Essay エッセイ
2006年12月17日

ちょっといい話

考えてみると、アメリカ人について書くときって、ちょっとからかってみたり、悪口を言ったりしているような気がします。

まあ、住んでみると、どの国にもいい部分と悪い部分がありますので、自然と愚痴も言いたくなるものなのです。

でも、誰が何と言おうと、アメリカが大好きなところもたくさんあるんです。


先日、こんな話を耳にしました。

サンフランシスコ・ベイエリアに、コンコード(Concord)という街があります。夏に開かれるジャズ・フェスティバルで有名な場所なのですが、この街にある車体工場(body shop)のお話です。

この工場では、毎年クリスマスの時期、近隣に住む恵まれない家族に、車を一台プレゼントするのが習慣になっているのです。車はアメリカでは必需品ではありますが、買えない人もたくさんいるからです。

今年は、特別に、ふたつのシングルマザーの家族が選ばれ、それぞれ車を一台ずついただきました。これで、お母さんたちふたりは、今までよりも仕事に通うのがずっと楽になるし、娘たちの学校の行き返りに、車で送り迎えができるようになります。

こんな贅沢(ぜいたく)は今まで考えられなかったと、お母さんのひとりは涙ぐみます。

プレゼントされた二台は、一台が日本のセダン車、もう一台は韓国のセダン車でしたが、子供たちがトランクを開けてみてびっくり。中には、きれいに包装されたクリスマスプレゼントが、びっしりと詰まっていたのです。

「ママ、わたしのプレゼントもあるよ!」と、お姉ちゃんが真っ先に叫びます。

歓声を上げる子供たちにとっては、車なんかよりも、クリスマスプレゼントの方が嬉しかったのかもしれませんね。

実は、この二台の車、新品ではありません。事故にあった車を、車体工場のみんなが、コツコツと修理したものなのです。
 毎日、勤務時間が終わったあと少しずつ直し、一年かけて、新品みたいにピッカピカに仕上げたのです。もちろん、安全性の面でも、きちんと修理・点検されているのは言うまでもありません。ひとりひとりのノウハウが、ギュッと集結されているのですね。

例年は一台だけのプレゼントなのですが、今年は、みんなのがんばりで、二台も仕上がりました。

そして、車の方は、一台は保険会社、もう一台はAAA(日本のJAFみたいな車のお助けサービス)が寄付したものだそうです。


もともと、コミュニティー全体のことを考える機会の多いアメリカ人は、人のために何かをしてあげることを苦にしていません。

たとえば、こんなことだって助けになることがあるんですよ。

あるとき、いつも行っている郵便局に行くと、窓口のお姉さんの髪が、急にショートヘアーになっています。

「いったいどうしたの?」と聞いてみると、「あ〜、今まで長く伸ばしていたのは、髪の毛を寄付するためだったのよ」と言うのです。

病気のために髪が生えないとか、化学療法のために髪が抜けるとか、そんな人たちのために髪の毛を集める慈善団体がいくつかあって、その団体のことを知ったとき、自分も髪を寄付しようと決心したんだとか。(たとえば、Locks of Loveという団体がありますし、小児ガンの団体で髪の寄付を受け付けているところもあります。)

その話を聞いたとき、窓口のお姉さんには、こう言ってあげました。

「そっちの方が似合うよ」って。

彼女は体が大きくって、ボーイッシュな顔立ちなので、ほんとにショートヘアーの方が似合っていたんですけれどね。


今は、Season of Giving (人に与える季節)。

だから、いいお話がたくさん耳に入ってきます。

でも、一年を通していいことをしている人はたくさんいるわけだから、そんないい話をいつも耳にしていたいものだなと思うのです。


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