Life in California
ライフ in カリフォルニア/季節
Life in California ライフ in カリフォルニア
2009年04月06日

春のカリフォルニア名物

急に暖かくなったり、肌寒くなったりを繰り返しながら、サンフランシスコ・ベイエリアも本格的な春を迎えています。

春は、まだまだ雨季のなごりで山が緑色だし、辺りではいろんな植物がいっせいに芽吹き始めるし、やはり一番「生命」を感じる季節ですね。

そんなウキウキとするような春のカリフォルニア名物といえば、何といっても、カリフォルニアポピーでしょうか。カリフォルニアの州の花でもありますし、鮮やかなオレンジ色や黄色は、野原の中にあってもすぐに見分けがつきます。

日中は、そのつややかな花びらをしっかりと開きますが、夕方になると、「おやすみなさい」とあいさつするように、お行儀よく花びらを閉じるのです。夕方、お散歩しながら写真を撮ろうとすると、すっかりとタイミングを逸してしまうことがあるのです。

この日は、まだ間に合いました。以前は何も生えていなかった近くの空き地には、今年からカリフォルニアポピーが自生し始めました。この辺りでは、宅地開発の直後、ポピーがすっかり姿を消してしまいましたが、いつの間にか、自然も勢いを取り戻したようです。

力強く、燃えるようなオレンジ色で行き交う人の目を楽しませてくれています。


そして、もうひとつの春の名物といえば、やはりオレンジ色のものでしょうか。

この時期、フリーウェイを運転していると、車のフロントグラスにボチッと当たるものがあるのです。

あっと思ったら、もう遅い。目の前に突然現れたオレンジ色は、すでにガラスにぶつかっているのです。

そう、このオレンジ色の物体は、チョウチョです。

その名も、Painted Lady Butterfly、ペインティッド・レディー・バタフライ(学名 Vanessa cardui)。日本語で「ヒメアカタテハ」というチョウチョです。

なんでも、この蝶は、世界中に一番たくさん生息している蝶だそうですが、カリフォルニアにいるペインティッド・レディーは、渡り鳥ならぬ「渡り蝶」として有名なんだそうです。

もともとこの蝶は、メキシコやカリフォルニア南部の暖かい場所に住んでいるのですが、だんだん暑くなって、砂漠に花がなくなってくると、北を目指して移動し始めるそうです。

だいたい2月から3月に南で羽化した蝶は、すぐに北を目指して飛び始め、3日ほど後に、ベイエリアや農業の盛んな内陸部の谷間(the Central Valley)に達します。
けれども、何日も飲まず食わずで飛び続けていたものだから、お腹が空いている。そこで、この辺でひと休みして、たらふく花の蜜を吸って、交尾をして、卵を産みつけて、また北を目指して飛び立つのです。

蝶が車にぶつかったとき、フロントグラスにボチッと付着する黄色のシミは、いっぱい食べて、体にたくわえた脂肪なんだそうです。これからまた、しっかりと飛ばないといけませんしね。

最終的には、このベイエリアからは遠く離れ、太平洋岸のオレゴン州やワシントン州、それからカナダのブリティッシュ・コロンビアの辺りまで到達するそうです。メキシコからカナダといえば、かなりの距離ですよね。カリフォルニア、オレゴン、ワシントンと3州を超えるだけでも、2,400キロメートルありますもの。

その後、5月くらいになると、ベイエリアや内陸の谷間で生まれた子供たちも、親の後を追って、北を目指します(多分、北で再会したとしても、親子だとはわからないでしょうけれどね)。

そこでは、夏の間、子供たちが卵を産みつける番になるのです。

そして、北の地方がだんだんと秋を迎える頃になると、今度は南を目指して、子供の世代が旅に出る。この戻りの「渡り」は、8月から11月の間に見られるそうです。けれども、北への渡りほど集中していないのか、それとももっと内陸のルートを通るのか、ベイエリアの辺りではあまり見かけたことがありません。

というわけで、春になると親の世代は北へ、秋になると子供の世代は南へ、そして、また春になると孫の世代は北へ、秋にはひ孫の世代が南へと、代々片道飛行を続けているのですね。そして、同じような「渡り」は、アフリカ北部とヨーロッパの間でも観察されているそうです。


チョウチョさんは、そうまで苦労して食べ物を求めて飛行しているのに、それを車なんかで殺してしまうのは悲しいなぁと思うのです。ベイエリアにたくさん飛来していた3月の末日、わたしは行きに一匹、帰りに一匹殺してしまいました。
 もちろん、わざとぶつかっているわけではありませんし、回避などできるものでもありませんが、窓ガラスに付着した蝶の銀粉を見ていると、申し訳ないなと思ってしまうのです。

彼らは、ものすごく高く飛ぶことができて、森林の緑のキャノピーをも飛び越え、ときには標高9,000フィート(約2,700メートル)の山々まで達することがあるそうです。けれども、いつもそんなに高く飛んでいるわけではありませんし、とくに、ひと休みするベイエリアでは、花を求めながら低く飛んでいます。

だからこそ、近くで写真を撮ったり、観察したりもできるわけですけれどね。


4年前の2005年の春は、北を目指すペインティッド・レディー・バタフライの「当たり年」でした。ベイエリア中のそこかしこで、いっせいに飛んでいるのを見かけたのです。

我が家の裏庭にもたくさん飛来して、「この蝶の大群はいったい何だろう?」と不思議に思っておりました。

こちらの写真は、ちょうど先のローマ教皇が亡くなった4月2日(アメリカ時間)に撮ったものです。よく晴れた、穏やかな一日でした。

そのときは、蝶の飛来のカラクリを知らなかったものですから、花に群がる蝶たちが、まるで教皇のこの世の生命と旅立ちを祝っているかのようにも見えました。どこかに向かっていっせいに飛ぶ姿が、生命を育む旅にも思えたのです。

わたしはキリスト教徒でも何教徒でもありませんが、ヨハネ・パウロ2世は大好きな方でした。そして、毎年春になって、辺りでペインティッド・レディーを見かけると、自然と教皇を思い出すようにもなりました。

人の連想とは、ほんとにおもしろいものですよね。チョウチョがローマ教皇だなんて。きっとヨハネ・パウロ2世も、苦笑いなさっていることでしょう。


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