Essay エッセイ
2014年04月05日

おじいちゃんのお話かご

その「おじいちゃん」は、中米ニカラグアからアメリカにやって来ました。

まだまだお若い方で、仕事もバリバリ現役ですが、お孫さんがひとりいらっしゃって、またひとり生まれるそうなので、「おじいちゃん」ということにいたしましょう。

この方は、わたしと会うと、なぜか懐かしそうに子供の頃の話をなさるんです。きっと、誰かに伝えたいお話をたくさんお持ちなのでしょう。

おじいちゃんが小さい頃、家の庭には立派なマンゴーの木が立っていました。

マンゴーの木は、とても大きく成長するので、木登りには最適なんだそうです。

そんなわけで、よくマンゴーの木によじ登って遊んでいたのですが、楽しみは登るだけではありません。

もうひとつの楽しみは、花が終わって、実を結ぶ季節。

ほうとうは、実が黄色くなるまで待って食べないといけないのですが、まだ熟する前の緑色の実を食べるのが大好きだったんです。

たとえばパパイヤなどは、未成熟の緑の実を食材に使ったりしますけれど、マンゴーも成熟する前は、カリカリッとした歯ざわりで、ほんのり青くさい感じなのかもしれませんね。

この緑色のマンゴーに、塩をちょっとかけて食べるのが、一番の食べ方でした。ほんとに、ほっぺたが落っこちるくらいにおいしいそうです。

ですから、実がなる季節になると、喜び勇んで木に登っては、緑色の果実をパクついていたのでした。

でも、まだ熟していない実を食べると、必ずと言っていいほどにお腹をこわすので、お母さんは、気が気ではありません。

子供の姿が見えなくなると、「あら、あの子はどこに行ってしまったの? またマンゴーの木に登って、実を食べてるんじゃないでしょうね!」と、庭に探しに出て来ます。

さすがに、お母さんに見つかって「お腹をこわすから、早く降りてらっしゃい!」と大目玉をもらうと、しぶしぶ木を降りてみるのですが、時すでに遅し! 少したつと、お腹がゴロゴロしてくるのでした。

けれども、お母さんは慣れたもので、ちっとも驚きません。「もう、しょうがないわねぇ」と言いながら、自家製の処方薬をつくり始めます。

そう、お母さん秘蔵の特効薬。

これを飲むと、あら不思議、すぐにお腹は治るのでした。

おじいちゃんの家は、ニカラグアでも裕福な家庭だったので、街のお医者さんにかかることはできたはずです。でも、お医者さんの薬よりも、お母さんの「処方薬」は効果てきめん! だったのでしょう。

ですから、子供の頃は、いつもお母さんの特効薬のお世話になっていたそうです。


ある日、この話を母にしたことがあったのですが、母は、懐かしそうにこう言うのです。

そういえば、小学校の頃、木にたわわに実る赤い実を食べたことがあると。

あるとき同級生の家に「桑(くわ)の実」をもらいに行ったら、何かしら赤い実をたくさんつける木があって、それをみんなで拾って食べた子供の頃のひとコマ。

木の下に広げた蚊帳に、お父さんが棒を使ってうまく実を落っことしてくれたので、みんなで拾い集めて食べました。

でも、それが「赤い実」というだけで、名前はわからないとか。

庭の赤い実と聞くと、「グミの実」を思い浮かべますが、グミではないそうです。だって、グミの実は、違う同級生の家で食べたのをよく覚えているから。

そして、スモモのように大きな果実でもなかったとか。

この同級生は Oさんという商店街からは離れた家の子で、丘の上の庭には木がいっぱいあって、この「謎の赤い実」以外にも、実がなりそうな木はたくさんあったそうです。きっと、夏は枇杷、秋は柿と、季節ごとの楽しみがあったのでしょう。


母の話を聞いていたら、またおじいちゃんの話を思い出したのですが、ニカラグアのおじいちゃんの家でも、やっぱりお父さんが実を落っことしてくれたそうです。

こちらは、小さな赤い実ではなく、立派なアヴォカドの実。

アヴォカドもマンゴーと同じく、大きく成長する生命力旺盛な木ですよね。濃い緑の葉っぱが、どことなく南国的でもあります。

でも、その実の落とし方が変わっていて、日本では絶対にあり得ない方法なんですよ。

何かって、ショットガンで実の近くを狙って、うまい具合に打ち落とすんです!!

それで、実が地べたに落っこちる前に、うまくキャッチするのが、子供の役目。

だって、アヴォカドの実はやわらかいので、地べたに落っこちるとグシャッとつぶれてしまいますからね。

まあ、なんともスゴい「収穫の方法」ですが、木になっている、おいしそうな実を食べたい! という願望は、どこの国も同じでしょうか。

というわけで、今日は、おじいちゃんと母の思い出話。

太平洋の海原の両側に、たわわに実る果実のお話でした。

写真出典:Wikipedia


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