Essay エッセイ
2014年05月06日

犯人は、だぁれ?

いえ、たいしたお話じゃないんですけれど、ずっと気になっていたことがあるんです。

去年の8月頃でしたか、ある晩、寝ようとしていたら、耳元でブ~ンと蚊の羽音がしたんです。

日本だったら、そんなことは当たり前のことかもしれませんが、サンノゼの我が家では、まったく初めての経験だったので、ちょっとうろたえたのでした。

「うろたえた」というのは、ひとつにサンノゼの夏は乾燥しているので、蚊をほとんど見かけないことがあります。
 ですから、ありがたいことに、夏の夜に庭で食事をしていても、蚊に悩まされることはほとんどありません。

そして、まれに蚊が飛んでいたにしても、二階のバスルームの窓には、はめ込みの網戸がありますから、窓を開けていても、蚊が入って来るはずはないんです。

そんなわけで、なんかヘンだなぁと思っていたんですが、ある日、網戸の角に小さな「穴」を発見しました。

でも、その穴のあき方が、なんとなく不自然なんですよ。網戸の下の方の隅っこで、しかも、何かで「つっついたような」感じ。

けれども、普段はバスルームのブラインドは下げっぱなしで、あまり窓を開けたことがないし、何かで網戸をつっついた覚えもありません。

そこで思い当たったんですが、そういえば、バスルームの外でガリガリと変な音がしていたから、もしかすると、木の枝が風で網戸に当たって、穴があいたのかな? と。


それで、今年の春になってブラインドを上げ、窓を開けようとしたら、なんと、網戸の穴が成長していて、もはや「穴」ではなくなっていたのでした。

きれいに下の方だけ「一文字」に網がなくなっているんです!

これは、どう見ても、誰かが(たぶん小鳥が)盗んだとしか考えられないのでした。

そうか、あのガリガリとした音は、木の枝じゃなくって、小鳥が網戸をつっついて、網をむしり取っていたんだ!

そして、とうとう Gotcha(捕まえた)!

つい先日、動かぬ証拠をつかんだのでした。

小鳥の夫婦がやって来て、奥さんの方が背伸びをして網を盗んでいる、その瞬間を!

ダンナさんは、どうも気が進まないのか「見張り」の役目で、奥さんの方が、せっせとくちばしで網を切り取っているのでした。

一瞬、彼女がこっちを向くと、くちばしには網の切れ端をたくさん詰め込んでいるではありませんか!

う~ん、結構、欲張り!

網は強度が強いので、巣作りには最適なのかもしれませんが、やっぱり小鳥の世界も「母は強し!」なんでしょうか?


毎年、春になると、いろんな小鳥が巣作りをしますが、巣の材料探しって、大切なお仕事なんですよね。

我が家でも、ときどき玄関でガリガリ音がしているなと思ったら、玄関にかけたリースの小枝を小鳥がせっせと盗んでいるんです。

小枝を盗むだけじゃなくて、リース自体を根城にすることもあるんですよね。

いつか何週間か留守にしている間に、玄関のリースに小鳥の巣ができてしまって、大変だったことがありました。

家に帰って来ると、リースの巣に卵が数個産まれていたので、そのままにしておいたのですが、そのあと卵からひな鳥がかえり、玄関で本格的に子育てが始まったので、ドアを開け閉めできない不便な日々が続きました(出入りは、すべてガレージから・・・)。

無事に巣立ったあとも、ドアにくっついた幼鳥のウンチ(!)を掃除するのが大変でしたが、そんなこともあって、昨年また玄関のリースに巣が現れたときには、かわいそうですが、リースごとドアからはずしてしまいました。

こちらが、そのときの巣ですが、なんともフワフワとして心地よさそうでしょう?

けれども、突然に巣を奪われた様子を近くで見ていた小鳥の夫婦が、悲しそうな声を出すんですよ。

いつもの鳴き声とは違って、クークーという、なんとも物悲しい声を・・・。


そんなわけで、近頃は巣作りの季節になると、リースをはずすようになったのですが、その一方で、バスルームの網戸を盗まれるというのも、ちょっと考えモノでしょうか。

たぶん、「窃盗」は昨年の春には始まっていたんでしょうが、「これは、いいわ!」って味をしめた小鳥が、今年も舞い戻ってきたのかもしれません。

はたまた、いろんな小鳥に「クチコミ」が広がって、べつの夫婦がやって来たのかもしれません。

いずれにしても、おかげで網戸は、こんなにひどくなってしまったのでした。

これじゃ、修理をしないと、ボンボン虫が入って来そうですが、修理をしたって、またすぐに小鳥に盗まれるかもしれないし・・・。

けれども、かわいらしい幼鳥を見たら、あんまり厳しいことも言えなくなってしまうのです。

なんだかモゾモゾしていますが、こちらは、巣立ったばかりの小鳥さんが全身の毛づくろいをしているところ。

右の翼をツンツン、左をツンツン、胸をツンツンと毛づくろいに余念がありません。

天気はいいし、きっと最高の気分なんでしょう。

でも、そのうちに、フイっとひっくり返るくらいに、のけぞるんです。

いったい何をしているのかなと見ていると、どうやら、窓の上の方でブ~ンと虫が飛んでいるのを見つめていたのか、はたまた、上空をブ~ンとジェット機が飛んでいるのを眺めていたのか。

とにかくブ~ンという音に敏感に反応していたのですが、それが、獲物を狙う鋭さもなく、ただただ興味津々の様子で、かわいらしいんです。

この世に生まれたばかりで何も知らないから、何にでも興味を抱く。

そんな様子を見ていたら、網戸を修理してまた盗まれたにしても、しょうがないかなぁとも思うんですが。

追記: 小鳥さんって、もともと、とっても独創性のある生き物なんですよね。
 たとえばハミングバード(和名ハチドリ)は、洗濯ロープにくっついている洗濯バサミの上にも巣作りをするそうですよ。
 シリコンバレーは、比較的ハミングバードが多い地域なんですが、いつか地元の新聞に、洗濯バサミの上に乗っかった巣が紹介されていました。すばしっこいハミングバードは、それなりに巣も小さいのですが、それにしたって、洗濯バサミに乗っかるとは!


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