Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2012年09月24日

ラジオで語ろう!: アップルの6代目「iPhone 5」

Vol. 158

ラジオで語ろう!: アップルの6代目「iPhone 5」

今月は、新製品、若者の起業、スペースシャトルと、自分の中でホットな話題を3つお話しいたしましょう。

<夏来 潤、ラジオデビュー!>
そうなんです、ラジオ番組にデビューいたしました!

と申しましても、べつにレギュラーになったわけではなくて、朝のラジオ番組にシリコンバレーから電話で生出演しただけのお話です。

FM東京が週日の朝に放送している『Blue Ocean(ブルーオーシャン)』という番組で、パーソナリティーの住吉美紀さん(元NHKアナウンサー)が世界各地に電話インタビューをして、各国のホントとホンネを探るというコーナーです。

それで、わたしが担当したお話は、ずばり、アップル「iPhone 5(アイフォーン5)」とアマゾン「Kindle Fire(キンドル・ファイア)」。


Kindle Fire HD.png

前日、アップルはサンフランシスコの特別イベントで iPhone 5 を発表したばかりですし、前の週には、オンラインショップ・アマゾンがタブレット製品 Kindle Fire の新型モデル(ハイビジョン動画対応のKindle Fire HD、写真)を発表しています。
スマートフォンとタブレットを語るには、まさに絶好のタイミングだったのです。

まあ、今さらここで iPhone 5 や Kindle Fire の詳細を語るつもりはありませんが、ラジオインタビューを通して、ちょっと驚いたことがありました。

それは、このラジオ番組は「女性向け」に分類される番組なのですが、そこでスマートフォンやタブレットを語ろうという、前向きな姿勢。
電話インタビューは午前9時頃に行われるので、遅めの出勤前の女性会社員か、家族を送り出したあとの主婦の方がターゲットと思われるのですが、やはり今は、レディーの間でも新しいガジェットの話題は欠かせない時代となっているのですね。


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もちろん、「難しい話題は避けてください」という指示はあったのですが、番組担当者やパーソナリティーの住吉さんが興味津々だったのは、アメリカでは iPhone に対してどんな反応なんだろうか? ということ。
日本では、新しいモデルが発表されると話題沸騰だし、発売日にはアップルショップに長蛇の列ができるくらいの人気だけれど、いったい本国ではどうなの? とホンネが聞きたかったようです。

いえ、今さらここでご説明するまでもないでしょうが、アップルが新製品を発表するという噂だけで、メディアも市民も熱い期待に満ちあふれ、発売日には、われ先に新製品を手に入れようと、徹夜組を先頭としてアップルショップやキャリアショップは「半狂乱の渦」に巻き込まれるのです。
 


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今回は、発表イベントの招待状に使われた「12(9月12日のこと)」という数字に、「5」という影が見えると大騒ぎになりました。「5というのは、いよいよ iPhone 5 が出るに違いない!」と、ニュース各局は視聴者の期待感をあおります。
実際に発表が行われた直後(西海岸12日の午前中)、アップルのウェブサイトは、写真を見てみたいというファンが殺到して一時ダウンしてしまいました。

そして、iPhone 5 の予約を開始したら、24時間で2百万台という記録を打ち立てたとか(9月17日アップルの発表)。

まさにアップルは「クール(cool、カッコいい)」の代名詞であり、iPhone はクールを気取れる製品。
そして、アップルにとっても、売上総利益7割を占めるフラッグシップ(旗艦)。

というわけで、ラジオ番組のインタビューでは、もうひとつ驚いたことがあったのでした。

それは、アップルの iPhone とグーグルのAndroid OSを搭載するスマートフォン群を比べると、数の上(販売台数)では後者が追い抜いているという話をしたら、「エッ、そうなんですか?」と驚かれたこと。

あれ、もしかして間違ったことを言ったかな? と不安になったほどのリアクションだったのですが、やはり、人気製品 iPhone は市場で一人勝ちしているに違いないというイメージが先行しているのでしょうね。


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ご存じのように、アップルのタブレット製品「iPad(アイパッド)」は、アマゾン Kindle を始めとする競合製品に対して「タブレット分野の先行機種」という優位性を保っています(電子書籍専用端末としてはKindleの方が先に市場に登場しています)。

とくに学校では、iPadは教科書や家庭とのコミュニケーションの媒体として普及し始めていて、教育分野では、その差が顕著に現れているようです。

けれども、スマートフォンの分野では、米市場でも世界市場でも Android製品群の販売台数が iPhone を追い抜いていますよね。


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なにせ、Android製品群は、世の中に何百機種と出ています。

そう、たとえば、中国市場。中国にはデザインハウスと呼ばれるメーカーが2〜3百社あって、各々が自社ブランドの携帯電話を売り出しています。
もともとはメディアテック(MediaTek、本社・台湾)のチップセットやソフトウェア開発キットを使って、お手頃なフィーチャーフォン(日本でいう「ガラケー」)をつくっていたのですが、それが今、ものスゴい勢いで Android にシフトしています。しかも、品質だってグングン向上している。

そして、同じことは、インドでも起きています。

ですから、グーグル会長エリック・シュミット氏が「全世界で一日130万台のAndroid端末がアクティベートされている」と自慢するのも、当然といえば当然なのかもしれません。
 


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というわけで、こちらもいろいろと参考になったラジオ出演でしたが、さすがに新しい iPhone 5 はスゴそうですね。

アップルショップで触ってみたら、その軽さにびっくり。縦長になったわりに、細長くて持ちやすく、より薄くなって軽さを如実に感じるのです。

「これって、モックアップ(展示用模型)じゃないよね?」と、思わず担当者に質問してしまったくらいです。

でも、そんなアップルだって、ハズすこともあるんですね。9月19日にお目見えした新しい iOS 6 は、「なんだか不備が目立つなぁ・・・」と不満の声も聞こえています。
 


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たとえば、グーグル Maps(マップ、地図)の向こうを張って、アップルは自身の Maps 機能を盛り込みました。
空からの3次元イメージを表示する「フライオーヴァー(写真)」など目新しい取り組みもあるのですが、なにせ、そのデータに間違いが多いと批判が集中。
なんでも、1999年に移転したシリコンバレーの高校が、昔の場所で出てくるとか。アップル本社のすぐ隣にある中学校ですら、違った名前の小学校に化けている・・・。

う〜ん、やはり「餅は餅屋」ということなんでしょうか?

<注目の18歳>
ちょっとした世間話です。

こちらの『シリコンバレー・ナウ』シリーズのスポンサーでもいらっしゃるKii 株式会社ですが、本社は東京・港区にあって、シリコンバレーにも支社をお持ちです。
そのシリコンバレー支社で、昨年夏、インターンとして男のコが働いていました。高校を卒業したばかりの18歳の男のコです。

え、18歳で企業のインターンシップ? と驚かれる方もいらっしゃるでしょうが、このコナーくんは特別なんです。なにせ、高校生のときに、アップルiPhone/iPad向けのアプリをつくり、大人気を博したのですから。
 


Flashcards+ 1 2012-09-21.png

その名も「Flashcards+(フラッシュカード・プラス)」。フラッシュカードというのは、日本では「単語カード」と呼ばれるものですが、たとえば、表に英単語、裏に日本語の意味を書いて覚え、試験に備えるというお勉強道具です。

なんでまたフラッシュカード・アプリをつくろうと思い立ったかというと、アップル製品でペラペラッとページをめくる感覚に魅了されたから。とくにiPadで本のページをめくってみると、まるで本物のような臨場感があるでしょう。それをフラッシュカードで再現してみたかった。


Flashcards+ 2 2012-09-21.png

このアプリを使うと、簡単にバーチュアル単語カードをつくれるだけではなくて、何百万という既存のカード(外国語や歴史の分野)を利用できたり、22カ国語もの音声合成で発音を聞けたりと、特典も多く、しかも無料!
そんなわけで、今まで百万ダウンロードを超える人気アプリとなったのでした。

この人気アプリをつくったコナーくん、名門ハーヴァード大学に進学が決まっていた昨年夏、Kii のお声掛かりで、シリコンバレーで働いてみることになりました。
自身の人気アプリをAndroid環境に移植したり、Kiiのエンジニアのみなさんと社内の開発イベントに参加したりと、ウィスコンシン州の高校を卒業したばかりの男のコには刺激的な夏となったのでした。

そして、夏も終わり、無事にハーヴァード大学に入学したのですが、今年の春、コナーくんがニュースになったという風の便りがありました。それは、彼が新たに起業するというもの。
シリコンバレーの有名人ピーター・シール氏(英語の発音はティール氏)がスポンサーしている「20 Under 20(20歳未満の起業家20人)」に選ばれ、大学を休学して、ビジネスに挑戦するというのです。

昨年2月号の第2話「オバマさんはシリコンバレーがお好き」でもちょっとご紹介していますが、このプログラムは、オンライン支払いシステム PayPal(ペイパル、現在はオークションサイト eBay の傘下)の共同設立者ピーター・シール氏が始めたフェローシップで、今年は2回目。
選ばれた20人には10万ドル(約8百万円)のシードマネー(起業資金)が与えられ、2年の休学の間に、自分のビジネスを軌道に乗せることが課題となります。
「学校に行っている暇があったら、さっさと起業しなさい」というシール氏の哲学が若者を刺激しているのです。
 


Coco Controller 1 2012-09-21.png

19歳になったコナーくんが挑戦するのは、iPhoneをゲーム機に変身させるゲームコントローラー。その名も「Coco Controller(ココ・コントローラー)」。
iPhoneにスポッとかぶせるだけで、ゲーム機になるというスグれもの。飛行機に乗って愛用のiPhoneでゲームをしようと思ったら、ひどくやりにくかった! というのが発想となりました。

現在は、iPhoneプラットフォームに留まらず、Androidのゲームメーカーとも着々と協業を進めているとのこと。
そのうちに、街角のお店でココ・コントローラーを見かける日も遠くはないのかもしれません。

それにしても、コナーくん。ウィスコンシンの片田舎から東海岸マサチューセッツのハーヴァード大学へ、そして西海岸シリコンバレーのど真ん中へと、アメリカじゅうを駆け巡っています。

これからどんな風に羽ばたいていくのか、成長が楽しみな青年なのです。

<アップルより熱いスペースシャトル>


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9月21日金曜日、いよいよアップル「iPhone 5」が売り出されました。ニューヨークでもサンフランシスコでも、すでに月曜日にはショップの前に徹夜組が現れたそうで、アップルブランドの人気の高さを物語っています。(写真は、サンフランシスコのストックトン通りにあるアップルショップ。もう夕刻なのに辺りは騒然としています)

けれども、この日のシリコンバレーのトップニュースは iPhone ではありません!
トップの座は、スペースシャトル「エンデヴァー(Endeavor)」に譲りました。
なぜって、この朝、エンデヴァーは最後のフライトに飛び立ち、カリフォルニアの人々に「さよなら」を告げたから。
 


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ご存知のように、スペースシャトルのミッションは昨年7月に終わっています。が、残るシャトル3機のうち、エンデヴァーがロスアンジェルスの博物館に引き取られることになって、みんなに空からご挨拶をする最後のご奉公となったのです。

エンデヴァーは、「ベビーシャトル」とも呼ばれる一番新しいシャトル。ボーイング747の背中にちょこんと乗せてもらって、フロリダ州ケープ・カナヴェラルのケネディー宇宙センターから飛び立ち、テキサス州ヒューストンの飛行管制センターにご挨拶したあと、はるばる南カリフォルニアまでやって来ました(並走するのは、空軍のF-16戦闘機)。
 


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21日の朝、ロスアンジェルス近くのエドワーズ空軍基地を飛び立ったエンデヴァーは、一路北へ州都サクラメントを目指します。
州議事堂の上空を飛び、州の要人に敬意を表したあとは、サンフランシスコの街を二度旋回して、北カリフォルニアのみなさんにご挨拶をします。
ベイブリッジやゴールデンゲートブリッジと、海にかかる橋の名所すれすれに低く飛び、太陽に輝く姿を人々の脳裏に焼き付けます。
 


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そして、耐熱タイルの開発や耐久試験でお世話になった、シリコンバレーのNASA研究所(NASA Ames Research Center)を低空飛行したあとは、一路南へ、ロスアンジェルスを目指すのです。

いえ、普通に考えると、フロリダからテキサス経由でカリフォルニア南部に到着したのなら、そのままロスアンジェルスの博物館に運べばいいでしょう。
けれども、わざわざエドワーズ基地からカリフォルニア北部の州都サクラメントへと向かい、サンフランシスコやシリコンバレーの上空を飛んだあと、再びカリフォルニア南部のロスアンジェルス国際空港にタッチダウンしたのは、単にカリフォルニアの人々に「ありがとう、さようなら」を言いたかったからなんです。

そう、全行程5時間の「さよなら飛行」。
 


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だって、30余年のスペースシャトルの歴史の中で、サンフランシスコ界隈の人々には姿を見せたことがない。だから、せめて最後だけでも勇姿を見せてあげたいという、なかなか粋な計らいなのでした。(写真は、サンフランシスコ・ジャイアンツのホーム球場 AT&T Park 上空を飛ぶエンデヴァー。ちなみに、今回の「さよなら飛行」の費用を払ったのはロスアンジェルスの博物館だそうなので、ロスアンジェルスに「ありがとう!」)

フロリダに住んだこともある我が家は、ケネディー宇宙センターにも行ったことがあります。けれども、スペースシャトルの打ち上げは「いつでも見に行ける」という理由で、見たことがありませんでした。
フロリダ南部に住む者にとっては遠すぎることもあったのですが、サンフランシスコ上空を飛ぶエンデヴァーを見て、こう思ったのでした。

「あ〜、やっぱり、スペースシャトルの打ち上げを見に行くべきだった・・・」と。
 


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まあ、「後悔先に立たず」ではありますが、そんな風に後悔するほど、エンデヴァーの姿は、何かしら高貴なオーラに満ちていたのでした。

そして、自分がつくったわけでもないのに、見ていて誇らしい気分にもなったのでした。

お疲れ様でした、エンデヴァー!

夏来 潤(なつき じゅん)

 

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