Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2004年02月24日

アメリカのティーン:結構大変なんです

Vol. 55
 

アメリカのティーン:結構大変なんです

夏が来れば草地は黄金となり、極端に乾燥するシリコンバレーも、冬は降り続く雨で緑に潤います。今回は、まず、雨季の晴れ間、散歩道で撮った写真をご覧ください。筆者宅に近い遊歩道から眺めた景色です。人家がない場所を選んで撮ったのですが、この辺りは、その昔、オローニ・インディアン(the Ohlone Indians)が住んでいた所です。

Ohloneとは、北部カリフォルニアに1万3千年の歴史を持つ部族ですが、4千年ほど前から、サンフランシスコ・ベイエリアからモントレーにかけての海岸線にも広く居住していたと言われます。筆者の住む辺りでも、彼らの石器が発掘されたりしています。


さて、本題の方ですが、今回はティーンエイジャーの話題とサンフランシスコのお話となっています。どうぞおくつろぎください。

<サンフランシスコの思い出>
老人の繰り言ではありませんが、昔はスーパーボウルと言えば、もっと素朴なアメリカン・フットボールの祭典だったんです。
百歩譲って、テレビコマーシャルの祭典となるのは許しましょう。しかし、ハーフタイムのショーなどは、金輪際止めにしてもらいたいです(日本にも伝わっていたことと思いますが、覚えていらっしゃいますか、あのジャネット・ジャクソンの衣装騒ぎ)。
スーパーボウルで戦うことは、選手にとってもファンにとっても、この上なく神聖なことなのですから。

あれは、1981年のシーズンでした。それまで毎年NFC Westのディヴィジョンでビリだったサンフランシスコ49ersが、突然調子付いて来たのは。1979年に名将ビル・ウォルシュがノートルダム大学から取ったクウォーターバック、ジョー・モンタナの芽が出始めた頃です。
"あれれ?今年は何だか調子いいらしいよ" と街中で噂が流れ始め、あれよあれよと言う間に、NFCのチャンピオンシップでダラス・カウボーイズを破り、スーパーボウルでは、AFC代表のシンシナティ・ベンガルズを倒してしまいました。"モンタナ・マジック" を操るスーパースター、ジョーの誕生です。その後、十数年続いた、49ers王朝の幕開けとも言えます。

何せ、サンフランシスコでスーパーボウルの勝利を祝うのは初めてなので、もう老いも若きも半狂乱です。数日後、市内で大パレードが行われ、選手たちは名物のケーブルカーに乗って、沿道に押しかけたファンたちに満面の笑みで手を振ります。
その後、市庁舎の2階バルコニーでは、人気選手たちのスピーチとなりました。市庁広場にいったい何万人が集まったのかはわかりませんが、筆者は、報道陣のアナウンス席やまわりの大男たちに囲まれ、選手がひとりも見えません。声はすれど姿は見えず。
とても残念ではありましたが、それにも増して、波打つ群集の圧力に、身の危険さえ感じていました。そして、この時、将棋倒しになると死ぬこともあり得るなと、賢く悟ったのでした。

1978年、この市庁舎内では、当時の市長ジョージ・モスコーニ氏と市の行政執務官ハーヴィー・ミルク氏が射殺されるという惨事が起きています。犯人は、ミルク氏を逆恨みする同僚でした。そういった暗い世相を払拭したい市民の祈りも、優勝フィーバーに結びついたのかもしれません。

あの時は、スーパーボウル16回。今はもう38回となりました。時代も変わるわけですね。

<受験校>
ちょっとショッキングなニュースを耳にしました。シリコンバレーの高級住宅地にある名門サラトガ高校で、生徒がスパイを働いたというのです。全部で8人が停学処分となり、そのうち11年生(日本の高校2年生)ふたりが退学となりました。

事が発覚したのは、昨年末、ふたりの生徒が歴史のテストを盗み出し、それをパソコン上に保存していたという事件がきっかけでした。クラスメートたちに無記名でアンケート調査を行った結果、ふたつの悪質な事件が明るみに出されたのです。ひとつは、ひとりの数学の生徒が、学校のコンピュータ上の成績データを改ざんしたというもの。
そして、もうひとつは、5人の生徒がグルになり、先生のコンピュータにキーロガー装置を仕掛け、パスワードとともに、英語の試験内容と回答を盗み出したというものでした(キーロガーについては、2002年2月20日掲載の記事でご説明いたしましたが、基本的には、キーボードで打った文字をつぶさに記録するソフトやハードを指します。この事件では、単三電池大のキーロガー装置をコンピュータとキーボードの間に仕掛け、先生のパスワードを盗み出しました。100ドルほどの装置です)。
これは、まさに映画並みの巧妙さとも言えるのですが、1月末に封切られた、パラマウント製作の映画 "Perfect Score" は、まさにこういったティーンの6人組を描いているのです。

近頃、このような生徒の不正は増える一方で、ある道徳研究機関とデューク大学のふたつの調査によると、何らかのカンニング(cheating)を経験したことのある高校生は、全体の74パーセントにものぼると、両者が結論付けています。
最近のトレンドは、出来の悪い生徒ではなく、かえって成績の良い生徒の方が不正を働くということです。それだけ、良い成績を維持し、良い学校に入るというプレッシャーが強いのでしょう。

高校生ともなると、お受験が気になる時期で、アメリカも例外ではありません。近頃は、教育熱心なアジア諸国並みに、"一流校を目指せ!"という教育ママが増えています。シリコンバレーなどの移民の比率が高い地域は、なおさらの事です。
ご存知の通り、アメリカの大学は、入学者選抜に際し、様々な要因を考慮します。内申書だけではなく、より多くの上級クラスにチャレンジしたか、ボランティアには参加したか、スポーツのクラブに所属していたか、なども審査の対象となります。将来の夢を語るエッセイなども大事な項目です。
しかし、近頃は、それだけでは十分ではなく、やはりSAT(Scholastic Assessment Test、旧Scholastic Aptitude Test)の点数を上げることが、他を引き離す重要課題となっています。

この統一テストSATは、英語と数学の理解度を計る1600点満点の試験で、1300を超えると、かなりスゴイ出来と言われます。毎年2百万人が受験する一大イベントとなっており、もうひとつの統一試験ACTを大きく上回っています。
2005年3月からは、文法とエッセイが加わり、2400点満点となりますが、これは最大のユーザーであるUniversity of California系列校が "もっと幅広く学力を計れ" とプレッシャーをかけた結果です(著名人の中では、ハーバード大学に行ったアル・ゴア前副大統領の1335点、エール大学出身のブッシュ大統領の1206点というのがあります。毎年、数百名がパーフェクト・スコアを達成するようです)。

数年ほど前までは、10年生(日本の高校1年)でSAT訓練コースを受け、11年生で一回目のSATを受験することなど、とても珍しい事でした。しかし、今はそれが平均的な事となり、誰も驚きません。7週末で9百ドルの訓練コースも、1時間250ドルの個人授業も、裕福な家庭では当たり前です。
親が一生懸命なので、子供も期待を裏切らないようにベストをつくす。上記のサラトガ高校の事件は、そういった点数至上主義の付けが回ってきたのかもしれません。

ところで、先日、雑誌のインタビューで、SEVEN Networksという会社の創設者である、ビル・ヌエン氏にお会いしました。彼は、シリコンバレーの若手経営者の中で、今一番ホットな人と言ってもいいほどの有名人です。
インタビューでは、彼の製品や経営姿勢などについて伺ったわけですが、彼がとてもユニークなので、バックグラウンド(教育的な経歴)は何かと質問をしたところ、"僕は落ちこぼれなんだよ(I’m a dropout)" と即座に答えが返ってきました。何でも、大学は1年くらいで中退し、すぐに会社を作ったりしていたようです。大学も、コンピュータや科学とは無関係だったとのこと。
"ドロップアウト" であると胸を張って言えるほど、今の彼の成功は大きいわけですが、それと同時に、学歴なんかあまり関係ないんじゃないと、言外にほのめかしていたようにも取れます。

"一流の学校に行って、一流の仕事に就く" のが、先進国では一種の宗教ともなっているわけですが、実は、世の中は、ヌエン氏のような例外だらけなのでしょう。長い人生、方向修正はいくらでもできるはずですから。

(ちなみに、このインタビュー記事は、3月24日発売予定の、技術評論社発行Mobile PRESS・2004年春号に掲載されます)。

<ペンマンシップ>
日本でオンライン・オークションと言えばヤフーですが、アメリカで一番人気のオークションサイト、イーベイでは、近頃、困った傾向が見られるそうです。自分の売りたいものを宣伝したいのに、品名が間違っているので、みんなが入札してくれないらしいのです。
それも、呆れたことに、単純なスペルミスが原因だとか。"camra" あり、"bycicle" あり、"perl" に "dimond"、"telefone" に "knifes"と、次から次へと変てこなスペルが出てきます。品名が間違っていると、正しいスペルの分類サーチにはひっかからないので、多くの人の目には触れないこととなります。

中には、スペルミスの商品にはビッドする人が少ないことを知っていて、わざと間違ったスペルで分類サーチする達人もいるらしいです。コンパックのラップトップ・パソコンを3台、破格の値段で落とした人がいますが、彼の戦略は、"Compaqs"とするところを、"Compacts" としたところです。

それにしても、"ophthalmologist(眼科医)" のスペルを間違えたというのとは、あまりにもレベルが違いますよね。

確かに、現役学生を退いて久しい人には、正しいスペルを覚えておくのは難しいことかもしれません。また、最近は、文章を書くにもスペルチェッカーが発達しているし、インターネットのインスタントメッセージ(IM)や携帯電話のショートメッセージ(SMS)で、奇妙に略した言葉に慣れてしまっているし、状況は悪化の一途をたどっています。
IMは、電話よりも話しやすいと、ティーンの絶大な支持を得ているだけではなく、近頃は、オフィス内でも重宝がられていて、企業人たちのコミュニケーションの加速に一役買っています。電話中も会議中も、並行して他の人と論議できるところが利点です。

いつかハイテク会社の重役が、奥方と遠方の大学に行った娘とのオンライン・チャットに加われないと、嘆いていました。"UR L8 4CLAS" などと書かれたら、判読不能かもしれませんね。日本のケータイの "ギャル文字" に通じるところがあります。

ケータイと言えば、自分だけのユニークな着メロ(ring tone)も不可欠要素となっています。昨年アメリカのティーンは、5千万ドルも着メロダウンロードに使ったそうです(ティーンの消費力全体は、昨年199億ドルでした。前年より12パーセント減です)。

困った事に、最近は、現役で学校に通っている子供たちのスペル力も低下しているようです。たとえば、ごく基本的な "it’s" と "its" の違いや、"there" "their" "they’re"の区別がつかない子供たちも多いそうです。エッセイを書かせると、こういった間違いのオンパレードです。
いつか友人のメールにも、"Its nice" というのがありましたが、当然 "It’s nice" の誤りです。何を隠そう、彼女は小学校の先生です。

ところで、年に50回ほど講演しているイーベイの教育係が言うに、最近は行く先々で、"イーベイはいつスペルチェッカー機能を入れてくれるの?" と質問されるらしいです。そういった問いには、"本屋と呼ばれるお店に行って、辞書と呼ばれる物を買ってください" と答えておくそうです。

(ちなみに、上記の暗号らしき文章 "UR L8 4CLAS" は、"You’re late for class(授業に遅れてるよ)" です。)

<ペンギンと人間、そして結婚>
以前、奇妙な原始ペンギンのお話をいたしましたが、ペンギンとは、結構ユニークな生き物のようです。
マンハッタンのセントラルパーク動物園に暮らすロイとサイロは、6年間連れ添った仲むつまじいカップルです。この度、タンゴというかわいい雛をともに孵化させ、2ヵ月半にわたり暖かく育んで来ました。でも、タンゴは、ロイとサイロの実子ではないのです。だってふたりともオスなのですから。

実は、ペンギンの同性カップルは珍しい話ではなく、この動物園では、ロイとサイロ以前に、ジョージーとミッキーというメスの先輩カップルがいました。新たにマイロウとスクォークもオスのつがいになろうとしています。近くの動物園でも、オス同士のカップルが確認されています(ペンギンの種類は、カップルによって異なります)。

ペンギンだけではありません。サンフランシスコの対岸、オークランドには、ハゲワシのオスのつがいがいます。長年連れ添った割に卵が生まれないと、性別検査をしたところ、両者がオスだと判明しました。不憫に思った飼育係が受精卵を調達し、一羽に抱かせているところです。このカップルの場合は、役割分担がとても明確になっており、卵を抱くのは、いつも同じワシだそうです。
鳥類だけではなく、人類に非常に近い種でも、同様の行動が見られます。ピグミーチンパンジーとも呼ばれる中央アフリカのボノボ(Pan paniscus)は、半分の時間を同性と過ごすと報告されています。

動物界には、同性愛が確認される種が470ほどもあるそうで、近頃アメリカで論争を巻き起こしている同性カップルの結婚問題に一石を投じています。推進派は、こう言います。動物界で広く見られるなら、自然界ではごく普通の行動と言えるだろう。これに対し、宗教原理主義者は、"何と動物的なことか!神をも恐れぬ行為だ"と嘆きます。

昨年12月の記事で、世界的にゲイの権利を認める動きが強くなっていることをお伝えしましたが、今、アメリカ中で、同性結婚の議論が白熱しているのは、昨年11月のマサチューセッツ州最高裁の判断がきっかけとなっています。
そして、その根底には、結婚(marriage)と民事婚(civil union、宗教的儀式によらない結婚)の微妙な違いが存在します。前者は、結婚に伴うすべての権利を保障し、後者は、ある行政区でのみ認められる、限られた権利を定めます。
マサチューセッツ州最高裁は、同性のカップルに "結婚" を認めないのは、人の平等を唱えた州憲法に違反すると判断したわけですが、州議会は、まさかこの "結婚" が本当の結婚を意味するとは考えていませんでした。
しかし、2月に入り、州最高裁は、"5月17日をもって、同性結婚を施行せよ" というお達しを出したので、州議会で急遽、対策を審議しているところです。結婚を "異性の者同士" と定義する州憲法の修正案は否決され、同性結婚を禁止する法案も否決されました。かと言って、同性結婚を認めるには反対意見が多く、妥協案として、同性カップルには民事婚のみ認めるという法案を審議しています。(アメリカでは唯一、ヴァーモント州が同性の民事婚を認めています。)

こういったごたごたの中、サンフランシスコでは、バレンタインデーの週末、市庁舎内で同性カップルが大挙して結婚式を挙げ、アメリカで初めて、正規の結婚証明書を手にしました(宣誓は、"husband and wife"の代わりに"spouses for life"となされ、結婚証明書には性区分はありません)。
2月12日から16日の5日間で、2500組近くが結婚しました。

カリフォルニアの法律では、結婚は男と女の間でのみ執り行われるとあります。しかし、今年1月に就任したギャヴィン・ニューサム市長は、平等を説いた州憲法に反すると、強行に踏み切ったのです。ブッシュ大統領が、同性結婚を禁止する憲法修正案をちらつかせていることに対する反発でもあります(結婚証明書は、郡が発行するものですが、サンフランシスコ市は郡も兼ねるので、市長に決定権があります)。
翌2月17日、さっそく裁判所からは自粛せよとのお達しがありましたが、ニューサム市長はあくまでも抗戦の構えを崩さず、今後、反対派と法廷で争うこととなります(その間、結婚式は続いていますが、州が強行に介入する可能性が濃厚です)。

カリフォルニアでは、ドメスティック・パートナー制が布かれ、その権利も大幅に広げられようとしています。しかし、こちらも反対派の暗躍で、将来が保障されたものではありません(昨年10月の記事で、この問題に触れています)。
今回のサンフランシスコ市の "結婚" 措置は、同性のカップルにとって、一筋の光ともなっているようです。

記念すべき第一組目は、51年連れ添って、ようやく結婚証明書を手にした女性の活動家カップルでした。

冒頭に出てきたサンフランシスコ市庁舎内での惨事ですが、市長とともに惨殺されたハーヴィー・ミルク氏は、市で初めてのゲイの行政執務官と言われています。この事件をきっかけに、ゲイの活動家と警察の応戦は死傷者まで出し、街中が騒然となる時期もありました。

あれから四半世紀、この市庁舎で、同性結婚が執り行われています。

夏来 潤(なつき じゅん)

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