Life in California
ライフ in カリフォルニア/歴史・習慣
Life in California ライフ in カリフォルニア
2019年02月18日

Wash me!(洗ってよ!)

いきなり変な題名ですが、Wash me!



訳して「わたしを洗ってよ!」というわけです。



実は、これはとってもアメリカらしいお話で、「洗ってよ!」と主張しているのは、誰でもありません。「車」なんです。



アメリカでは、車は生活の必需品。ですから、毎日使っていると土ぼこりが付いてきて、自然と汚くなってくる。



とくに、カリフォルニア州をはじめとして、ワシントン州やオレゴン州といった西海岸の地域は、冬が雨季。夏は乾季で雨がほとんど降らないのに、冬になると、かなりの確率で雨となります。



これまで数年間は「干ばつ(drought)」で極端に雨の少ない雨季を経験していましたが、ようやく昨シーズンからは活発な雨雲が戻ってきて、今シーズンは雨の日も降水量もグンと増えています。ですから、車を洗うチャンスがなくなって、自然と車も汚くなっていく。



すると、この「Wash me!」が出現するのです。



そう、汚い車を見かけると、いたずら心がうずいてきて、「お願いだから、わたしを洗ってよ(Wash me)」と落書きをして、車の気持ちを代弁してあげる人が出てくるのです。



とくに冬のスキーシーズンには、土ぼこりで汚れた車が増えますよね。ですから、もしかするとアメリカの「冬の風物詩」と言えるのかもしれません。



こちらのトラックは、Wash me! とは書かれていないものの、なにやらたくさん落書きされています。意味はわからないけれど、「925 Bars」と書かれているように見受けます。よく見ると、「Patty!」という女のコの名前も出てくるのです。



このいたずらっ子にとっては、うっすらと茶色く変色したトラックの車体が、大きなキャンバスになっているんですね。心の中に浮かんだ文字を、車体に向かって吐き出している、それが、この「作品」。




もともと、アメリカのトラックは、白い無地の車体も多いです。ですから、汚れを利用した落書きだけではなく、ペンキを使った本格的な(?)落書きも頻繁に見かけます。



日本では「なんとか運送」となると、それぞれの会社のイメージカラーがあって、青や緑と、美しく塗られているトラックがほとんどですよね。それが、会社の宣伝にもなりますから。



ところが、アメリカの運送会社「なんとかトランスポーテーション」は、白を基調とした車体が多いです。



こちらのように、手間をかけて文字と自社ロゴを書き込んだものもあります。が、小さな会社となると、わざわざ文字を入れることなく、白いまんまで走っている小型トラックも多いんです。



すると、これが、格好のキャンバスとなります。だって、真っ白ですから、「どうぞ描いてください!」と言わんばかりの大きなスペースではありませんか。



そんなわけで、こんなトラックが出現するのです。



こちらは、白いトラックをわざわざ真っ黒に塗っていたんだと思いますが、それがかえって、「芸術家」の心をくすぐったのかもしれません。「なるほど、この漆黒の背景には、白い星がよく映えるぞ!」と。



このトラックを見つけた数日前にも、真っ白いトラックがでっかいキャンバスにされていたのを見かけました。



もう全面が「絵画」となっていたのですが、きっと持ち主は「もうしょうがない、このままにしておこう」と、グラフィティー(graffiti、落書き画)を消そうとも思わなかったのでしょう。だって、消したところで、またまた描かれるのは目に見えていますものね。



たぶん、こういった小型トラックは、個人で営業する運送会社のもので、自宅前に駐車してあるケースが多いのでしょう。必ずしも治安の良い地域に住んでいるわけでもないし、日本のようにいつも美しく洗車してあるわけではありません。



ですから、グラフィティーの「芸術家」が、格好の餌食としてしまうのでしょう。



だって、日本のようにピッカピカのキレイな車体だったら、いたずら書き(描き)も気が引けますが、ちょっとくらい汚れていたり、少々傷ついていたりしたら、罪悪感も減りますものね。(こちらの車のように青いテープで応急処置だなんて、「車はいつもピッカピカ」の日本では考えられないですよね!)



というわけで、アメリカらしい落書き、Wash me!



アメリカに暮らしていて、誰かから「Wash me!」と車に落書きされたら、それは(必ずしもキレイ好きではない)アメリカ人のスタンダードからしても、「これはひどい、お願いだから車を洗ってあげてちょうだいよ!」ということです。



そう、Wash me! と書かれるのは、ちょっと恥ずかしいことなのでした。



こぼれ話: ご存じのように、カリフォルニアは世界各地から移民の集まる州です。メキシコや中南米と、スペイン語圏から来た方々も数多く暮らしています。



ですから、Wash me の代わりに、Llava me という落書きを見かけたことがあるのです。



おそらく Wash me のスペイン語版だと思いますが、さすがに落書きまでコスモポリタンですよね!




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