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英語ひとくちメモ/場面
English Words 英語ひとくちメモ
2021年09月17日

Left in the dark(かやの外)

<英語ひとくちメモ その147>

今日は、本題に入る前に、前回の復習をいたしましょうか。


前回は、東京オリンピック・パラリンピックの話題を取り上げ、それにまつわる英語の表現をいくつかご紹介いたしました。


その中にあったのが、こちら。


He nailed it!  ピタリと決めたね!


体操男子総合で見事に金メダルを獲得した、橋本大輝選手。最後の鉄棒では、着地をピタリと決めて逆転優勝。


「うまく決まった」「首尾よくできた」という意味の nail it は、とても簡潔ですが、便利な表現なのです。


そして、友人から転送されてきたジョーク集の中には、nail it を使ったこんな作品がありました。


Retirement to do list:  Wake up.  Nailed it!

リタイアメントの「やることリスト」: 起床すること。 やったね!


退職したあとのリタイアメント人生。いろんなことをやろうとリスト(to do list)を作ったのですが、まずひとつ目が「起床すること」。「ちゃんとできた!」とチェックマークをつけて喜んでいるシーンです。


何事においても、目標はあまり高く設定してはいけません(Don’t set the bar too high)。


自分ができると思ったことのちょっと上を行けば良いのかも。



というわけで、本題に入りましょう。


今日のお題は、left in the dark という表現。


たとえば、こんな風に使います


We were totally left in the dark about the company’s plan

わたしたちは、会社の計画についてまったく知らされていなかった


直訳すると「暗闇の中に置き去りにされた」ですが、「知らされていなかった」という意味になります。


We are left in the dark


背後で何事かが進行する中、わたしたちは、何も知ることができない(暗闇に置いてきぼりにされる)状態にある。


この表現を思い浮かべたのは、日本の首相選びのプロセス。


今まさに、日本の最大政党・自由民主党の総裁選が行われているわけですが、そのプロセスで選ばれた総裁が、自動的に日本国の首相となるという、なんとも不思議な制度。


長年、アメリカの大統領選挙を見慣れているわたしとしましては、市井(しせい)の人々が「かやの外」に置かれているような気がしてしょうがないのです。


いえ、アメリカも「選挙人制度」という複雑な代理人プロセスを採用していますが、少なくとも、最初の段階は、有権者ひとりひとりが「この人が良い!」と投票できます。その後、得票数に応じて州内の選挙人を分けるか、勝者総取りになるかは各州によって定められていますが、最初の一歩は、あくまでも市民ひとりひとりの投票から始まります。


そういう仕組みに慣れてみると、ある特定の政党に所属する国会議員や政党員の一部だけが国の代表を選ぶ権利を持っているというのは、なんとも不可思議な感じがするのです。


と、ここは政治論をぶちまける場ではありませんので、今日のお題 left in the dark に戻りましょう。


この left in the dark は慣用句ですので、日常的に使われる表現です。覚えておくと、ちょっとオシャレな会話ができるかもしれませんね。

(ちなみに、上の写真は「シリコンバレー」と称されるサンタクララ郡の投票用紙。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンさんが民主党候補者となる前の予備選挙(Primary Election)のものです)



そして、「何も知らされていない」状態にあるのなら、「物事をうまく判断できない」要因になるのかもしれません。


そういう時には、「本質をミスっている」という意味で、miss the point という表現があります。


You are missing the point

あなたは本質を理解していない


本質を見抜く材料や判断力に欠けているので、大事なことではなく、まわりの「枝葉」の部分ばかりに固執している(もっと真ん中にある大事なことを見抜かなければ)。


まあ、日本語に訳すと、ひどく難しい表現に聞こえますが、miss the point とか、You are missing the point という表現は、日常会話でもよく使われます。


「あなたちょっと誤解してるわね」といった感じでしょうか。普段使いできる表現です。


上に出てきた友人のジョーク集にも、miss the point が登場していましたよ。


People who wonder if the glass is half empty or half full, miss the point.  The glass is refillable.


こちらは、ちょっと難しいので、解説をいたしましょう。


まず和訳すると、「ガラスコップ(glass)が半分カラ(half empty)だとか半分満たされているか(half full)と迷っている人々は、本質が見抜けていない(miss the point)。コップは、いつでも注ぎ足し可能(refillable)なんだから」。


なんだか変な言い回しだなと思われるかもしれませんが、glass is half empty or half full(コップは半分カラなのか、半分満たされているのか)という表現は、普段よく耳にします。


もちろん、比喩的な表現で、物の見方のお話をしています。つまり、コップに半分水が入っているとしたら、それが「半分カラ」に見えるのか、それとも「半分満たされている」ように見えるのかで、その人が「悲観的(pessimistic)」か「楽観的(optimistic)」な見方をしているのかとガラッと変わってくる、というわけです。


「半分カラ」という人は、カラの部分に目が行きがちで、「半分しか水が入っていない」と全体を悲観的に捉える。逆に「半分満たされている」という人は、満たされている部分に着目して「半分は水が入っているからいいじゃない」と全体を楽観的に捉える、そんな意味ですね。


そして、本題のジョークでは、「そんな風に世の中を二分するなんてナンセンス! だって、コップなんて、いつでも水を注ぎ足せるものでしょ!」と、マゼ返しているのです。


もともと People miss the point という文章の骨組みがあって、その主語である people の部分をコップのお話で修飾している、という構造ですね。


The glass is refillable という部分は、「半分がイヤだったら、自分で水を注ぎ足せばいいのよ!」と意訳できるのではないでしょうか。


というわけで、ごちゃごちゃと解説をいたしましたが、今日の表現は、このふたつ。


 Left in the dark と、miss the point でした。


どちらも普段使いできる表現ですので、頭の隅っこにどうぞ。



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