Essay エッセイ
2007年06月21日

おいしい再会

先日、久しぶりに、外で食事をしました。

何度か行っているレストランなのですが、ごく最近、経営者が代わり、スタッフの顔ぶれも代わっていました。

いつもワインを選んでくれるベテランのお姉さんも、この晩は姿を見かけませんでした。

もしかしたら、シェフも交代しているのでしょうか。

前菜のキハダマグロ(Ahi tuna)のたたきには、めずらしい泡状のワサビソースがかかっていたし、ロブスタービスクは、いつもよりもトマト風味が強くなっていました。

この晩のスペシャルは、ふたつ。貝柱(scallop)のソテーか、バッファロー(buffalo)のロースト。

そう、バッファローって、本物のバッファローだそうです。あの広大な草原をのしのしと歩く、巨大な牛。

まさか、野生のバッファローではないのでしょうが、なんだか肉が硬そうなので、わたしは好物の貝柱にしてみました。

バジル風味のリゾットとチェリートマトがアクセントになっています。

さて、デザートは、何でしょう。ここでは、いつも、チョコレートムースケーキと相場が決まっています。あの、中からチョコクリームがとろ〜りと出てくる、焼きたてのチョコケーキ。

でも、この日はちょいと暑い日。担当のウェイトレスの女の子が、冷たいストロベリーショートケーキを勧めるので、こちらに初挑戦。

たしかに、彼女が言うとおり、クッキー風のケーキは甘味をおさえてあるし、イチゴのフィリングもたっぷり。

けれども、このボリュームには、閉口ですよね。


さて、食事が終わる頃、パティオにつながるガラス扉が開け放たれます。

「よかったら、お外へどうぞ」とスタッフも勧めてくれるので、かたとき、外の風景を楽しむことにしました。

もう午後8時をまわっているのに、外はまだまだ明るいです。

隣では、団体さんのために、遅めのディナーの席が設けられています。

ふと気が付くと、すぐ近くに、鹿が何匹もお散歩しています。

どうやら、鹿の散歩道があるのでしょうか、みんな前後に連なって、のんびりと歩いていきます。

見ると、あちらの方にも鹿さんが一匹。

きっと、夕方は、エサを探して歩き回るのでしょうね。


そんな鹿さんご一行に気を取られていると、隣のテーブルから、ふと聞き慣れた声が聞こえてきます。

息子を連れたご夫婦。

こちらに背中を向けていたので、まったく気が付かなかったのですが、なんと、彼らは親しい友人。

もう何年かご無沙汰していましたが、我が家がシリコンバレーに引っ越して来たときは、一番お世話になったご夫婦。

声をかけると、あちらも初めて気が付いた風で、やあ、やあと、話がはずみます。

奥方は、まったく変わることなく、優しい雰囲気もそのまま。

その一方で、ダンナさんの方は、ちょっと太ったみたいです。髪をオールバックにし、アロハシャツをカジュアルに着こなす様は、ジャズピアニストのチック・コリアみたい。

今はリタイアして、悠々自適の生活を送る彼は、昔ほど早口ではなくなっていました。
 シリコンバレーで会社を立ち上げ、成功させた余裕が感じられます。

けれども、なんと言っても、一番大きく変わったのは、息子くん。

彼は間もなく15歳半で、仮の運転免許も手に入れられるそうです。講習を受けたあと、親が一緒にトレーニングすると、16歳以前に、運転できるようになるんですって。

最後に会ったのは、彼がまだ小学生の頃。その「やんちゃ坊主」が、スラッと長身の「青年」に変わっていました。

子供は成長が早いといいますが、まさに、その通りですよね。

ちょっと見ない間に、顔まで変わっている。だいぶお母さんに似てきたみたい。あれじゃ、隣のテーブルにいたって、まったくわからないですね。

それにしても、このご夫婦に今までご無沙汰していたのは、ちょっと悪かったかなと、反省してしまいました。

あの頃は、身内みたいにお世話になっていたのに。
 ふたりともシカゴ近郊の出身で、とっても暖かい人たちなんです。

話は尽きないけれど、お腹を空かせた彼らのメインディッシュが運ばれて来たので、こちらも潮時と席を立ちました。

もちろん、またすぐに会いましょうと約束して。

食べ物についての追記:最初の写真は、いったいなんだろう?と思われた方もいらっしゃるでしょうね。
 パンと一緒に出されているものは、ひとつはガーリックの風味付けされたオリーブオイル、もうひとつはブラックオリーブをペースト状にしたものです。
 見かけはちょっと悪いですが、このオリーブペーストも、なかなかのものなのです。

お次の写真、キハダマグロのたたきには、ごく日本的に、大根とガリ(甘酢しょうが)の薄切りが添えられています。

このレストランでは、ランチに、キハダマグロのあぶりをハンバーガーにして出すのですが、これがまた、ガリが効いていて、さわやかでいいんですよ。
 なかなかのメニューで、アメリカ人にも人気があるんです。


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