Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2006年10月26日

サンタバーバラの駐車場

前回、ワインディナーのお話を載せたら、お友達がこう言っていました。食べ物もおいしそうだけど、ディナーがあった建物も素敵ですねと。

そこで、わたしは答えておきました。アメリカの建物は、外観は美しく、壮大に見えるけれど、安普請(やすぶしん)だよって。
 すると、彼女は、「いわゆる、見掛け倒しってやつですね」と、実にいい表現をしていました。

まさに、アメリカの建物って、そうなんですね。我が家も、その例外ではなくって、連れ合いのお父さんも、わたしの父も、新築の頃に「細かいところを見ると、とっても安普請だ!」などと言っていました。

しかも、よくまあ、あちらこちらが壊れる。いつも「ハウスシッター」していなくてはいけないって感じなんですね。

ところが、そんな見掛け倒しの家にも住めない人が、たくさんいるんですね。そういったお話をちょっといたしましょうか。


カリフォルニア州南部の海沿いに、サンタバーバラ(Santa Barbara)という風光明媚な街があるんです。

アメリカじゅうから人が集まる、カリフォルニア有数の観光地。こぢんまりとした素敵な街並みで、カリフォルニアに住む人にとっても、週末のドライブのついでに泊まってみたい、憧れの街なんですね。

街はきれいな海に面していて、海沿いにはずっとビーチが続いています。街の真ん中には、歴史を秘めた古いスペイン風の建物があって、そのまわりには、おしゃれなレストランやショップがこまごまと並びます。

ここにはアーティストなんかもたくさん住んでいますし、ゆっくりと散策するのには最適な街なのですね。

(この街の歴史については、また別の機会にお話いたしましょうか。)


そんな、のんびりとしたサンタバーバラの街に、こんな支援プログラムが登場したのでした。

車で寝泊りする人たちのために、夜間、駐車場を解放しましょうと。

そうなんです。こんな風光明媚な街にも、他のカリフォルニアの街々と同様、住む家のない人たちがいるんですね。

今のところ、この新企画に参加する駐車場は少なく、10軒ほどにとどまっています。ひとつの駐車場に5台くらいしか停められないので、全部で50台くらい。

でも、少なくとも、車で寝泊りする人にとっては安全だし、警察にしつこく尋問されることもありません。


実は、カリフォルニアには、ホームレスの人がたくさんいるんですね。やっぱり、もともと人口がダントツに多いこともあります。何と言っても、2番目のテキサス、3番目のニューヨークを、大きく引き離している州ですから。

それから、気候がいいこともあるのでしょうね。ミネソタ州みたいに、冬は雪に閉ざされるなんてこともないですし。だから、外で過ごすことも可能なのです。

そして、カリフォルニアの中でも、どちらかと言うと、北よりも、冬の寒さがゆるい南カリフォルニアの方が多いようですね。調査をしてみると、ロスアンジェルス郡なんかは、桁違いにホームレスの人が多いようです。
 カリフォルニアとは言え、シリコンバレーの辺りだと、冬は凍える可能性がありますから。


この南カリフォルニアのサンタバーバラにも、4千人ほどのホームレスの人たちがいるそうです。
 街を観光していると、そんなことはまったくわかりませんが、路上に停まっている車で生活している人もかなりいるようです。

やっぱり、アメリカは車社会ですので、家はなくとも、車だけは手放さない人もいるのですね。

で、こういう風に車で寝泊りしている人は、見かけも普通だったりするんです。

たとえば、こんな人がいます。30代後半かとお見受けする男性。彼は、数年前まで、インターネット関連の会社を経営していました。会社は株式市場にも公開し、一時は、株価もうなぎ上り。手持ちの株の値は、30億円を超えていたそうです。

でも、またたく間に、ネット企業の崩壊が訪れ、とうとう一文無しに。今では、スクールバスを改造した、ワンルームの「家」に住んでいます。ふたりの男の子と一緒に。

この子たちは、ふたりとも小学生くらいですが、ちゃんとコンピュータを使ってお家でお勉強。もともとお父さんは賢いので、ホームスクーリングでも充分にやっていけるのかもしれませんね。

(ホームスクーリングとは、学校には行かせないで、自宅で親が子に教育をすることです。宗教上の信条とか、他の子よりも突出しているからとか、学校は危ないからとか、いろんな理由があるようです。このような自宅教育の家庭は、年々増えているようですね。)


びっくりすることに、ホームレスの人の中には、ちゃんと定職を持っている人もいるんですよ。
 でも、何でもお高いカリフォルニア。家を借りるのにも、まとまったお金が必要なんです。だから、収入がちょっと不安定だと、ホームレスになる人も出てくるんですね。

50代と思しき女性。彼女は、サンタバーバラ市営の駐車場で働いています。

何らかの理由で、住み慣れたプール付きの家を手放すこととなり、貯金もなかったのか、やむなく車で生活することとなってしまいました。

毎日、駐車場を訪れる車に、笑みを浮かべて応対する彼女。そんな彼女が「ホームレス」だなんて、誰にもわからないでしょう。

食事は、近くのスーパーでスープなんかを買うけれど、それをなかなか暖められない。街でたった2箇所だけ、店内の電子レンジを使わせてもらえる場所があるそうですが、それも顔見知りの店員がいるときだけ。あとは、冷たくあしらわれるだけ。

暖かい食事と、冷たい朝の牛乳。そして、ヘアドライヤー。毎日、何気なく使っていた日常品。これが、彼女の憧れの贅沢品だそうです。

寝泊りする車は、もちろんオンボロ。もう28万マイル(45万キロ)も走っています。いつ壊れてもおかしくない、それが、今の彼女の心配の種です。

この車には、衣服やら何やら、生活のすべてが積んであります。昔の写真など、かけがえのない思い出の品々も。

「もし、あなたの車が泥棒にあったらどうする?」という問いかけに、
 「そんなこと、考えたくもないわ・・・」と、声を詰まらせます。


こんなレディーもいます。

彼女は、ちょっと大きめのライトバンをお家にしていて、話し相手は猫ちゃん。「家」の中には、小型の冷蔵庫なんかも備えられています。

昔っからおしゃれだった彼女。洋服は、安売りのお店でショッピング。アメリカには、一般市民から寄付された洋服がいっぱいです。そんな古着を、とっても安く売るお店がたくさんあるのですね。
 おしゃれな彼女は、さすがに、毎日、こぎれいにしています。なにせ、以前は飛行機のキャビンアテンダントでしたから。

そんな彼女が一番困っているのが、シャワー。今までは、毎朝、近くのテニスコートに付設されるシャワールームを利用していました。

けれども、テニスコートの利用者から文句が出てきたのです。メンバー以外の人が使うなんて絶対にイヤよと。

そこで、管理者は、テニスコートが開く時間外は、水を止めてしまうことにしました。

シャワーを奪われてしまった彼女。いつもは「わたしはサバイバー(生き残り)よ」と軽くつっぱねるのに、悲しげな顔でこう言うのです。

みんな、もうちょっと思いやりを持ってくれてもいいのに。

They can have more compassion.

追記:この3人のケースは、カリフォルニアの公共放送局が共同制作する“California Connected”という番組を参考にさせていただきました。

これから、冬に向かって、カリフォルニアも寒くなってきます。真冬は氷が張ることもあるシリコンバレーでは、ホームレスの人たちのために、シェルターが準備される季節となってきました。
 わたしが太極拳の教室で通っている教会も、毎年11月になると、夜間、講堂を開放し、ホームレスの人たちが寝られるようになっています。でも、今年は、それもなしだそうです。運営していた団体の予算不足で、ホームレス対策プログラムの削減を余儀なくされているとか。

今年の冬は、例年よりも暖かいのでしょうか。それが、ちょっと心配です。


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