Essay エッセイ
2006年09月07日

夜の訪問者

前回のエッセイで、自宅のオフィス棚が完成したことをお伝えいたしました。

その後、時間があれば、少しずつ整理しているのですが、なかなかはかどってはいないのです。自分でもわかっているのですが、いろいろと資料を溜め込み過ぎているんですね。

それでも、なんとか、2階の部屋に積み重ねてあるものを、1階に運んだりはしているのです。だいたい、こんなにたくさん、どこに入れたらいいのだろう、と悩みつつ。


そんなある夜、大事にしている科学雑誌を抱えて、表玄関を出ました。

実は、オフィスとなっている部屋は、母屋から離れた戸建てになっていて、一旦、玄関を出なくてはならないのです。

重いものを抱えているので、玄関のドアを閉めずにオフィスに向かい、数分間お片付けをした後、母屋に戻りました。

そして、さっきまでいた部屋に入ろうとすると、

なんと、部屋の中に、小鳥が飛んでいるではありませんか!

Oh, my goodness!どうしましょう!


なんで自分は英語で叫んでいるんだろうと、脳裏でかすかに思ったものの、まず、部屋のドアをふたつとも閉め、小鳥を部屋に閉じ込めます。

ちょっとだけ安心したところで、そーっとドアを開け、中を覗きます。すると、小鳥がどこにも見当たらないじゃありませんか。

おかしいなぁと、もう一度部屋に入ると、なにやらゴソゴソと押入れの中で音がしています。どうも、この小鳥さん、ゴチャゴチャとした押入れの中で、隠れる魂胆です。

そこで、ちょっと怖いけれど、小鳥を脅し、部屋に連れ出すことにします。小鳥は飛ぶのが速いので、こちらもキャーキャー大騒ぎですが、無事に外に連れ出し、押入れのドアを閉めます。

よし、これでもう隠れる場所はなくなったはず。


そして、外に出て、策を練ります。

う~ん、やっぱり窓を開けるしかないけれど、網戸を外すことなんかできるのかな?だって、はめ込み式になっていて、スライドなんかできないしなぁ(そう、アメリカの網戸は、小さめの窓の場合、はめ込み式になっていて、簡単にスライドできるタイプじゃないのです。アメリカならではの、不便な製品になっているのですね)。

外して戻せなかったら困るしなあ。

でも、いいから外しちゃえ!


さあ、窓も大きく開け放たれたところで、小鳥さんを追い出しにかかります。

どうもこの小鳥さん、物陰がよほどお好きなご様子。本棚の上で、置物の後ろにちんまりと隠れています。
 でも、こっちには秘密兵器。太極拳で愛用している棍棒があります。威嚇(いかく)するには、最適なのです。

すると、棍棒の登場に驚いた小鳥さん、一瞬のうちに、めでたく窓から逃げていきましたとさ。

あっけない幕切れに、こちらは、へなへなと体から力が抜けるような感覚を味わいましたが、とにかく小鳥がいなくなってひと安心。だって、ここは、鳥かごじゃないんだから。


普段は、小鳥が外で鳴いていると、かわいいなんて思うくせに、家の中に入ってくると、恐怖心すら抱くものなのですね。

なぜって、完全に、野生のものですもの。それが証拠に、そのあと部屋に戻ると、獣(けもの)のにおいがしていました。あんなに小さな体なのに。

そういえば、オフィスに向かおうと玄関のドアを開けたとき、やっぱり同じような獣のにおいがしていたな。なにやら小動物が通ったのかと思っていたけれど、なんと、ドアにかけてあるリースに隠れていた小鳥さんのせいだったんですね。

我が家のまわりは、まだまだ自然が残されていて、いろんな動物が生息しているんです。

けれども、小鳥が家の中に入って来たくらいで大騒ぎするなんて、所詮、自分は、きれいに手入れされた箱庭の中に住んでいるんだなって思いましたね。

追記:実は、この小鳥さんを見つけて、Oh, my goodness!と英語で叫んだのには、わけがありました。2年ほど前、お隣さんも同じようなことを経験なさったからなんです。
 玄関のドアにかけておいたリースに、小鳥さんが巣作りしてしまって、知らないでドアを開けたら、つがいの一羽が家の中に入って来て大騒動。
 その武勇伝を話すお隣さんの顔が、ふっと頭に浮かんだもので、Oh, my goodness!になったんですね。人間の脳って、ほんとにおもしろい反応をするものですね。

それから、近いうちに、我が家のまわりの動物特集をしたいと考えております。どうぞお楽しみに。


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