Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2002年04月08日

最近の出来事:確定申告の締め切り迫る

Vol. 33

最近の出来事:確定申告の締め切り迫る

今回は、最近ベイエリアで耳にする事を、話題満載でまとめてみようと思います。


<4月1日>

ついこの前、新年を迎えたような気がしますが、いつの間にか、エープリルフールズ・デイも過ぎてしまいました。毎年この日になると、シリコンバレーのいろんな会社が、冗談やいたずら(prank)を仕掛けます。
いつも常連になっているサン・マイクロシステムズは、Java Oneコンファランスと四半期の締めに迫られ、今年は惜しくも棄権してしまいましたが、ネットスケープやイーベイ、グーグルなどが、ここぞとばかりにギャグの競い合いをしました。

そんな中、非営利団体のコンサルタント会社、コンパスポイントは、こんなニュースEメイルを流しました。黒い疑惑のエンロン社の元CEO、ケネス・レイ氏を、取締役会のメンバーに迎えたというのです。"彼のビジネス感覚と、政界とのコネクションで、お互いが得をする関係が築ける。また、彼のお陰で、新しい会計監査会社として、アーサー・アンダーセンと破格の契約ができた" と、ご丁寧に経営者の談話まで載せています。
この会社は、4年連続、このような偽のニュースで、人をかついでいるそうです。

ところで、経済界の会計疑惑はどんどん広がり、大手エネルギー会社のウィリアムズや、ケーブル・サービス会社のアデルフィアが、最新のリストに名を連ねています。米国証券取引委員会(SEC)が調査を始めた会社は、今年1月から2ヶ月間で49社に昇り(今までの記録は、昨年の18社)、特に、フォーチュン500にリストされる大企業が増える傾向にあります。


<終わりのない合併劇>

この話を抜きに、ベイエリアの最近のお話はできません。ご存じの通り、ヒューレット・パッカードとコンパックの合併騒ぎは、3月19日の臨時株主総会が終わっても、まだ終息していません。2000年の大統領選挙のように、あまりに僅差なので、票の数え直しをしている最中なのです。

その間、反対派の代表者、ウォルター・ヒューレット氏は、デラウェア州の裁判所に、投票を無効とするよう訴えを起こしました。HPが、有力株主のひとつ、ドイツ銀行に圧力を加え、反対投票を引っくり返したというものです。また、合併後1万5千人を解雇すると発表しておきながら、実際は、解雇者は2万4千人に昇るはずで、合併のシナリオは明らかに株主を惑わしたとも主張しています。
HP側としては、臨時株主総会の直後、CEOフィオリナ氏の勧めで、役員ひとりがヒューレット氏と談話しましたが、この時は、和やかな会見で終わったそうです。突然のヒューレット氏の訴訟に驚きながらも、すかさず、4月26日に行なわれる役員選出投票の候補からヒューレット氏を下ろす事を発表し、更に、デラウェアの裁判所にも、彼の訴訟を棄却するよう申請をしました(HPは、もともとカリフォルニア州で設立されていますが、1998年に設立場所をデラウェア州に変更しています。コンパックは、デラウェア州の創設です。アメリカの公開会社の過半数は、本社の場所に拘わらず、法的システムの利点から、デラウェア州で設立されています)。

これを書いている時点では、ヒューレット氏の訴訟が実現するかはわかっていませんが、合併に関しては、賛成派と反対派がほぼ互角だったという投票結果からすると、両陣営に言い分があったということでしょう。
ただ、臨時株主総会が終わって手元に残った印刷物の山を眺めていると、このエネルギーと資源をどこか別の場所に使えなかったものか、という気がしてきます。経営者であるフィオリナ氏も、株主説得のため、全米行脚の旅で本社を留守にする事もあったし、合併話にフルタイムで従事しているHP社員は、千2百人もいると言います(HPは、このために合併専門子会社を設立)。

もしかしたら、この合併騒ぎで一番儲かっているのは、IBM、サン、デルなどの競合会社、マーケティング・メッセージを作成した代理会社、弁護士、報道関係者、そして何と言っても、噂好きのアメリカ国民なのかもしれません。


<オンライン・スーパーが戻って来た日>

過去2回に渡って、ベイエリアからオンライン・スーパーマーケットが消えてしまったお話をしました(2001年7月31日と8月22日掲載)。
1回目に取り上げたWebvanは、サンのCEOスコット・マクニーリーが、自分の奥さんがWebvanを利用できなくて憂鬱になっている、と冗談を披露するほどの人気でした。2回目の終わりの方では、倒産したWebvanに成り代わり、巨大スーパー・チェーンが、試験的にこの分野に乗り込んで来た事をお伝えしました。そのテスト期間が終わり、いよいよベイエリアにも、本格的にオンライン・スーパーが戻ってきました。

ベイエリアの街角で一番たくさん見かける、セーフウェイ(Safeway Inc.)とアルバートソンズ(Albertson’s Inc.)が、3月中旬に、本格的にオンライン部門を稼動し始めました(Luckyという名前のスーパーを覚えていらっしゃる方もいるかと思いますが、これはAlbertson’sに買収され、全店名称変更されました)。
2社とも、商品は店舗と同じ値付けにしていますが、Webvanの失敗から学び、一律10ドルの宅配料を徴収しています。アルバートソンズの方は、5ドルの手数料で、店で商品をピックアップできるようにもなっています。
両社とも、Webサイト上での商品のリストの仕方や、在庫切れの商品の払い戻しなど、細かいところは改善が必要ですが、なかなかの評判でスタートしたようです。マクニーリー氏の奥さんも含め、喜んでいるシリコンバレー住民もたくさんいるはずです。

ところが、嬉しい事ばかりとは限りません。たとえば、プライバシーの問題があります。セーフウェイの店舗では、以前から無料のメンバーカードを発行し、一部の商品にメンバー割引を適用していました。カード発行には、名前、住所、電話番号などの個人情報を登録する必要があり、そのため、レジでカードをスキャンした途端、どの消費者が、いつ、どの店舗で、何を買ったか全部記録が残ることになっています。
セーフウェイ側は、これは大まかなマーケティング情報収集であり、直接個人とは結びつかないとしていますが、プライバシー保護団体は、消費者に注意を促しています。たとえば誰かが法廷で訴えられた時、原告側の弁護士が、個人のアルコール飲料の購入履歴を提出させ、やり込める材料に使ったりする可能性もあるからです。
店舗での割引カードがそうなら、Webサイト上では尚更記録が残りそうです。現に、一回セーフウェイのオンラインでお買物すると、次回からは、一回目の購入商品だけではなく、過去にメンバーカードを提示して買った物が、"私のお気に入り" として全部リストアップされます。
ほとんどの消費者は、同じ商品を繰り返し購入する事を考えると、これは便利な機能とも言えますが、何となく気持ちが悪くもあります。悪い事をしていなくても、見られるのは嫌なのが人情です。


<苦戦するオンライン確定申告>

前回のインターネットに関するお話で、連邦政府の税務機関IRSの推奨する、オンライン確定申告をご紹介しました(確定申告することをfile a tax returnと言うところから、e-fileと呼ばれています)。
それに関して、4月15日の最終期限までにはまだ間がありますが、先日IRSから中間報告が発表されました。その報告によると、3月末までに申告した件数の半分弱がオンラインでなされており、昨年の同時期に比べると、2割も増加しています。ところが、IRSの予測では、最終的にオンラインで申告される件数は、全体(約1億4千万件)の3割ちょっとにしかならないだろうということです。
これは、個人と税金サービス会社の代理申告を合わせた数で、個人のオンライン申告に至っては、全体の6パーセントのみだと予測されています。

IRSは、2007年までに、確定申告の8割がオンラインでなされることを目標としており、今年の申告だけで、TVコマーシャルなどに23億円のマーケティング費用を遣っています。こういったIRSの思惑に反し、実際はなかなかe-fileが受け入れられない理由のひとつとして、セキュリティー問題を恐れる人が多いことがあります。昨年は、コンピュータで申告準備をしながら、最終的には郵送申告した人は、4千万人もいたそうです。
また、タダとかバーゲンに弱いお国柄なので、e-fileに必要なソフトウェアにお金を払うのが気に食わない人もいます。そして、根本的に、何が利点なのかよくわからないと言う人も多いようです。
クリントン前大統領は、オンライン申告の特典として、税金割引案を提案しましたが、議会で却下されました。ブッシュ現大統領は、来年から、オンライン申告に限り、最終期限を15日延長する案を出しています。何らかの餌がないと、皆すぐには飛びつかないのが現実のようです。

さて、この話題のIRSですが、先日おもしろい事を言い出しました。今年から、減量するために掛かった費用を、医療控除とするというのです(減量プログラムの受講費や、食事療法カウンセリング費用が控除対象)。
勿論、ちょっとお腹に肉がついたから、体重を減らしたいというだけではだめで、医学的に減量する必要がある人に限ります。それでも、これは画期的な計らいと言えます。今までは、何らかの病気を治療する過程での減量しか控除として認められなかったのですが、今回は、肥満(obesity)そのものが疾病であるという見解を取っているからです。

一年ほど前、アメリカ人の肥満は社会問題に発展しているというお話をしましたが(2001年3月16日掲載)、今や大人人口の3割が肥満(obese)、6割が肥満気味(overweight)を越えるとされる中で、体重を減らす事に、国の将来が掛かっていると言っても過言ではありません。

IRSは、近年、国民の健康を憂慮し、禁煙プログラムに掛かった費用や、アルコール中毒の治療費を控除対象としていましたが、ついに肥満も、堂々とその仲間入りを果しました。今回のIRSの決定が引き金になり、今後、肥満治療に保険が利くようになる事が切に期待されています。


<メージャーリーグ野球>

ご存じの通り、4月2日、新庄剛志選手のいるサンフランシスコ・ジャイアンツの開幕戦が、ロスアンジェルスで開かれました。永遠のライバル、ドジャーズには開幕から3連勝し、幸先の良いスタートとなりました。

残念な事に、開幕戦は午後1時からだったので、多くのファンは、テレビ観戦すらできませんでした。また、どんな試合だったのか知りたいけれど、ローカルニュースのたった30秒の報道では、物足りません。そういった不満を持つファンのために、メージャーリーグ(MLB)は、今シーズンからインターネット放送を始めました。
www.MLB.comでは、毎月5ドルで、ひと試合20分に凝縮されたビデオを観戦できます。試合終了後90分で放送が準備され、元気がある人は、その日行なわれた十数試合すべてを観戦できるのです。
これは、ヒットやホームラン、アウトを生んだ投球のみを集めたダイジェスト版で、フォアボールや三振前のストライク、監督とアンパイアの口論、ゲーム前のファンサービスのイベントなど、余分なものは一切取り除いてあります。忙しくて時間がないというよりも、20分掛けても、試合を詳しく知りたい通をターゲットとしており、今シーズンは、2万人のユーザーを目指しています。
テレビやケーブルチャンネルでは、スポーツ番組のオンパレードですが、それとは違った味を出してくれるはずです。

ところで、注目の新庄ですが、サンフランシスコと契約した頃は、疑問視するスポーツ評論家もいたようですが、オープン戦での活躍で、一躍スター選手の仲間入りを果したようです。その後、ちょっと調子に乗り切れていないですが、目立つ存在であることは確かです。
スポーツキャスターには "flashy Shinjo(ぴかぴかの新庄)" などと言われていますが、プロである以上、目立つことは大切な事なのです。

夏来 潤(なつき じゅん)

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