Essay エッセイ
2015年01月22日

ホーム スイート ホーム

12月に3週間ほど東京に滞在して、クリスマスの翌日にサンノゼの我が家に戻ってきました。

以前は、日本からはサンフランシスコに戻っていたのですが、最近は ANAの直行便が出ているので、サンノゼ空港に戻るようにしています。

サンノゼ空港(正式名称ノーマン・ミネタ サンノゼ国際空港、略称 SJCは、我が家から15分ほどの距離。小一時間離れているサンフランシスコ空港よりも、ずいぶんと便利になりました。

でも、「国際空港」とはいえ、この空港の国際線は「おまけ」みたいなもの。どことなく農村っぽい、のどかな雰囲気が漂います。
 こちらの写真では、左側の小さなビルが国際線ターミナルで、右側の立派なビルが国内線ターミナル。ぜんぜん「立派さ」が違うのです。

そうなんです、「のどかな空港」の国際線ターミナルに降り立って、入国管理と税関検査を抜けると、そこは、いきなりビルの外!

扉を出ると、そこには迎えの人たちが集まっていて、今か、今かと家族や友人が出てくるのを待っています。

12月とは思えないほどの、まぶしい陽光。

あ~、サンノゼに帰ってきた! と実感するのです。


そんな明るい陽光の中、ひとりのレディーが近づいてきて「あなたが乗ってきたのは、日本からの飛行機?」と尋ねます。

なんでも、息子さん一家が沖縄に駐屯していて、クリスマス休暇に成田経由でサンノゼに戻ってくるとのこと。

「飛行機では、金髪の双子を見かけなかった? あの子たちがうるさく騒いでいなかったかしら?」と、孫に会えるのが待ち遠しそうなご様子。

そのレディーが、突然「あなたにとって、ここはホーム?(Is this home for you?)」と尋ねるのです。

「ホーム」とは「住んでいるの?」といった意味ですが、きっと、日本人に見えるけれど、サンノゼに住んでいるのだろうと思ったのでしょう。

ですから、そうよと答えると、「ウェルカム ホーム(Welcome home! おかえりなさい)」と笑顔で返してくれました。

ただそれだけのことなんですが、この白っぽくなったブロンドのレディーとの触れ合いが、ずっと心に残っているのです。


英語では、home(ホーム)という言葉には特別な響きがあります。

単に「家」という意味ではなくて、「住み慣れた我が家」「故郷」「近隣コミュニティー」「自慢の我が街」と、いろんな含蓄があるのです。

ですから、Is this home for you? には、「この街を故郷としているの?」といった深い意味があります。

そして、Welcome home! という挨拶には、「わたしたちの街に、ようこそおかえりなさい」といった同胞の連帯感もあります。

ちょっと意外ではありますが、英語では house(家)と home(我が家)は意味がまるっきり違います。

そう、「家(house)」を「我が家(home)」に変えるには、それなりの年月や努力、家族の歴史なんかが必要なんですね。

「街」という意味の home も同じことでしょうか。

最初は、イヤだな、前に住んでいた街に戻りたいなと思っていても、いつの間にか、離れるのが辛くなるくらいに、住み慣れた街になっている。

日本語にも「住めば都」という言葉がありますが、住み慣れると「家」は「我が家」にもなるし、「見知らぬ他人の街」は「我が街」にもなっていく。

引っ越してきたときには、「サンノゼなんて田舎っぽくて嫌い!」と明言していたのに、いつの間にか「ここはホームです」と言うようになっている。

そんな心境の変化に自分でもびっくりではありますが、

とにもかくにも、戻ってくればホッとする、ホーム スイート ホーム(Home Sweet Home)なのでした。


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