Essay エッセイ
2006年04月30日

太極拳の日

4月29日の土曜日は、久しぶりにサンフランシスコに行ってみました。

この日は、「世界・太極拳と気功の日(World Tai Chi & Qigong Day)」とされていて、世界中みんなで太極拳や気功を楽しみましょう、という日なのだそうです。
 ちょうど一週間前が「地球の日(Earth Day)」でしたが、いつもこの地球の日のあたりが、太極拳の日とされるようです。


この日、サンフランシスコのゴールデンゲート公園では、わたしの太極拳の師の門下生や知人が集まり、芝生の上で体操です。

こちらは遠く離れたシリコンバレーから参加するので、9時半の集合にも7時過ぎには起きなくてはなりません。せっかくの土曜日なのに。
 まあ、友人に運転してもらったので楽ではありましたが、1時間の行程はちょっと疲れます。だから、到着した頃はちょっと不機嫌です。

ところが、バラの花壇が広がるローズガーデンにたどり着き、みんなで準備運動を始めると、途端に、そんな不機嫌はどこへやら。とにかく、気持ちがいいのです。

その朝、サンフランシスコには霧がかかり、空も白々としていましたが、そのひんやりとした霧の粒が心地よいのです。動いて温まった体を、ちょうどよい体温に下げてくれます。

そして、緑に囲まれて動くのも、とても気持ちよいのです。緑は目に優しいですし、空気も新鮮です。

なんとなく、木々が一緒に呼吸しているのがわかるような気もしてきます。空気はキリリと冷たいのに、辺りには、なにかしら暖かいものが漂います。

そして何よりも、普段顔を合わせることのない門下生が一堂に集い、一緒に体を動かすのも楽しいものなのです。

師匠は、サンフランシスコ・ベイエリア中で教えているので、サンフランシスコ、サンノゼ、コンコードと、あちらこちらから集った門下生が、普段の「修練」を互いに披露します。

みんなで太極拳や気功をしていると、お散歩の人や観光客グループの興味の対象にもなったようです。
 東欧人らしき観光客の集団が、すぐ近くまでよって来て、ガイドがこんな説明をしていたようでした。「サンフランシスコは中国系の住民が多いので、公園では皆で太極拳をするんですよ」と。言葉はわかりませんが、「タイチー」という単語が聞こえたので、なんとなく想像はつくのです。

ゴールデンゲート公園は、地元の人の大事な息抜きの場でもありますが、観光客がバスで大挙して押し寄せる名所でもあるのですね。


この日は、地球の日にちなんで、みんなで輪になって地球に「ありがとう」とごあいさつもしました。わたしたちを育む大地に感謝し、自然のことをちょっとでも考えるために。

とくに、西洋文化では、自然は制覇するべきものであり、「人間対自然」という対立の構図ができあがりやすいのです。太極拳をはじめとして、自然と共に生きる東洋の思想を学ぶのは、とても大切なことなのかもしれません。

追記:翌日の日曜日は、サンフランシスコのゴールデンゲート橋で、別の集いが開かれるとも聞きました。
 以前、「オリンピック」というエッセイでご紹介したこともありますが、アフリカのスーダンにあるダーフール地域では、「民族浄化」ともいわれる紛争が繰り広げられています。それに講義するための集いなのです。
 この日は、アメリカ全土で抗議の集会が開かれるそうですが、サンフランシスコでは、ゴールデンゲート橋の端から端まで、みんなで手をつないで埋め尽くすプランだとか。

サンフランシスコは、もともと新しい社会の動きが生まれやすいところです。テクノロジーの先端であるシリコンバレーとは、ちょっと雰囲気が異なるのですね。
 行くたびに何かしら違った刺激を受ける、わたしにとっては、そんな街なのです。


© 2005-2021 Jun Natsuki . All Rights Reserved.