが狙い目なんです。
 このダッチャー・クロッシングも、その中に入れたい一本ですね(残念ながら、今はちょっと売り切れているそうですが)。


鴨肉のお次は、牛のフィレ肉。風変わりなキノコが数種、ほどよくソテーされ、脇に添えられています。

これに合うのは、勿論、カベルネ・ソーヴィニョン(Cabernet Sauvignon)。やはり、近くで採れたぶどうで造られた、バランスのいいワインです。
 色も鮮やかで、香り高く、ミディアムレアに焼かれたフィレ肉によく合います。

さあ、このあとは、いよいよデザート。アメリカ人にとっては、待ちに待った最後のコースです。
 彼らには、デザート抜きの食事なんか考えられないんですね。子供の頃から、「ブロッコリとニンジンを食べたら、デザートにアイスクリームを出してあげるわ」と言われて育ったからでしょうか。

どうやら、このワインディナーでは、いつもよりもシェフが張り切っていたようです。デザートにも、それがよく表れていました。胡桃のケーキ、チーズケーキ、チョコレートムースが、芸術的に皿に盛られています。

左端のチーズケーキがのっかっているのは、なんとラーメン用の蓮華(れんげ)!アメリカ人にかかると、意表を突く利用法が編み出されるのです(おはしをかんざし風に使うというのも、昔から工夫されていましたっけ)。

さて、濃厚なデザートに合うのは、やっぱり濃厚なポートワイン。(ポルトガル産のものでなくとも、アメリカでは、ポートワインと呼ばれます。)
 カベルネ・ソーヴィニョンで造った、甘めのポートワインで、さすがに、チョコレートによく合います。

デザートも終わったところで、シェフのエリオットが呼び出され、スタッフとともに、ねぎらいの拍手喝采を受けます。
 彼は、もうすぐ結婚するんだそうで、そこで、またまた大きな拍手!

このエリオット・シェフ、「披露宴のいい参考になったよ」と、ワイナリーを褒めることも忘れていません。


この日の締めくくりは、おいしい日本酒を試したい!というお向かいさん。ディナーで着ていたドレスとハイヒールを脱ぎ捨て、普段着で我が家に登場です。

そこで、さっそく、冷蔵庫に冷えていた日本酒をお出ししてみます。

「思ったよりも、カッとこないのねぇ」などと仰せですが、だいたい、日本酒と言えば燗酒(かんざけ)だと思っているアメリカ人が多過ぎるんですよ。

カリフォルニアワインと一緒で、いい日本酒は「フルーティー」で、決して温めてはいけない。そう言うと、ワインにうるさいカリフォルニア人は、一応、納得するんですけどね。

追記:まあ、わたしは、たまたまカリフォルニアに住んでいるので、新鮮な(劣化していない)カリフォルニアワインを堪能し、カリフォルニアワインは世界で最高だ、みたいな書き方をしているわけです。
 けれども、正直に申し上げて、どこのワインにもそれぞれにいいところがあって、現地で飲めれば、それは最高だと思うのです。

今年5月、ギリシャに行ったとき、ワインのお話をちょこちょこと書いてみましたが、そこではまったく書かなかったクレタ島にも、いいものを発見しました。
 Kotsifali(コツィファリ)というぶどうの赤ワインなのですが、聞いた事なんかありませんよね。でも、うなるほどおいしかった。混ざりっ気がまったくなく、芳醇な「葡萄酒」といった感じ。鮮明な赤なのに、空気に触れると、途端にまろやかになる。
 ホテルのバイキング・ディナーがおいしくなかったわりに、わたしはこのワインで、すべてを許してしまったほどでした。(コツィファリは、おもにクレタ島のヘラクリオン地域で栽培されるそうです。)

どこに行っても、一生懸命に造ったものはおいしい。そんなことを痛感するこの頃なのでした。

それから、冒頭のクッキーの写真は、有名なクッキー屋さん、Mrs. Fields(ミセス・フィールズ)のカタログです。秋用のカタログがあまりにもおいしそうに見えたので、ちょっと撮らせていただきました。


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