Essay エッセイ
2011年02月10日

ダンナ様の教育 パート2

一年ほど前に、「ダンナ様の教育」と題して、連れ合いのお話をいたしました。

買ってきた缶詰のカレーが思ったよりもおいしくなかったので、地元の食料銀行(Food Bank)に寄付しよう! と言い出したお話でした。

そう、結婚するまでは慈善団体がこの世に存在することすら知らなかった連れ合いは、毎年2回、わたしが近くの食料銀行に寄付することを知って、「買ってきたものを無駄にしてはいけない!」と、缶詰の寄付を思い付いたのでした。

べつに食料銀行について講義したつもりなどありませんが、なんとなく学んでくれていたようです。


以前は慈善団体など知らなかった連れ合いですが、その代わり、結婚前から何でも自分でシャカシャカとこなす人ではありました。

料理は中学生の頃からやっていたので、なかなか年季が入っています。

そのせいか、独創性に長けていて、いつかポテトサラダに入れるキュウリがなかったので、代わりに小松菜をゆでて入れてみたら、これが意外とおいしかったそうです。(小松菜って、炒め物やおひたしのイメージですよね。でも、キュウリの「シャキッと感」が欲しかったので、小松菜をサッとゆでて代用してみたそうです。)

今では、「自分は冷蔵庫と相談して料理をつくる」なんて豪語しています。

お料理だけではなくて、掃除や洗濯も、せっせと嫌がらずにやる人なのです。

最初に彼のアパートに足を踏み入れたとき、「これって、誰か女性の手が入ってるんじゃないの?」と思ったほど、きちんと片付いていたのでした。

だって、食器棚の皿やコップの下に、一段ずつていねいにタオルが敷かれているんですよ!


そんな配偶者を持っていると、病気をしたときには助かりますね。

新年早々、手術を受けて入院しなければならなかったのですが、そんなときにも、家の心配はしなくていいし、退院して自分が動けないときにも、全部おまかせできるでしょう。

術後、ようやく固形食が食べられるようになったら、何はともあれ、ご飯を炊いて面会に来てくれましたし、退院後は、せっせと消化の良い食事をつくってくれたり、お掃除や洗濯をしてくれたりと、大活躍でした。

これが、料理すらできないダンナ様だったらどうなっていたんだろう? と、他の家庭がちょっと心配になったのでした。

だって、同室のアメリカ人患者は、「夕食に鶏肉(chicken)が食べたい」とダンナ様に頼んだら、カールスジュニア(Carl’s Jr.)のフライドチキンバーガーが登場していましたよ! ま、彼女だって、ガツガツとおいしそうに食べていましたが・・・。

彼女は4人も子供がいるのですが、ダンナ様だって忙しいスケジュールで働いているし、退院して動けない間は、どうやってしのいでいたんでしょうね?

食事はとりあえず、マクドナルドとかケンタッキーとかピザハットとか、ファストフードで済ましていたに違いありません。


というわけで、連れ合いが器用だといっても、こればっかりは、わたしが「教育」したわけではありません。それでも、共働きをやっていたせいで、結婚生活の当初から自分が家事に参画しなければ、という意識は強かったみたいですね。

だって、最初はわたしの方が残業ばかりだったので、自分が先に帰ってご飯をつくって待ってるなんていうのは、当たり前のことだったみたいです。

ということは、結婚生活で大事なことは、最初のうちの「環境づくり」ということでしょうか。なんとなく、家事を負担してもらうように「仕向ける」とでもいいましょうか。
 「やってくれなきゃ困るわぁ」と無理強いするのではなくて、なんとなく相手から「手伝おうか?」と言ってもらえる環境をつくる。これが肝心なんでしょうね。

ま、実際には、なかなか難しそうなことではありますが・・・。


ところで、器用な連れ合いを持ってありがたいことではありますが、それでも、料理は自己流なので、ちょっと不器用なところもあるんです。

女の子だったら、小さい頃からお母さんのやり方を見て、なんとなく料理を会得する部分がありますが、連れ合いの場合はそれがなかったので、意外なところでつまずいたりするのです。

たとえば、ギョウザ。具の部分はいいのですが、皮に包むのが不器用なんです。

どうしてそんなに厚ぼったいのかなと思っていると、なんと、ギョウザの皮の上と下を一緒にくねくねと曲げているではありませんか! (いうまでもなく、写真の左側が連れ合いの作で、右がわたしです。)

そうじゃなくって、下のは平たいままで、上の皮だけくねくねすればいいのよ、と教えてあげても、そんなにすぐにはできません。

ですから、紙を使って練習してもらいました。下はそのままで、上の部分だけ美しく細工ができるように。
 薬指と小指で下の皮を安定させておいて、親指、人差し指、中指の三本で上の皮をくねくねするようにと。

その後、ギョウザは自分でやってしまったので、この訓練が連れ合いの脳裏にしっかりと刻まれているかはわかりません。

でも、考えてみれば、味や焼き方さえ良ければ、ギョウザの見かけなんて、どうでもいいことかもしれませんね。

自己流でも何でも、進んでやってくれることが大切ということでしょうか!

追記: ちょっと話は脱線しますが、やはりアメリカでも、奥さんが外で働いていると、仕事と家庭の両立が難しくなるようではありますね。とくに、子育てが加わってくると、女性の方の負担がグンと増えるのは確かです。

そんなわけで、シリコンバレーでバリバリと働く女性も、さまざまな「家庭のルール」をつくっているようではあります。
 たとえば、子供が生まれると、仕事をきっぱりと辞めてしまう人もいますし、今までよりもテレコミュート(telecommute、パソコンを使っての自宅勤務)の時間を増やす人もいます。
 そして、「子供が小さいうちは、絶対に出張はしない」というルールで働いている人もいますし、逆に、「子供がいても何も変わらないわ」という人もいるようです。

人それぞれに家庭や勤務先の事情が違うので、自分に合ったライフスタイルを探すことが大切ですが、やはり、どんなときでも、配偶者の理解と協力(と教育)は不可欠となるでしょう。

そうそう、我が家の連れ合いは、自ら進んで家事を行う限り、それを思う存分に楽しむフシがあって、「僕の方がいっぱい働いてズルい!」なんてことは絶対にいわない人なのです。
 けれども、わたしが退院後にようやく動けるようになったら、一緒に台所に立って料理をするのが、よほど嬉しかったようでした。


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