Essay エッセイ
2020年06月08日

自宅待機中にお引っ越し

<エッセイ  その182>



そうなんです、23年も住んだ我が家から引っ越しました。



25年前にサンノゼ市に引っ越して来て、その2年後には新築の我が家に入居。



これまで何回か手を入れたり、あちこち修繕をしたりと、いろいろと手をかけてきた愛着のある我が家です。が、そろそろこの場所にもサヨナラしようということになりました。



家を売りに出そうと決心して、わずか3ヶ月後。5月下旬には、なんとかサンフランシスコに引っ越して来ることができました。そう、ベイエリアにはまだ新型コロナウイルスの自宅待機命令(stay-at-home order)が発動されたまま。その最中の「離れワザ」です!




どなたも同じことと思いますが、お引っ越しで何が一番大変だったかというと、いらなくなったモノの処理。



わたしは20年ほどせっせと書き物をしていたので、これまでためこんだ資料が家の中にあふれています。自分の資料に加えて、金融機関の書類などもすべて保管してあったので、「紙モノ」は半端な量ではありません。



この「紙の山」に加えて、使わなくなった服や家電製品と、これまできちんと整理しなかったツケが一気に回ってきた感じです。「忙しい」というのを言い訳に、ためこむだけためこんで、引き出しや戸棚を開くと、「え、ここにもモノが!」といった具合に、ごちゃごちゃと(忘れ去られたモノが)詰め込まれているのです・・・。




そんなわけで、最終的には「ゴミ(junk、trash)」として処理すればいいわけですが、やはりもったいない。中にはほとんど使ったことのないモノもありますので、使えそうなものは誰かにあげたい気分になるのです。



アメリカでは、不要になった服や家具、さまざまな小物と、ありとあらゆるものを寄付する習慣があります。



いつもだったら、慈善団体に連絡をして、たとえばソファーのような大きな家具だって、家に取りに来てもらえます。



以前も、居間の大きなソファーを慈善団体 The Salvation Army(救世軍)に取りに来てもらったお話をいたしました。ソファーなどの大型家具は、受けて付けてくれない団体も多いですが、救世軍ではシミや破損がなければ受け付けてもらえます。



ところが、ここで問題が。新型コロナウイルスのせいで、救世軍は寄付の回収をストップしているんです!



そこで、連れ合いがほうぼうを探した結果、地元の慈善団体のメンバーで、欲しいものを探している家庭と寄付者の間を取りもってくれる方を発見。彼女にテレビやオーディオ製品の家電や、机やベッドの家具類が欲しいかとお伺いをたてると、ぜひ欲しいということになりました。



けれども、このウイルスのご時世、重たいものを運ぶために家の中に人を入れたくはありません。そこで、数回に分けて、自分たちで物品を家の前まで運んで、彼女とダンナさんにトラックで取りに来てもらいました(日本から持ってきたダイニングテーブルは、ずっしりと重かったです!)。



彼らだって、我が家の新品に近い物品は欲しいので、文句も言わずに何回でも取りに来てくれました。逆に、「引っ越す人は良い寄付者になる」と味をしめたみたい。



いつの世も大型テレビは大人気ですが、こんなご時世なので、空気清浄機(air purifier)も人気でしたよ。大型テレビは3台、空気清浄機も3台寄付して喜んでもらいましたが、意外なことに、ゴルフクラブなども人気だとか。プラスティック製のクリスマスツリーやデコレーションも喜んで引き取ってもらいました。




残念なことに、彼らは衣服やキッチン用品は受け付けていないので、こういったコマコマとしたモノは、数回に分けて慈善団体 Goodwill(グッドウィル)に車で持って行きました。



Goodwillは、あちらこちらにショップを構えていて、寄付された物を安価に消費者に売り出して、利益は慈善事業に使っています(現在ショップは閉鎖中)。



そういったショップの裏側にはドライブスルーの寄付ステーションを設けていて、「衣服(clothes)」「家庭用品(household goods)」「大型物品(big items)」と分けられたコンテナーに寄付したい物をドロップオフできるようになっています。



ところが、この新型コロナウイルスの自宅待機のせいで、家の中の整理を始めた人がたくさん。どの慈善団体も寄付された物品であふれ返っていて、「もう家具は受け付けません」とか「今日は、整理のため寄付ステーションはお休みです」という場所が出てきました。



我が家もギリギリで希望通りに寄付できた状態でしたが、タイミングが悪ければ、近隣の街に遠出をしなければ寄付できなかったかもしれません。



そんな状態ですので、今は「廃品回収(Junk removal)」のコマーシャルがテレビで幅をきかせています。寄付するのもはばかられるような物品は、廃品回収の業者さんにお金を払って取りに来てもらうしかありませんよね。



我が家も、ゴミやリサイクルの容器は毎回満タンでしたし、便利屋さん(handyman)に有料で持って行ってもらった物もたくさんあります(写真は、サンノゼ市が契約しているリサイクル会社のトラック。ゴミ出しは週に一回なので、とても間に合いません!)。



こういった「ゴミ運び出し(trash hauling)」の業界は、ウイルス蔓延には関係なく、今は商売繁盛なのかもしれません(いえ、かえってこの業界には「コロナ景気」が訪れているのかもしれません・・・)。



というわけで、サンノゼからサンフランシスコに引っ越して2週間。



もう我が家の買い手も見つかって、ほっとしたところです。



家を売るお話は、また次回ということにいたしましょうか。




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