Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2005年12月16日

Silicon Valley NOW:満5歳となりました!

Vol.77

Silicon Valley NOW:満5歳となりました!

早いもので、このSilicon Valley NOWのシリーズも、今月で誕生5周年を迎えました。2000年12月1日に掲載された「ハロウィーン:Trick or Treatの社会学」なるものが、シリーズ・デビュー作となります。

思えば、5年前、Intellisync Corporationの日本支社の方から、何かシリコンバレーについて書いてみませんかと誘われたのが、すべての始まりでした。特にテクノロジー分野にこだわらず、現地に住む人の目でシリコンバレーの生活を書いてみてください、それがご依頼でした。

第一作目は、インターネットバブル崩壊期の様子を「ドットコムの将来は?」と題し、3部作で書いてみました。が、ちょっと気張りすぎて、業績の数字なんかが先行し、面白みに欠ける試作品となってしまいました(さきほど読み返そうとしましたが、途中で挫折)。
シリコンバレー在住のインテリシンク株式会社の社長さんに試しに読んでいただくと、「だめだめ、ぜんぜんおもしろくないよ」のひとこと。おまけに、たとえに出していたアメリカの人気番組も、日本の人には何のことだかまったく伝わらないよと、完全なダメ出しでした(その頃はまだ、「サバイバー」やら「ミリオネア」なんかの話題作が日本に渡来していなかったのです)。
そこで、思い直して電光石火で書いたのが、デビュー作「ハロウィーン」です。すると、社長さんからは、「あんなクソおもしろくもないものから、よくまあすぐにこんなのが書けるねえ」と、ヘンな褒められ方をされ、とりあえず合格となりました。もともと自分の誕生日に近く、おとなも子供もみんなが楽しめるお祭りなので、ハロウィーンが大好きだったことも幸いしました。やはり、お題目を愛さなければ、いいものは書けませんからね。それ以来、今でも、社長さんが抜き打ちで品質検査をするので、手が抜けないのです。

まあ、ハロウィーンのあとの2作は、いきなり医療業界のオンライン化などと、ちょっと気張った内容になってしまっていますが、基本的には、シリコンバレーに住む人たちが感じていることを書くのが、ここのテーマなのです。時には、シリコンバレーを大きく飛び出し、カリフォルニアやアメリカ全体、そして、日本やヨーロッパやアフリカのお話が出てきますが、シリコンバレー在住のライターから見るとこうなります、といったところでしょうか。
今年は、最初にサンフランシスコに引っ越してきて、25周年記念でした。その間、ずっとカリフォルニアに住んでいたわけではなく、日本やフロリダに住んでいた時期もあります。けれども、振り返ってみると、ところどころ記憶は抜けていますが、ずっとサンフランシスコ・ベイエリアに住んでいたような、そんな気もしています。もう充分に、第二のふるさとかもしれません。

途中でこのシリーズの存在を知った方が、最新作だけでは飽き足らず、連載第1回までさかのぼって読んでしまったと、おっしゃってくださることがあります。それは、書く者にとって、最高の賛辞だと思っております。
たったひとりでも「あ~、おもしろかった、読んでよかった」と言ってくださる方がいれば、それは大成功なのです。そして、満足していただける方がひとりでもいらっしゃる限り、自分のベストを尽くそう、そう思いながら書いています。いつも必要以上に物事をほじくり返すのは、そういったこだわりがあるからなのです。まあ、知りたがり屋の性格ということもありますが。

いつか、毒舌家の友人が、「どうして小説は書かないの?想像力がないから?」と尋ねたことがありました。う~ん、鋭い!と思いながらも、「いや、小説って、自分の内面を大型スクリーンに投影するようなものでしょう」などと、理屈をこねてみました。まあ、言葉が隠れ蓑となる詩と違って、小説は逃げ場がないと思っているわけですが、それと同時に、世の中の出来事ほどおもしろい、摩訶不思議なことはないと信じていることもあります。まさに、事実は小説より奇なりなのです。そして、毒舌を吐く友人は大事にしなければと思うわけです。

このシリーズを掲載するにあたって、いろんな方にお世話になってきました。この場をお借りして、お礼を申し上げたいと思います(記事の内容や編集に関しては、筆者個人が全責任を負うものです)。
それから、発案してくださった小林さん、なんとか5年間続けてまいりました。そして、Silicon Valley NOWという素敵な名前を、どうもありがとうございました。これからも、品質検査にひっかからないように努力いたします。


<アメリカの一年>

今年もいろんなことがありました。おもな出来事を思い出すままにリストにしてみると、残念ながら、いいことよりも悪いことの方が先行します。

アメリカでは、2001年9月のテロを境に、急に世の中が暗くなったわけですが、昨年11月ブッシュ大統領が再選し、お仲間の共和党議員が大勝利をおさめたあたりから、ますます暗く、重苦しい世の中になっています。宗教原理主義をベースとした政治がまかり通り、それは政策のみならず、世論にも反映されています。今まで論理で抑えられていた黒い力が台頭してきているのです。
国内では、生物界の基礎である進化論や、幹細胞研究、末期医療、女性の生む権利といった生命に関する思想への攻撃がさかんになり、国際的には、HIV/AIDS援助プログラムが大幅にカットされています。"Faith-based(信仰に根ざす)"ポリシーのもと、自分たちの神の定めるモラルや教義が最優先なのです。科学は軽視され、世の出来事や現象はすべて曲がったレンズで解釈されます。地球の温暖化も科学者の妄想とされ、京都議定書にはそっぽを向きます。環境汚染に関する科学者の報告書も、上からのプレッシャーで、省庁のお役人が堂々と改ざんします。環境保護庁などの省庁を辞めた科学者は、今までたくさんいます。

いつまでも終結しないイラク情勢も、影を落とす要因となっています。今年に入って、ようやくイラク介入に反対する声が大きくなり始めましたが、国民の大部分は、反戦のスローガンは米兵の士気を妨げ、好ましくないと信じています。カリフォルニアでは、死亡した米兵を表す十字架が海岸を埋め尽くし、"西のアーリントン墓地(Arlington West)"として、その日の仮の祈りの場となりますが、多くの地域では、そんなことは馬鹿げて映るようです。そして、当のアーリントン墓地では、若くして命を落とした兵士の墓石に、"イラク解放作戦(Operation Iraqi Freedom)"などと、政府のPRフレーズが刻まれます。
"No child left behind(すべての子供が取り残されないように)"という教育政策のもと、政府の補助金をもらう公立学校では、軍隊のリクルート要員を校内に入れなければならないという規則ができあがっています。軍隊に入れる18歳に満たない子供たちを相手に、リクルート活動をするのです。志願者が軒並み定員割れしており、軍も必死なのです。入隊を約束してくれたら、ボーナスや大学の奨学金を差し上げます、そんな甘い言葉で誘います。アメリカ国籍を持たない移民でも大丈夫。CIAやFBIには入れなくとも、軍隊には志願できるのです。戦地に赴けば、国籍取得という特典もあります。有名私立に通う政治家の子供たちには、そんなことは関係がありません。どうせ下層階級の事ですから。

天変地異も多い年でした。ハリケーン・カトリーナはその最たるものでしたが、温暖化現象のせいか、今年はハリケーンの数が異常に多かったようです。なんでも、大西洋で起こった13のハリケーンというのは、154年の観測史上最多だそうです。ヨーロッパでは、夏の干ばつに続き大洪水も起こり、パキスタンでは大地震です。アフリカ諸国では、干ばつと害虫の被害で食糧危機に陥り、ニジェールでは、今でも3百万人が飢えに瀕しています。
災害の後は、復興が遅れます。ニューオーリンズでも、住民がなかなか地元に戻れず、5万世帯が全米のホテルで避難生活を続けています。人が戻り始めたのは、フレンチクウォーターのある中心部だけで、70万の人口は、現在6万人となっています。街を囲む堤防のあちこちに構造的な欠陥が見つかり、簡単に修理はできないようです。堤防工事が完了しなければ、25万戸の住宅を建て替えるわけにはいきません。遺族の心痛はつのるばかりで、家族に戻された仏様は、わずか5百体のみです。救助活動の遅れで遺体の損傷がひどく、返そうにも、返す先が見つからないのです。1927年、市の中心部の白人居住区を守るため、黒人の貧困地区に向け、堤防が破壊されたことがありました。人々の心に、そんな歴史がよみがえります。
そういった庶民の苦しみの裏で、ハリケーンを名目に高騰したガソリンや天然ガスのお陰で、せっせと札束を懐に入れている人もいます。議会が動き出すと、途端に小売価格が下がり始めるのは、どう見ても不自然です。政権にコネを持つのは必須のようです。なにせ、石油業界の献金の8割は、大統領率いる共和党に注がれているのですから。
天災と人災はいつも隣り合わせですが、有名なアメリカの小説家、カート・ヴォネガット氏は、多発する災害をこう表現します。地球の免疫が、人類を毒素として排除しようとしているのだ。

経済界で今年一番の話題となった本に、"The World is Flat"というのがあります。ニューヨークタイムズ紙のコラムニスト、トーマス・L・フリードマン氏の大作です。シリコンバレーを中心とする原動力によって、西や東だとか、先進・後進だとか、地理的位置だとかは、もはや関係がなくなりつつある。世界が平らになり、人や物が自由に迅速に流れるようになると、アメリカのあり方も変わるべきだと示唆しています。
昨今、アメリカでは、1千1百万人ともいわれる不法移民対策が声高に唱えられ、国境地域で武装した民間自警団が生まれています。ビジネス界やアカデミアでも、合法的移民へのビサ発行数が最低限に抑えられています。テロ対策という大義名分もありますが、その影に、こういったアメリカ人の不安が隠れているようです。中国やインドにすべてを持っていかれる前に、今国内にあるものは、是が非でも守り抜かなくてはというヒステリアが。
しかし、そのことで犠牲にしているものには気が付いていないようです。アメリカは、移民で豊かになった国です。世界中から人が集まり、自由な斬新なアイデアが生まれる場となるのです。職場や大学が外国人を歓迎しなくなったら、活力の源が枯渇してしまいます。国に垣根をめぐらせば、頭脳明晰な学生がアメリカの高等教育を避けるどころか、頭脳の流失が起きてしまいます。
現に、規制の厳しい幹細胞研究の分野では、イギリスやシンガポールに居を移す科学者が出てきています。昨年11月、全米に先駆け、住民投票で30億ドルの資金提供が決まったカリフォルニアの幹細胞研究ですが、間髪入れず、条例の不当性を訴える申し立てが2件起こり、一年たった今も、資金調達の公債発行は凍結されたままです。今は、細々と民間の寄付でまかなわれているのが現状ですが、その間にも、研究者は次々と逃避行しています。

現政権はあと3年続きます。2008年が終わる頃には、世の中はどうなっているのだろう。そんな風な危機感を持つのは、どうやら筆者ばかりではないようです。
たとえば、インドを始めとして海外に大きな投資を続けるIntelですが、会長のクレイグ・バレット氏は、こう語ります。ヨーロッパは現在、経済の空洞化で失業率が非常に高く、アメリカよりも状態は悪いわけだが、このままでは、あと何年後かにアメリカも同じになってしまう。それを防ぐためには、今以上に頭脳を失わない必要があるのだと(11月30日、CNBCとのインタビュー談)。
自身もヨーロッパからの移民であるIntelの創業者のひとり、アンディー・グローヴ氏は、かなり手厳しい見方をしています。科学や起業の分野で世界のリーダーシップを保つほど、アメリカには創造性がなくなってきていると。天地創造説の再来を始めとする国内の"反科学"の動きや、世界の"グローバル化"が挙げられています。知識労働者というものは、もはや世界の日用品になっているのだと(10月12日、インタビュー番組"Charlie Rose"での談話)。


<今年の流行語は?>

日本では、「小泉劇場」やら「想定内(外)」が流行語大賞に選ばれたようですが、アメリカでは今年、そこまで流行った言葉はなかったような気がします。あえていうなら、「ポッドキャスティング(podcasting)」でしょうか。ご存じの通り、「ポッド」はアップル・コンピュータのiPodを指し、「キャスティング」は放送を表す「ブロードキャスティング」から来ています。ラジオ番組のような音声を、従来のラジオではなく、インターネットを介してパソコンやiPodに自動的に配信し、いつでも、どこでも自分のスケジュールで番組を楽しめる、そんな新たなメディアのあり方を実現したものです。
これだと、大手ラジオ局チェーンだけではなく、誰もが、みんなの欲する情報の発信者となれるわけです。たとえば、一日中、大好きなワインの話を発信する人もいますし、野球のことなら任せてよという人もいます。そんな人気に乗じ、新聞や雑誌のコラムにも、音声発信が広がっています。テレビのニュース番組だって、あとから音声で聞けるので、見逃したって大丈夫。
ポッドキャスティングは別にアップルが始めたわけでもないですし、ポッドキャストを受けるデバイスは、何もiPodに限らないわけです。しかし、さすがに今四半期9百万台の売り上げが予想されるiPodは、その勢いで、流行語まで生み出すのです。

そんな話題の「ポッドキャスティング」に続けとばかり、シリコンバレーの住人たちは、年末の造語コンテストで独自の表現を編み出します。
以前一度ご紹介しましたが、サンノゼ・マーキュリー新聞が募集するこの造語コンテストは、正規の単語のスペルにアルファベットをひとつ足したり、変更したりして、まったく新しい意味の単語を作り出し、一年をうまく表現するというものです。以下に、5つの部門から代表作をご紹介しましょう。

まず、今年もiPodが目立ちます。たとえば、bipod。これは、耳から電線をぶらさげ、二本足で闊歩する動物のことです。二足歩行の動物を指すbipedから来ています。お次は、podfast。ティーンエージャーの娘や息子にiPod を買ってあげなかったので、親への抗議のために起こされたハンストのことです。これはpodcast(ポッドキャスト)の変形版で、fastというのは、breakfast(朝食)にもあるように、断食を指しますね。
そして、iPad。アップル製品に完全に占拠されてしまった居住空間のこと。Padは、古語で家の意味です。このiPadは、前回話題となったMicrosofa(マイクロソファー)に類似しています。家具屋のショールームで見るとちょうどよかったのに、家に入れるとだんだんと自己主張し始め、そのうち、互換性(協調性)を保つため、テレビも含め、他の家具を全部入れ替えなければならなくなるソファのこと。

栄えある大賞に選ばれたのは、hubridsです。ハイブリッド車を表すhybridsの転換語です。ハリブリッド車の代表選手、トヨタのプリウスを持つがゆえに感じる、過剰なプライドのこと。ちょっと難しいのですが、どうも、ギリシャ語源のhubris(ごう慢)からきているようです。
今年アメリカでは、ガソリン価格の高騰で、いきなりSUVからハイブリッドに人気が移ったのは確かです。そして、アメリカ人全体の車のローン額が10月時点で減少しているところを見ると、夏から秋にかけて、車の買い控えも起きているようです。

大賞は逃したものの、kung fluも堂々とトップページに掲載です。人を完全にノックアウトしてしまうアジア型の意。おわかりのように、kung fu(カンフー)とavian flu(鳥インフルエンザ)をかけています(avian fluは、bird fluとも呼ばれます)。
外国からどんどん人が入ってくるアメリカでは、夏あたりから鳥インフルエンザの脅威を感じていて、タミフルなどの薬の備蓄や鳥インフルエンザ・ワクチンの開発が急がれています。なんでも、史上一番ひどかったインフルエンザの大流行、1918年?19年のスペイン風邪(Spanish flu)は、ウイルスの遺伝子を復元調査してみると、鳥インフルエンザだったことが判明しています(今年10月、科学ジャーナルNature誌とScience誌で発表された、科学者2チームの長年にわたる研究結果。当時の感染者の肺の細胞から、ウイルスの遺伝子配列とウイルス自体が復元されています)。
ネズミの実験から、このウイルスは、現代のH5N1型と違って、伝染性が非常に高かったことが明らかになっています。が、H5N1型にしても、今後の変異が心配の種ではあります。備蓄したタミフルが、変異した鳥インフルエンザに効く保証もないですし。

政治の世界からひとつ。カリフォルニアのシュワルツネッガー知事をおちょくった、referendumb。知事の大好きな「住民投票」referendumに、「おバカさん」のdumbがくっついています。これは、多くの反対を押し切って行われた11月上旬の州住民投票で、知事が完全に敗退したことを表しています。知事個人が出した提案四つは、すべて住民に却下されました。庶民の味方である学校の先生や看護師さん、消防士さんなんかを敵に回すと、勝ち目はまずありません。
この中には、州内を牛耳る敵対勢力・民主党をけん制するための、選挙区改正案などもありました。現在、議会が定める選挙区の区分けを、無作為に選ばれた元裁判官三人にゆだねるものです。昨年のテキサス州の選挙区改正で、これが反対勢力の撃退に有効であることは証明済みです。ゆえに、州外からの関心も高く、有名な他州選出の共和党連邦議員も、提案賛成のテレビコマーシャルに友情出演しています。ディスカウントチェーン最大手のWal-Mart(本社アーカンソー州)も、キャンペーンへの献金を欠かしません。民主党がカリフォルニア州を管理していては、商売がやりにくいようです。
現在、ノックアウト寸前のシュワルツネッガー知事ですが、州民の支持は3割と低迷しています。ごく最近、民主党の中から補佐官を選ぶなど、お仲間・共和党の聞こえもよくないようです。それでも、来年の州知事戦には出馬する意欲を表しており、今後の展開が楽しみではあります。

そして最後に、ポップカルチャー部門からは、sexpectation。これは、先月号でご紹介したABCの超人気テレビドラマ、"Desperate Housewives"の視聴者が、毎回ドラマに抱く密かな期待感。期待を表すexpectationの変形ですね。
先月は、"Desperate Housewives"を始めとして、ABCやDisneyチャンネルのテレビ番組が、アップル・コンピュータのiTunesミュージックストアで購入できるようになったことをお伝えしました。放映の翌日に1ドル99セントで購入し、パソコンやビデオiPodで観賞できるのです。発売開始8週間で、3百万本ものビデオコンテンツがダウンロードされています。
これに負けじとNBCは、人気の犯罪捜査ドラマシリーズ"Law & Order"や、若い層に絶対的支持を受ける深夜コメディー番組を、同様にiTunesで発売すると発表しています。
一方、残る三大ネットワークCBSは、アメリカ最大のケーブルテレビ配給会社Comcastで、人気番組のオンディマンド配信を始めることを発表しています。一押しの犯罪捜査ドラマシリーズ"CSI"や、リアリティー番組の王様"Survivor(サバイバー)"などが、一話99セントで1月から購入可能となります。
オンディマンド方式としては、NBCも衛星テレビ配給会社DirecTVと契約を結び、ご自慢の"Law & Order"や、系列USAチャンネルの刑事コメディー番組"Monk"などを、オンディマンド配信する予定です(ComcastとDirecTV、いずれの場合も、オンディマンドに対応するセットトップボックス(STB)が必要となります。けれども、現行のデジタルビデオ録画機には、STB機能が付いているものが多いので、この場合、新たにデバイスを追加する必要はありません)。

先月号でもご紹介したケータイでのテレビ画像配信ですが、Verizon WirelessのVCast対応機種であるSamsung a950は、感謝祭の翌日から3日間、50ドルという破格の値段で売られました。その翌日からは、今度はLG VX8100が100ドルに値下げされています(いずれも元値は250ドルで、2年契約に基づくキャンペーン価格)。歳末商戦はバラ色と、キャリア陣はほくそ笑んでいるやもしれません。

テレビ、パソコンに引き続き、iPod、ケータイと、火のついたビデオコンテンツ配信ではありますが、きっと来年も熱い視線を集めることでしょう。そのうち、衛星ラジオのXMやSiriusも、ビデオコンテンツに乗り出すことでしょう(周波数帯域の買収などのインフラの面では、XMが一歩リードしているようではあります)。
1月9日から、ラジオ界の超大物パーソナリティー、ハワード・スターン氏を起用するSiriusですが、彼の番組などは、画像があった方が、受けがいいこと間違いなしです。なにせ、宣伝文句は「自由を打ち鳴らせ!ストリッパーによって打ち鳴らすのだ!」ですから。このスターン氏、ラジオ界では最もたくさん罰金を科せられたご仁なのです。今までラジオ局がFCC(連邦通信委員会)に払った罰金は3億円以上だそうな。どうなることやら。


夏来 潤(なつき じゅん)

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