Essay エッセイ
2022年03月19日

春のいぶき

<エッセイ その190>

春は、あちらこちらで花開く季節。


日本では、この時期になると「桜前線」が気になるところですね。


桜の代名詞ともなっているソメイヨシノがいつ開花するのか?  


これは、日本列島に住む多くの人々の関心事ですが、先日3月17日に「全国トップ」で開花宣言を出したのが、こちら福岡。


この日、福岡の気象台が「庭のソメイヨシノが5輪咲いたよ」と宣言。これは平年よりも5日早い開花だとか。


観測史上一番早かった去年よりも5日遅い(!)とのことですが、我が家が福岡に引っ越して来た昨年は、よほど暖かかったのでしょう。



そして、我が家が住んでいたカリフォルニア州にも、春が訪れています。


州の北部、サンフランシスコ・ベイエリアに住んでいる友人が、こちらの写真を送ってくれました。


こんなコメントと一緒に。


「ここで問題です! 先日お花見に行きました。 この花はいったいなんでしょう?


ヒントは、カリフォルニア名産品です」と。


ここで、わたしは考えました。きっと、チェリー(さくらんぼ)の花だろう、と。


すると、彼女は、こう返信してくれました。


「答えは、アーモンドでした!」


いえ、わたしだって、カリフォルニア州には30年住んでおりました。それなのに、アーモンドの花を見たことがなかったのです!


たしかに、アーモンドはカリフォルニア州の名産品ではありますが、サンフランシスコ・ベイエリアでは見かけたことがありません。


彼女が写真を撮ったのは、モデスト(Modesto)という内陸部。サンフランシスコから東に1時間半ほど行った街で、昔は「田舎」の代名詞のような場所でした。


昔と比べると、ずいぶんと住宅が増えたのでしょうが、まだまだ付近には豊かな農業地帯が広がります。そんなわけで、モデストは今でもアーモンドやクルミの名産地なんだそうです。


お花をよく見てみると、桜の花と似ていますよね。アーモンドはバラ科サクラ属とのことですが、ほんの少しピンクっぽくて、とても可憐な花なのです。



友人がアーモンドの写真を送ってくれたのは2月下旬でしたが、3月に入ると、親友がこちらの写真を送ってくれました。


庭のレモンの木に止まっていたハミングバード(hummingbird)です。


和名はハチドリ(蜂鳥)といいますが、その名のとおり、ミツバチのように羽をブンブンと動かしながら、花から花へと蜜を吸いにやって来ます。羽音は大きいので、クマンバチが来たのかと警戒するほど、庭を低く自由に飛び回るのです。


そう、ハミングバードは人懐っこいところがあるので、人を恐れずに寄ってきて、そのたびに「クマンバチかな、ハミングバードかな」と気になるところです。


ある日、親友のダンナさんがレモンの木から実を採ろうと手を伸ばしていると、頭の上をハミングバードがブンブンと飛んでいます。


なんだろう? と思いながら、木の中を覗いてみると・・・


こんな巣がありました。


とっても小さな巣で、中には小さな卵が二つ。


さすがに人懐っこいハミングバードも、巣の近くに人が寄ってきたので、警戒してダンナさんの頭上をブンブンと飛んでいたのでしょう。


なんでも、ハミングバードは洗濯物を干す洗濯ヒモ(clothesline)の上にも巣を作る、と記事を読んだことがあります。それほど、小さくて軽いということなのでしょう。


レモンの木の中にうまくカモフラージュして作られた巣。


わたしが住んでいたサンノゼ市の裏庭にも、いつもハミングバードが蜜を吸いに来ていましたが、巣と卵は見かけたことがありませんでした。親友の家も近いのですが、あちらとこちらでは何かしら環境が違ったのでしょう。


ハミングバードは、甘い蜜を出すハニーサックル(honeysuckle、和名スイカズラ)の花が大好き。親友が庭にハニーサックルを植えてからは、ハミングバードやよく似た(お尻の丸い)小さな鳥たちが連れ立って蜜を吸いに来るとのこと。


きっと親友宅は、小さな鳥たちのパラダイスになっているのでしょう。


巣の中の二つの卵に気づいてからは、じっと見守ってきた親友夫婦。


二日ほどすると、卵がかえって、小さなヒナが寝ていました。


なんだか巣いっぱいに羽が詰まった感じですが、グレーの羽のかたまりが二羽のヒナ。


親友は、ビデオを送ってきてくれて、風に揺れる巣の中で、二羽のヒナが懸命に呼吸しているのがわかりました。「風なんかには負けないぞ」と言わんばかりに、力強く、体全体を上下動させています。


わたし自身は、桜の木が枝を広げる中庭で、ハミングバードの親鳥がヒナに蜜を吸わせてあげている場面に出くわしたことがあります。が、親鳥よりもヒナの方がずいぶんと大きく見えて、最初はいったい何をしているのだろう? とわからないくらいでした。


そう、ヒナはフワフワの羽におおわれていて、親よりも大きく見えるのです。


でも、このフワフワは、植木の添え木につかまりながら、こっくり、こっくりと居眠りを始めます。ですから、こっちがお腹いっぱいのヒナに違いない、とわかったのでした。


だんだんと育っていくと、フワフワも親鳥と同じようにスリムになります。


きっと、親友宅のヒナたちも、今頃はずいぶんと育って、スリムになったことでしょう。



春は、辺りにいぶきを感じる季節。


まわりを見渡して、花や生き物を楽しむ心の余裕がある。


それは、何よりもありがたいことかもしれませんね。


追記:

この記事を掲載したら、まるでそれを察知したかのように、親友からヒナたちの最新情報が送られてきました。

二羽のヒナがかえって2週間。まだまだ巣の中で大事に育てられています。が、「羽のかたまり」からはずいぶんと育って、頭やクチバシの形がはっきりしています。

短い映像の中では、二羽とも微動だにしていませんが、風に揺られる巣の中で、互いをヌクヌクと温め合っているようにも見えました。

だんだんと「鳥らしく」なってきたヒナたち。少しずつ元気に育ってほしいですね。



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