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Life in California ライフ in カリフォルニア
2016年03月28日

カニさん、カモ~ン!

「カニさん」というのは、サンフランシスコ・ベイエリアなど、西海岸で愛されているカニのこと。


 

 その名も、ダンジェネス・クラブ(Dungeness crab)です。

 

 昨年末にもご紹介しましたが、本来は、11月末の感謝祭(Thanksgiving)の食卓にのるところが、「カニ漁の禁止令」が出ていて、おあずけになっていたのでした。

 

 それが、この復活祭(Easter、イースター)を迎えるころになって、ようやくゴーサインが出たのです!

 


 いえ、騒ぎの発端は、夏の間に海水の温度が上がりすぎたこと。

 

 近年、もともと寒流のカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州沿いの水温が上がっていて、植物プランクトン(phytoplankton)が繁殖する原因にもなっています。

 

 昨年は、とくにエル・ニーニョ現象で記録的な水温の高さで、異常繁殖したプランクトンが赤潮や緑潮(algal blooms)にもなりました。

 

 もちろん、植物プランクトンすべてが生き物に害を与えるわけではありませんが、ごく一部の植物プランクトンが大量発生すると、貝やカニの体内に毒素が蓄えられます。

 

 この自然界の毒素(domoic acid、ドウモイ酸)を、アシカやラッコのような海洋生物や人間が食べたりすると食中毒を起こす場合があって、それで、カニ漁が解禁となる11月に「禁止令」が出たのです。

 

カニ漁の盛んな港では、ご覧のように、カニを捕獲するかごが積み上げられたまま・・・。

(写真は、サンフランシスコから南下したハーフムーンベイの近く: Photo by Karl Mondon / San Jose Mercury News Archives

 

 その後、水温がだいぶ下がった2月中旬、レクリエーションのカニ釣りは解禁となりましたが、肝心のお店で売るためのカニ漁は禁止されたままでした。

 


 そして、めでたく「来週からカニ漁に出てもいいよ!」と許可が出たのが、3月中旬。

 

 復活祭の前々日の金曜日(3月25日)、カニ漁のかごを海中に沈めることが許され、翌土曜日の零時をまわると、カニ漁に出てもいいことになりました。

 

これまで、お店に並んでいたカニは、カナダやワシントン州からの「輸入品」。ですから、「フレッシュなカニ」が解禁になるのは、喜ばしいことです。(Photo by John Green / San Jose Mercury News, February 12, 2016)

 

 けれども、「はい、そうですか」と、すぐには海に出られない事情もあるのです。

 

 ひとつに、仲買人がカニの値段を設定して、初めて漁師さんは海に出られるのですが、ここまで待った経験がないので、カニの質もわからないし、消費者や市場の動向もまったく読めずに、値段を付けるのに手こずっている。

 

 ですから、復活祭の週末にサンフランシスコとハーフムーンベイから「テスト漁船」が出て行って、彼らがとったカニの身を品定めして値段をつけることになりました。(1ポンド(454グラム)あたり、2ドル90セントに決定。市価は6ドルくらい)

 

 一方、ここまで漁に出られなくて収入がなかったので、今さら、損失を出してまで船を出したくない・・・という、漁師さんの心配もあるのです。

 

 だって、例年2月が「稼ぎ時」で、3月を過ぎるとカニ漁はしない漁師さんも多い。

 

 なぜなら、あとひと月もすると、カニさんの脱皮(molt)が始まって、甲羅もやわらかいし、身も美味しくない。

 

そんなわけで、こちらのジムさんみたいに「もう待ちきれないぜ!」という人と、

 「う~ん、どうしようかなぁ」と迷う人と、

 なかなか複雑な気持ちの漁師さんたちなのでした。

(Photo by John Green / San Jose Mercury News, March 28, 2016)

 


 たぶん、カニさんはいっぱい海にいるのでしょう。

 

 みんな立派に育っているんでしょう。

 

 レクリエーションで釣った方からは、「ぎっしりと身も詰まって、いいカニだよ」と、もれ聞きます。

 

 ところが、いろいろと諸事情があって、「カニ好き」たちの食卓からは遠ざかっている、そんな感じでしょうか。

 

たしかに、サンフランシスコ・ベイエリアでカニを食べたくなるのは、感謝祭やクリスマスの冬の時期。

 カニをフィーチャーしたディナーイベントが開かれるのも、この頃です。

 

 ですから、だんだんと暖かくなってくると、「カニ」って雰囲気じゃないかもしれませんねぇ・・・。

 

 

追記: ちなみに、カニ漁が解禁となったのは、メンドシーノ郡とソノマ郡の郡境(county line)から南の海域です。

レクリエーションのカニ釣りは、もっと南で許されていたのですが、漁師さんたちは豊かなソノマ沖の漁域が開放されるまで待ちたかったのでした。

 そう、ソノマ郡は、隣接するナパ郡と並んで、ワインの名産地でもありますね。
(Photo by John Green / San Jose Mercury News, March 28, 2016)

 

 それから、こちらの毒素(ドウモイ酸)の問題は、海水の「温度」の上昇に起因すると言われますが、これから年々水温が上昇する可能性を考えると、先が怖いのです。

 

 そして、もうひとつの海の問題として、海水の「酸性化(acidification)」というのもあります。

 

 空気中の二酸化炭素が海水に溶け込んで、海水の酸性度が高くなるのですが、そうなると、貝だとか、珊瑚だとか、酸に解けやすいカルシウムの殻で覆われている生き物に影響が出ると懸念されています。

 

 カニさんの甲羅もカルシウムがたくさん含まれますが、酸性化が進むと、脱皮直後の「ソフトシェル・クラブ(soft shell crab)」みたいに、フニャフニャのカニさんがいっぱい現れる、ということでしょうか??

 


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