Essay エッセイ
2009年08月17日

カナディアンロッキーはレンタカーでどうぞ

8月の初め、カナダの西側にあるカナディアンロッキーに行ってきました。

カナディアンロッキー(Canadian Rockies)は、カナダの西側の2州、ブリティッシュコロンビアとアルバータの間にそびえる壮大な山脈です。アメリカのコロラド州やモンタナ州を南北に突っ切るロッキー山脈(Rocky Mountains)の連なりとなりますね。

カナディアンロッキーに行くとなると、アルバータ州カルガリーが最寄りの空港となるのですが、サンフランシスコからは同じ太平洋側なので、ひとっ飛びといった感じです。国際線ではありますが、飛行時間はわずか2時間。ニューヨークは6時間ほどかかりますので、東海岸に行くよりもずいぶんと近いのです。(近いついでに、国際線のくせに食事も出ないんです。)


個人でカナディアンロッキーを旅する場合は、カルガリー空港でレンタカーを借りるのが一番簡単な方法だと思いますが、空港を出たら、まず「大陸横断ハイウェイ1号線(Trans-Canada Highway 1)」を見つけましょう。

我が家の場合は、かれこれ十数年前にスキー旅行で訪れているのですが、それがかえって仇(あだ)になってしまいました。近年、空港周辺では宅地化が進んでいて、巨大な新興住宅地に入り込み、あやうく迷子になりそうだったのです。
 1号線は確かこっちだったよねと、GPSナビゲーションを疑いながら進んでいたのですが、周辺のあまりの変わりように、道を見失いそうになりました。

(そう、1号線はダウンタウン付近では一般道になるので、それがちょっといやらしいのですね。帰りにわかったのですが、街中を通るルートは道路工事で遅滞していたので、結局、ちょっと遠回りをして新興住宅地を突っ切ったのは良かったのかもしれません。)

けれども、ひとたびハイウェイ1号線に乗って西に向かえば、バンフ(Banff)でもルイーズ湖(Lake Louise)でも目的地には迷わずに到着できます。


カルガリーに降り立つと、そこはもう標高1000メートル級の高地なのですが、それから先は、山脈に向かってだんだんと高くなっていきます。
 1号線に乗ってしばらくすると、目の前には大きな山脈のシルエットが見えてくるのですが、「え~っ、あんなところに入って行くの?」と、ちょっと不安すら覚えるかもしれません。

そして、実際に山脈の中に入って行くと、右にも左にも巨大な山々がそびえているわけですが、どれもこれも山肌が険しくて、ちょっと恐い感じもするのです。

「やっぱり自然は大きいなあ」と、いきなりカナディアンロッキーの洗礼を受けることでしょう。

夏場は道がちょっと混んでいるし、冬場にはできない道路工事区間があるので、バンフには1時間半、ルイーズ湖には2時間半ほどかかるでしょうか。けれども、目の前に出てくる風景は次々と変わっていくので、その行程もなかなか楽しいものなのです。


今回の旅では、ルイーズ湖を宿泊地としたのですが、湖畔にある「シャトー・レイクルイーズ(Chateau Lake Louise)」の他にも、付近にはロッジがいくつかあります。連れ合いが最初に一人でここを訪れたときには、お隣の「ディアー・ロッジ(Deer Lodge)」に泊まったそうです。「あ~、昔とまったく同じだぁ」と、懐かしそうな声を出しておりました。
 その頃は観光客も少なかったのか、夏に訪れたのに予約なしでも泊まれたそうです。きっと今は、とくに週末ともなると、予約がないと難しいことでしょう。
 こちらのロッジも、20世紀初頭には営業を開始していたそうなので、19世紀末にできたシャトー・レイクルイーズに並ぶくらい、歴史のある宿泊場所なのです。

そして、ルイーズ湖の鉄道駅近くには、ちょっとした集落があって、付近にはキャンプ場もあります。

ルイーズ湖周辺にはキャンプ場は2つあって、ひとつはトレーラー(寝泊まりできる大きな車)専用の「レイクルイーズ・トレーラー(Lake Louise Trailer)」、もうひとつはテント専用の「レイクルイーズ・テント(Lake Louise Tent)」と呼ばれているそうです。
両方とも200家族分ほどのスペースがあるそうなので、結構広いキャンプ地なのでしょう。集落とは道を隔てた反対側の、ボウ川(Bow River)と鉄道線路に挟まれた所にあります。こちらの線路はカナダ太平洋鉄道(Canadian Pacific Railway)のもので、今はおもに長~い貨物列車が通ります。

近くの集落のスーパーマーケットで買い物をしていたら、男の子を連れた日本人家族が、水を大量に買い込んでいました。ここで1週間ほどキャンプをして過ごすのでしょう。
 そのあと、わたしたちが泊まっているホテル周辺のハイキングコースでもお見かけしたので、きっと到着したばかりだったのでしょうね。とりあえず、辺りを散策中といった感じでした。(それにしても、あんなにたくさん水を買い込んで、ちゃんと全部使い切るのかなと、人ごとながら心配しておりました。)


自慢にはなりませんが、わたしは生まれて一度もキャンプをしたことがないので、キャンプ場がどういうものなのかは、よくわかりません。それでも、カリフォルニア州のヨセミテ国立公園やカナダに近いワシントン州のオリンピック国立公園などでキャンプをしている人たちを見かけたことがあるので、アメリカやカナダのキャンプ場は、なんとなく快適そうだなとは思っているのです。

一部の日本のキャンプ場のように、温泉の露天風呂といったシャレたものはありませんが、少なくとも水洗トイレやシャワーはあって、何日か過ごすには不便を感じないほどに整備されているように思います。ルイーズ湖のキャンプ場にも、トイレもシャワーもきちんと完備されているそうです。

そして、トレーラーで旅をしていると、そんな必需品は車に装備されているのではないでしょうか。

これまた、わたしには未経験なので何とも言えませんけれども、トレーラーのコマーシャルをテレビで見かけたりすると、その豪勢さにびっくりしてしまうのです。ベッドはあるし、食卓はあるし、冷蔵庫はあるし、小さな家で旅行しているような感じではないでしょうか。
 まあ、トレーラーにもいろいろとタイプはあるのでしょうが、限られたスペースにコンパクトに必需品がまとまっていて、なかなか快適であろうと思うのです。

そして、そんなトレーラーをレンタルできるのですね。

カナディアンロッキーを走るレンタカーの中では、トレーラーはかなりポピュラーなようですが、あちらこちらの名所の駐車場では何台も見かけました。

このようなレンタルトレーラーには、「Rent me!」とか「RV4Rent」などと車体に書かれていたりするのですが、そういった誘い文句を眺めていると、自分も新しい旅のやり方を体験してみたいなぁとも思うのです。

(「Rent me!」とは、「わたしを借りてちょうだい、つまり、この車をレンタルしてちょうだい」という誘い文句ですね。「RV4Rent」は「RV for Rent」ということですが、RVとはRecreational Vehicleの略で、旅行用のトレーラーのことです。つまり、レンタルできるトレーラーがありますよという宣伝文句ですね。アメリカでは、家の代わりにトレーラーに住んでいる人も多いのですが、このような住宅用のタイプは機動力がなくて、トラックに引かれて移動するものも多いですね。「トレーラーパーク」と言うと、トレーラーに住んでいる人たちが長期に借りる区域で、月々場所代を支払うようになっています。)


そんなわけで、夏でもありますし、今回の旅では自由にレンタカーで移動していたわけですが、カナディアンロッキーを運転する上で、ひとつ気を付けるべきことがあるのです。

それは、大きなトレーラーが多いので、ノロノロ運転の車をよく見かけるということです。

たとえば、ルイーズ湖から北に向かうには、アイスフィールズ・パークウェイ(Icefields Parkway、別名93号線)という幹線道路を通ることになるのですが、ここは片道一車線の区間があるので、要注意なのです。
 前方に遅い車を見かけたとしても、黄色い二重線の場所では追い越しはできませんからね。言うまでもなく、二重線のこちら側が破線となって、初めて追い越しが許されるのです。

それから、そういう交通ルールだけではなくって、運転マナーの問題も出てくるんです。もちろん、トレーラーを運転している方々には、マナーの良い方が多いのですが、小型トラックなどを運転なさっている方の中には、こちらが追い越しをしようと加速すると、途端に加速なさる方もいらっしゃるのです。そんなに追い越されるのが嫌なら、ノロノロしなければいいのに・・・。

そういうのを見かけると、「きっと、あの人もカリフォルニアから来たんだろうね」と話していたのですが、カリフォルニア人みたいにせっかちなカナダ人も少しはいるのかもしれませんね。(でも、「せっかち」の大部分はアメリカからの旅行者だと思いますけれど。)

そう、広いカナディアンロッキーですから、急がず、あせらず、のんびりと行けばいいと思うのですよ。

そんなに急がなくても、山や湖は逃げて行きませんからね。


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