Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2003年07月15日

車にまつわる話:車文化からアメリカがわかります

Vol. 48


車にまつわる話:車文化からアメリカがわかります

子供たちが夏休みに入ると、バケーションシーズンの到来です。7月は、独立記念日という楽しい祝日もあり、大人でも、何となく気分が浮かれ立つ時期でもあります。
そんな時、一番お手頃な移動手段と言えば、やはり車です。アメリカは国土が広く、日本ほど渋滞しない気楽さもありますし、最近は、飛行機を毛嫌いする人が多いこともあります。世界情勢やドル安の影響で、海外旅行を見合わせる人が多いことも、車での移動に拍車を掛けています。
今回は、そんなバケーションシーズンにちなみ、車にまつわる話題を四つ集めてみました。車を運転しない方でも、きっと楽しめると思います。

<あなたはSUV派?>
夏が近づくにつれ、メディアでは何かと車の話題が増えます。ディーラーでも、安売り合戦が始まり、車の宣伝も倍増します。それに釣られてお出かけする人が増えると、需要と供給の原則に基づき、ガソリンの値段も上がります。
車にまつわる最近の話題では、こんなものがありました。SUV(Sport-utility vehicle、おもに四輪駆動の、大きめのスポーツタイプ車)に対する意識は、持つ者と、持たざる者との間で大きな隔たりがある、というものです。これだけ聞けば、当然至極のことです。しかし、車が生活に不可欠なアメリカでは、事SUVとなると、支持派と不支持派の真っ二つに分かれ論争の種となる、微妙な話題なのです。
支持派は、こう主張します。SUVは車体が大きいので、乗っている人にも安全だし、べつに他の車にも迷惑をかけていない、と。一方、不支持派は、こう反論します。SUVのサイズは普通車を威圧し、安全上問題がある。それだけではなく、世界的にエネルギーが不足する折、ガソリンを食うSUVは世のためにはならないのだ、と(ガソリンと電気で走るハイブリッド車の人気が徐々に高まる中、燃費の悪い車は、gas-guzzlerと悪口を言われます)。

7月上旬、Associated Pressが発表したSUVに関する全米の意識調査では、ほぼ二分される結果が出ています。たとえば、SUVは乗っている人に安全かという質問には、42%が安全、35%が普通車と違いはないと答えています。また、他の車を危険にさらすかという問いには、45%がその通り、41%が別にそんなことはない、と答えています。
燃費に関しては、SUVには厳しい燃費規制が必要かという問いに対し、54%が普通車と同じにするべき、33%が普通車より低くてよい、としています(現行の燃費規則は、SUVは、1ガロン当たり平均20.7マイル、普通車は27.5マイル。ハイブリッド一番人気のトヨタのプリアスは、平均48マイルです)。
興味深いことに、SUVは他の車に対し危険となり得るといった認識は、回答者の教育レベルが高くなるほど、強くなるようです。また、ブッシュ大統領が代表する共和党を支持する方が、民主党支持者よりも、SUVの安全性を擁護する人が多いそうです。道理で、イラク戦争の少し前から、Hummer H2のような軍用車が、幅を利かせて街中を走り回るようになったわけです(この車は、昨年12月ご紹介したように、軍用車を一般用にモデルチェンジしたSUVです。人気に乗じて、ちょっと小型のH1も登場)。

近年、SUVの人気は衰えることなく、あるアナリストによると、昨年売られた新車の4分の1は、SUVの仲間に分類されるそうです。何せ、スポーツカーで有名なポルシェまで、SUVを売る時代なのです。
昨年全米で売られた新車は、一昨年からは2パーセント減ったものの、1680万台を記録しているので、約400万台のSUVが路上に増えたことになります。
今後人気はさらに高まって、新車の3分の1がSUVとなることが予測されており、今年は新たに500万台以上が街中に吐き出されることになりそうです(SUVのマーケットシェアはCSM Worldwide社のデータ、2002年の新車販売台数は、R.L. Polkがまとめた陸運局の登録台数。2003年も1600万台は超える新車売上予測。なお、アメリカの中古車売買は、例年4千万台を超えます)。

あらためて近所を見渡してみると、向こう三軒両隣で所有する車の4割はSUVでした。何を隠そう、筆者自身も日本製のSUVに乗っています。それゆえに、支持派、不支持派、両極の意見はよく理解できます。見晴らしの良さによる安全性や、物を運べる便利さはSUVの利点です。しかし、そのサイズから、道幅の広いアメリカでも普通車を威圧する可能性は否定できないし、ガソリンを食うのは明らかな事実です。
"SUVだからダメなんだ" という後ろ指をさされないために、SUVの持ち主はおとなしく運転するのが一番なのですが、余裕のないドライバーが多いのも、いずこも同じ悲しい現状ではあります。

<あなたの車も狙われている!>
筆者はよく無形の情報が盗まれる話をしますが、庶民の大切な財産である車も、窃盗の格好のターゲットとなっています。日本では、有名人の高級外車の盗難を耳にしたりますが、アメリカで一番頻繁に盗まれる車と言えば、トヨタのカムリとホンダのアコードです。カムリなどは、6年連続盗難ランキング1位を保っています。人気が高く、長持ちもするので、街中にあふれているということもありますが、それゆえに、パーツがどこに行っても高く売れるというのが理由のようです。特に、海外のブラックマーケットでは、市価の2、3倍で取り引きされることもあるそうです。
今までは、狙っている車のドアキーをこじ開け、中に押し入り、ハンドル部分の覆いを壊してイグニッションをスタートさせる、というのが窃盗犯の常套手段でした。ところが、最近は、車のキーに内蔵されるトランスポンダー・チップがないと、エンジンをスタートできない車が増えてきたため、新たな方法も生まれました。フロントガラスの左下に見えている車両番号(VINと呼ばれるVehicle Identification Number)を書きとめ、その番号を書き込んだ偽の売買契約書を作り、持ち主のふりをして、ディーラーで正規のキーを購入するというものです。

このような手の込んだ窃盗に対抗するため、いくつかのサービスが広く利用されています。ひとつは、LoJackと呼ばれるものです。これは、電波を使って盗難車を追うシステムで、全米20州ほどで利用可能です。
車が盗まれたとわかると、持ち主はまず、警察に連絡します。VIN番号をもとに、警察のコンピュータシステムに盗難登録がなされ、LoJackの電波塔から発信される信号で、車に隠された発信装置が起動されます。そして、LoJack追跡コンピュータを搭載したパトカーやパトロール機が盗難車の近くを通過すると、発信装置からの信号が拾われ、被害届けの出ている車と認識できるようになっています。
車に取り付けられる発信装置は、どこに仕掛けられているのか、持ち主にすらわからないように万全を期しています。また、州によっては、このシステムを採用する車には、保険料の割引があったりします(残念ながら、カリフォルニアは適用外です)。

もうひとつのサービスは、OnStarと呼ばれるものです。これは、1996年秋にジェネラル・モータース(GM)が開始した、ドライバー向けのサポートサービスです。テレマティックスの草分けとも言えます(テレマティックスとは、元来コンピュータと通信の融合を意味し、車の分野では、車内と外界のコミュニケーションを指します)。
OnStarのボタンひとつ押せば、24時間営業のサポートセンターに繋がり、いろいろ助けてくれます。日本のJAFのように、路上で車に問題が起きた時にもサポートしてくれるし、目的地でのホテル、レストランの予約や、道に迷った時の案内も務めてくれます。こちらの声を拾うマイクは、車内の天井に目立たないように仕掛けられ、音声はスピーカーから流れてきます。
昨年追加されたサービスでは、音声認識による、ハンズフリーの車内電話が利用できるようになりました。受け取ったメールも読んでくれますし、簡単な返事も送ってくれます。また、株価やスポーツ、お天気など、お好みのニュースを車内のボタンひとつで聞けるように、OnStarのウェブサイトで設定可能となっています。
元来、困った時のお助けサービスとして始められたわけですが、OnStar対応車はGPS機能を搭載しているので、これが盗難に遭った時にも役立つのです。サポートセンターでは、盗難車の現在位置を逐一把握できるので、警察の追跡にも大いに協力できるわけです。
OnStarは、現在、GMの40車種ほどにスタンダードやオプションで取り付けられています。また、Audi、Acura(ホンダのプレミアムブランド)、Lexus(トヨタのプレミアムブランド)など、他のメーカーにも徐々に広がりを見せています。

とは言うものの、ひとたび車が盗まれると、敵の行動は素早く、すぐにバラバラに解体されてしまうこともあります。おもな車のパーツには、VIN番号が付けられており、それをたどって行ったら、アメリカを遠く離れ、アフリカで売られていたという話もよく耳にします。
近年、窃盗のトレンドにも変化が見られ、SUVの人気に伴い、この種の盗難も過去2年間で10パーセント増えています。今や、車の窃盗産業は、年間80億ドルに膨れ上がり、ブレーキをかけるのは至難の技のようです。
ちなみに、アメリカで車の盗難が頻繁に報告される上位5都市は、アリゾナ州フィーニックス、カリフォルニア州フレズノ、モデスト、ストックトン、そして、ネバダ州ラスベガスです。いずれも、国境近くか、飛行機やトラックを使った運輸のハブである要素を持っています。

<免許を取ってください>
車を運転するには、運転免許が必要です。これは、法治国家の常識ですが、複雑な事情が絡み合うアメリカでは、そうとも言えないらしいのです。大人が仕事場に行くのに、無免許というのもあり得るのです。
6月上旬、カリフォルニア州上院議院を通過した法案では、不法移民(連邦政府の許可なく長期滞在する移民)にも運転免許が与えられるようになるそうです。これによって救われるのは、カリフォルニアに不法滞在し、無免許で運転している、百万人とも二百万人とも言われます。

従来、カリフォルニアで免許を取得する際、連邦政府発行の社会保障カード(Social Security番号が書かれたカード)や、出生証明書を提示する必要がありました。正規に滞在する外国人の場合は、パスポートを提示します。いずれにしても、不法滞在の場合、こういった身分証明書は所持しないので、免許の取得は不可能となっています。
しかし、規則は規則として、現実には、路上に免許なしのドライバーが増え、州民の安全を脅かす可能性が出てきました。何せ、交通法規を何も知らない人たちが運転しているわけです。危なくてしょうがありません。筆者も、最近、三車線の真ん中を運転していて、脇のショッピングモールから出てきた車にぶつけられそうになりました。主要道路に合流するには、いきなり真ん中の車線に出て来てはいけないはずです。見てみると、大人の無免許運転風の様子でした。
たとえ、免許を持っていないにしても、車はいかようにも手に入ります。それこそ、ブラックマーケットでは、選り取り緑なのでしょう。よく見かけるのは、ボロボロになった日本製の小型車です。日本車は長持ちするので、重宝されているようです。
一方、無免許ということは、保険にも入っていないことを意味し、万が一、事故が起きた場合、被害者が泣き寝入りするケースも多いのです。保険業界や加入者にも、負担が増えます。

そんなこんなで登場したのが今回の法案なのですが、合法的滞在の条件を落とすことで、門戸を大きく広げています。今後、この法案は、州下院での審議の後、州知事のお墨付きが必要となります。昨年、デイヴィス知事は、セキュリティーの観点で問題ありと、類似の法案に対し拒否権を行使しているので、今年の法案も、行方は定かではありません。

ちなみに、不法移民がアメリカで子供を持った場合、その子は米国市民となるので、免許取得にはまったく問題はありません。
また、疑問に思われた方も多いと思いますが、そもそも、不法移民の摘発は、そう簡単なことではないのです。たとえば窃盗などの別件で逮捕されたにしても、被疑者や目撃者の法的身分を問わない方針の警察署が多いからです。摘発されるのを恐れ、犯罪捜査に協力しない人が出ることを防ぐためです。また、国の移民法が複雑で、それに精通するための警察官の教育が困難という要因もあります。

<アンケートは手短に>
最後に、車に関するユーザーアンケートのお話です。毎年、この時期になると、J.D. Power and Associatesという調査会社から、各メーカーのブランド別信頼性ランキングが発表されます。今年は、トヨタのLexusが一位となり、同社の調査では9年連続トップという快挙を成し遂げました。以下、Infiniti(日産のプレミアムブランド)、GMのBuick、ポルシェ、ホンダのAcuraと続きます。
今回のアンケートは、2000年に新車を購入した人が対象となっており、過去3年間で、100台当たり、平均いくつの故障や問題が挙げられたかを指数としています。業界の平均値は、273となっています。
アメリカの三大オートメーカーで平均値をクリアしたのは、GMのビューイック、キャデラック、フォードのリンカーンなどです。高級車のイメージの強いメルセデスベンツは、指数318で、下位にランクインしています(MクラスのSUVに一部起因するとされています)。

2ヶ月ほど前、筆者もJ.D. Powerからアンケート用紙を受け取っていました。日頃、いろんな調査対象に選ばれないと不満を持っているので、喜び勇んで、鼻歌まじりで回答し始めました。最初は、品質に関する一般的な質問から始まり、ページをめくっていくと、文字通り、パーツひとつひとつに関する質問が並んでいます。項目は車の内外すべてに及び、十数ページ続きます。
結局、"こんなものに答えている暇なない!" と、回答半ばで用紙をビリビリに破き、ゴミ箱に捨ててしまいました。まさか、あとでこの話題を書くことになるとは思ってもいないし、VIN番号など個人情報が入っていたので廃棄処分にしたのです。
アンケート結果の記事を読みながら、信頼性ランキング自体よりも、一体にせっかちな人の多いアメリカで、5万5千もの人がこのアンケートに返事したことの方が驚きだと感じた次第です。同封されていた1ドルの新札では、とても割に合わない労力なのに。

日頃は、ペースの速い毎日に追われ余裕のないアメリカ人も、車のこととなると、優先順位が高くなるのかもしれませんね。

夏来 潤(なつき じゅん)

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