Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2001年12月21日

2001年を振り返って:とにかく大変な一年でした

Vol. 28

2001年を振り返って:とにかく大変な一年でした

いつの間にか12月になってしまい、いよいよ今年も終わりが近づいてきました。カリフォルニア北部は冬が雨季なので、毎日のように雨の日が続き、毎年恒例となっている水害の話も、ちらほらと聞かれるようになりました。
今回は、今年の締めくくりとして、一年を振り返り、特に記憶に残っている話題をまとめてみたいと思います。


【エネルギー問題】

カリフォルニアの電力不足は、今年初めから深刻な問題になっていて、今年の夏は、停電が常識になるだろうとまで言われていました。でも、蓋を開けてみると、電力不足のため計画的な地域移動型停電(rolling blackout)が行なわれたのは、5月が最後でした。
ひとつに、消費者の意識が上がって、電力を無駄にしないことが徹底してきた事があります。電力消費量の大きいエアコンやセントラル・ヒーティングは極力控え、洗濯などは、日中の消費ピーク時を避けて行なうなどです。それに加えて、今年1月から、地元の電力会社に成り代わり、電力購入に介入したカリフォルニア州が、数十社の電力供給会社と長期契約を結んだ事もあります。これにより、州内外から、寸断なく供給が行なわれるようになりました。また、スポット市場で購入する必要がなくなり、今は以前の3割の値段で、同量の電力が買えるそうです。

しかし、良い事は続かず、今となっては、電力が充分にあるどころか、売るほど余っているらしいです。大きな企業などが、自分達で電力調達を始め、州の調達とは無関係となっているのも一因のようです。
電力は、貯蔵することができないので、余ると文字通り売るしかないらしく、そうなってくると、当然買い叩かれることになります。ところが、もともと契約書に記された購入価格は、全国的な電力不足下で設定されたため、今では考えられないほど高いものです。州の分析によると、今後数年、購入電力の3分の1は叩き売りに廻され(通常、5パーセントの売り払いは許容範囲だそうです)、購入にかかった金額1ドルにつき、20セントしか回収できないそうです。
こういった付けは消費者が被るしかないようで、電力不足で苦しんだ後は、二重の価格高騰で苦しむことになるようです。今後、州が長期契約を再交渉しない限り、この状態からそう簡単には逃げられません。去年不評だった、クリスマス・ライティング節制のお達しは、今年はさすがに州が遠慮することになりましたが、そんなことで煙に巻かれる消費者ではありません。

ところで、日本の金融業にも影響を与えている、エネルギー供給会社、エンロン社(本社、テキサス州ヒューストン)の会社更生法適用の申請は、カリフォルニア州の長期契約には、どうやら無関係のようです。州は、年初からエンロン社のビジネスのやり方を批判していて、州立大学系列の電力供給を除いて、早々と関係を絶っていました(人工的に価格を吊り上げ金を巻き上げる、price-gougingをしている、とデイビス州知事に名指しで非難されていました)。
もし、エンロン社とのビジネスを続けていたら、電力を買い叩ける立場に逆転していたのに、という声も聞かれます。


【経済停滞】

2000年4月を境に、株式市場は下落・低迷していましたが、今年に入り、あちらこちらで景気の悪さが肌で感じられるようになりました。先日、米国造幣局で300人以上の解雇が発表されましたが、これは、消費者が今までボトルや引出しに貯めこんでいたコインが流通し始めたため、来年は新しいコインの製造が4割減になることが予測されるためだそうです。
25セント・コイン(クウォーター)を造ると、そのうち20セントは造幣局の収益となり、連邦政府の経費に廻されていたそうですが、政府にとっても、思わぬところで財源が縮小するようです。

経済指標のGDPは、9月までの四半期で、マイナス1.1パーセントの成長だったそうで、過去10年来最悪のスランプとなっているようです。成長率は、来年明けるまでは、プラスに転じないと予測されているようです。
11月にぐんと盛り返した株式市場の回復パターンも、V型、U型なんて生易しいものではなく、W型(一旦回復した後、また下がる)かもしれない、という悲観的予測もあるようです(9月のテロ攻撃後、最安値を記録したダウは、11月末までに1500ポイント、ナスダックは500ポイントほど戻しました。12月に入っても、上昇傾向にあるようです)。
全米の11月の失業率は、過去6年最悪の5.7パーセントを記録し、月間解雇数は前月より減少したものの、確実に上昇中のようです。

米国経済の3分の2を占める個人消費(consumer spending)は、9月に劇的に減った後、10月には、自動車業界の "ローンの利子ゼロ" 作戦や、根強さを見せる住宅の売買などで、かなり戻ったようです。でも、世間の厳しい雇用状況を反映し、消費者の経済に対する自信度(consumer confidence)はまだまだ低く、歳末商戦に向け、財布の紐はかなり堅いと予想されています。
そうは言っても、個人的観測によると、アメリカ人のお買物好きには計り知れない底力があり、これからクリスマスに向けての巻き返しは、決してあなどれません。現に、正式な歳末商戦のスタートであるサンクスギヴィングの翌日("Black Friday")、ショッピングモールでは駐車もできず、すごすごと帰って来ました。不景気というのは、本当なのでしょうか?


【9・11】

いまさら言うまでもなく、9月のテロ攻撃は、米国社会を揺るがす重大事件でした。後遺症は各方面に広がり、思わぬところで、良くも悪くも影響が出ています。
経済的波及効果は、航空業界や旅行業界に留まらず、ティッシュペーパーや紙おむつの最大手、キンバリー・クラーク社は、5つの工場を閉鎖すると発表しました。"Kleenexティッシュ" や "Huggiesおむつ" といった家庭に浸透したブランドは、一見テロには無関係のようですが、事件後、ホテルやオフィス、空港などでの需要が減り、生産を減らすことになったそうです。6分の1を占める一般家庭外の売上は、今後数ヶ月間は回復しないだろうと見られているようです。
空港が一番賑わうはずのサンクスギヴィングの時期にも、旅行者は通常の2割は少なかったそうで、まだまだ国民の恐怖心は拭い去られてはいないようです。

炭疽菌への警戒も、社会全体に徹底していて、郵便物を扱うのをためらう人も多いようです。ダイレクトメールは、封を切らずに捨てられる場合が多く、新聞や雑誌社への投書は、Eメイルやファックスでしか受け付けない所もあるようです。お誕生日カードから出てきた細かい色紙が、機上で大騒ぎを起し、カードを開いた人が、着陸後尋問を受けたこともありました。
ドイツの名バイオリニスト、アンネ・ゾフィー・ムッターは、ニューヨークに着陸直後、全米のコンサートツアーをキャンセルしました。ニューヨークには着いたものの、怖くてとてもアメリカ中を演奏して廻る自信はない、というのが理由でした。

この時期、一番寄付金の多い非営利団体も、必要な額が集まらず、運営に四苦八苦しています。不景気や失業率の増加のせいもありますが、一般や企業の寄付が、テロ攻撃の被災者救済に流れたため、他の団体に廻ってこないという理由もあるようです。年末、どの家庭も、数十通もの寄付を促すダイレクトメールを受け取りますが、今年はそれが、そのままゴミ箱行きになっているせいもあるようです。
アメリカ人は、年収の3パーセントほどは何らかの形で寄付をするそうですが、決められた予算の中でどこかが膨らんだら、どこかがひっこむしかないようです。不況でお腹を空かせている人が全米で増えているのに、食料銀行(Food Bank)の棚はどこも、隙間だらけのようです。

一方、国民への心理的な影響も大きく、ニューヨークにいて直接惨事を目の当たりにした人も、テレビでの報道に接した人も、一様に悪夢にうなされたり、不眠症になったりしているようです。お陰で、うつ病の薬や睡眠薬の処方が増えているとか。
プラスの面では、人の命の大切さ、はかなさを痛感し、家族に対して優しくなった人が増えているそうです。前よりも頻繁に感謝の言葉を口にしたり、より長い時間一緒に過ごしたりと、人を繋ぐ効果もあったようです。
人を繋ぐと言えば、最近結婚件数が増加しているそうです。数年間つきあっていたカップルとか、2,3年先に漠然と結婚を考えていたカップルが、相手と一緒にいる必要性を感じ、大挙して式を挙げているらしいです。ブライダル産業は、宝石屋やギフト業界も含め、季節はずれの思わぬブームに、たいそう喜んでいるようです。

へんてこな話ですが、統計によると、9月以降、ポテトチップスなどスナック菓子の売上が増加しているそうです。もともと、ポテト料理、シチュー、ミートローフなどは、人の心を落ち着かせる食べ物(comfort food)として、特に冬場に好まれていますが、テロ関連のストレスから、食事に助けを求める人も増えているようです。
"どうせ明日の命も確かじゃないから" と、ダイエットにさようならをした人もいるようで、もしかしたら、国民の肥満度に拍車をかけることになるかもしれません。


【メイジャーリーグ】

今年のメイジャーリーグ野球は、ホームラン記録を塗り替えた、サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズの活躍も際立っていましたが、何と言っても、イチローの存在感は驚くべきものがありました。アメリカに来て、いきなり新人王とアメリカン・リーグのMVPを獲得するというのは、言うまでもなく、普通では考えられない快挙です。
オークランドA’sのジェイソン・ジアンビとMVPを争っていたので、あまりおもしろくないと思っているベイエリアの住人も多いでしょうが、イチローが文句なくスゴイ人だというのは、誰もが認めることでしょう。来年も、同じくらい活躍してほしいと願っているアメリカ人も、きっとたくさんいるはずです。
日本だけでなく、世界各地から名選手が集まっているお陰で、アメリカのワールド・シリーズは、本当の意味で、"ワールド" シリーズになって来ているようです。


【おまけ】

前回の話題、"ヒューレット・パッカードのコンパック買収劇" の中間報告です。12月7日、渦中の団体であるパッカード財団が、買収案に反対すると予備決定しました。"予備(preliminary)" という言葉がちょっとひっかかりますが、どうやらこれで、ヒューレットとパッカード両家関連の持ち株(全体の18パーセント)は、反対勢力となってしまったようです。

夏来 潤(なつき じゅん)

カテゴリー

  • お知らせ (4)
  • 仕事 (3)
  • 政治・経済 (28)
  • 教育 (8)
  • 旅行 (20)
  • 業界情報 (86)
  • 歴史・風土 (22)
  • 社会・環境 (53)
  • 科学 (7)
  • © 2005-2020 Jun Natsuki . All Rights Reserved.