Life in California
ライフ in カリフォルニア/歴史・習慣
Life in California ライフ in カリフォルニア
2016年01月19日

昔の映画って面白い!

 いえ、たいしたお話ではないんですが

 

 先日、テレビで観た映画が面白かったんです。

 

 タイトルは、『The Taking of Pelham One Two Three』。

 

 1974年リリースの、ニューヨーク市の地下鉄を舞台にした映画です。

 

 Pelham 123(ペルハム・ワントゥースリー)は、地下鉄の列車の名前。

 

 The Taking of というのは、その列車を乗っ取ったという意味。

 

そう、四人組の強盗が、飛行機ジャックならぬ、地下鉄ジャックを起こして、身代金を要求する、という奇想天外なお話です。

 

 先頭の一両だけ「人質」にして、17人の乗客とひとりの新米車掌さんが巻き込まれるのですが、「これから、いったいどうなるのよぉ?」と、手に汗握るアップテンポなストーリー展開になっています。

 

 主人公は、強盗ではなく、地下鉄を取り締まる鉄道警察(Transit Police)のガーバー警部。

 

 普段は喜劇俳優のウォルター・マッソーさんが、味のある刑事役をこなしています。

 

(邦題は『サブウェイ123 激突』というそうですが、「激突」は当たってないのかも;Original film poster of "Taking of Pelham One Two Three (1974 film)" by Source. Licensed under Fair use via Wikipedia)

 


 まあ、地下鉄を乗っ取るなんて、発想がはちゃめちゃですが、強盗さんたちの格好も、トレンチコートに中折れ帽をかぶり、黒縁眼鏡とヒゲで変装と、ヘンテコリンなんです。

 

 そして、お互いを「ミスター・ブルー」「ミスター・グリーン」と、コードネームで紳士的に呼び合うのです。

 

 冷血でイギリスなまりの「ブルーさん」が親玉で、「グリーンさん」が列車の運転を担当する元・地下鉄運転手。それに、ちょっと凶暴な「グレーさん」と、一番下っ端の「ブラウンさん」が加わります。

 

 気短かな、危ない「グレーさん」の役には、『Princess Diary(邦題プリティ・プリンセス)』や『Pretty Woman(プリティ・ウーマン)』などで、とっても味のある「おじさま」役を務めたヘクター・エリゾンドさんが演じています。

 

 若い頃から、髪は薄かったようですが(失礼!)、昔は、嫌なヤツも演じていらっしゃったんですねぇ(そう、ほんとに粗暴な感じの強盗で、それが、あとで災いするんですけれどね)。

 

 この映画を見始めたのは、土曜日の真夜中。

 

 「やめよう、やめよう」と思いながら、ついついテレビを消せなくて、ようやく中休みに入った午前2時、録画をしてベッドにもぐり込みました(それでも、その先が気になって、なかなか寝つけず・・・)。

 

 きっと、ものすごくヒットした映画なんでしょうね。

 

2009年に、同名のリメーク作品が上映されたようですよ。

 

 こちらは、デンゼル・ワシントンさん主演ですが、強盗と知恵比べするのは、彼にはぴったりの役柄かもしれませんね。

 

 対する強盗の親玉は、ジョン・トラボルタさんが演じていらっしゃるとか。

 

(Theatrical release poster, "Taking of Pelham 123 (2009 film)" by Source. Licensed under Fair use via Wikipedia)

 


 ストーリーはあえて書きませんが、いくつか興味深い場面もありました。

 

 そう、1974年というと、アメリカでは、まだまだ人種融合の過渡期。

 

 ですから、「有色人種」が戯画的に描かれる場面も目立ちます。

 

たとえば、映画の冒頭では、鉄道管理システムを視察に来た日本人の四人組が出てくるのですが、みなさんスーツにネクタイで、黒縁眼鏡をかけていて、ひとりは首からカメラを下げ、パシャパシャと何でも写真に撮る、といった具合。

 

 ガーバー警部が施設内を案内しながら説明をつくしても、四人組からは何の反応もないので、「英語がまったくわからない」と勘違いするのです。

 

 が、乗っ取り事件が起きて、「この猿たち(monkeys)をどこかに連れて行ってくれよ!」と警部が叫ぶと、流暢な英語で「心配しなくても結構ですよ、自分たちで出口はわかりますから」と、お辞儀をしながら、その場を去っていくのです。

 

 昔は、「日本人はいつもスーツにネクタイで、眼鏡をかけて、首からカメラを下げている」というのは、戯画的なステレオタイプでしたねぇ。

 

 あまり反応がないので、「こっちの言ってることは、ちゃんとわかっているのかなぁ?」というのも、多くのアメリカ人が抱いていた印象だったのかもしれません。

 

 それから、ミスター・ブルーと同じ駅から乗り込んだ、黒人の若者。

 

 オレンジ色のとっくりセーターに茶色の革コートをまとって、帽子を斜めにかぶるオシャレな男性ですが、彼の「アフロヘア」は、当時アフリカン・アメリカンの間で流行っていた髪型でしょうか。

 

 オシャレだし、頭の回転が速くておしゃべりだし、目立つのが災いして、ミスター・グレーに銃で殴られて血を流す、という損な役回りです。

 

アフロヘアといえば、この頃から「ディスコ(disco)」というジャンルが大ヒットして、オシャレな若者たちが、ビートに合わせてダンスするようになったのでしょう。

 

 『ソウル・トレイン(Soul Train)』というダンスの長寿番組が始まったのも同じ頃で、アメリカ全土が、ファンキーな音楽に包まれていた時代です。

 

(写真は、『ソウル・トレイン』に登場したステープル・シンガーズ。右奥の男性が、番組の制作者で司会役のドン・コーネリアス氏;Photo from Wikimedia Commons)

 


なにせ、この映画は、ニューヨークの地下鉄が舞台。

 

 この街を熟知する方だったら、駅の名前が出てきても、手に取るように地理関係がわかるのでしょう。

 

 わたしは、何番街の駅がどこかもわかりませんし、第一、主人公の「ガーバー警部(Lieutenant Garber)」が、「ガバ」としか聞こえませんでした。

 

 いつか、マンハッタンに旅をして、「君の英語は、カリフォルニアなまりだねぇ」と言われてビックリしたことがありましたが、ニューヨークの言葉は、ボストン周辺の言葉と同様、「Rのない方言(R-less dialects)」と呼ばれているそうな。

 

 そう、ついつい「R」の音をはしょってしまう。

 

 だから、GarberGabaに聞こえても、不思議はないのかも。

 

 というわけで、とりとめもないお話になってしまいましたが、とにかく、この映画は面白い!

 

 機会があったら、ぜひ(昔のオリジナル版を)ご覧になることをお勧めいたします。
 


蛇足ではありますが:

 文中に出てきた、昔のステレオタイプのお話ですが、どうやら今でも「東洋人」というイメージは、こんな感じなのでしょうか?

 

こちらは、イタリアのAlessiという、キッチン商品の有名ブランドが出すエッグスタンド。頭の中に塩が入るようになっていて、スプーンも付いて、現在、オンラインで販売中。

 

 台湾の国立故宮博物院(National Palace Museum)から依頼されて、ステファノ・ジョヴァンノーニさんがデザインされたもので、その名も『ミスター・チン(Mr. Chin)』。

 

 アメリカでは、その昔、アジア系住民のことを「東洋人(Orientals)」と言っていましたが、1960年代から「アジア人(Asians)」と改名する動きが広まって、今では、人を表す「オリエンタル」という言葉は死語になっています。(当初の掲載では、自分の感覚で「1990年代から」と書いておりましたが、「1960年代の市民権運動の時代」というのが正しいようです;参考文献:Lan Cao and Himilce Novas, Everything You Need to Know about Asian American History, New York: Penguin Books USA, 1996, page xiv, Introduction)

 

 まあ、「オリエント」や「アジア」といえば、ヨーロッパ人からすると「中近東」をイメージする言葉のようで、たとえば、「トルコがヨーロッパとアジアの中間地点」と言う場合、「アジア」とは、シリアやイラク、イランを指す言葉ですものね。

 

 その昔、日本人の友人がカリフォルニアからメイン州に引っ越したら、「チャイナマン」と呼ばれたそうですが、Alessiの『ミスター・チン』は、その頃を彷彿とさせる時代錯誤な感じもしますよねぇ(アメリカで販売したら、問題になるのでは?)。

 


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