Life in California
ライフ in カリフォルニア/歴史・習慣
Life in California ライフ in カリフォルニア
2010年03月03日

旧正月の餃子

以前、「もうすぐお正月」と題して、もうすぐ「旧正月」が来ますよというお話をいたしました。中国、韓国、ヴェトナム、台湾などでは、今でもお祝いしている大切な行事ですね。

そのとき(2007年)は、2月18日が旧正月の元日(春節)でしたが、今年は、2月14日でした。
 ご説明するまでもなく、旧正月は太陰暦(旧暦)にもとづきますので、太陽暦(新暦)にすると、毎年日付が変わるのですね。

2月14日はヴァレンタインデーであるとともに、今年は日曜日でしたね。ですから、「春節がお休みになる!」と、シリコンバレー界隈の中国系やヴェトナム系の方々は喜んでいらっしゃいました。

シリコンバレーでは、学校によっては旧正月を何日かお休みにするところもあるようですが、さすがに会社はお休みにはなりません。ですから、春節が日曜日に当たると、ゆっくりお祝いができると嬉しいのです。
 いくらアジア系住民が多いといっても、やはりアメリカ人にとっては、旧正月は馴染みのないものですから、こればっかりはしょうがないですね。


そんなわけで、今年は旧暦の大晦日が土曜日となって、みんなでゆっくりとお祝いできたようです。

中国系のわたしの友人も、大晦日のご馳走である「餃子」を堪能したそうです。

そうなんです。中国では、大晦日に餃子を食べる習慣があるそうなのです。

そこで、実際に餃子を作るところを写真に撮ってもらいました。(土曜日は仕事で忙しかった友人に代わって、ご主人が撮ってくれました。そして、実際にご馳走を作ったのは、中国から遊びに来ている、友人のお母様だそうです。)

餃子作りは、まず皮を作るところから始まります。市販のものもあるのでしょうけれど、中国の方は、ご自分で作る方が多いですよね。

餃子の皮は、基本的には小麦粉と水と塩で作ります。分量などは細かく伺ってはいませんが、きっと各家庭のレシピやコツがあるのでしょう。
 塩水を加えて、小麦粉をこねあげたあと、このようなお饅頭の形に分けます。このままだと、なんとなく肉饅のようでもありますね。

このお饅頭の真ん中に穴をあけて、ドーナツ状に延ばしていきます。

ふたつ重なったところは、ドイツのプレッツェルのようでもありますね。(このまま揚げてもおいしいのかも?)

今度は、ドーナツを長く引き延ばし、棒状にいたします。

そして、包丁でトントンと切っていって、コロコロサイズにします。

ご承知の通り、これを麺棒で延ばして、丸くて、薄い皮の形に整えていきます。と、ひとことで言っても、これを同じ大きさに、均等の薄さにするには、きっと年季が必要なのでしょうね。

皮ができあがったところで、今度は中身といきましょう。

こちらの写真は、すでに中身を全部混ぜたところです。豚のひき肉にニラを刻んだものと、エビを細かく刻んだものが入っています。それに、しょうがのみじん切りと、しょうゆ、塩、砂糖少々を加えます。

エビはお好みで入れたり、入れなかったりするそうです。ニラの代わりに、白菜でもおいしいですね。

中身ができたところで、いよいよ皮に包みます。

この包み方にはいろいろありますよね。こちらの写真のように、家庭用にごくシンプルに仕上げたり、以前ご紹介したように、芸術品のように凝って仕上げたりと、ケースバイケースのようです。

それにしても、なんとなく、日本の餃子よりもふっくらとしていて、焼いたらモチモチしそうですね。

ほ~ら、できました!

ひとつひとつ、微妙に大きさが違うところがまたいいですね。まさに、手作りの餃子って感じです。

きっと、中から肉汁がじゅっと出てきて、おいしい餃子なのでしょう。

そして、こちらは、大晦日のご馳走が全部出そろったところです。

エビ、ロブスター、魚といった海産物に加えて、焼豚や酢豚のお肉、そして、色とりどりの野菜の料理と、見ているだけで楽しくなってくるような食卓です。

餃子も4皿登場していますが、どれも水餃子にしてあるようです。たしかに、あれだけ厚みがあると、焼くよりもゆでた方がいいのかもしれませんね。油を使わずに、健康的でもありますし。

それにしても、このように料理の品々を所狭しとテーブルの上に置いてみると、よけいにご馳走に見えませんか! もちろん、お母様の手料理は天下一品なんでしょうけれど。

友人は、この大晦日のご馳走を心から楽しみにしていたようですよ。


さて、旧正月の大晦日は、このようにご馳走を堪能しながら、中国版紅白歌合戦などを観て楽しむのですが、元日の「春節」だけではなくて、15日目も大事な日なんだそうです。

旧暦の1月15日は、「元宵節(げんしょうせつ、中国語ではユエンシャウ・ジエ)」と呼ばれています。これは、春節後初めての満月の日で、今年は2月28日の日曜日となりました。

この日の朝にも、あるものを食べる習慣があるそうです。

それは、おもちです。

元宵節のおもちは、「元宵」と呼ばれます。きっと満月の元宵節だから、満月みたいな元宵を食べることになったのでしょうね。もち米でできているお団子で、中には、甘いものや、肉や野菜の具が入っているそうです。

わたしがシリコンバレーの中国系スーパーマーケットを覗いたときには、ピーナッツ、胡麻、小豆餡(あずきあん)と、3種類のお団子がありました。
 こちらの写真は、小豆餡のものです。胡麻とピーナッツというのが果たしてどんなものかわからなかったので、自分でも食べられるようにと、小豆を選んでみました。(こちらのパッケージにもあるように、「元宵」は「湯円」とも書くようですね。)

食べ方は、だいたいお湯でゆでるそうですが、蒸してもいいし、油で揚げてもいいそうです。けれども、最近は中国でも健康に気を使っている人が多いので、ゆでるのが一般的とも伺いました。

こんな風に、おもちを食べるだけではなくて、元宵節には燈籠(とうろう、ランタン)を飾って、邪気を追い払い、お正月の最終日に華やかさを添えます。日本でも、横浜や神戸や長崎の中華街では、燈籠祭り(ランタンフェスティバル)が開かれるようですね。

そして、元宵節の習慣としては、「迷語」と呼ばれる謎掛けもあるそうです。たとえば、連想ゲームのように、言葉でキーワードを連想させる場合もあるし、図を描いて当てさせる場合もあります。そして、燈籠に隠し絵をして、果たして何の絵なのか当てさせることもあるそうです。

このような謎掛けは、いずれも知的なお遊びなので、まったく好まない方もいらっしゃるそうですが、友人宅では、子供の頃から慣れ親しんだお遊びのようでした。なにせ、彼女の両親は、学校の先生だったそうですから。

それから、彼女は、中国東北部・遼寧省(りょうねいしょう)の省都、瀋陽(しんよう、シェンヤン)の出身なので、他の地域には、それぞれ異なった習慣があるのかもしれません。何といっても、中国は大きな国ですからね。


そんなわけで、今年は、春節と元宵節が日曜日になって、アメリカのアジア系住民は嬉しい思いをしたわけですが、どうやら、日本でも、旧正月はまったく無縁のものではないようですね。

沖縄の宮古・八重山地方では、元宵節の翌日の旧暦1月16日に、「十六日祭(ジュウルクニチー)」を行う習慣があるそうです。

なんでも、これは「グソー(後生、あの世)の正月」だそうですよ。亡くなった先祖の霊を供養する日で、島外からも親戚が帰省し、お墓にお酒やご馳走を持ち寄って、一族で楽しく過ごす一日となっているのです。

幼稚園や小中学校は午後からお休みになるということなので、子供にとっても楽しみな日となっているのでしょう。

ご存じのように、沖縄地方のお墓は一族のお墓(門中墓)なので、敷地も大きいのです。そこに親戚一同が会し、ご馳走に舌鼓を打ちながら、近況報告をしたり、結束を強めたりする日が「十六日祭」なのですね。(そういう点では、春の「清明祭(シーミー)」にも似ています。)

今年は3月1日が十六日祭でしたが、この行事が盛んな宮古島市や石垣市では、それこそ一族50人が集まるお墓もあったそうですよ。(『沖縄タイムス』3月2日付けの記事を参照)

ちょっと蛇足になってしまいましたが、まだまだ健在の旧暦。

こうやって探ってみると、もっといろいろと出てきそうですね!


後日補記: こちらでご紹介した餃子を実際に食べてみましたよ! 友人が昼食用に持って来たものをお裾分けしてもらったのでした。

口に入れてみて、まず驚いたのは、ニラのこうばしい香りです。豚のひき肉に比べて、ニラの分量がかなり多いので、野菜餃子のような感覚なのです。それから、刻んだエビのプリプリ感がなんとも言えません。
 今日の餃子には、キクラゲを細かく刻んだものが入っていたようでした。それがまた、プチプチと楽しい歯ごたえを生んでいます。
 焼くのではなくて、水餃子にしてあるので、皮の小麦粉の香りがプーンと引き立ちます。いかにも手作りといった、なつかしい香りなのです。(電子レンジで30秒温めたら、できたてのようになりました。)
 そんなわけで、酢醤油とか何もつけなくても、十分に味わい深い餃子なのでした。

餃子を試食したところで、元宵(湯円)団子も試してみました。お湯でゆでると、まわりのもち米が溶け始めて、やわらかくペトペトした感じになります。だから、口当たりがスムーズになって、ついついパクッといってしまいますね。大きさもちょうど一口サイズですし。
 外側のお団子の部分は、ちょっと甘みがあって、ちょうど日本の笹餅のような味がします。
 中身の小豆餡は、甘過ぎることもなくちょうど良い甘さです。きっと近頃は中国でも、甘過ぎるお菓子は敬遠されているのかもしれませんね。小豆餡の代わりに、胡麻風味の餡でもおいしいかなとも思いました。

もし機会がありましたら、旧正月の味わいを試してみてくださいませ。


Life in California Search

© 2005-2024 Jun Natsuki . All Rights Reserved.