English words
英語ひとくちメモ/おもしろ表現
English Words 英語ひとくちメモ
2006年10月02日

Look but don’t see (視れども、見えず)

ちょっとご無沙汰しておりましたが、久しぶりに英語のお話をいたしましょう。

新聞を読んでいて、ハッとした文章がありました。

Drivers on cell phones look but don’t see.

訳しますと、「携帯電話を使いながら運転しているドライバーは、視ようとしても、見えていない」。
cell phones は、携帯電話のことです。on cell phone というのは、「携帯電話を使っている」という意味ですね。)

中学校でも習いましたが、同じ「みる」にしても、looksee は違うのですね。前者は「注意深く視る」、そして、後者は「(単に)見る」。
(例文の look には、「表向きは注意深く視ようとしていても」という含蓄もあるようです。)

日本語にもある通り、「見る」と「視る」は違うのですね。

こんな中国の名言もあるくらいですから。「心ここにあらざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食らえどもその味を知らず。」


で、冒頭の文章。Drivers on cell phones look but don’t see.

この文章は、サンノゼ・マーキュリー新聞の「交通欄」に載っていたものですが、9月にシュワルツェネッガー州知事が署名した、新しい法律に関する話題でした。

2008年7月1日以降、カリフォルニアでは、車を運転しながら携帯電話で会話することを禁止とする。但し、ハンズフリー機能を使えば、これをよしとする。

日本やヨーロッパに遅れ、ようやくアメリカでもこのような法律が出来始めているのですが、やっぱり、運転中に携帯電話で話すと危ないですよね。

電話を取るとか、かけるという行為自体も危ないですが、注意力が欠けるというのも大きな問題ですね。

ユタ大学の研究によると、通話しながらブレーキをかけるタイミングは、通常よりも18パーセント遅くなり、これは、軽度の酒気帯び運転よりもひどかったとか(カリフォルニアでは、血中アルコール濃度0.08パーセント以上が、法的な酔っ払い運転となります)。
 また、20歳の人が携帯電話で話しながら運転すると、その反応速度は、70歳の人くらい遅かったとか。

もともと人間の脳は、マルチプロセシング(並行処理)には長けていません。電話で話していると、注意散漫になり、視るべきものも、見えていない。

つまり、They look but don’t see.

ちなみに、新しい法律では、携帯電話のキーボードを使って短い会話ができる「テキストメッセージ」は、禁止とはならないそうです。そっちの方がよっぽど危ない気がしますが。


で、目で見る(視る)話題が出てきたところで、もうちょっと似たような表現のお話をいたしましょう。

目を使った表現には、turn a blind eye というのがあります。

「目をそむける」とか「無視する」というような意味です。文字通り、「見えない目を向ける」というところから来ているのですね。

こんな文章がありました。

Why do the police turn a blind eye to motorists who use mobile phones when driving? (出典:イギリスのYahoo! Answers)

訳して、「どうして警察は、運転しながら携帯電話を使うドライバーから目をそむけるの?」(携帯電話は、アメリカでは mobile phone とも cell phone とも呼ばれます。)

この turn a blind eye という表現は、結構、政治的なものにも使われます。たとえば、大統領は大きな問題から目をそむけている、といった話題に。


似たようなものに、耳を使った、fall on deaf ears というのがあります。

せっかくの意見や提案が無視されるという意味です。

たとえば、こんな風に使います。

Jennifer suggested that Harold should get a job, but of course her advice fell on deaf ears. (出典:The Free Dictionary)

訳して、「ジェニファーは、ハロルドに仕事を見つけるべきよと意見したのに、勿論彼女のアドバイスは無視されてしまった。」

これも、上記の turn a blind eye と同様、政治的な話題にもよく使われますね。行政側が、住民の意見をまったく聞いてくれなかったとか。

おもしろいことに、turn a blind eye の目は単数形なのに、fall on deaf ears の耳は、複数形で使われるみたいですね。


耳には、こういう表現もありますよ。

Let’s play by ear!

これは、「今細かく決め事をしないで、事の進展を見ながらやっていこうよ」みたいな意味です。

Play ~ by ear というのは、音楽の世界でいうと、「楽譜もなく、耳で聞いたものをそのまま弾いてみる」という意味ですが、これが転じて、「計画もなく、事の進展を見ながら、臨機応変に対処する」というような意味になったようですね。

この表現は、誰かさんとどこかに行く時、「出発する時間は、その場の雰囲気で決めようね」みたいな話にも使えますし、仕事のときなんかにも使えます。

新しいボスがどんな人だかわからないので、we should just play by ear.


一方、「目」を使ったことわざには、こんなものがあります。

Beauty is in the eye of the beholder.

Beauty とは「美」のことで、beholder とは「見る人」という意味です。

すなわち、「美は、見る者の目に宿る。」

つまり、美しいと思うのは、人それぞれという意味ですね。

だから、人間っておもしろいんです。


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