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2011年02月17日

ヴァレンタインデーの忠告

今年も、ヴァレンタインデー(Valentine’s Day)が過ぎて行きました。

我が家では、何事もなく静かに過ぎて行きましたが、世の中は、この日に向けて大騒ぎ!

アメリカ人自身だって、ヴァレンタインデーなるものは、かわいらしいカードを売るために、カード会社が仕組んだイベントらしいってことはわかっているのです。が、やっぱり、この日は祝わずにはいられないのです。

だって、ヴァレンタインデーにかこつけて、引っ込み思案の男性だって、愛を告げることができるではありませんか。

そう、この日は、結婚のプロポーズ(marriage proposal)には一番人気。光輝く婚約指輪を差し出し、胸を張って、相手に熱い想いを伝えられるのです。

(以前もお話したことがありますが、アメリカの場合、ヴァレンタインデーに告白するのは、男性から女性のケースが多いのです。だから、甘いチョコレートも赤いバラの花束も、男性から女性への贈り物。)


今年は、ヴァレンタインデーが月曜日だったので、レストラン業の人たちも大喜び。普段は月曜日となると閑古鳥(かんこどり)ですが、この日ばかりは予約でいっぱい。

あちらこちらのレストランは、男女の(または同性の)カップルやグループデートで満席なのでした。

そして、もうすぐご結婚なさるイギリスの王室カップル、ウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんにちなんで、今年は、ブルーサファイアの指輪が大人気でした。

婚約指輪(engagement ring)というと、アメリカではダイアモンドと相場が決まっていますが、今年は、ブルーサファイアだって負けていません。「大英帝国」の影響力は、いまだに健在なのです。

ヴァレンタインデーを賢く利用するのは、レストランや宝石屋さんばかりではありません。

こちらの写真は、ラブラブのいい雰囲気ですが、なんのことはない、暖房器具やエアコンを直す修理会社の宣伝です。

「あなたのヴァレンタインと心地よく過ごし、なおかつ、電気代やガス代を節約しましょう(Get comfortable with your Valentine and lower energy bills)」と、器具の点検を呼びかけているのです。


そんなワクワク、ドキドキのヴァレンタインデーをひかえて、こんなシビアなコラムを読みました。

「近々、ご結婚をひかえているカップルには、ヴァレンタインデーおめでとう。でも、悪いニュースがあるんです。あなた方の関係は、もしかすると呪われているかもしれない(Your relationship may be doomed)」と。

なぜって、もしも金銭的に相性が悪ければ、近い将来、ふたりの仲は破局を迎えるかもしれないから。

だから、「ほんとにふたりは金銭的に相性が良いのか、ちゃんと確かめておきなさい(Be certain you’re a “money match”)」と。

う~ん、なんとも現実的なご指摘ですが、ご存じのように、アメリカの離婚率は、ほぼ5割。けれども、多くの人は、「離婚の原因の第一位は、金銭的な不和」という事実を知らないそうです。

だから、誰も結婚前に金銭的な話をしようとしない。たとえば、子供は何人欲しいとか、相手がどんな宗教観を持っているとか、どんな音楽やスポーツが好きかとか、そんなことは気にするくせに、生活に不可欠な経済的な話はまったくなされていない。

最低でも、月々いくら使うとか、どれくらい貯めるとか、将来的にはどのくらい貯蓄する計画だとか、そんなことくらいは話し合いなさい、というのがコラムの主旨なのでした。

(参照コラム:“In matters of the heart, it’s all about the green” by Michael Sion, originally written for McClatchy-Tribune News Service, published in the San Jose Mercury News on 2/11/’11)


まあ、日本の場合、夫の収入で生活する家庭では、夫の給料は妻が管理し、月々の支出や貯蓄は妻の采配のもと、というケースが多いですよね。

けれども、アメリカでは、夫が家計を管理する家庭も多く(とくに白人家庭の場合)、共働きともなると、各自の銀行口座は独身時代のまま、というケースも少なくないのだと思います。

となると、たとえば、相手が独身時代に借金をこしらえていたとか、結婚後に黙って大金を借りたとか、そんなことも発覚しにくくなるわけですね。

ですから、いつしか恋愛の「魔法」がとけて、大問題が発覚する前に、少なくとも相手と同じ金銭感覚を持っているかどうかを確認しなさいよ、と著者は警告を発しているのです。

そして、不幸にもひとりが浪費家(spender)でひとりが倹約家(saver)だった場合、お互いが納得するように、うまく妥協点を見つけなさい、とも助言しています。

ふたりとも浪費家だった場合は、お金のやりくりを学ばない限り、もっと始末に終えないとも・・・。


うきうきしているカップルに破局の話とは、なんとも厳しいご指摘ですが、今年のヴァレンタインデーには、もっともっとシビアな統計も発表されました。

シリコンバレーのあるサンタクララ郡では、昨年、夫や恋人の暴力(domestic violence、日本では通称 DV)で亡くなった犠牲者が減って、合計5人だったと。
(この死亡者数には、無理心中(murder-suicide)を図った夫や恋人も含まれています。)

しかし、DVの犠牲者は、例年増えたり減ったりするもの。前年よりも減ったとはいえ、決して喜ばしいことではないのです。第一、たったひとりの犠牲者だって多過ぎるでしょう。

この統計を発表した郡の検察官は、こう警鐘を鳴らしています。「DVは、自然に状況がよくなるようなものではありません。黙って耐え、悩み苦しんではいけません(Domestic violence does not get better on its own. Do not suffer and sit in silence)」と。

なんといっても、サンタクララ郡では、昨年一年間だけで4,433件のDVが報告されているそうです。
 そのうちの半分は「事件」扱いにはなっていませんが、そんな統計のひとつずつに、涙を流したり、負傷したり、命を落としたりした女性がいることを忘れてはいけないのです。

DVの常套手段は、相手を孤立させること。表面では相手を気遣うようにふるまい、裏では友達や家族から切り離して、心身をコントロールしようとしているのです。

だから、いつも高そうな贈り物をくれる恋人は、要注意。物で相手の気をひいておいて、「心の囲い込み」をくわだてているやもしれません。


まあ、そうは申しましても、善良な一般市民からしてみると、金銭的な破局も、DVも、極端な例なのかもしれません。だって、世の中の多くのカップルは、けんかを繰り返しながらも長続きしているではありませんか。

アメリカだって、5割近い離婚率ということは、残りの半分は立派に続いているということでしょう。

それに、一度失敗したからって、真のお相手は、いつ目の前に現れるかわかりません。

ひょっとすると、すでに子供の頃に出会っていて、お互いに別々の人生を歩んだあと、ふと再会し、結ばれることもあるでしょう。やっぱり、自分が探し求めていたのは、子供のときの「あの人」だったんだと。

先月、そんなカップルがオバマ大統領によってアメリカ中に紹介されました。

一月の初頭、アリゾナ州で連邦下院議員のガブリエル・ギフォーズさんが狙撃される事件がありましたが、この事件に巻き込まれて命を落とした男性のお話が追悼式で紹介されたのです。

ドーウィン・ストダードさんは、76歳の紳士。一緒に小学校に通っていたメイヴィーさんとは大の仲良しでしたが、学校を出て、仕事に就いて、いつしかふたりの仲は疎遠となり、別々に家庭を持つこととなります。

ドーウィンさんは2人の息子に、メイヴィーさんは3人の娘に恵まれますが、互いの配偶者が亡くなったあと、ふたりは生まれ故郷のトゥーソンに戻って来ます。そこで偶然に再会し、第二の人生をともに送ることになったのです。

いまわしい事件が起きたとき、ドーウィンさんはとっさにメイヴィーさんをかばって、地面に倒れ込みます。ドーウィンさんは頭を撃たれ、メイヴィーさんは足を3発撃たれました。

怪我を負いながらも、メイヴィーさんは必死に夫に話しかけます。が、重苦しい呼吸を続けるドーウィンさんは、10分後に息を引き取るのです。

命という究極の捧げ物をしたドーウィンさんは、妻を深く愛していたのでしょう。それとも、自分が相手の犠牲になるなんて、考えるまでもなく、ごく当たり前のことだったのでしょうか。

ただひとつ明確にわかることは、ドーウィンさんは自分の人生に何の悔いもなかったということでしょう。

世の中には、いろんなカップルがいるけれど、人と人の関係は絶えず変化するもの。ふたりで培った長い年月ののち、ふと振り返って、「うん、何の悔いもない!」といえればいいなと思うのです。


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