Life in California
ライフ in カリフォルニア/歴史・習慣
Life in California ライフ in カリフォルニア
2006年07月06日

独立記念日

ご存じ、7月4日は、アメリカの独立記念日。独立の日を指す Independence Day とか、7月4日を意味する the Fourth of July とか呼ばれます。

230年前の1776年7月4日、イギリスから独立宣言したことを記念する日ですね。

アメリカにとって、この日は、最も大事な祝日。そして、アメリカ人が、アメリカの国民としての誇りを一番に感じる一日。

こんな言葉が、人々の心に新たに刻み込まれるのです。民主主義(democracy)、解放(liberty)、自由(freedom)、平等(equality)、そして愛国心(patriotism)。


そして、この日は、とっても楽しい一日。日頃の屈託を忘れて、思う存分楽しむ一日なのです。

おまけに今年は、7月4日は火曜日。多くの人は月曜日もお休みで、4連休。あまりお目にかかれない4連休や、有給で伸ばしたバケーションに、みんな心うきうき。

アメリカ各地では、独立を祝うパレードやフェスティバルが開かれ、家族や友達が集っては、ピクニックやバーベキューを堪能します。


そして、なんと言っても、独立記念日は花火。この晩は、アメリカ全土で大型花火が上がります。

花火大会は、市が主催する場合が多いのですが、北カリフォルニアで有名なものは、サンフランシスコ市とサンノゼ市でしょうか。

サンフランシスコでは、観光地で有名な「ピア39」の埠頭近くで行われます。海沿いなので、風があっと言う間に煙を運んでいってくれますが、その代わり、かなり寒いんです。

一方、内陸のサンノゼでは、ダウンタウンの大きな公園で開かれます。
 この公園は、近くのサンノゼ空港に向かう空路の真下にあるので、飛行機の離着陸の間隙をぬって、花火が上げられます。花火師たちの腕の見せ所なのですね。

サンフランシスコ・ベイエリアでは、ほとんどの都市で自宅での花火は違法なので、花火を楽しむためには、こういった花火大会に行かなくてはいけないのですね。
(シリコンバレーのあるサンタクララ郡では、唯一、南端のギルロイ市だけ、花火が許可されています。他の都市では、花火を街に持ち込むことすら違法なのです。)


7月4日の晩、わたしもシリコンバレーのマウンテンビュー市にお出かけしました。ここの野外劇場(Shoreline Amphitheatre)で、独立記念日の恒例となっている、サンフランシスコ・シンフォニーの演奏会と花火大会を楽しみました。

夏の間、シンフォニーはシーズン外れとなるのですが、この時期、アメリカ人受けするポピュラーミュージックや、子供向けの音楽を披露して、シンフォニーにできるだけ多くの観客を呼ぼうというイベントが開かれます。この晩のイベントも、そういったひとつなのですね。

サンフランシスコ・シンフォニーは、世界的にも有名なシンフォニーなのです。3代前は、日本が世界に誇る指揮者、小澤征爾氏が音楽監督でした。
 それでも、毎年ぎりぎりの経営を迫れていて、よくうちにも「寄付をしてちょうだい」と電話がかかってくるくらいです。
(我が家は、何年か前、シーズンチケットを持っていたのですが、なんとなく今の音楽監督の趣味が合わなくて、縁遠くなってしまいました。)


そんな状態なので、シンフォニーにとっても、この晩は大事な晴れ舞台。マーラーみたいな、しかめっ面の音楽ではなく、映画音楽とブロードウェイ・ミュージカルでリラックスです。
 団員は劇場の黒装束ではなく、みんな白で晴れやかに衣装を統一します。

シンフォニーに加え、ブロードウェイのスター歌手たちも登場し、「ウェストサイドストーリー」や「エヴィータ」、「シカゴ」といった有名なミュージカルから、お馴染みの歌を熱唱します。

そして、映画の主題曲といえばジョン・ウィリアムズ。「レイダーズ・失われたアーク」、「スターウォーズ」、「ET」、そして「ハリー・ポッター」と、誰もが知っているヒット曲を次々と演奏してくれました。

舞台の上には、大きなスクリーンも置かれ、映画のクライマックスシーンも映し出されます。指揮者は、目の前のモニターを見ながらタクトを振るという、映画音楽の録音シーンのような臨場感もあります。

ETとエリオットたちが自転車で空に舞い上がるシーンでは、わたしは思わず涙をこぼしそうになりました。
 もちろん、ETは大好きな映画です。でも、それだけではなく、大好きなシーンを、サンフランシスコ・シンフォニーの生演奏で楽しめるなんて、最高の贅沢ではありませんか。


贅沢ついでに、その晩のしめくくりは、シンフォニーが奏でる音楽で花火!

ハイピッチの音楽に、団員もかなり疲れていたとは思いますが、がんばって3曲も披露してくれました。2曲目の「America the Beautiful」は、アメリカを称える歌なので、独立記念日の花火では定番ですね。

嬉しいことに、座っていた右端の席からは、花火がよく見えます。イベントの前日にチケットを購入したわりには、いい席が残っていたものです。

もうちょっとたくさんやってほしいなとは思いましたが、やっぱり、生の音楽に合わせて打ち上げられる花火は、格別な味があるのです。


この日、野外劇場は夕方からフェスティバル状態。劇場のまわりには、ホットドッグやピザの屋台が並びます。おまけに、地元のロックバンドのコンサートやら、ゲームやフェイスペイントの子供向けイベントやらで、演奏会の前から、相当に盛り上がっています。

すり鉢状の野外劇場には、芝生席もあります。ちょうど球場の外野席みたいなもので、舞台にはちょっと遠いけれど、自分たちで椅子を持ち込んだり、食べ物を持ち込んだりと、ちょっとしたピクニック気分。
 毎年この演奏会でのピクニックを、家族の年中行事にしているご近所さんもいるくらいです。
 でも、北カリフォルニアの夜は寒くなるので、夏でも、防寒ジャケットと毛布は必需品ですね。

ストリート・フェスティバルにシンフォニーの野外演奏会。そして、花火。こんな贅沢なイベントチケットが、ひとり30ドル未満とは。

なんともアメリカらしいイベントなのでした。

こぼれ話:毎年大人気のサンフランシスコ市の花火大会。今は、観光客で賑わう「ピア39」近くの埠頭で行われますが、昔は、別の場所で開かれていたのですね。
 以前は、市の西側のゴールデンゲート橋近く、クリッシー・フィールドという海岸で行われていました。この辺りは「プレシディオ」と呼ばれ、サンフランシスコの街ができた頃から、軍隊の駐屯地だったところです。要塞地帯なので、独立記念日の花火のときだけ、市民に開放されていたのですね(今は、陸軍基地の閉鎖にともない、軍隊から民間に返還されています)。

ずっと昔、アメリカで迎えた初めての独立記念日、クリッシー・フィールドに花火を見に出かけました。一緒に行った友達の中で、アメリカ人は昼間っから何時間も海辺で待つのを苦にもしません。けれども、日本人にとっては、そんなことはつまらない。
 そこで、暇つぶしに、バスでチャイナタウンに夕ご飯を食べに行きました。「アメリカ人ってホントに暇人だよねぇ」などと話しながら。すると、ご飯の途中で、パ~ン、パ~ンと花火の打ち上げが聞こえるではありませんか。

結局、もう一度バスで海辺に戻った頃には、花火はもうおしまい。みんなぐったり疲れ果てて、またまたバスに乗って、おうちに帰ったのでした。今思っても、帰り道、眠りこけて停留所を乗り過ごさなかったのが不思議なくらいです。

サンフランシスコで初めての花火は、ものの見事に見逃したとさ、という間抜けなお話でした。


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