Essay エッセイ
2007年02月23日

おみやげを買いました

そうなんです、もうすぐ日本に向かうので、おみやげを買いました。

普段は、あんまり人におみやげを持って行く方でもないし、どこかに行っても、自分におみやげを買うこともありません。

でも、アメリカからのものを楽しみにしている人たちがいるので、これだけは欠かせないのです。

別に特別なものでもないのですが、ブルーベリーチョコレート(chocolate covered blueberries)なんです。
 そう、ブルーベリーのまわりに、チョコレートがコーティングしてあるお菓子。

ブルーベリーの酸味とチョコレートの甘味のバランスが実にうまく取れていて、ひとつ口に入れると、どんどん次が欲しくなってしまうんだとか。
 わたしにしてはちょっと甘いのですが、あまり日本では見かけないお菓子なので、希少価値も手伝って、かなりの人気なのです。


いつもは、Harry & Davidというグルメ食品のお店で買ってみるのですが、今回は、ちょっとシリコンバレーにこだわって、C. J. Olsonという老舗の果物屋さんにしてみました。

このオルソンさん、シリコンバレーはサニーヴェイル(Sunnyvale)にありまして、ちょっと前までは、サニーヴェイルのど真ん中にかなり広い果樹園を持ち、さくらんぼやアプリコットを栽培していました。
 とくに、“ビング・チェリー(Bing cherries)”と呼ばれるさくらんぼは有名で、もともとのお店の名前も、C. J. Olson Cherriesというようです。

今は、時代の流れには逆らえず、果樹園はアパートやショッピングモールとなっていますが、それでも、お店は頑固に同じ場所で営業を続けているのです。
 サニーヴェイル市役所の斜め前、幹線道路エル・カミーノ(El Camino Real)とマチルダ通り(S. Mathilda Ave)が交差するところにあります。

まあ、このお店は、シリコンバレーが「喜びの谷間(the Valley of Heart’s Delight)」と呼ばれていた頃からの象徴のようなものでしょうか。

1899年の営業開始以来、穏やかな地中海性気候と豊かな土壌が育む地元の作物を、ずっと提供し続けてきたのですね。


お店の中では、季節の野菜や果物、自家製ジャムなどを販売しているのですが、いろんな果物をチョコレートでコーティングしたお菓子も名物となっているのです。

今回、わたしが選んでみたのは、ブルーベリーとさくらんぼ。それから、いろんな味の詰め合わせもあります。

もともとチョコレートのコーティング菓子といえば、レーズンなんかが有名ですが、ここには、アプリコットや西洋梨もありますし、アーモンドやピスタチオといったナッツ類もあるのです。

壁一面に色とりどりのチョコレート。選ぶのも、楽しみのうちですね。


さて、おみやげを買うミッションを終え、オルソンさんの果樹園へ。

もう今となっては、ほとんど残っていないのですが、全部手放すのは惜しいと、ちょっとだけ果樹園を保存してあるのです。

今は、一面の菜の花(もしくは、マスタードの花)。さくらんぼの木は葉っぱもなく、寒々としていますが、地べたは、もう春。
 きのうの大雨がすっかり止んで、ちょっと肌を射す風の中でも、元気に花を咲かせています。

そうそう、きのうは大雨でした。でも、夕方には太陽も顔をのぞかせ、街の中では、丸い、丸い、大きな虹が見えたのでした。
 あんなに大きな虹の架け橋を見たのは、ほんとに久しぶり。おまけに、虹が二重にかかっていて、なんとなく得した気分でした。

オルソンさんの菜の花を見た帰り道、遠くのディアブロ山脈には、雪が輝いて見えました。

どうやら、きのうの大雨が、あちらでは雪になったようです。


いつか英語の教科書に、こんな文章があったのを覚えています。

When spring comes, I always feel like jumping for joy.

春が来ると、わたしはいつも嬉しくて飛び上がってみたくなる。

シリコンバレーの今の季節、よくこの文章を思い出すのです。

黄色い菜の花に、遠くの尾根の雪。

チョコレートのおみやげと一緒に、シリコンバレーの風景もお届けすることにいたしましょう。


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