Life in California
ライフ in カリフォルニア/歴史・習慣
Life in California ライフ in カリフォルニア
2011年06月04日

バーベキューの日「メモリアルデー」?

ゴールデンウィークを過ごした日本でテレビを観ていたとき、あれ? と思ったことがありました。

それは、NHKのドラマで、松坂慶子さん扮する主人公の女性が、アメリカの大学で働く娘婿から手紙をもらったシーンでした。

あれ? と思ったのは、手紙の表。宛名の下に、「Air Mail(エアメール、航空便)」と書き添えてあったのです。

今は、アメリカから海外に送る郵便物はすべて航空便となっていますので、いまさら「Air Mail」と書く必要はないのです。けれども、そんなことは、日本に住む小道具さんにはわからない。

このシーンを観ていて、「なるほど、現地に住んでいないと、細かいところで、なかなかわかりにくい部分もあるのだな」と思ったのでした。


それと同じように、アメリカの習慣でも、他国に住む方には伝わりにくいものもあるのだろうなと思うのです。

たとえば、感謝祭(Thanksgiving)ハロウィーン(Halloween)でしたら、日本でもよく知られていますけれども、地味なところでは、メモリアルデー(Memorial Day)だとか、レイバーデー(Labor Day)といった記念日があるでしょうか。

俗に、メモリアルデーは「バーベキューシーズン到来の日」といわれていて、そのバーベキューシーズンを「締めくくる日」がレイバーデーといわれています。

メモリアルデーは5月最後の月曜日で、レイバーデーは9月最初の月曜日ですので、ちょうど6月から8月の夏の間、バーベキューには最適なシーズンをはさんでいるわけなのです。

ですから、みなさん、4月のイースター(Easter、復活祭)の日曜日が終わると、次は5月最後のメモリアルデーの三連休を楽しみにしているのですね。

(イースターは暦の関係で、3月末から4月末と日付は不定期となっています。もともと日曜日ですので、会社は三連休にはなりませんが、学校はイースターの週はお休みになります。)

イースターも終わり、いよいよメモリアルデーの週末(the Memorial Day weekend)がやって来ると、自宅の裏庭でバーベキューをしたり、みんなで公園に行って、大きなバーベキューグリルを囲んだりと、あちらこちらから香ばしいにおいがただよってくるのです。

いえ、ほんとに、どこからともなくプ~ンとバーベキューの香りがしてくるんですよ!


そんな楽しいイメージのメモリアルデーですが、以前にもお話したとおり、この日は「戦没者追悼記念日」と訳されます。(9月のレイバーデーの方は、「労働の日(勤労感謝の日)」ですね。)

メモリアルデーの歴史は古く、奴隷制度をめぐってアメリカの北と南が戦った、南北戦争(the American Civil War、1861年~65年)に端を発します。この戦争の戦没者を追悼するために、戦いが終結した翌年の1866年に、全米に広まった記念日のようです。

奴隷制度の廃止を目指す北部と維持を掲げる南部の戦いは、実にすさまじいものがありまして、戦火はアメリカ南東部の広範囲に広がりました。兵士だけで62万人の犠牲者が出たともいわれています。

とくに北と南の境にあるヴァージニア州には激戦地が多く、それゆえに、「兵士の亡霊を見た」という話はいくらでも伝わっています。そして、民間人の犠牲者となると、その全容はわかっていません。

そんな多大な犠牲を払ってまで勝ち得た奴隷解放(emancipation)ですが、犠牲者を追悼する動きがアメリカ各地で起こったというのは、ごく自然なことだったのかもしれません。
 これ以降、メモリアルデーというのは、戦没者(とくに戦地で散った兵士たち)を追悼する日となったのでした。

昨年11月にご紹介した「ベテランの日(Veterans Day、退役軍人の日)」は、存命する退役軍人に敬意を表する日でしたが、こちらのメモリアルデーは、亡くなった方々に思いを馳せる一日となっているのです。

やはり、アメリカは国内外で戦った数が多いですから、退役兵も多いし、犠牲になった兵士も多いのです。ですから、メモリアルデーとベランズデーが両方あっても、何の不思議もないのかもしれませんね。


毎年、5月末のメモリアルデーがやって来ると、「あ~、三連休だぁ!」と浮かれ立つ人々とは対照的に、墓地に行って花を手向け、戦没者に語りかける人々もたくさんいます。

戦地で没した兵士(fallen soldiers)は、国が管理する霊園(national cemetery)に埋葬されます(遺族に異存がある場合は、民間の墓地に埋葬されることもあるようです)。
 そういった国立霊園では、遺族や仲間の元兵士たちが集い、メモリアルデーの式典(the Memorial Day Observance)が開かれます。

首都ワシントンDCからポトマック川を渡った対岸には、有名なアーリントン国立墓地があって、毎年メモリアルデーとベテランズデーには大統領がお参りすることになっています(今年もオバマ大統領がお参りしました)。

サンフランシスコ・ベイエリアで最大の国立霊園は、サンブルーノという街にあります。サンフランシスコ空港のちょっと北にあって、ヴェトナム戦争の戦没者を始めとして、11万3千人が埋葬されています。

このゴールデンゲート国立墓地でも、400人が集まって式典が開かれました。荘厳なバグパイプの調べで式典は始まり、元兵士の方々が仲間の思い出のエピソードを語りました。

メモリアルデーを前に、国立霊園ではボーイスカウトやボランティアの人々が、墓石ひとつひとつに星条旗を手向けます。小さな国旗で、墓石から足ひとつ分(one foot)離れた場所にさすのが習慣となっています。

星条旗は国を象徴するものであり、子供の頃から、人々はこの旗に忠誠を誓います。「Old Glory(オールドグローリー)」「Red, White & Blue(レッド、ホワイト&ブルー)」と、親しみを込めて呼んだりもします。

国のために散った兵士たちを星条旗で祝するのは、彼らの国に対する忠誠心をたたえる意味があるのです。


ここでわたしは、戦争を美化しようとか、戦没者を盲目的に英雄化しようとか、そんなつもりはまったくありません。

だって、もともと戦争がなければ、兵士だってあたら命を落としたり、手足をもがれたりすることもありません。そして、民間人の犠牲者(civilian casualties)が何千、何万にのぼることもないのです。いつの時代も、戦地で散った兵士に比べると、声無き民衆の犠牲はもっと悲惨なものでしょう。

けれども、以前にもご紹介したメモリアルデーを再度書いてみようと思ったのは、本来の意味がみんなにうまく伝わっていないんじゃないかと感じたからなのでした。

いえ、アメリカにやって来てすぐの方ばかりではなくて、アメリカで生まれた人だって、もともとの意味は忘れ去って「メモリアルデーは楽しい日」「みんなでバケーションにでかける日」と思い込んでいる方々が多いのです。

まあ、アメリカでは、みんなが一斉に休める祝日が少ないので、「三連休があれば、何でもいいから楽しんじゃえ!」という気持ちはわからないではないんですけれどね。

それに、アメリカ人ほど働く国民も珍しいので、こっちもたまには休ませてあげたい気分にもなりますし。

そして、何といっても、いかにアメリカの軍隊が大きくとも、軍隊に入隊した家族を持つ人は少ないのです。人口のたった1パーセント未満が戦争の重荷を背負っている、とも報道されていました。
 ですから、みなさん、「戦争」とか「戦没者」なんていわれてもピンとこないのでしょう。

でも、それは「ちょっと違うんじゃない?」とも思いますし、どんなにかけ離れた場所の話であっても、ちゃんと考えなければと神妙な気持ちにもなるのです。

だって、今でもアメリカは戦争をしているでしょう。2001年10月に始まったアフガニスタン紛争では、1576人のアメリカ兵が亡くなっていますし、2003年3月に侵攻したイラク戦争では、4457人のアメリカ兵が没しています(5月30日のメモリアルデー現在)。

その多くは、18歳、19歳、20代前半という若者たちです。大学進学は延期して、国のために兵士になった若者もたくさんいることでしょう。

そして、子供を持つ戦没兵も多く、アフガニスタンとイラクで親を亡くした子供たちは、4300人以上といわれています。
 多くの子供たちは、親を失ったばかりか、同時に住む場所も無くしてしまうのです。なぜなら、基地の住宅施設から出て行かなくてはならないから。

ですから、亡くなった数だけ思い出があるし、亡くなった数だけ、残された者の悲嘆と苦しみが生まれるのです。そんなことをあれこれ考えていると、なんとなく暗澹(あんたん)とした気分でメモリアルデーを過ごしたのでした。

ま、今年のベイエリアは、雨が残る変なお天気が続いて気温だってグンと低いので、「わ~い、バーベキューだぁ!」なんて気分にはなれない部分もあるのですが。

というわけで、本来の意味を考えると、なかなか心から楽しめないのが「バーベキューシーズン到来の日」なのでした。

追記: 緑の霊園の写真は、サンブルーノにあるゴールデンゲート国立墓地(the Golden Gate National Cemetery)です。上の写真は、すぐ脇を通るフリーウェイ280号線から撮ったもの。次の写真は、上空を通過する飛行機から撮ったものです。

やはり、11万3千もの白い十字架には、圧倒されるものがあるのです。


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