Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2017年12月30日

テクノロジー製品(?): テスラ「モデル S」

Vol. 210



この年末号では、一年を通して、テクノロジー分野で印象に残った話題をふたつお届けいたしましょう。



<顔で良かった!>

iphone-x今年のアップルの新製品といえば、11月にリリースされたばかりの「iPhone X」でしょうか。さっそく連れ合いが購入したのを見て、わたしも久しぶりに古い iPhoneを買い替えました。

理由はごく単純で、「指紋認証」なんて古くさいことは言わずに、「Face ID(顔認証)」が採用されたところ。何を隠そう、わたしは指紋が薄いために入国管理の自動化ゲートでも困り果てている人間で、手袋をしないでも犯罪現場の鑑識係をあざむくことができるのではないか? と、いぶかしく思うくらい。

ですから、自分の顔ですんなりと認識してもらえるなんて、この上ない喜びです。眼鏡をかけていようと、メイクアップをしていようと、うっかりだまされないところもいいですね!

animoji_unicorn ついでに、表情を読み取って、絵文字を動かしてくれる「Animoji(アニ文字)」は、なかなかエンターテイメント性の高い機能ではあります。クマさんのキャラクターが無いのが寂しいし、その実用性と言えば疑わしい限りですが、一度は試してキャッキャと笑ってみたい新機能なのです。



<テスラ車は「iPhone」?!>

そして、我が家の今年一番のテクノロジー製品といえば、テスラ「モデルS」でしょうか。言うまでもなく、シリコンバレーのテスラ社(Tesla, Inc.)が生産する電気自動車(EV: electric vehicle)です。

p1220318roadster-s同社は、2008年のスポーツ車「ロードスター」(写真)を皮切りに、2012年リリースの4ドアセダン「モデルS」、2015年リリースのSUV「モデルX」と、着実に自動車メーカとしての地位を築きつつあります。



img_4928s_model3現在、主力の「モデルS」「モデルX」ともにデュアルモータ全輪駆動を標準装備。スリムな外観とは裏腹に、悪路にも対応します。先月「ロードスター」の二代目も発表されたばかりですし、話題の廉価モデル「モデル3」(写真中央)も、地元ではすでに納車が始まっていて、ますます売上台数が伸びることが予想されます。



そんなテスラの電気自動車ですが、連れ合いは以前から「次に自分の車を買い替えるなら、テスラ」と決めていたようで、その理由は、「僕にはテスラ車が iPhone にしか見えないから」。つまり、テスラの車は、もはや車ではなく、テクノロジー製品である、だから、長いドライブ人生で初めて日本車以外の車を買う自分にも安全性が確認できたら、テクノロジーに遅れを取りたくない、という理由です。



img_4658s_tesla-shop確かに、テスラ車は最初の購入手続きから他の自動車メーカとは違っていて、「紙」なんて古くさいものは極力使わない主義です。サンノゼのショールームから10分ほど走って試運転が終わると、さっそくコンピュータ画面でウェブサイトにアクセスして色や内装、オプションといった「自分のテスラ」を選んでいって、オーダーは即完了。価格が決まっているので値段交渉もなく、あれよと言う間にセールス担当者が「おめでとう!」と握手を求めきます。値段交渉という(メンドくさい)儀式を重んじる巷のディーラとは、「文化」が違います。



tesla_supercharger_stationしかも、先にテスラ車を購入した誰かに推薦してもらえると、(電気をチャージする)スーパーチャージャーステーションをタダで利用できるようになるとか! ひとり5人まで推薦できるようになっていて、うまくテスラ車が広まる仕組みができています。



img_4918s_tesla-appふた月後、車をピックアップする際に驚いたのは、テスラアプリ。フリーモント工場近くのショップに入ると、連れ合いは目ざとく「アプリをダウンロードしてください」という張り紙を見つけます。さっそく待ち時間にアプリを入れてみると、なんと、自分の車が「何マイルの速度で走行中」とか「今は停車しました」とスマホで見えるようになっているのです! 車に関する情報はすべてパソコンやスマホの自分のアカウントで管理する仕組みになっているわけですが、スマホから車の動きがわかるなんて、まるで、おもちゃのリモコンカーのようではありませんか。



img_5103s_summonアプリを使うと、他にもいろんな芸当ができますが、たとえば、狭いスペースにも車を停められる「サモン(Summon、呼び出し)」があります。自宅のガレージに乗り降りするスペースが無い場合など、この機能を使うと、画面を触っている間、車が自分で勝手に動いて、ガレージに入って行って停まってくれます。こちらも、リモコンカーみたいな感覚でしょうか。



four-link-sys_earth-1狭いスペースと言えば、先日、日本のスタートアップ企業 Four Link Systemsが発表した「折りたたみ自動車 Earth-1」がありますが、それほど画期的なコンセプトではないものの、このサモン機能を利用すると、今までは駐車スペースとは思わなかった場所にも停められるようになるでしょう(Photo of “Earth-1 folding car” from Nikkei Asia Review, December 27, 2017)



img_4922s機能満載のテスラですので、実際に運転してみると慣れるべき点が多々ありますが、何が一番びっくりかって、その加速スピードでしょうか。さすがに、電気モータで走る車なので、アクセルを踏めばその分グイ〜ンと加速できます。連れ合いの「100D」で0-60マイル(96km/h)加速が3秒ちょっと!!

一方、アクセルから足を離せば、自動的にブレーキがかかって減速するところも、惰性で走るエンジン車とはまったく違う感覚です。



そして、テスラご自慢の「オートパイロット」機能。こちらは、車が自分で道路状況を判断して「オートパイロット」モードで走行するものですが、昨年9月号でご紹介したように、モデルSがフロリダで起こした悲惨な事故も記憶に新しいところです。



img_5152_autopilot面白いもので、納車時の新車は「赤ん坊」と解釈されるので、ある程度実地を経験して道路の感覚に慣れたら、オートパイロット機能が使えるようになります。が、わたしが助手席に試乗したら、いきなり自宅付近のクネクネ道で右の車線にはみ出しそうになって、驚いた右横の車が急に減速したので、その時の評価は「まったく信用できない!」でした。



img_5151_max-speedこの時は、車線の白い点線が塗り換えられていて、かえって古い方が光っていたので、見間違えたのかもしれません。さすがに、ひとたびフリーウェイに出てみると、これほど便利なものは無い!とも感じます。ちゃんと車線や前後左右の車を認識して、安全な間隔を保ってくれるし、車線変更も十分に間隔を空けて「お行儀よく」やってくれます。道路図の津々浦々を頭に叩き込んでいるので、どこを走っても制限速度を熟知し、「10マイルオーバー」などと速度設定すれば、自分の好みのスピードで走行してくれます。

連れ合いは「僕が運転するよりも、よっぽど信頼できる」と豪語しますが、もしかすると、注意散漫なドライバーよりも優秀かもしれません。



そして、もうひとつテスラ車の得意とするところは、ユーザから集めた膨大なデータを分析して、絶えず「安全運転の向上」に反映しているところでしょうか。たとえば、上に出てきたように、いきなり車線をはみ出しそうになって、人間がハンドルを握ったとすると、そういったデータはすぐにテスラのスーパーコンピュータに送られ、「注意箇所」としてインプットされるでしょう。

img_5177_skyline_blvdクリスマスの日、「さすがに道路は混んでいないだろう」とドライブに出かけて、パロアルトの山中のクネクネ道を運転して戻って来ると、自宅前に到達するやいなや「サスペンションの硬さを調節しました」と、画面にメッセージが出てきました。たぶん、山道のドライブに向けて微調整してくれていたのかもしれませんが、まるで、わたしが「この車って山道のゴツゴツが伝わってきて、乗り心地が悪いよねぇ」とグチっていたのを聞いていたかのようで、ちょっと怖かったです。



機能の「微調整」に関しては、かなり頻繁に自動的に(Wi-FiやLTEの無線通信で)行われるようで、最初の20日間で、3回もソフトウェアアップデートがありました。アップデートがあると、「午前2時にやってもいいですか?」と中央画面にお伺いを表示し、アップデートが終わると、「こんな機能が加わりました」と説明してくれます。最新のソフトウェア(8.1)では、時速90マイルまでの自動ハンドル操作、自動車線変更、上でご紹介した「サモン(ベータ版)」、車線はみ出し警告、自動緊急ブレーキなどをサポートしています。



まさに、いまや車は iPhone のように頻繁にアップデートが必要な時代となったわけですが、電気自動車の先端を行くテスラ社や、自動運転車(autonomous car)の試験走行では他社を先んじるアルファベット社(グーグルの親会社)などが、運転に関するビッグデータ解析のリーダーとなっているのでしょう。



img_5084_ev-parkingそんなわけで、今までちょこちょこと書いてきたテスラの電気自動車に、思わぬ展開で乗ることになったのですが、改めて世の中を見回すと、化石燃料(carbon fuel)から脱出しようよ! という模索はあちらこちらで見られます。たとえば、こちらのサンノゼ市南端のショッピングモールでは、お店に近い便利な駐車スペースは、「電気自動車(EV)か乗り合い(Van Pool)かハイブリッド(Clean Air)」のために空けられています。



img_4055s_ev-outletそして、我が家のガレージには EV専用の高電圧コンセントを設置したのですが、ここに流れる電気は、電力配給会社から送られてくるもの。いくらかは再生可能エネルギー(renewable energy)が入っているとはいえ、化石燃料を燃やして得た電力でいいのか? と、自責の念に駆られます。



img_4916s_tesla-solarう〜ん、とすると、テスラ社が推奨するように、太陽光を利用してクリーンエネルギーを自家発電すべきなのかもしれない・・・と環境に配慮する自分にも気づくのでした。



というわけで、新しいものに触れて、新しい発想がわいてきたところですが、どうか新しい年が、皆様にとって素敵な一年となりますように!



夏来 潤(なつき じゅん)

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