Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2002年12月24日

ウィッシュ・リスト:クリスマスに欲しいもの

Vol. 41

ウィッシュ・リスト:クリスマスに欲しいもの

サンクスギヴィング(感謝祭)も無事に終わり、年末のギフト商戦に突入したところで、売る側も、買う側も、血眼な毎日が続いています。今年の売れ筋は、どうやら、デジタルカメラとDVDプレーヤのようです。
 そこで今回は、"クリスマスに誰かがプレゼントしてくれないかなあ" と思っているものを、リストしてみることにしましょう。その後、サンクスギヴィングのお話が続きます。

<衛星ラジオ>
私事で恐縮ですが、今年、筆者の家でのヒット商品は、無線LAN(Wi-Fi)と、デジカメ用プリンタでした。こんなに便利な、実用的な物には、普段なかなかありつけません。
Wi-Fiネットワークを利用し、いつでもどこでもインターネットに繋がるのは、まさに現代人の必需品とも言えます。これで、テレビでフットボールの中継を見ながら、今の審判は正しいか、正しくないか、リアルタイムで視聴者投票できます(この手の投票数は驚くほど高く、20万人くらい、簡単に一瞬で集まります。ごく最近、遅れ馳せながら、携帯電話での投票も受け付けるようになりました)。
勿論、Wi-Fiを利用するためには、セキュリティーに関する配慮を怠ってはいけません。近所で、誰が電波を盗んでいるのか、わかったものではありませんので。

フォトプリンタの方は、写真屋に行く手間を省いてくれるのが気に入っています。フォトペーパーやカートリッジにお金は掛かりますが、自分の好きな写真だけプリントできるので、経済的でもあります。
愛用の日本製のプリンタは、画質も良く、プリントスピードも非常に速いのが嬉しいです。この界隈では、やはり、HP製プリンタがより広く流通していますが、このスピードには負けるだろうと、自己満足しています。
今後、こちらでも、パソコンを持っていない人でも使えるように、メモリーカードのスロット付きや、USBケーブル接続可能なモデル(機種)が、人気が出てくるようです。

次に欲しいものと言えば、やはり衛星ラジオでしょうか。車に乗ると、いつも音楽が欲しくなります(車に乗らないと、牛乳も買えません)。でも、CDだと、何千枚持っていても、いつかは飽きてしまいます。曲の順番をシャッフルしても、あまり助けになりません。
インターネットでMP3ファイルをダウンロードすると、好きなアーティストの作品や、好みの分野の珍しい録音など、コレクションが断然増えますが、自分が能動的に選ぶ、というプロセスが入ります。自分がとても選びそうにない中に、こんないい曲もあったのかと、驚きを感じていたいのです。音楽の食わず嫌いを避けたいのです。
この点でいいのが、ラジオです。実際、筆者も、サンマテオにあるジャズ専門の公共FMラジオ局を好んで聞き、運営を助けるため、年に一回、寄付もしています。ただ、残念なことに、音質が劣り、陸橋やビルの陰に入ると、雑音が入ります。

ここで登場するのが、衛星ラジオです。名前の通り、衛星を介して放送しています。現在アメリカには、カーラジオ向けの衛星放送会社がふたつあります。XM衛星ラジオ(本社ワシントンDC)とシリウス衛星ラジオ(本社ニューヨーク)といいます。
昨年夏からの試験放送を経て、前者は昨年末から、後者は今年夏から、全米展開を始めました。サンフランシスコ・ベイエリアでは、消費者が衛星ラジオという言葉を耳にするようになったのは、今年6月くらいのことでしたが、ふたつの会社の大きな違いは、XMが半数のチャンネルにコマーシャルを入れ、月々のサービス料が弱冠安いのに比べ、シリウスはコマーシャル・フリーで、ちょっとだけお高いということです(10ドル対13ドル)。

アメリカの都市部では、AM・FMラジオ局を合わせると百近くあり(全米では、1万2千局)、ただでラジオが聞けるにどうしてお金を払うのか、と言う人もいます。まず、音質とサービスエリアです。衛星ラジオ専用のチューナーを使うと、CDに近い音質が得られます(モジュラーを経由し、既に持っているカーラジオのFM帯域を使うと、弱冠劣化するようです)。
音質の点では、来年から、デジタルAM・FMラジオの試験放送が始まり、今後のラジオのサービス展開にも期待が持てますが、こちらの方は、衛星を使うので、全米どの地域でも同じ番組が聞けます。ドライブしていて、ラジオ局を探す必要がありません。都市部には電波増幅局が設置されているので、陸橋の陰で途切れたりもしません。
また、番組も充実しています。たとえば、ポピュラーな、フランク・シナトラの専門チャンネルもあります。両社とも、ありとあらゆる音楽ジャンルに加え、30ほどのニュース、ビジネス、スポーツ、エンターテイメント番組のチャンネルがあり、全部で百の選択肢があります。男性、女性、若い世代向けと各々の層に向けたトーク番組や、スペイン語放送などにも抜かりはありません。

この便利な衛星ラジオを、誰かがプレゼントしてくれるなら文句はありませんが、自分で購入するのには、多少の抵抗がないわけではありません。まず、初期費用が、まだまだ高いです。チューナー、アンテナ、取り付けに、300ドルは掛かります。2社共用のレシーバーはまだ出ていないので、1社に満足できないと、丸ごと買い替えとなります。車会社のBMWやクライスラーなどは、この新サービスのオプション提供を始めているので、機器類の値段は、この先ぐんと下がるのかもしれません。
一方、家で簡単に聞けないのも、玉に瑕(きず)です。XM放送用に、家でも車でも使えるレシーバーを出している家電会社もありますが、クレードルとアンテナを余分に買う必要があり、使い勝手も良くないと言います。
そうなると、用もないのに車を運転して、ガソリン代がかさみそうでもあります。シリウスなどは、テレビのコマーシャルで、"これであなたは、車から出たくなくなる" と暗示をかけていますが、車に住むのは嫌だしなあ、と思っています。

<おそうじロボット>
白状しますと、筆者は、掃除機をかけるのが好きではありません。掃除自体は嫌いではありませんが、掃除機を使うのが嫌なのです。アメリカのごつい掃除機は、とても重いのです。一度、体重計で測ったことがありました。本体は6キロ、ヘッド部分は2キロもありました。こんな重い物体での階段の掃除となると、それはもう大変です。
そんな苦情にお答えして、おそうじロボット、"ローンバ(Roomba)"くんが登場しました。丸い、平たい形がキュートな、自動掃除機です。直径34センチ、高さ9センチ、重さは2.7キロです。床に置いておくと、勝手に動いて、お掃除してくれます。賢いので、障害物に触れると方向修正し、部屋の隅々まで動き回ります。付属の赤外線ビーマーで行動範囲を定めておくと、部屋の一部だけを掃くこともできます。3段階のセンサーが働くので、勢い余って、階段から落っこちることもありません。充電式バッテリーは2時間ほど持ち、かなり広い部屋でも一回で済みます。そして、どんな材質の床でも、大丈夫のようです。11月18日付のタイム誌(US版)では、今年のクールな発明品にも選ばれています。

このローンバは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の人口知能研究所に端を発します。この研究所からスピンオフした、iRobot(アイロボット)という会社の製作です。
iRobotは、アメリカでも有名なロボティックスの会社で、遠隔操作のロボット開発で知られています。インターネットを介し、ロボットが見聞きしたものを確認できるので、緊急救助ロボットや、エジプトのピラミッド探検ロボットに応用しています。
今年9月に行なわれたピラミッド探索では、"ローヴァー"ロボットに重要なミッションが与えられました。細い縦抗を潜り抜け、閉ざされた扉にドリルで穴を開け、その奥をカメラで探るのです。テレビでも中継された、この画期的な科学ミッションの結末は、意外にも、"扉の奥に、もうひとつ扉があった!" でした。計画はそこでストップとなりましたが、これはロボットの落ち度ではありません。

おそうじのローンバくんの方は、3年に渡る試行錯誤の結晶で、今年秋、ようやく商品化に漕ぎつけました。なんでも、彼らが到達したらせん状の動きは、最も効率的に掃除ができるのだ、とCEOのコリン・アングル氏は力説します(この方式だと、ロボットが部屋の大きさを測ったり、掃除した面積を覚えておいたりする必要がないそうです)。
平均的な広さの部屋は30分できれいにし、仕事が終わると、"よしっ、できた" とばかりに、ビーッと音を発し、自分で動きを止めてしまいます。ローンバくんは、賢いのです。賢いついでに、お手頃なのです。お値段は、たったの199ドルです。
登場するとすぐに、メディアを沸騰させたローンバですが、このお手頃さは、ロボットが家庭での実務をこなす時代の到来を意味しているのかもしれません。

ところで、ローンバくんがいたとしても、階段はやはり、従来の掃除機が必要のようです。階段をやってくれるなら、今すぐに欲しい一品であることは確かなのですが。

<話題の車>
こちらは筆者の話ではありません。近頃、ちょっとしたお金持ちの間では、GMが販売する巨大スポーツ仕様車、ハマー(Hummer H2)が大層な人気なのです。軍仕様車を10年前に一般車として売り出した "元祖ハマー" の2代目となります(両モデルとも、ハマーの親会社、AMジェネラルの工場で作られますが、パーツはGM製)。

いかにも軍用車という見かけですが、大きくて、安全ということで、女性ドライバーにも好評のようです。今では、デラックス・スポーツ仕様車の中では、一番人気の高いモデルとなり、発売わずか6ヶ月で、元祖ハマーの過去10年の累積販売台数、全米で1万1千台、を軽く追い越したようです。すぐに売れるので、ディーラーでは在庫切れの状態です。
特に人気なのはイメージカラーの黄色のようですが、ハマーH2は、この界隈でも、新しいステータスシンボルになりつつあるとも言われています。値段は元祖の半分とは言え、5万ドルを軽く越え、欲しいと思っても、庶民にはそう簡単に手に入るものではないのです。

<七面鳥悲話>
時系列は前後しますが、ここで少し趣向を変え、サンクスギヴィング(感謝祭)のお話をいたします。この11月第4木曜日の祭日を前に、その週の火曜日、ホワイトハウスでは大統領による "七面鳥恩赦(Presidential Pardon of Thanksgiving Turkey)" のセレモニーが開かれました。文字通り、大統領が七面鳥の命を助ける儀式なのです。
なんでも、リンカーン大統領の息子トッドが、丸焼きにされそうになった七面鳥の命乞いをした事に始まるそうですが、50数年前のトルーマン大統領の頃から、毎年この時期に行われるホワイトハウスの恒例行事となっているのです。
今年命拾いした七面鳥は、"ケイティー" というメスで、メスが恩赦を受けたのは、史上初めてのことです。ケイティーは、セレモニーのあと、ヴァージニア州の子供動物園にお引っ越しし、訪れた子供達にかわいがられることになります。

実は、このほほえましいセレモニーの裏側には、涙ぐましい努力があるのです。まず、ケイティーは、2500羽の中から選ばれたエリートなのです。ニューヨーク西部で、セレモニーのために特別に飼育された中から選ばれました。だから、毛並みも白く、美しい光沢があります。顔にも気品が漂います。黒服のシークレットサービスに驚いて騒ぎ出さないようにと、きちんとお作法も受けています。セレモニーの前夜には、VIP並みに、有名なホテル・ワシントンにも宿泊しました。
そして、彼女には、ブッシュ大統領に対するチェイニー副大統領よろしく、バックアップ要員がいます。名前は、ザックといいます。でも、きちんとケイティーがお役目を果したので、ザックの出番はありませんでした。
けれども、悲しい事に、彼女のように特別に飼育された七面鳥は、あまりに太りすぎているので、動物園に移った後も、長生きはできないと言われています(25キロもあります)。ザックに至っては、セレモニーの後の運命は、定かではありません。

今年、ホワイトハウスでは、感謝祭のディナーは行なわれませんので、少なくとも、ザックがここで丸焼きになることはありません。ブッシュ大統領と家族、親戚一同は、彼のテキサス州中部の大牧場で過ごすからです。
でも、奥さんのローラは、準備のために、近くのスーパーでお買物する必要はありません。軍の給仕達が、材料を大統領専用機に積んで、運んで来てくれました(ザックが入っていたかどうかの情報はキャッチしていません)。
勿論、お料理も、給仕達がやってくれます。ブッシュ家はみんな、テーブルに付くだけでいいのです。七面鳥のロースト、マッシュポテト、クランベリーソース、カボチャとピーカンのパイなど、伝統的なメニューが用意されます。
中には、アンチョビ入りの緑のお豆というメニューもあり、ブッッシュ大統領がアンチョビを取り除くのかどうかと、みんな興味津々です。彼は、すしが "つりの餌だ" と言うくらい、魚嫌いなのです。

しかし、この日、ケニアで起こったイスラエル人に対するテロ事件のため、大統領は急遽、首都にとんぼ返りとなりました。その後、休暇のためにテキサスに戻った彼が、アンチョビをどうしたのかは、残念ながら、定かではありません。

<メイフラワー号>
七面鳥やご馳走はさて置き、サンクスギヴィングは文字通り、家族や友人達と共に、感謝をする(give thanks)日なのです。起源は、イギリスからアメリカに渡った、メイフラワー号にさかのぼります。1621年、新天地での初めての収穫を感謝し、皆に分け与える日を設けたのが始まりです。
その後、収穫を祝う日は毎年の慣習とはなっていましたが、1863年、リンカーン大統領が国の祭日と定めて以来、アメリカで最も好まれる祭日のひとつとなりました。

毎年のように、筆者もいろいろな方に招いて頂いていますが、今年、ご招待にあずかった家で、貴重なお話を聞かせてもらいました。この友人は、先祖の系譜をたどると、メイフラワー号で最初にアメリカに渡って来た、ある男性に行き着くそうです。名前は、ジョン・オルデン(John Alden)といい、22歳の時、樽作り職人(cooper)として、メイフラワー号に乗りこみました。アメリカへの最初の移民だった102名のひとりとなったのです。2ヶ月の航海の間、ジョンは、樽に貯蔵した食料と水の管理を担当していました。
後に彼の奥さんとなったプリシラは、20歳の時、両親と兄と一緒に、大西洋を渡って来ました。アメリカに着いて間もなく、家族三人を次々と病気や厳しい生活環境で亡くしました(最初の冬を越したのは、わずか56人です)。
この不幸な、うら若き女性に心奪われたのが、船長のスタンディッシュでした。彼は、妻を病気で亡くし、新たなパートナーを探していたのです。そこで彼は、ジョンに仲立ちを頼み、ジョンはプリシラの前に現れました。スタンディッシュの気持ちを聞き終えると、プリシラはおもむろにこう言いました。"どうして自分の事だって、はっきり言わないの?" と。それから間もなく、プリシラはジョンと結婚したのです。ジョンは、色白の好青年だった、と伝えられています。

新天地での努力の結果、ジョンは、最高の社会的地位を持つ13名の紳士に名を連ね、名門のひとつとなったようです(ピルグリムに関する本には必ず登場する有名人です)。
ジョンとプリシラは、生涯で10人の子供に恵まれ、そのうち8人から発した系譜は、脈々と現在まで受け継がれています。子孫の中には、独立革命の指導者で、第二代大統領のジョン・アダムス、彼の息子で、第六代大統領のジョン・クウィンシー・アダムス、新しいところでは、俳優、監督として活躍した、オーソン・ウェルズがいます。
ボストンの南、ダックスベリーには一家の博物館もあり、毎年8月には、この地に子孫達が集い、お墓参りやパーティーが恒例行事となっています。今年は、実に、102回目の親族会だったそうです。
一族の系図(genealogy)作りも、熱心に行なわれています。口承の歴史が風化してしまわないようにと、オルデン一族に限らず、今、アメリカ中で、系図作りがさかんになっています。

<後記>
2年ほど前、サンクスギヴィングの翌日は "黒い金曜日(Black Friday)" と呼ばれ、この日以降、歳末商戦の書き入れ時となるというお話をしました(2001年1月5日掲載)。実は、この日は、"何も買わない日(Buy Nothing Day)" ともなっています。何年か前にカナダで始まった運動が、アメリカを含め、十数カ国に広がっているのです。
正直な話、筆者が耳にしたのは、今年が初めてでしたが、金曜日は混雑を避け家で過ごしたので、結果的に、これに準拠した形になりました。

そして、ふと思い出したのが、ある女の子の事でした。9月のある夜、サンフランシスコ・ジャイアンツの試合を見に行った、パックベル・パークでの出来事でした。
ゲームはまだ3回しか終わっていないのに、痩せた12、3歳の少女が、両親に脇を支えられ、出口に向かって階段を登って来ます。白血病とでも闘っているのか、フードで隠れた頭には、髪の毛がありません。誰かの配慮で、病院を抜け出し、良い席での観戦となったのでしょうが、残念ながら、9回まで見届ける元気はなかったようです。このクリスマスの季節、果たしてあの子が元気になったのかと、妙に気になっています。

夏来 潤(なつき じゅん)

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