Essay エッセイ
2013年03月21日

ゴールデンゲート橋にはご注意を!

2月から3月にかけて、サンフランシスコ・ベイエリアは燃え立つんです。

何で燃え立つのかって、たくさんのお花で。

まず、2月に入ると、黄色いマスタード(Mustard)の花が咲くでしょう。

これは、日本の菜の花の親戚ですが、「これぞ野原!」って感じに、一面の黄色になるんです。

野原が黄色くなってくると、住宅地にはピンクや白の梅(Flowering Plum tree)の花が咲き始めます。

中国や日本から入って来た梅の一種だと思いますが、中には、桜や桃も混じっているみたいですね。

「あれは何の花?」と地元の人に尋ねても、たぶん「きれいなプラムの花」という答えしか返ってこないでしょうから、これ以上詮索(せんさく)するのは無駄な気もしています。

梅の花が満開になる頃、辺りの木々には濃いピンクの花(写真)と紫色の花が開花します。
 名前は知らないのですが、どちらも鮮やかな発色で、この二種をわざと一緒に植えてあるところも多いですね。

そのピンクと紫のハーモニーに見とれているうちに、野原には、鮮やかなオレンジ色が広がり始めます。そう、こちらは、カリフォルニア州の花、カリフォルニアポピー(California Poppy)。

雨季で草原が緑になるとき、目を見張る黄色やオレンジが広がっていく様子は、カリフォルニアの原風景だと思うのです。

そして、これだけ一気に花が咲くと、浮かれて穴ぐら(自宅)から出て来るお散歩の人たちもたくさん見かけます。


そんな生命の息吹を感じる季節に、ぜひベイエリアに足を伸ばして、ドライブを楽しんでいただきたいと思うのですが、ここでちょっとご注意を。

なんでも、3月27日から、観光名所のゴールデンゲート橋(the Golden Gate Bridge、ゴールデンゲートブリッジ)では、料金所のやり方がガラッと変わるらしいのです。

ゴールデンゲート橋は、湾を越えてサンフランシスコと北のマリン郡を結ぶ美しい橋ですが、たとえば、ワインの名産地ナパバレー(Napa Valley)やソノマバレー(Sonoma Valley)から市内に戻って来るときには、料金所(Toll Plaza)を通るようになっています(北上するときには、料金所はありません)。

開通して75年間、今までは料金所にスタッフがいて、ドライバーから料金を手渡ししていただく形式でした。

数年前からは、『FasTrak(ファストラック)』というETC(自動料金支払い)システムが一部に導入され、ETCとスタッフの両方で集金してきました。

ところが、3月27日からは、スタッフがひとりもいなくなって、FasTrakかネット登録で料金を徴収することになったのです。

料金所の渋滞があまりにひどいので、すべて自動化して車の流れをスピードアップしようというのが目的です。今となっては、橋を通過する車の7割がFasTrakを利用しているので、そんなに大きなインパクトは無いだろうと判断されたのでしょう。

ということは、FasTrakの機械(写真)を持っているか、オンラインで車のナンバーを登録した人だけが支払えるということ。

でも、「どっちも無いから払わなくてもいい」というわけではありません。

まず、地元の人たちは、カリフォルニア州の陸運局(DMV、Department of Motor Vehicle)に車のナンバーと住所を知られているので、「ちょっと、あんた、払わなかったよ」と、後日請求書(Toll Invoice)が来るそうです。

そう、料金所を通過する時に、前後のナンバープレートの写真を撮られるので、相手にはちゃんと身元が割れているのですね。ここで請求書を3週間無視していると、督促状と一緒にペナルティーを払わされるとか。

さらに、他州からやって来た人たちにしても、各州の陸運局にナンバーと住所を把握されているので、あとでカリフォルニアから「払ってよ」と、請求書が届くそうです。

そして、海外からやって来た人はどうかというと、もしも事前に払っていないと、レンタカー屋さんに請求書が届いて、サービス料(要するにペナルティー!)と一緒に通行料を払わされることになるとか(レンタカー屋さんには、クレジットカード番号を握られていますから、あとで追加徴収されるのでしょう)。

ですから、海外からいらっしゃる方も、橋を通ることがわかっているのだったら、オンライン(もしくは電話か市内のキオスク)で事前に払っておいた方が良いということです。

ちなみに、支払い方法には、橋を通過するごとにクレジットカードに請求が来る口座登録(License Plate Account)と、30日間有効となる一回ごとの支払い(One-Time Payment)の二種類があって、どちらか好きな方を選べるようになっています。数年に一回しか通らないならば、口座登録ではなくて、一回ずつ支払う方法で十分だと思います。


こういうのって、イギリスの首都ロンドンで課せられる「渋滞税(Congestion Charge)」に似ていますよね。

週日の午前7時から午後6時の間、ロンドンの中心地を運転する場合は、一日に10ポンドを払わないといけない規則になっています(写真の「C」は、渋滞税が課せされる地域の目印)。
 が、現地で車を借りないことにはナンバーがわからないので、車を借りたあとに急いで登録・支払いをすることになります。

ロンドンの場合は、一日以内だったら事後に支払っても大丈夫だったと思いますが、ゴールデンゲート橋の場合は、あくまでも事前に(!)払わないといけないそうなので、車を借りたら、橋を渡ってサンフランシスコに戻って来る前に払っておく、という厄介なお話のようです。

レンタカー屋さんに請求書が届いた場合は、ペナルティーをかなり徴収されるそうなので、事前に自分で払うことにしておいて、レンタカー屋さんにはその旨を伝えておく(レンタカー屋が請求書を肩代わりするオプションをopt-outする)方がいいというアドバイスも聞こえています。

ちなみに、FasTrakとオンライン支払いを比べてみると、FasTrakは一回につき1ドル安くなる(もともと6ドルが5ドルになる!)そうなので、ずっと住んでいる人は、こちらの方がお得なようですね(FasTrakについては、追記でもう少し詳しくご説明しています)。


というわけで、旅行でいらっしゃる方にとっては、なんとなく面倒くさいことになってきましたが、「事前にこちらで通行料を支払う」ことがわかっていれば、心配なさることはありません。

それから、大きなレンタカー屋さんになると、事前にすべての車が登録されていて、橋を渡ったり、有料道路を通ったりするごとに課金するシステムが整備されているそうなので、そちらの制度(tolling program)を利用するのが便利でしょう。

今はまだ、ゴールデンゲート橋の料金所だけが「ETCのみ」になるようですが、そのうちにサンフランシスコ・ベイエリアの橋はすべてそうなるはずなので、今から慣れておいても、悪くないのかもしれませんね(写真は、アルカトラズ島とベイブリッジ)。

そろそろ雨季も終わりですので、ドライブには最適の季節となります。

美しい春のベイエリアを、ぜひ心置きなくお楽しみくださいませ!

追記: 『FasTrak』というのは、カリフォルニアで採用されているETCシステムの名前ですが、トランスポンダー(機械)は、ドラッグストアのWalgreens、スーパーマーケットのSafeway、または日用品量販店のCostcoで購入できます。トランスポンダーに付いているID番号と、自分の車のナンバー、カード番号をネット登録すると、あとは自動的に口座にお金が補充されるようなシステムになっています(そう、前払いってことです!)。

本文にあったように、FasTrakを持っていると、ゴールデンゲート橋の料金は1ドル安くなりますが、「カープールレーン(carpool lane、人がたくさん乗った車の優先車線、別称ダイヤモンドレーン)」の有料箇所をひとりで利用しようとすると、FasTrakが必要となります。
 ゴールデンゲート橋の場合は、週日の午前5時から9時、午後4時から6時は、3人以上乗っている車は3ドルのカープール割引となり、通行料3ドルとなります(右から2番目の車線がカープールレーンで、該当しない車は、この時間帯は通ってはいけないことになっています)。

ちなみに、カープールを利用できる時間帯(carpool hours)は、場所(橋や道路)によって微妙に違うし、何人乗っていれば優先になるのかも違ってきますが、基本的にベイエリアでは、平日の午前5時から9時、午後3時から7時に、2人以上乗っている場合となります。が、この時間帯と適用場所も、だんだんと拡大する傾向にあるようです。

それから、厳密に言うと、北カリフォルニアと南カリフォルニア(ロスアンジェルス周辺)のトランスポンダーは違うので、各々の地域で購入されることをお勧めいたします。

まあ、こんなところでも、北と南は張り合っているんですねぇ・・・。


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