English words
英語ひとくちメモ/場面
English Words 英語ひとくちメモ
2006年04月24日

Keep your spirit high (元気出して)

ちょっと厳粛なお話です。

まだまだ雨季の空が広がるある土曜日、お隣さんから電話がありました。ちょっと悲しげな低い声で、これは尋常ではないぞと、こちらも構えて話を聞きます。

彼女がとつとつとして語るに、わたしが日本に行っている間に、ご主人がひどい心臓発作を起こし(had a massive heart attack)、救急車で病院に連れて行かれあと、緊急手術をしたというのです。
 あと2日もてばいいほうでしょうと担当医も断言し、息子たちが遠くから駆けつけたほどだったようですが、幸い、奇跡的に命をとりとめ、今は静かに自宅療養をしているそうです。


お隣さんは、わたしの両親の年代なのですが、それゆえに、何かと面倒を見てくれるし、こちらも何となく気にかけている間柄です。
 普段は、ほとんど顔を合わすこともなく、コミュニケーションは電話が多いのですが、何かあったときは、お隣の強みを発揮します。

わたしが外来手術を受けたあと、2時間で病院を追い出されたときは、その後、ずっと夕食を届けてくれました。
 彼女が、ひどい関節炎で骨盤と大腿骨の手術を受けたときは、代わりに、わたしと面倒見のよいお向かいさんで食事を届けました。
 以前は、「私は母親鳥の役だったのよ(I played Mother hen for you)」などと笑っていましたが、このときばかりは、こちらがちょっとだけ母親鳥をやらせてもらいました。

今の家に引っ越して9年間、お互いそんな関係でやってきたのでした。だから、今度のことも、ご近所さんから耳に入ったらわたしが気を悪くすると思って、わざわざ電話をしてきてくれたようです。
 土曜日がやってくるごとに、夫の発作の驚愕がよみがえってくるせいもあったようです。どんよりした曇り空にも、心は晴れません。


楽しい話なら調子を合わせやすいのですが、何かしら悲しい出来事は、こちらもどう対応しようかとちょっと迷います。

突然のお隣さんの電話には、黙って耳を傾け、ときおり Oh no! だとか、I’m so sorry to hear that だとか、月並みな相槌をうっていたような気がします(この場合の sorry は、「お気の毒に」という意味ですね)。

Is there anything at all that I can do for you?(何かわたしにできることはありませんか)というのも、何回か尋ねてみました。答えは、ノーでしたが。

そして、電話が終わる頃になって口をついて出てきた言葉が、Keep your spirit high(気を落とさずに)、I’m praying for him(彼のために祈っているからね)でした。

何かひとこと言いたかったし、彼らはカトリック信者なので、祈ること(pray)を大事に思っているのがわかっていたからです。

すると、彼女は、こう答えます。We just take one day at a time(ふたりで一日一日を確実に過ごしていくだけよ)。

そして、かみしめるようにこう結びました。Cherish your every precious moment(時間を大事に使ってちょうだいね)。

誰かが辛いことに出会ったとき、英語にも紋切り型の表現はたくさんあります。けれども、一番大切なことは、つたない言葉であっても、自分の飾りのない気持ちを伝えてみるということなのかもしれません。

追記:楽しいことがあって、辛いことがあって、どこに住んでいても、いろんなことに直面します。だから、近しい人を失った方に接しなければいけない、そんな場面も出てきます。
 以前、母君を亡くされた方にごあいさつする機会があり、それを書いてみたことがあります。アメリカでは、弔事は実にさまざまな形があり、これは、たったひとつの例ではありますが。

昨年6月、和歌山への旅行記のおまけとして書かれているものです。興味をお持ちでしたら、旅行記の部分は飛ばして、最後の話「おまけのお話:アメリカの弔事」をどうぞ。

こちらです。


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