Essay エッセイ
2015年11月08日

お巡りさんって、おしゃべり?

ある朝、サンフランシスコの四つ角で、お巡りさんが立ち話をしていました。

 

 どうやら、ふたりとも、サンフランシスコ市警の「白バイ隊」のようです。

 

 この週は、近くの車道をブロックして、テクノロジー企業のイベントが開かれていたので、混乱する市内の交通整理に駆り出されたようでした。

 

 ふたりのお巡りさん、最初は、歩道で何やら話し合いをしていましたが、

 

そのうちに、ひとりがヘルメットをかぶって、その場を立ち去ろうとします。

 

 そろそろ、次の持ち場に移動する時間なのでしょう。

 

 ヘルメットの次は、皮手袋

 

 オートバイに乗るときには、準備を怠ってはいけません。

 

 それでも、懸命に何かを話しかける相棒さん、

 

メット氏がオートバイにまたがっても、話をやめようとしません。

 

 やにわに、オートバイの後ろにまわって、

 

 何やら荷台をゴソゴソと探しまわっています。

 

「君、ちゃんと書類は持ったかな?」とチェックしてあげているのでしょうか。

 

どうやら、探し物は見つかったようで、

 

 あ~、あった、あった

 

 とばかりに、脇ポケットの書類を再確認しています。

 

それでも、話をやめない相棒さん、

 

 今度は、メット氏の脇にまわって

 

 懸命に話しかけ、

 

 なかなか彼を行かせようとしません。

 

じきに、自分もオートバイにまたがって、

 

 最後まで「くらいつく」構えを見せています。

 

 対するメット氏は、

 

 そんな相棒のおしゃべりに疲れたのか、

 

 それとも急に仕事を思い出して、ボスの顔が頭に浮かんだのか、

 

ようやくオートバイを発進し、相棒にさよならします。

 

 でも、ちょっとズルいのは、

 

 そのときだけ青と赤のライトを点滅させ、まるで事件で出動するみたいに、車の流れに割り込むんです。

 

 まあ、それはお巡りさんの特権でもあり、遅れた時間を取り戻したいのでしょうが、

 

 民間人には真似のできない、ちょっとズルい技ではありませんか。

 

 いずれにしても、メット氏に取り残された相棒さん、うつむき加減で寂しそう。

 


というわけで、この日の午後。

 

 サンフランシスコの街中を、南から北へとズンズン走ることがあったのですが、お巡りさんが車を停車させている場面に二箇所も遭遇したのでした。

 

 両方とも、コンパクトな自家用車を止めて職務質問をしている様子。

 

 一件は、かなり深刻な雰囲気でしたが、もう一件は、お巡りさんが世間話でもしているような、和やかな雰囲気。

 

 もしかすると、互いに顔見知りだったのかもしれませんが、お巡りさんは大型パトカーのドアに寄りかかって、ニコニコと何かを諭しているようでもありました。

 

「まあ、世の中いろいろあるけどさぁ、カリカリしないで頑張ってみてよ」とでも言っていたのでしょうか。

 


 そういえば、以前『もう一度、やり直し!』と題して、お巡りさんの話を書いたことがありました。

 

シリコンバレー・ロスガトス市の公園に向かったときのこと。

 

 連れ合いが右折禁止の場所を右折したら、「正しい方法でやり直して来なさい」と警察官に諭された、といったお話でした。

 

 とってもベテランの警官でしたが、「もう一度やり直し」なんて、アメリカの警察には、なんとなくユーモアが通じそうな人もいるんだなぁ、と感じたのでした。

 

 なんでも、サンノゼ市警などでも、一度退職した警察官を「市民警官」として雇い直すことがあるそうですが、長年の経験や地元住民とのつながりは、ベテランの方だからこそ使える「武器」なのかもしれませんね。

 

 市民警官だと、拳銃を携帯できないそうですが、そんな物騒なものよりも、ときには「人とのつながり」の方が威力のあるものなのかもしれません。

 

というわけで、おしゃべりが止まらないお巡りさん。

 

 どんな場面でも、お巡りさんはコミュニケーションが大事です。

 

 だって、アメリカ人って、どんなときでも、お巡りさんに独創的な言い訳をするもの。

 

 ですから、口で負けないように、アメリカのお巡りさんは、「おしゃべり」でなければ務まらないのかもしれませんね。

 


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