母の看病

とっても楽しいはずのハロウィーンの日(10月31日)、母が緊急入院しました。

 

 サンフランシスコにいたわたしは、それまでの数日間、なんとなく気が晴れないし、誕生日に素敵なレストランで食事をしても思う存分に味わえないし、自分はなにかしら悪い病気にかかっているのかも・・・と、不安な日々を過ごしていた矢先のことでした。

 

 ですから、母の入院と二日後の緊急手術の知らせを受けて、いつもあんなに元気な母が! と驚くとともに、あ~、自分の不調は母の病気のせいだったんだと、大きなショックの中にあっても、心の片隅では納得していたのでした。

 

 けれども、アメリカから駆けつけるとなると、どう頑張っても執刀には間に合いません。仕方がないので、手術には叔母たちに立ち合ってもらって、ようやくたどり着いた夜中の病院で、術後24時間の母に会いました。

 

 もちろん、母の意識はありませんでしたが、当直の医師から説明を受けたり、ベッドに横たわる青白い母の顔を見たりしていると、やっぱり現実に起きたことなんだと、いやがおうにも実感させられるのでした。

 


 それからの2ヶ月間、これほど世の中が灰色に感じたことはありませんでした。

 

なにをするにも、いつも頭の隅には母のことがひっかかっているし、明るい陽光の中、楽しげに歩く家族連れを見かけても、どこかしら遠い宇宙の出来事かと思えるほど、現実味に欠けているのです。

 

 緑色だったイチョウの葉が色づき、ハラハラと舞い落ちたと思ったら、いつの間にやらクリスマス。

 

 そんな楽しげなイベントも過ぎ去り、もうすぐお正月です。

 

その間、母は、ひと月以上を過ごした集中治療室から病棟に移ったのも束(つか)の間、たった数日で集中治療室に舞い戻り、また大きな手術を受けなければなりませんでした。

 

 手術室に向かう母に「お外で待ってるからね、ずうっと待ってるからね」と声をかけたのを覚えていますが、それは、手術には危険がともなうと聞き、自然と口をついて出た言葉でした。

 


 体の小さな母が、あれほどの大手術を二度も乗り越え、また元通りに元気になろうと闘っています。

 

 「わたしは、お産の時しか入院したことがない!」と自慢していた母ですので、きっと自分の足で歩けるようになるはず。

 

そう固く信じて、母のベッドサイドに足を運んで、声をかける毎日を送っております。

 

 2016年も残りわずかとなりましたが、新年が母にとっても、皆さまにとっても良い年となりますように。

 

 

今月号はお休みいたします

Vol. 208

今月号はお休みいたします



2000年12月から16年間、休みなく続けてきた『シリコンバレーナウ』シリーズですが、家族が重篤な病状のため、今月号はお休みいたします。



常日頃、「親を見送るのは子の務め」と肝に銘じておりますが、元気になって一日でも長く「第二の人生」を楽しんでもらおうと、集中治療室に足を向ける毎日です。





「60」がカッコいい!

前回の「ライフinカリフォルニア」のコーナーは、「7090100が目安です」というお話でした。

 

 サンフランシスコ・ベイエリアの「夏」の話題でしたが、いつの間にか秋も深まり、深い赤やオレンジが似つかわしい季節になっています。

 

 そんな今日の数字は、「60」。

 

 こちらは、年代なんです。

 

 「1960年代」のことですが、何かというと、車のナンバープレートのお話です。

 


 ナンバープレートといえば、英語では「license plate(ライセンスプレート)」と言いますが、アメリカでは、州ごとに違ったデザインとなっていますね。

 

ですから、あちらこちらの州をドライブしたり、逆に自分の街に他州の車が走っていたりすると、「こんなデザインなんだぁ」と、見ていて楽しい気分になります。

 

 長時間ドライブすると、「いったい何州のナンバープレートを見かけるだろう?」と、退屈しのぎに数える方もいらっしゃいます。

 

 カリフォルニアでよく見かける他州のプレートには、アリゾナやネヴァダ、オレゴンがあるでしょうか。やはり、カリフォルニアに隣接していますから、車で来られる方が多いようですね。

 

こちらは、アリゾナのナンバープレート。

 

 砂漠を思わせるデザインで、山並みとサボテンがあしらわれています。

 

 なんとなく、西部劇の舞台を思い浮かべますが、「グランドキャニオンの州(Grand Canyon State)」とも書かれています。

 

 そう、アリゾナは、かの有名なグランドキャニオンがあるところ!

(Photo by Marduk, Wikimedia Commons)

 

一方、こちらは、ワイオミング。

 

 プレートの背景になっているのは、グランドティートン国立公園です。

(Photo by Awmcphee, Wikimedia Commons)

 

グランドキャニオンほど知名度はありませんが、ここにはロッキー山脈が通っているので、イエローストーン国立公園や、グランドティートン国立公園と、美しくも広大な自然が広がります。

 

 バッファロー(バイソン)もたくさん生息する場所で、東から「白人」がやってくる前は、先住民族の方々が、この巨大な動物とともに静かな暮らしを営んでいました。

 

プレートの前面には、カウボーイもモチーフとなっていますが、西部開拓時代には、カウボーイたちが「バッファロー狩り」を行って、毛皮や肉を行商していました。

 

 今でも、カウボーイハットとブーツで街を闊歩する人をたくさん見かける。ワイオミングは、そんな土地柄なのです。

 

そして、こちらは、フロリダのナンバープレート。

 

 我が家はフロリダに住んでいたことがあるので、懐かしくてご紹介しました。

 

 州の名産品オレンジがあしらわれていて、いかにも暖かそうな南国のイメージです。

 

 フロリダといえば、アメリカで一番オレンジの生産量が多いだけではなく、ブラジルを除いて、世界のどの国よりも収穫が多いんだとか。

 

 けれども、今年は、オレンジの病気(citrus greening disease、中国語で黄龍病)が蔓延して、収穫高は例年の3割ほどに激減するだろう、とも言われています・・・。

 


 そんな風に、各州のナンバープレートを見ると、「ご当地もの」が想像できるのですが、

 

まあ、かわいげがないのが、カリフォルニア。

 

 現在のナンバープレートは、「白地に青い文字」の味気ないデザインです。

 

 もちろん、「プレミアム」デザインはあるんですよ。

 

たとえば、「大自然ヨセミテの山並み」や「海にもぐるクジラの尾っぽ(写真)」、それから「ロスアンジェルスの青い海とヤシの木」と、余分にお金を払ったら、アーティスティックなプレートも手に入るんです。

 

 でも、我が家も含めて、大部分の人は、味気ない「スタンダード」を選びます。

 


 そんなわけで、近頃、ちょっと特別な「1960年代」の復刻版が人気を集めているんです。

 

こちらは、昔の名車マスタングに、わざわざ真新しい復刻版のプレートを注文された方。

 

 そう、「黒地に黄色の文字」というのが、1960年代のスタンダードでした。

 

 なんでも、こちらのデザインは、1963年からだんだんと新規発行数が減らされていって、

 

1970年には、次の「青地に黄色い文字」(写真)に世代交代しています。

 

 それが今になって、「スペシャル版」としてリバイバルしたのでした。

 

 そうなんです、カリフォルニアの運輸局は、ときどき「スペシャル版プレート」を発行するんですが、これには基準があって、発案したあとに少なくとも 7,500枚の注文が来ないと、製作はされないとか。

 

 それが 7,500枚どころか、あれよあれよと人気となって、現時点では、1960年代の復刻版は、15万枚も売れているとか!

 

 50ドル(約5千円)の手数料で注文できるそうなので、レトロ車の愛好家とか、人気の小型車を運転する若者とか、ちょっとオシャレしたい人に受けています。

 


 そんな「スペシャル版」を楽しめる、カリフォルニアのナンバープレート。

 

次のスペシャル版には、「ピンクリボン」が発案されています。

 

 そう、「ピンクリボン」というのは、ニューヨークの慈善団体がはじめた、乳がんの啓蒙活動。

 

 今では「ピンク色のリボン」を見ると、乳がんと闘う方々や研究者の方たちを思い浮かべるほど、世界じゅうに広まっています。

 

 乳がんは、女性ばかりではなく、少数ですが男性もかかる病気ですので、だんだんと男性側の意識も高まっているようです。

 

たとえば、アメリカ大リーグにも「ピンクリボンの日」があって、フィールドには、ピンク色のTシャツを着た女性たちばかりではなく、ピンク色のグッズを身にまとった選手も、誇らしげに現れます。

 


 10月は、ピンクリボン月間。

 

 勢いに乗って、スペシャル版「ピンクリボン」プレートが、カリフォルニアに誕生するのかもしれません。

 

カリフォルニアの住民投票: マリファナと極刑、アダルト業界

Vol. 207

カリフォルニアの住民投票: マリファナと極刑、アダルト業界

今月は、11月8日の「投票の日(Election Day)」をひかえて選挙のお話となっておりますが、(風変わりな)カリフォルニア州にフォーカスいたしましょう。

<頭の痛いカリフォルニアの住民投票>
ご存じのように、今年は、四年に一度の大統領選挙(Presidential Election)の年。

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が、誰が立候補しようと、民主党候補(今年はヒラリーさん)が州の「選挙人団(Electoral College)」を獲得する、カリフォルニア。
選挙を実施する前から、この55票という大票田は、ブルー(民主党)に色づけされていて、大統領候補がここで選挙運動することすら、お金の無駄遣いなのです。

面白いことに、音楽ストリーミングの先駆者パンドラPandora Radio)のサービスでは、ユーザの郵便番号と音楽の好みさえわかれば、90パーセントの確率で支持政党(political affiliation)がわかる、とCEOティム・ウェスタグレン氏が豪語されていました。
ゆえに、「パンドラは政治広告のすぐれたプラットフォームである」というわけですが、「カリフォルニアの都市部に住んでいる」というだけで、過半数が民主党支持者なのだから、あんまり分析力の自慢にはならないかもしれません。

カリフォルニア人にとっては、そんな「決まりきった」大統領選挙よりも、もっと頭を悩ませることがあるのです。

それは、さまざまな法案(ballot measure)を決する住民投票。

そもそも、アメリカという巨大な国の東と西を比べると、どうしても西には、西部開拓時代の「独立心」が根付いているのか、「政治家ではなく、自分たちに決めさせろ!」という意識が高い。
ですから、6月の予備選挙(Primary Election)や、11月の総選挙(General Election)には、住民が決めるべき法案のオンパレード。
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住民に問う法案には、州や市の議会が提出するものと、州民が署名活動を経て発案するものの2種類があって、法令や州憲法改正を決するのですが、まあ、毎回たくさんの法案が出されるものですよ。

いえ、有権者は「はい(賛成)」か「いいえ(反対)」で答えるわけですが、なにせ今回の総選挙には、州全体に関する法案だけで、17箇条!

写真の冊子は、州レベルの法案を説明した資料で、投票ギリギリの10月中旬になって、登録有権者(注)の家庭に配布されたもの。
220ページを超える資料ですが、後半の法律草案の部分だけで105ページもあって、こんなに分厚い資料は、カリフォルニアといえども、なかなかお目にかかれるものではありません!

当然のことながら、ほかにも「大統領」「連邦議員」「州議会・市議会議員」から「近所の学区長」を選ぶわけで、州民としては、頭がクラクラっとするような賑々しさなのです。

<マリファナの合法化>
それで、州民の決する法案が17件もあると、知名度の高いものと、そうでもないものに分かれるわけですが、まあ、一番有名なものは、「提案64(Proposition 64)」でしょうか。

何かというと、俗に「マリファナの合法化(marijuana legalization)」。こちらは、州民発案の法令となりますが、「21歳以上の大人に対して、少量の娯楽的な使用と自宅での栽培を認めてあげよう」というもの。

カリフォルニアでは、すでに「医療用マリファナ(medical cannabis)」は認められていて、自治体が認可した施設(medical dispensary)での栽培や、処方箋を持つ患者への販売が許されています。

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北カリフォルニア最大のサンノゼ市(人口約103万人)では、認可施設は16カ所。
密集したサンフランシスコ市(約86万人)には、28カ所あるそうで、「医療用」と限られているわりに、ダウンタウンを歩けば、あちらこちらからマリファナの煙が匂ってきます。
(写真は、サンノゼ市にある認可施設: Photo by Karl Mondon / The Mercury News)

医療用マリファナの効用は広く認められていて、さまざまな病気による痙攣(けいれん)やふるえ、がんの化学療法による痛みや吐き気、食欲減退など、薬の効き目が認められない場合や副作用が強いケースに、驚くほど効果を発揮すると言われます。

一方、今回州民が問われているのは、処方箋を持つ患者でなくとも、少量であれば、21歳以上の誰もが娯楽で使えるようにしようじゃないか、というもの。

アメリカ全土では、すでにアラスカ、コロラド、オレゴン、ワシントン各州で、娯楽用のマリファナ(recreational marijuana)が認められています。
そして、11月の総選挙では、カリフォルニアに加えて、西部のネヴァダ、アリゾナ、東部のメイン、マサチューセッツ各州で「娯楽マリファナ」の行方が決まることになります。
Airfield Supply in San Jose-2.png

そもそも、アメリカでは、1930年代までは、マリファナは「薬」として医者が処方していたそうで、「禁止薬物」と定められたのは、1937年のこと。

その後、ヒッピー文化の全盛期1970年には、連邦政府が「医療分野では何のメリットもない麻薬」として、アヘンやLSD、幻覚作用のあるキノコなどと同列に、「スケジュール 1」という「もっとも危険な薬物」に指定しています。

ですから今でも、国から見れば、マリファナは「違法劇薬」。研究機関で大量のマリファナを保持できるのは、全米で唯一、ミシシッピ大学の研究所に限られます。
ここでは、全米から押収されたマリファナが、銀行の金庫よろしく厳重に保管されていて、全米の研究機関は、ここから「配給」を受けなければなりません(ゆえに、研究も極端に制限された状態です)。

そんな歴史的背景があるので、マリファナに関しては「科学的な謎」や「迷信」がたくさん存在するわけですが、これまでの研究で蓄積されたものもあります。

マリファナを使用すると、脳全体にあるレセプタ(受容体)が影響を受けて、いわゆる「ハイ」な気分になったり、創造力が増したりと、「違った自分」を体験できると言われます。

おもな成分には、THCTetrahydrocannabinol)とCBDCannabidiol)があり、前者は、とくにレセプタの多い前頭前皮質に影響を与えるので、「先のことを計画する」とか「衝動を抑制する」ことが難しくなり、逆に、違った目でモノを見るようになるので、芸術性がグンと増すことにもなります。

Medical cannabis KQED News July 21 2016.png

後者のCBDは、THCのように「ハイになる」ことなく痙攣や痛みを抑えるので、医療用マリファナには、CBDの成分が高いものが有効となります。
一般的には、医療用マリファナにもTHCの成分が入っていますが、発育を妨げるほどの重症の小児患者を想定して、THCがほとんど含まれない品種も開発されています。
(Photo from KQED News)

いずれにしても、マリファナといえば、近年は、高校生の4割近くが使用を認めるほど手軽な麻薬となっていて、「少しくらいだったら、べつに娯楽で使ってもいいんじゃない?」という意見が、全米で強くなる傾向にあります。

カリフォルニアでも、「6割が娯楽使用に賛成、3割が反対」という世論調査があって、たぶん「提案64」は通るだろうと予測されます。
合法化することで、今まで隠れていた「売り上げ」に対して、きちんと税金を払ってもらおう! という大義名分もありますし。

けれども、個人的には、合法化には反対なんです。

まず、判断力が鈍ったまま運転するドライバーが増えて、「交通事故が増える」のが怖いではありませんか。だって、ヘラヘラと笑いながら、「あ〜、人にぶつかっちゃったぁ」なんて言われたら、たまったものではないですもの。

そして、「マリファナくらいなら大丈夫」という軽い気持ちは、間違っていると思うのです。一般的には「マリファナには習慣性がない」と言われますが、実際には、使用者の12パーセントは依存症となるそうですよ(米国疾病管理予防センター(CDC)が9月に発表した、最新2014年のデータ)

なにせ、大量のドーパミンが脳に出ることで「ハイで幸せ」な気分になるわけですから、これがクセにならないと考える方がおかしいのではないでしょうか。
マリファナが「ゲートウェイ・ドラッグ(麻薬の玄関口)」と言われるゆえんは、ここにあるのでしょう。そう、コカインやヘロイン、はたまた何十種と出回る化学合成薬物といった習慣性の強い麻薬への「入り口」となることもあるのです。

と、私見はさて置き、近いうちにカリフォルニアでマリファナが解禁となったら、「免疫のない留学生」をはじめとする若者が、道を踏みはずす結果にならなければいいなと願っているところです。

<「極刑」と「アダルト業界」>
というわけで、なかなか難題の住民法案。「提案64」のほかにも、16件もある州民への問いかけですが、簡単にふたつだけご紹介いたしましょう。
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ひとつは、「ふたつでワンペア」みたいな提案ですが、極刑に関する「提案62」と「提案66」。

そう、死刑death penalty)に関する問いかけですが、前者は「死刑廃止案」、逆に後者は「死刑を迅速に執り行おう」という法案です。

もちろん、民主党の州支部や主要新聞は「死刑を廃止し、保釈なしの終身刑」を推奨しているのですが、アメリカ人の心情としては、まだまだ極刑を望む声も強く、両提案の行方は不明です。

一般的には、これだけ提案件数が多いと、とりあえず「ノー」と答える人が増えるので、両方とも通らない(現状維持の)可能性もありますが、両方とも通って「自己矛盾」をきたす可能性もあります(その場合、どっちが勝つんでしょうか?)。
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そして、もうひとつご紹介したい法案は、「アダルト映画の出演者にコンドーム着用を義務づける」という「提案60」。

なんでも、州の法律では、アダルト映画業界の従事者は、危険な労働環境(workplace hazards)にさらされていると定義され、定期的に健康診断を受けることなどが義務づけられているとか。
この労働衛生安全要件の中には、コンドーム着用も入っているわけですが、現場では、プロデューサーが理解を示さないこともある。だから、労働者を性感染症から守るために、追加の法律が必要なんだ! というわけです。

こう聞けば、「ま、いいんじゃない?」と思うわけですが、この法案には落とし穴があって、州や自治体ではなく、法案の提案者(団体)が業界の行方を牛耳る結果になるんだとか。
ですから、政治史上の「珍事」ではありますが、民主党と共和党が一致団結して反対しているそうな。

実際には、アメリカでは昨年、三大性感染症の報告件数がグンと増えて記録を更新したし(今月発表のCDCデータ)、「業界従事者の四人にひとりは性感染症にかかる」という研究結果もあるそうです。

でも、多くの州民にとっては、「どうしてこんな法案が投票用紙に載ってるの?」という提案ではありました。

<郵便で投票するカリフォルニア人>
というわけで、風変わりなカリフォルニアの選挙事情。

カリフォルニアのように大きな州では、インターネットによる投票は実施されていませんので、選挙は「投票用紙(paper ballot)」で行なわれます。

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が、さすがに投票日に投票所(polling place)に行くことは少なく、たとえば、「シリコンバレー」と呼ばれるサンタクララ郡では、8割近くの人が、郵便での投票(vote by mail ballot)を選択しています。

カリフォルニアでは、投票に関する資料と投票用紙が届いた時点で、早期投票(early voting)や郵便投票が可能となりますので、10月後半(法令では10月10日)には、早々と投票できることになります。ですから、「大統領候補者討論会」の最終回(10月19日開催)なんか待たずに、さっさと投票した人も多いというわけです。
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が、法案には微妙なものも多く、連日連夜「イエスと投票しよう!」「ノーと投票しよう!」とテレビコマーシャルが流れると、いったいどっちが正しいの? と、州民の心も右へ左へと揺れ動くのです。

さらには、「税金」がからむ法案も多いので、「理想はそうなんだけど、向こう30年間、税金が増えるとなるとねぇ・・・」と、またまた悩みはつのるのでした。

(注)登録有権者: 蛇足ではありますが、選挙制度について少々。アメリカでは、市民権がないと投票できませんが、それだけではなく、在住する郡(county)に有権者登録(voter registration)をしないと投票できません。
カリフォルニアの場合、スペイン語、中国語、日本語をはじめとして、9ヶ国語の言語サポートも整っていますが、投票権のある2,500万人のうち、登録しているのは1,800万人という現状です。

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そんな中、今年の選挙戦で特筆すべき点は、ヒスパニック系をはじめとして、「査証を持たない移民(undocumented immigrants、いわゆる不法移民)」も参加して、登録運動が広まったことでしょうか。
「自分たちは投票できないので、せめて投票できる立場の人には、ちゃんと投票してほしい」という願いが込められていますが、選挙に参加するのは、市民の義務であり、「特権」でもあることを訴えていらっしゃるように感じます。
(Photo by Ray Chavez / The Mercury News)

夏来 潤(なつき じゅん)

お久しぶりです、グースカくん

9月後半から3週間をサンフランシスコで過ごして、サンノゼの我が家に戻ってくると、

 ちょっと嬉しいことがありました。

 

 以前もご紹介したことがあるんですが、秋になると、我が家にやってくる「御仁(ごじん)」がいらっしゃるんです。

 

 いえ、「人」ではないんですが、夕方から早朝にかけて我が家に滞在する、かわいらしいもの。

 

それは、こちら。

 

 何か寝ているでしょう?

 

 我が家には、玄関のドアの上にスペースがあるんですが、そこに頭をつっこんで、ぐっすりと眠りこけている誰かさん。

 

 日頃から出張の多い連れ合いは、初めて対面したようで、

 

「え、これって、ネズミ? それとも、コウモリ?」と聞くんです。

 

 でも、ネズミなら、ドアを開けた音で、すぐに逃げて行くでしょうし、第一、しっぽはこんな形ではありません。

 

それに、コウモリなら、しっぽはありませんし、こちらの写真のように、さかさまに寝ているはずです。

 

 そう、いつか裏庭で見つけたコウモリのように、さかさにぶら下がって熟睡しているはず。

 

たぶん、これは、何かの幼鳥が、大きくなる間、安全な我が家の空間を「ねぐら」にしているんだと思うのです。

 

 どうして幼鳥かといえば、背中の毛がフサフサしていて、大人になっていない感じがしませんか?

 

いつか、サンフランシスコの滞在先で、カラスの幼鳥がバルコニーで羽を休めていたことがあって、やっぱり、翼の部分が、フサフサした「羽毛」でしたよ。

 

 よくは存じませんが、鳥って成長する過程で、フサフサの羽毛から、ツヤツヤした羽に生え変わるのでしょう。

 

 それに、我が家の「グースカくん」も、全体に丸っこくて、幼さを感じませんか?

 

 ドアを開け閉めしても、何も気づかずに安眠しているし、そんなところに、なんとも「あどけなさ」を感じるのです。

 

 そう、まだまだ世間慣れしていない様子。

 


 そういえば、「あどけなさ」で思い出したんですが、何年も前に、我が家の中庭でハミングバードの幼鳥を見たことがあるんです。

 

 巣立ってはいるけれど、まだまだ親鳥からご飯を食べさせてもらっている幼鳥を。

 

ハミングバードは和名「はちどり」といいますが、その名のとおり、まあ忙しく、あっちからこっちの花へと羽ばたいて、蜜をチューチューと吸う鳥なんです。

 

 ブ~ンと、大きな羽音をさせながら、花から花へとせかせかと動き回るさまは、まるで働き者の蜜蜂みたい。

 

 ところが、忙しい「大人たち」とは裏腹に、幼鳥は、いたってのんきなもの。

 

残念ながら写真はないんですが、わたしが幼鳥を見たのは、ツル状の花を支えている鉄の支柱。

 

 ちょうど羽を休めるのにいい具合だったようで、そこで、こっくりこっくりと居眠りをしてるんです。

 

 そこに、ブ~ンとハミングバードが飛んできて、幼鳥に蜜をあげるんですが、

 

 最初のうちは、幼鳥が「親」で、親が「幼鳥」かと思ったんです。

 

 なぜって、幼鳥はフワフワと羽毛に包まれて、とっても大きいから。そう、で~んと構えて、スリムな親よりも、ずいぶんとでっかいんです。

 

 しかも、(本物の)親鳥は、口から蜜をチュッチュと出して、いったいどっちがどっちに蜜をあげていたのか、よくわからなかったから。

 

 どうやら、親鳥は、お腹の中からクチバシに蜜を出してきて、幼鳥に与えるみたいなんですが、「ふたり」のクチバシの間に蜜が(高速で)飛び交って、どっちに流れているのかわからない!

 

 それで、ひとしきり幼鳥を食べさせた親鳥は、あわただしく立ち去るのですが、そのときに初めて「あ~、残された方が子供なんだ」とわかったんです。

 

 最初は、「大きい方」からもらった蜜を、「小さい方」がチュッチュと味わっていたように見えたけれども、それは逆だったんだ、と。

 

 蜜をもらって、お腹がふくらんだ幼鳥は、親鳥を見送ったなと思ったら、だんだんとまぶたが重くなって、また居眠りを始めました。

 

 その安眠を邪魔してはいけないと、わたしもその場から離れたんですが、いつの間にか、幼鳥は中庭から飛び立って、いなくなっていました。

 

今から思えば、この場に遭遇したのは、貴重な体験でしたね。

 

 だって、我が家には毎日、チッチというハミングバードの鳴き声や、ブ~ンという賑やかな羽音が響いているのに、

「巣づくり」や「給餌(きゅうじ)」「飛び方のトレーニング」といった場面には、あれ以来、お目にかかったことがないから。

 


 というわけで、すっかりお話がそれてしまいましたが、我が家の「グースカくん」。

 

 ひとつ不思議なことがあるんです。

 

5年前にご紹介した「グースカくん」は、こちらの写真のように、玄関の右側で寝ていたんですが、今年は、なぜか左側

 

 明らかに、5年前とは「別人」のグースカくんですが、どうして左がお好きなんでしょう?

 

 右の方が、落ち着くような気がするんですけれど。


 ま、とにかく、久しぶりに舞い戻ってきてくれた「グースカくん2世」。

 

 あと何週間かは、電気を消して、おとなしくして、安眠の邪魔をしないようにいたしましょう。

 

 

追記: 5年前のお話では、「頭を突っ込んで、グースカ寝ている」と書いてみたのですが、連れ合いは「グースカじゃないよ」と主張するんです。

 

 まあ、たしかに、何の音もたてないで、ひたすら静かに熟睡していらっしゃるのですが、その様子があまりにかわいいので、「グースカくん」と呼ぶことにしました。

 


後日談: 数日後、また外出先から戻ってくると、今度は、グースカくんが玄関の右側で寝ていました!
(ほら、やっぱり左よりも、外から見えない右の方が落ち着くでしょう?)


 けれども、これが先日のグースカくんと「同一人物」なのか、それとも、べつのグースカくんに先を越されて「ねぐら」を奪われたのか、それは定かではありません・・・
(なんとなく、しっぽの感じが違って「別人」のような・・・)

 

Truth or dare?(「真実か挑戦」のゲーム)

今日のお題は、Truth or dare?



こちらは、あるゲームの名前です。



パーティーなんかでみんなが集まってくると、「ちょっとやってみようよ~」と始まるような、お遊びの名前。



truth は、「真実、本当のこと」。



dare というのは、「あえて(危ないこと、恥ずかしいことを)すること」。



ですから、Truth or dare? は、本当のこと(truth)を言うか、



さもなければ、



危なかったり、恥ずかしかったりする行動を取らせる(dare



という、ちょっと酷なゲームです。



最初に、AさんがBさんに「Truth or dare?」とたずねます。



もしもBさんが「truth」と言えば、Aさんが出した質問に対して、Bさんは本当のこと(本心)を答えなければなりません。



もしもBさんが「dare」と答えれば、Bさんは、Aさんが出した難題を実行しなければなりません。



そんな風に、順繰りにみんなに質問や難題を投げかけていく、というゲームです。




たとえば、「truth」と答えた人への質問には、こんなものがあるでしょうか。



When was the last time you peed in bed?

最後におねしょしたのは、何歳の頃?



Who is the sexiest person here?

この中で、一番素敵だと思うのは誰?



What is your biggest regret?

(今までの人生で)最大の後悔はどんなこと?



一方、「dare」と答えた人への挑戦状には、こんなものがあるでしょうか。



Dance with no music for 1 minute

音楽なしで、1分間踊りなさい



Lick the floor

床を舌でなめなさい



(For a guy)put on makeup. (For a girl) wash off your makeup

(男のコだったら)化粧をしなさい。(女のコだったら)化粧を落としなさい



(以上、Conversation Starters World というサイトを参考にさせていただきました)



こんな風に、「冗談」や「いたずら」を含んだ質問や挑戦が多いので、どちらかと言うと、子供の頃や思春期に楽しむゲームでしょうか。



若いときって、誰かをからかったり、恥をかかせたりするのが、まるで面白いことのように感じる時期ですからね。




ここで、ちょっと文法的な補足をいたしましょう。



dare という単語は、名詞でもあり、動詞(助動詞、自動詞、他動詞)でもあるような、小難しい言葉でしょうか。



たとえば、こんな風に助動詞として使うことがあります



No one dared say a word

誰も一言も口にしようとしなかった



こんな風に自動詞として使うこともあります



Try it if you dare

あえて挑戦しようと思うんだったら、それを試してみなさいよ



そして、こんな風に他動詞として使うときもあります



I dare you to run a full marathon

マラソンを完走できる?って、あなたに挑戦するわ



それから、こちらは、dare を使った慣用句みたいになっています



How dare you?

まあ、あなたって人は・・・(どうやったら、そんなことができるのよ?)



こちらは、



How dare you make fun of him?

彼をからかうなんて、あなたはどんな神経してるのよ?



といった風に、本来は you のあとに続く動詞があるはずなんです。



が、あきれ果てて you のあとの言葉が続かず、How dare you? になってしまった感じでしょうか。




というわけで、ちょっと小難しい響きの Truth or dare? ですが、



これを書いているのには、ワケがあるんです。



9月の第2日曜日、アメリカ全土で、待ちに待ったアメリカンフットボールのプロリーグ(NFL)が開幕しました。



翌月曜日、地元サンフランシスコ 49ers(フォーティーナイナーズ)の開幕ナイターが開かれた、Levi’s(リーヴァイス)スタジアムでの出来事。



試合は、49ersが相手のロスアンジェルス・ラムズに21対0で勝っているけれど、なんとなく意気が上がらない、第4クウォーター。



突然、エンドゾーンの辺りから若者が飛び出してきて、赤いTシャツとジーンズ姿でフィールドじゅうを駆け回ります。



わたしも、その場で見ていたのですが、フィールドの真ん中でハドルする(プレー前に集まる)選手たちのまわりをグルグル走り回って、誰も止めようとしません。



そのうちに、若者はTシャツをたくし上げ、お腹を見せたと思ったら、何かを叫びながら、選手とハイファイヴなんかをしています。



ようやくイベント係員が出てくると、彼はフィールドにエイっと押さえつけられて、出動した警察官に逆のエンドゾーンに連行されていきました。



あとでわかったんですが、この晩の若者は、友達に「dare」をさずかった、16歳のティーンエージャーだったんです。



お腹に自分の電話番号を書いて、試合中にフィールドを走り回れ! と、友達に「dare」の挑戦状をたたきつけられたとか。



このウィリアムくん、そんなことを言われたら、絶対にやってみせないと気が済まない!



ですから、一緒にいたお父さんには「トイレに行ってくる」と言いながら、サッとフェンスを越え、フィールドに舞い降りた。



もちろん、これは立派な軽犯罪(misdemeanor)になりますので、裁判所に出廷して、何らかの裁きを受けなくてはなりません。



そして、Levi’sスタジアムにも一年間「出入り禁止」となり、さらには、謝罪の手紙を書いて、反省のためのオンラインコースを取らなくてはならないとか。(Photo by Jose Carlos Fajardo / The Mercury News)



ウィリアムくんのお父さんは、「息子は悪いが、「dare」の挑戦に果敢に立ち向かったのは、誇りに思う」と、新聞インタビューで述べています。



そして、ご本人は、



やりたいことはやらなくっちゃ。



だって、人生は一度っきりなんだよYou only live once



と、テレビインタビューで誇らしげに答えていらっしゃいました。



いえ、You only live once(略して YOLO)というのは、若者の合言葉にもなっています。



が、なんとも、人騒がせな「Truth or dare?」の結末ではありました。



Male cow(オスの乳牛)

いえ、たいしたお話ではありません。



ちょっと気になったことがあったので、お話ししようと思ったんです。



前回の英語のお題は、「Until the cows come home(気のすむまで)」という慣用句でした。



「(昼間の放牧が終わり、夜になって)乳牛が牛舎に戻ってくるまで」つまり「気のすむまで」という意味の慣用句でした。



そのときに、cow は「乳牛」であり、メスの牛だとご説明しておりました。



メスの牛は cow で、オスの牛が bull であると。

(Photo by Tractorboy60, from Wikimedia Commons)



それで、一般的には、これは正しいんだと思うのですが、科学雑誌を読んでいて、あれ? と思ったことがあったんです。



それは、male Holstein cows という表現。



こちらは、「オスのホルスタイン種の牛」という意味ですが、male cow(オスの乳牛)という言い方もあるんですね。



ホルスタインは、ジャージーと並んで有名な乳牛種ですが、考えてみれば、お乳を出すのはメスであっても、オスがいなければ、種族は絶えてしまいます。



ですから、ホルスタイン種の牛で、オスの場合は、male Holstein cow となるのでしょう。



けれども、male cow とは、「オスのメス牛」みたいに聞こえて、なんとも複雑な呼び方だと思ったのでした。



いっその事、日本語のように、オスとかメスの区別がなければシンプルなのに・・・。




それから、お詫びすることがあるのです。



何年か前に、「Happiness is a bovine thing(幸せとは、牛が得意とするものだ)」というお話をいたしましたが、このときに間違いがありました。



「牛の」という形容詞 bovine(発音は、ボウヴァイン)と一緒に、



「鳥の」という avian(エイヴィアン)や「熊の」という ursine(アーサイン)をご紹介しました。



そして、「豚の」という形容詞は swine(スワイン)だと書いておりましたが、正しくは、porcine(ポーサイン)です。



あくまでも、swine は「豚」を表す名詞だそうで、形容詞は porcine となります。



「鳥インフルエンザ」は avian flu と呼び、「豚インフルエンザ」は swine flu と呼ばれるので、てっきり swine は形容詞だと勘違いしたのでした・・・。



こちらも、科学雑誌でハッと気づいた点なのですが、たいそう不勉強なことで、お詫びして訂正いたします。



(すでに、以前のお話は訂正させていただきました。子豚の写真は、科学雑誌 Scientific Americanより; You Can Edit a Pig, but It Will Still Be a Pig: Scientists use CRISPR gene-editing tool to prevent devastating swine infection, by Monique Brouillette, Scientific American, March 2016, p A22




というわけで、牛さんや豚さんが出てきたところで、動物の呼び方をどうぞ。



牛と同じように、「オス」「メス」「子供」の呼び名が明らかに違う例は、deer(鹿)があるでしょうか。



鹿の総称は deer で、一般的には、複数形も deer です。



それで、オスの鹿は、buck(発音はバック)または stag(スタッグ)



メスは、doe(ドウ)



子鹿は、fawn(フォーン)といいます。



ディズニー映画の『バンビ(Bambi)』は、背中に白い斑点のある子鹿として、真っ先に思い浮かべるキャラクターですよね。

(Photo of fawn by Veledan, from Wikimedia Commons)



ちなみに、オスの鹿 buck という言葉は、「ドル」の意味で使われることが多いでしょうか。そう、アメリカの通貨「ドル」です。



以前も、お金のスラングをご紹介したことがありますが、green(緑)、greenback(緑の裏側)、bacon(ベーコン)、bread(パン)、dough(パン生地)といった言葉と一緒に、buck をご紹介いたしました。



It cost me 20 bucks to park my car

車を駐車場に入れるのに、20ドルもかかったよ(まったく困ったもんだ)



という風に、ざっくばらんに語るときに使います。




鹿が出てきたところで、ついでに「角(つの)」の呼び方ですが、



一般的に、角は horn(ホーン)と呼びます。



牛の角や羊の角は、horn といいます。



けれども、オスの鹿の立派な角は、antler(アントゥラー)という呼び方をします。



カナダに住むカリブー(Caribou)や、北米大陸からユーラシア大陸にかけて生息するムース(Moose、写真)は、もっとも立派な角が生える動物ですね。
(Photo of Moose by USDA Forest Service, from Wikimedia Commons)



彼らも鹿の仲間ですので、角は antler と呼びます。



どこかのお城の暖炉の上に飾るような、芸術品みたいに立派な角は、antler と特別な呼び方をするんですね。




それで、「普通の角」の horn ですが、



日常生活で shoe horn と呼ぶ道具があるんです。



「靴の角」というわけですが、なんと「靴べら」のことなんです。



たぶん、最初のうちは、靴べらって動物の角でつくられていたんでしょう。



でも、わたしがアメリカに暮らして ン十年、shoe horn という言葉は耳にしたことがありません。



ですから、先日、サンフランシスコの靴屋さんで困ったんです。



「靴べらって何て言えばいいの?」と。



そこで、店員さんには、こう言ってみました。



Can I borrow that thing to wear the shoes?

この靴を履くのに、あれ(that thing)を貸してくれますか?



そう、靴べらとわかるように「細長い」ジェスチャーも添えて。



すると、「OK!」と返事して、すぐに持ってきてくれました。



いえ、アメリカ人って、律儀な日本人と比べると、靴べらを使わないことが多いと思うんです。



だって、靴屋さんですら、靴を試すときに靴べらを渡してくれないんですから!



わたしの父は、いつも小さな皮袋に入った携帯用の靴べらを持ち歩いていて、「靴を履くときには、かかとをつぶしてはいけない」と、子供の頃から言い聞かせられました。



ですから、わたし自身も、普段は靴べらを持ち歩くようにしています。



そんな身近な道具なのに、呼び名を知らなかったとは・・・。





追記: 蛇足ですが、shoe hornshoehorn と書くと、名詞から他動詞に早変わり。こちらの shoehorn は、「~を無理やり詰め込む」という意味だそうです。



たとえば、小さなスマートフォンの中に機能をギューギューと詰め込んだり、文章の中に論点をいっぱい詰め込んだりと、物を詰め込む場合と、比喩として「詰め込む」場合があるそうです(さながら、このお話も詰め込み過ぎ?)。



「iPhone 7」の発表日に驚いたCM

 いえ、これは新しく出た「iPhone 7」のお話ではありません。

 

 アップルが「iPhone 7」を発表した9月7日(現地時間)に驚いたことがあった、というお話です。

 

 でも、せっかくですから、アメリカの反応などをご紹介いたしましょうか。

 

 ま、新しい iPhoneに関しましては、「カメラが良くなった」「防水になった」そして「ヘッドフォンが Bluetooth(ブルートゥース)接続になって、コードがなくなった」というのが、大きな特長でしょうか。

 

とは言え、どんな機能拡張があったにしても、iPhoneは iPhone。

 

 9月下旬、発売から一週間たっても、サンフランシスコの真新しいアップルショップには、いまだに長蛇の列ができています。

(写真は、新しくユニオンスクウェアの向かいにできたアップルショップ)

 


 そんな「iPhone 7」の発表があった当日、深夜コメディー番組では、こんなスキットがあったのが、印象的ではありました(CBSの『The Late Show with Stephen Colbert』)

 

「今日は国民の休日さ、だって新しい iPhoneが発表されたんだから」

 

 とギャグを飛ばすスティーヴン・コベア氏が、アップルCEOティム・クック氏に扮して、iPhoneの新機能を紹介するんです。

 

 新しい iPhoneは、どこまで機能を無くせるかって、極限まで追求したんだ。

ほら、Less is more(少ない方が豊か)って言うだろう?

 

 壊れやすいガラスの画面なんて、もうオサラバさ。

なぜなら画面なんてないから。

 

 しかも、電源をチャージする必要もない。

だって電池なんて入ってないから。

 

新しい iPhoneを紹介しよう。

 そう、iPhone 7は、金属のかたまり(a solid chunk of metal)なんだ。

 

 どうやって iPhoneの機能を使うかって?
 

みんなに「iFriend(アイフレンド)」を紹介しよう。彼は、何にでも即答してくれるんだよ。

 

 彼は時間だって「だいたい正午だよ(around noon)」って教えてくれるし、天候だって「いい天気だよ(pretty nice out)」って答えてくれる。

 

え、どうやって音楽を聴くかって? そんな心配はいらないよ。

 

アイフレンドくん、僕はここに古い(コード付きの)イヤフォンを持ってるから、君の「iPhone 6」を貸してくれないか

 

 と、アイフレンドから一世代前の「iPhone 6」を受け取り、音楽を聴き始めるコベア氏。

 

 まあ、iPhoneが金属のかたまりだったら、画面が壊れる心配も、毎日充電することもないわけですが、それにしても、なんとも皮肉っぽいスキットではありました。

 


 そんなスキットで始まったこの晩の番組は、女優のウーピー・ゴールドバーグさんが、ひとり目のゲスト。彼女がプロデュースする新しいリアリティ番組を紹介します。

 

 Oxygenチャンネルで放映される『ストラット(Strut)』という新番組で、トランスジェンダー(性転換した方々)のモデルさんたちが登場する、リアリティテレビです。

 

 このゴールドバーグさんのコーナーのあと、画面に流れたコマーシャルに息を飲んだのでした。

 

 オンラインショップのアマゾン(Amazon.com)が「プライムメンバーシップ」を宣伝するコマーシャルですが、なんと、日本で流れているCMを、そのまま放映していたのです!

 

日本でご覧になった方もたくさんいらっしゃると思いますが、若い夫婦が初めて授かった赤ちゃんは、ライオンのぬいぐるみがお気に入り。

 だから、家族のペットであるワンちゃんは大きくて、ちょっと怖い。

 

 それを気づかったお父さん、アマゾンプライムで「ライオンのたてがみ」を注文し、さっそくワンちゃんにつけてみる。

 

すると、見事に「ライオンさん」に変身したワンちゃん。ようやく赤ちゃんにも気に入ってもらって、鼻先をちょいっとなでてもらう、という微笑ましい光景です。

 

 いえ、なにがビックリかって、日本のコマーシャルが、そのままアメリカで放映されたことです。

 

 わたしが初めてアメリカに渡ってきて三十余年、記憶の限り、そんなことは一度もなかったと思うのです。

 

 まさに「快挙!」とも呼ぶべき出来事なんですが、これは、ひとつに、コマーシャルに言葉がないことがあるのかもしれません。

 

 さすがに、日本語のセリフを英語に「吹き替え」すると、もともとの雰囲気が台無しになってしまいますものね。

 

それから、日本をはじめとするアジア圏の「かわいいKawaii)」という感覚が、ようやくアメリカでも理解されてきたこともあるかもしれません。
 ですから、アメリカ側の本社も放映に踏み切ったのでしょう。

 

 そして、世界のどこへ行こうとも、人は基本的に同じなんでしょうね。

 

 嬉しいことは嬉しいし、悲しいことは悲しい。誰かが笑えば、人の喜びが伝わってくるし、涙を流せば、悲しみや悔しさ(ときには嬉しさ)が伝わってくるのです。

 

 どちらの広告代理店のどなたが制作されたコマーシャルかは存じませんが、秀作の海外放映、おめでとうございました!

 

 

追記: どうやら、このコマーシャルの「日本版」には続きがあって、お父さんがワンちゃんから「ライオンのたてがみ」を外して、自分でつけてみる、という「落ち」があるみたいです。

 

「赤ちゃんが気に入ったから、自分も・・・」という、いじらしい光景なんでしょうが、こちらはちょっと余計な感じがしなくもないな、と個人的に思った次第です。

 

だって、たてがみを注文したあと、ワンちゃんに向かって「大丈夫だよ」とうなずくお父さんは、十分に優しそうではありませんか!


 そんなお父さんには、何の細工もいらないでしょう?

自動運転車: テスラ「モデルS」事故の教訓

Vol. 206

自動運転車: テスラ「モデルS」事故の教訓

今月は、近頃とみに動きが盛んな「自動運転」のお話をいたしましょう。


<事故の原因は?>


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今春、シリコンバレーの電気自動車メーカー、テスラモーターズ(Tesla Motors、本社:パロアルト)の車が起こした事故は記憶に新しいところです。

そこで、この事故の原因と「オートパイロット」機能を考えてみましょう。

まずは、テスラ車の事故の経緯ですが、去る5月7日、フロリダ州内陸部ゲインズヴィルのハイウェイを「オートパイロット」機能を使って走行中の「モデルS」が、ハイウェイの十字路で合法的に左折しようとしていた大型トレーラーに衝突して大破し、ドライバーが亡くなったという惨事。

事故が公表された翌6月、その際は、トレーラーの白い車体が太陽光を反射して、モデルSが前方の車を認識できなかったという説明でした。
が、7月末、テスラが連邦上院・商業委員会の公聴会で説明したところによると、「車のレーダはちゃんとトレーラーを検知していたが、それをモデルSのコンピュータが無視(tune out)した」とのことでした。

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もちろん、「無視」するにはそれなりの理由があって、たとえば、ハイウェイの上に出てくる看板や高架橋などは、手前から見ると、ちょうど道路上にあるように見えるので、「間違って急ブレーキをかける(false braking)」ことを避けるために、「これは、道路上の物体ではないな」とコンピュータが認識するようになっています。
言うまでもなく、ハイウェイで急ブレーキをかけると、事故につながりますから。

それで、事故のケースでは、レーダではちゃんとトレーラーが見えていたのに、カメラ映像を含めて総合的に判断した結果、コンピュータが「ハイウェイ上にある看板」だと認識して、そのまま自動ブレーキもかけずに激突した、とのテスラ側の釈明でした。

Tesla Autopilot 1.png

そこで、テスラCEOイーロン・マスク氏は、9月11日に電話記者会見を開いて、「これからは、もっとレーダに頼り、オートパイロットのソフトウェア改善と、テスラ車が実地で学んだこと(看板、高架橋の位置情報など)をシェアすることで、危険を回避することに努めたい」と述べています。

「おそらく、このソフトウェア改善があれば、ドライバーは命を落とすことはなかっただろう」とも。

オートパイロットの新バージョンは、世に出回るモデルSとモデルXに向けて、9月21日から無線通信で配布されるとのこと。

このオートパイロット機能をハード面で支えるのは、車線や信号、道路標識を読み取る「カメラ」と、前方の障害物を検知する「ミリ波レーダ」。
普段は、カメラとレーダが二人三脚でコンピュータの判断を助けますが、場合によっては、「相反するインプットをどう判断するか?」で、まさに生死の分かれ道となるのです。

アメリカの『暮しの手帖』ともいえる Consumer Reports誌は、消費者に間違った安心感を与える「オートパイロット」という名称は改めるべき、と述べています。

そして、テスラにカメラを使ったセンシング技術を供給していたイスラエルの Mobileye社は、「(彼らが勝手に手を加えて発表した)オートパイロット機能は、衝突の危険性を安全に回避できるようには設計されていない」と、テスラとの関係を絶つことを発表しています。

テスラが前方レーダ1基、前方カメラ1台、自動ブレーキシステムを搭載し始めたのは、2014年10月。「オートパイロット」機能をリリースしたのは、昨年10月。

機能の改善に、ひとりの命が関わったとは、なんとも身につまされる話ではあります。



<「自動運転」の遠い道のり>

この惨事を教訓とするならば、「オートパイロット」とか「自動運転」という言葉の意味を、消費者がもっと理解しなければならない、ということでしょうか。

まず、「オートパイロット」などと軽く表現しますが、その実、飛行機のオートパイロットと自動車のオートパイロットは、比べ物にならないほど、車の方が難しいのです。

それは、ひとつに、広々とした空では衝突の危険性が少ないので、人が数十秒のうちに介入できるけれど、混んでいる道路を走る車の場合、その数十秒が命取りになることがあります。

そして、車の場合は、道路工事や天候・コンディションを含めた現状把握、歩行者や自転車といった予測不能な「障害物」の検知と、複雑怪奇なデータ分析を「いつも正確に」行わなくてはなりません。
「あ、ちょっと間違えちゃった!」というのは、絶対に許されないのです。

それで、「オートパイロット」が不完全な今の世の中、「自動運転」は、まだまだ先の話であることを知っておくべきでしょうか。

そもそも、「自動運転(self-driving、autonomous、driverless)」というのは、非常にまぎらわしい言葉で、実際には、ステップバイステップで段階が定められています。

わたし自身もつい最近まで知らなかったのですが、「ドライバーアシスタンス」のレベル1から「完全自動運転」のレベル5まで、自動運転は「5段階」に分かれるそうです。

まず、自動的に速度を保つ従来の「クルーズコントロール」に加えて、前の車と一定距離を保つとか、車線の真ん中を走るとか、隣の車線に移るとか、現在、市場に出始めている「ドライバーアシスタンス」は、レベル1から

障害の少ないハイウェイに加えて、そろそろ一般道に出て試験走行している「条件付き自動運転」が、真ん中のレベル3。この場合は、走行地の法令いかんに関わらず、ドライバーがいつでも介入できるように、待機する必要があります。

Google self-driving car 1.png

そして、グーグルや自動車メーカーのフォードが目指しているような、目が見えない人でも、ひとりで車に乗れる「完全自動運転」が、レベル5(写真は、グーグルが目指すハンドルなしの自動運転車)

週末を控えた金曜日(23日)、「またグーグルの自動運転テスト車が事故に巻き込まれんだって」とニュースが流れましたが、これまで、一般道で走行する「レベル3」のテスト車が関わった二十数件の事故のうち、自分に非があったのは一件のみ、との同社の発表でした。

(SAE Internationalが定義する「5段階」; 参考文献: The Truth about “Self-Driving” Cars, Steven E. Shladover, Scientific American, June 2016)

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グーグルに続き、今夏あたりから、にわかに活発化する実地テストですが、米国内では、サンフランシスコの街中に加えて、アリゾナ州スコッツデールでテスト走行を始めたGM(ジェネラルモーターズ)の例があるでしょうか(写真は、Chevy「ボルト」電気自動車を使ったテスト車)

GMは、今年3月、サンフランシスコのクルーズオートメーションという会社を買収したあと、スコッツデールにオフィスを開き、他都市にも研究拠点を増やす計画です。

オハイオ州では、東海岸とシカゴを結ぶターンパイク(有料高速道路、The Ohio Turnpike)が、年末までに自動運転試験を始めるプランを発表しています。

この区間は、比較的まっすぐで高低差が少なく、車線がゆったりしていて路肩も広い、有料道路で混雑が少ない、と理想的な条件がそろっていて、これまでのカリフォルニアやネヴァダといった暖かい地域でのテスト走行に加え、寒冷地の厳しいコンディションで実地データを集めよう、という意図があるそうです。

自動運転のテスト走行に関しては、カリフォルニア、ネヴァダ、フロリダ、ミシガン、首都ワシントンD.C.で、それぞれ法令が定められていますが、オハイオ州には規定がないので、「他州に遅れを取るな!」と、とりあえず踏み切ることになったようです。

まあ、規制がないなら、やってもいいんでしょう? というわけですが、同じ理由で、ヴァージニア州やテキサス州も、「こっちにおいでよ」と自動運転車の研究機関にラブコールを送っています。

各州の足並みをそろえようと、9月20日、米運輸省は、自動運転に関する15条のガイドラインを発表しています。が、州に与える影響は、今のところ不明です。

そして、一般車両を利用した配車サービスのウーバー(Uber、本社:サンフランシスコ)は、9月中旬、ペンシルヴェニア州ピッツバーグで自動運転車を使った試験走行を始め、米国初の消費者向け実地テストとなりました。

そう、実際に、ウーバーがランダムに選んだお客さんがタダで試乗しているんです。

こちらの実験では、フォード「フュージョン」ハイブリッド車が使われていて、レーダシステムに加えてカメラを7台、周囲360度の3Dマップ作成用レーザーを20基搭載。

運転席にはピンチヒッターの運転手、助手席には3Dマップを検証するエンジニアが乗り、お客さんは後部座席に座ります(もともと、ウーバーのサービスでは、お客さんは後部に座り、GMが投資する競合サービスのリフト(Lyft)では助手席に座る、というのが一般マナーとなっています)

こちらのペンシルヴェニア州では、自動運転車を走行させる場合、運転席に免許証を持ったドラーバーが座っていれば、べつに「両手をハンドルのそばに置く」といった規制はないそうです。

が、冬は厳しいし、道路も高低差があって入り組むという悪条件が重なり、ピッツバーグに研究機関を置いたウーバーとしては、「ここをクリアしたら、どこでもOKさ!」と自信をつける一歩となるのでしょう。

nuTonomy test car in Singapore.png

一足先に、世界初の自動運転タクシーとなったのは、8月末、ニュートノミー(nuTonomy)がシンガポールで始めた実地テストがありますね。

ニュートノミーは、マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンオフしたスタートアップ会社で、自動運転ソフトウェアを開発しています。なんでも、多くの自動運転機能がまわりの車を基準に自分の動きを算定するところ、ニュートノミーは、まわりの環境から動きを定める方式を採用しているとか。

ですから、多くの自動運転車の場合、目の前に車が停止していると、いつまでも動こうとしないが、ニュートノミー車の場合は、果敢に追い抜こうとする、とのこと。

が、その方式のためか、目の前に停止車両がいると、逆の車線を使って大回りで追い抜いてみたり、路肩に停まっていた車がこっちに向かって動き出したのが見えずに、テストドライバーが急ブレーキをかけたりと、人間の運転免許試験では落第するような、ぎこちない動きも見られるとか(前者はテクノロジー誌Recodeの記者体験記、後者はAssociated Pressの体験記事より)

ルノーと三菱の小型電気自動車には、前方カメラ2台、光レーダ6基(うち1基はルーフ上)が搭載されるそうです。

まあ、4キロ四方の限られた区域とはいえ、ごちゃごちゃしたシンガポールの街中でのテスト走行です。自動運転車にとっては、なかなかチャレンジングなテスト環境なんでしょう。



というわけで、大きく前進する「自動運転」の分野。このお話を書いていて気になったことは、事故に関するテスラ社の弁明でした。

7月末の上院公聴会では「レーダではトレーラーがちゃんと見えていたのに・・・」と釈明し、9月中旬のCEOマスク氏の電話記者会見でも「これからは、レーダに頼る」と述べています。
が、同時に「当初レーダに頼らなかったのは、レーダシステムはあまりにも複雑で、遠くの看板や高架橋と道路上の物体が区別できなかったからだ」とも述べています。

たぶん、「最初のレーダシステムは不完全だったけれど、改良バージョンは大丈夫だよ」と言いたかったのでしょうが、消費者には不安の残る発言ではあります。

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これから先の自動車業界を考えると、エンジンを載せた複雑なガソリン車やハイブリッド車から、モーターを使ったシンプルな電気自動車に移行するのでしょうし、「自動運転」機能は日々改善し、ドライバーのやることは減っていくことでしょう。

けれども、開発メーカーやメディアの「自動運転」「無人」のうたい文句に惑わされることなく、消費者自身が安全性を考慮する必要があるのでしょう。



夏来 潤(なつき じゅん)



「70、90、100」が目安です

今年も、もう9月。

 

 いつの間にやら、夏も過ぎ去ろうとしています。

 

 今まで何回か書いたことがありますが、アメリカでは、9月最初の月曜日が「夏の区切り」とされています。

 

 この日は、「レーバーデー(Labor Day、労働の日)」と呼ばれ、日本の「勤労感謝の日」みたいな祝日。

 

 134年前に、当時ニューヨーク州にあったアメリカ最初の労働組合が提案したのが、「労働の日」の起こり。1894年には、連邦政府の祝日となり、働く人たちを讃える日となりました。

 

 そして、この日を境に、夏のバーベキューシーズンも終わりを迎えます。

 

 そう、5月最後の月曜日メモリアルデー(Memorial Day、戦没者追悼記念日)」に始まったバーベキューシーズンは、この日をもって、もうおしまい。

 

夏が終わったんだから、レーバーデーを過ぎたら、白い服を着てはいけない、とも言われます。

 

 代わりに、季節に敏感なレディーたちの間では、モスグリーンとオレンジ、グレーと赤といった、秋らしいコンビネーションを見かけるようになります。
(ま、カジュアルなカリフォルニアでは、あんまり関係のないルールかもしれませんが)

 


 そんな午後は、「7090100」のお話をいたしましょう。

 

 こちらは、北カリフォルニアの何かの目安なんですが、

 

 それは、夏の気温。

 

 もちろん、日本の摂氏(Celsius)ではなく、華氏(Fahrenheit)の表示になりますが、いろんな場所で「70、90、100」を越えると、「夏にしても、ちょっと暑いかな?」という目安なんです。

 

まずは、ご存じ、サンフランシスコ(San Francisco)市。

 

 こちらは、華氏70度(21℃)を越えると、8月にしては暑いかな? という感じ。

 

 お次は、我が家のある、サンノゼ(San Jose)市。

 

 こちらは、華氏90度(32℃)を越えると、いつもよりも暑いんじゃない? といった感じ。

 

 そして、内陸部の地域、たとえばリバモア(Livermore)市あたりになると、

 

 華氏100度(38℃)を越えると、8月にしても暑いよね~、という風になります。

 

そうなんです、サンフランシスコ・ベイエリアは、気候がバランバランなんです。

 

 「こっちが暑くても、こっちは涼しい」「ちょっと行っただけで、まったく気温が違う」といった様子。

 

 これを称して「マイクロ気候(microclimate、微気候)」といいます。

 

 ですから、ベイエリアをドライブすると、涼しいところから暑いところへ、まさに「冬から夏へ」と、一日のうちに、激しい気温の変化を経験することがあります。

 

 そう、「華氏70、90、100度」つまり「摂氏20、30、40度」という変化を、一日のうちに肌で感じることがあるのです。

 


ところが、今年の8月は、サンフランシスコ・ベイエリア全体で、涼しい夏だったんです。

 

 ですから、「70、90、100」の目安に達しない日々が続きました。

 

 今年は、世界じゅうが暑くて、「毎月(10カ月連続で)、過去の世界の平均気温を上回っている」と、NASA(アメリカ航空宇宙局)も発表していましたよね。

 

 それでも、ベイエリアだけは例外で、「世界でここだけは、記録に残るような冷夏だよ」と言われていました。

 

 なんでも、サンフランシスコ市で8月に「70(21℃)」の目安に達しないのは、1942年以来、初めてのこと。

 

 サンノゼ市で「90(32℃)」に達しないのは、1980年以来、初めてのこと。

 

 そして、リバモア市で「100(38℃)」に達しないのは、過去20年間で3回目だったとか。

 

 昨年は、「8月にしたって、うだるほど暑いよ~」というお話をしておりましたが、今年は逆に、「もうちょっと夏らしくてもいいのに・・・」とグチをこぼすことになりました。

 


以前も何度かご紹介しましたが、サンフランシスコが「夏でも20℃以下に冷える」メカニズムは、霧。

 

 サンフランシスコ半島は、寒流の冷たい海に取り囲まれているので、暖かい太平洋で発生した水蒸気が、寒流で急激に冷やされ、冷たい霧となって、半島の先端の街をおおいつくす。

 

 そう、霧は、サンフランシスコにとって「天然のクーラー」みたいなもの。

 

今年は、それに加えて、北から冷たい雲が張り出してきて、朝晩になると、雲がベイエリアの空をおおいつくしていました。

 

 そんな雲も、昼になると内陸部では晴れるのですが、そこから太陽が顔を出しても、なかなか気温が上がりにくい。そして、夜になると雲がかかって、朝は、また曇り空・・・

 

 そんなことを繰り返しているうちに、例年に比べて気温の低い日々となったようです。

 


ご存じのように、サンフランシスコという街は、普段から「特殊」な天候で知られるところです。

 

 8月は、霧が発生しやすいので、肌寒い。逆に、太平洋の水温が下がり始めた9月や10月の方が、霧がかかりにくいので、気温が一番高い時期になります。

 

 一般的に、9月から秋に向けて暑くなることを「インディアン・サマー(Indian Summer)」と呼びますが、サンフランシスコは、典型的なインディアン・サマーの場所というわけです。

 

 9月7日、久しぶりに華氏82度(28℃)まで上がったサンフランシスコでは、「こんなに暑くなったのは、5月17日以来、初めてのことだ」と報道されていました。

 

これから「暖かくなる」サンフランシスコも、これから「涼しくなって過ごしやすくなる」サンノゼも、9月から10月は絶好の観光シーズンとなるでしょうか。

 

 サンフランシスコ・ベイエリアを観光したい! と思ったら、お天気がいい秋にプランされるのは、いかがでしょうか。

 

 だって、10月も後半になると、そろそろ雨季が始まってしまいますからね。

 

 

追記:

 「100」が目安となる内陸部の都市で、リバモア(Livermore)という街の名前が出てきましたが、こちらは、ベイエリアの東側の内陸部にあって、「ヨセミテ国立公園」に向かう途中、風力発電のタービン群を見かける辺りです。

 

 ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)という、国防に携わる研究機関もあり、歴史的に核開発の研究で有名です。近頃は、研究内容も多角化していて、ここに勤務する知り合いは、「テロ対策」のために、街角に設置する「病原菌探知機」を開発している、と話していました。

 

それから、冒頭の「水遊び」の写真は、海みたいにでっかいタホ湖(Lake Tahoe)の夏の様子ですが、この辺りは標高が高く、「まだ暦の上では夏なのに、途中のシエラネヴァダ山脈では雪が降った」と、昨日のニュースで報道されていました!

 

Until the cows come home(気のすむまで)

今日のお題は、until the cows come home

 

 以前も、べつの表現に添えてご紹介したことがあるのですが、

 

 直訳すると、「牛(乳牛、the cows)が牛舎に戻ってくるまで」。

 

 でも実際は、「気がすむまで、ずっと」という意味になります。

 

 We can argue until the cows come home

 気がすむまで、ずっと討論できるよ(望むなら、ずっと討論しようよ)

 

 We talked until the cows came home

 気がすむまで、ずっと語り明かした

 

 それで、以前は、「どちらかというと、熟年男性が難しい議論をするときに使うかもしれない」とご紹介していましたが、どうやら、若い女性にも、この表現を使う方がいらっしゃるようです。

 

 こんな人生相談がありました。

 

 わたしは、78歳の祖母が大好きなんだけど、未亡人になってからは、祖母は自分の話ばかりして、わたしのことなんて(もうすぐ夫となる男性のことや結婚式のことすら)何も聞いてくれないの、と。

 

 We used to talk till the cows came home, and it’s not the same anymore

 以前は、気のすむまで語り合ったのに、今はもう違うわ

 

 78歳のおばあちゃんということは、相談者の方は、ご結婚前の20代の女性でしょうか。

 

 以前、シリコンバレーのテクノロジー会社に勤めていたとき、同僚の女性が「古めかしい」表現を好んで使っていたのですが、サンディエゴという都会出身のわりに「おばあちゃん子」だったので、言葉遣いも古風なようでした。

 

 人がどんな表現を使うかって、じっと聞いていると面白いものですよね。

 


 それで、お話を cow に戻しましょうか。

 

 以前も、動物の数え方のお話でご紹介したことがありますが、「牛」という言葉は、かなり面倒くさいものですね。

 

 メスの牛は cow、複数形 cows

 

 オスの牛は bull、複数形 bulls

 

 子牛は calf、複数形 calves

 

 そして、いろんな牛が混ざった総称は cattle

 

 ですから、a herd of cattle というのは、オスもメスも子牛も、いろんな牛が混ざった群れのこと

 

 一方、a herd of cows といえば、メス牛(乳牛)の群れ

 

ですから、until the cows come home という表現は、

「昼間は牧場で草を食(は)む乳牛が、夕方になって牛舎に戻ってくるまで」という放牧の光景から生まれたものなんでしょう。

(写真は、スイスのルツェルン湖を見下ろす、ビュルゲンシュトック・リゾート裏手の牧場)

 


 同じように、英語には cow を使う表現も多いようです。

 

 一般的なものでは、Holy cow! というのがありますね。

 

 驚いたときに「なんてこった!」と、とっさにあげる叫び声。

 

 なんでも、もとは Holy Christ! という表現だったのが、「キリスト」を使うのはよろしくないということで、同じように宗教的に「神聖(holy)」である「牛」を使うようになったとか。

 

 驚いたときに、Oh my God! と言うのを避けて、Oh my goodness!と言い換えるのと似ていますよね。

 


それから、cash cow というのもあります。

 

 直訳すると「お金の牛(乳牛)」というわけですが、

 

 「お金をじゃんじゃん生み出す、ありがたい稼ぎ頭」といった意味になります。

 

 乳牛さんは、毎日ちゃんとお乳を出してくれるので、酪農家にとっても、ありがたい、頼りがいのある存在ですね。

 

 なんでも、ビジネスコンサルティング会社が生み出したビジネス用語だそうですが、今では、cash cow と言えば誰でもわかるくらいに、みんなに広まっています。
(Photo of Holstein cow by Keith Weller / USDA, from Wikimedia Commons)

 

 これに似た言葉で、pork barrel というのがあります。

 

 「(塩漬けにした)豚の樽」というわけですが、

 政治の世界で使われる表現で、「地元に有利に運ぶように(地元にお金が流れるように)画策する」ことを指します。

 

 たとえば、pork-barrel project(政治家の地元に有利なプロジェクト)とか、

 

 pork-barrel policy(地元に有利になる政策)という風に使います。

 

 昔は、樽に漬け込んだ豚を保存食としたので、それが「頼れる収入源」という意味で、政治に転用されるようになったんでしょう。

 


で、牛に戻りましょう。

 

 オスの牛 bull ともなると、とたんに荒々しい表現が多くなります。

(Photo of angry bull by Bart Hiddink, from Wikimedia Commons)

 

 有名なところでは、take the bull by the horns というのがあります

 

 直訳すると、「雄牛のツノをつかむ」というわけですが、

 

 「(問題に)まっこうから立ち向かう」という意味になります。

 

 「暴れ回る雄牛のツノをつかんで、おとなしくさせる」わけですから、「かなり厄介な、今まで避けてきた問題に正面から向き合う」ことになるのです。

 

 She took the bull by the horns and got the job done

 彼女は問題に正面から向き合い、首尾よく仕事を終えた

 

 なんとなく「たとえ話」というよりも、雄牛をつかむ光景が想像できるような言い回しではありますね。

 


 それから、bull を使った表現には、

 

 like a bull in a china shop というのもあります。

 

 この場合の china は、「陶磁器」という意味で、china shop は、デリケートな焼き物がたくさん置いてある陶器屋さん。

 

 ですから、「陶器屋の中の雄牛みたい」とは、「雄牛が店で暴れて、焼き物をバンバン割るみたいな」様子で、

 

 かなり不器用(clumsy)で、荒々しく(aggressive)もあり、コントロール不能(out-of-control)な状態を指す表現です。

 

 He was like a bull in a china shop

 彼はもう、手のつけられない状態だったよ

 

 こちらも、目の前に情景が浮かんでくるような慣用句でしょうか。

 

アメリカのバスケットボールリーグに「シカゴ・ブルズ(Chicago Bulls)」という有名チームがいます。

 やっぱり「雄牛」といえば、誰もが恐れるような、強いイメージがあるのです。

(Team logo by Source, Fair use, Wikipedia)

 


 あ~、それから、bull を使った表現で、一番よく耳にするのは、

 

 Bullshit! がありますね。

 

 こちらは、たぶん放送禁止用語だと思いますが、「この野郎!」とか「クソ!」といった叫び声。

 

 まあ、文字どおり「雄牛のクソ」というわけですが、お上品ではないので、女性は避けた方がいいでしょう。

 

 この場合の bull には、「ナンセンス」という意味合いがあるそうで、「詐欺、だます」という意味のフランスの古語 boul に由来する、という説があるとか。

 

 「だまされて、悔しい!」という叫び声から生まれた言葉なんでしょうね。

 

 叫び声として使うだけではなく、

 

 It’s all bullshit!

 それって、全部うそっぱち(ナンセンスな言い分)さ!

 

 などと、文章にして使うこともあります。

 

 もしも、どうしても腹にすえかねることがあったら、BS(ビーエス)と略語で使うことをお勧めします。

 


というわけで、「牛」を使った表現の数々。

 

 イギリスもアメリカも、もとは農業・酪農国ですから、牛とか豚とか、家畜を使った表現がたくさんありますよね。

 

 また、近いうちに、動物が出てくる言葉をご紹介することもあるかもしれません。

 

 

追記: オスの牛には、bull 以外にも、べつの呼び名があるみたい。

 

なんでも、bull というのは、去勢されない、生殖能力を持つ雄牛のことで、

去勢された雄牛は ox、複数形 oxen と呼ぶそうです。

 

おもに oxen は、農耕に使われたり、牛車に使われたりするそうですが、去勢されて「おとなしくなった」雄牛じゃないと、手に負えないんでしょうね。

 

それから、いわゆる「肉牛」というのは、beef cattle(ビーフとなる牛)

「乳牛」は、dairy cattle(お乳を取る牛)と呼ばれます。

 

レストランで veal と呼ばれる「子牛」は、乳牛のオスの子供だとか・・・。

 

屋根の修理の原因は?

夏の間は、一滴も雨が降らないカリフォルニア。



その乾いた季節に、屋根を直そうと、屋根屋さん(roofer)に来てもらいました。



イヤな話ですが、今まで雨漏りは2回経験していて、2回ともちゃんと直してもらったので、大きな問題はありません。



でも、屋根瓦(roof tile)にひび割れ(crack)ができたので、早めに直そうと思ったのでした。




で、そのひび割れの原因は、屋根の上の「訪問者」だと思うんですよ。



まずは、ワイルドターキー(wild turkey)のご一行様でしょうか。



そう、野生の七面鳥ですね。



彼らは、いつも徒党を組んで、のっしのっしと辺りを散歩したり、裏庭の柵で羽を休めたりしています。



こちらは、グループ行動の「ふたり」ですが、左がオスで、右がメスでしょうか。



どうやら、オスが気に入ったメスを見つけて、ちょっかいを出そうとしているみたい。



ときに、ご一行様は、人の屋根に上がってご満悦なんですが、どうしたものか、屋根の上を「遊園地」と勘違いしているんです。



とくに冬の朝早く、辺りにモヤがかかっている頃、みんなでエイヤァ! と屋根に飛び乗っては、バタバタと走り回る。



以前も、そんなお話をご紹介したことがあるのですが、まだ人が寝入っているときに走り回るものだから、瓦がポリンポリンときしむ音で、起こされるのです。



そして、心配になってくる・・・。



あんなに重くって、爪の鋭いのが、みんなで走り回ったら、



どんなに頑丈な瓦だって、ひびが入るでしょうって。




それから、カラスもいるんです。



我が家にやって来るカラスは、ちょっと困りもので、煙突の土台の辺りを、鋭いクチバシでトントンとつっつくんです。



屋根って、あまり気にしたことがありませんが、いろんな「煙突」があるんですよね。



一番大きいのは、マキをくべる暖炉(fireplace)の煙突ですが、その他にも、空気穴みたいなのがたくさん立っています。



で、煙突も土台も金属でできているので、カラスがつっつくと、カンカンと音が鳴り響くのです。



そんな音を聞いていると、こっちは、穴があいて雨漏りの原因になるんじゃないかと、気が気ではありません。



あれは、金属が気に入って盗もうとしているのか、それとも、カンカンという音が気に入って、しつこくつっついているのか、理由はわかりません。



でも、とにかく、カラスくんは煙突が大好きで、しょっちゅう訪れるんです。




いつか、そんなカラスくんを追い払おうと、煙突の直下の壁をトントンと叩いてみたんですよ。



すると、あちらもトントンと煙突をつついて、応答するんです!



まるで、トントンという音が、「モールス信号」みたいにコミュニケーションの手段になっているではありませんか!



それ以来、へたにカラスくんと友達になってはいけないと、彼を無視することにしました。



でも、つい先日、ゴロゴロと何かが屋根を転がり落ちる音で、目覚めたことがありました。



そのあと、カア、カアとカラスくんが鳴いて(泣いて?)いたので、何かに使おうと思って口にくわえていた「石ころ」を、間違って落っことしたのかもしれません。



カラスは賢いので、石だって道具に使うそうですね。たとえば、クルミの殻を割るのに、木の上から石を落っことしてみたり。



とは言うものの、この石ころのおかげで、瓦にひびが入ったかも・・・。



そんなわけで、屋根屋さんを呼んで、ひび割れた瓦を入れ替えてもらったら、全部で20枚も交換したそうです。



もちろん、中には、屋根屋さんが踏んでできた「ひび」だとか、雨どいの掃除(gutter cleaning)のときにできた「ひび」だとか、人間が原因のひび割れもあると思います。



でも、おおかたは、ワイルドターキーやカラスといった、野生の生き物のシワザだろうと想像するのです。




ところで、屋根の修理をしてもらって、あきれたことがあったんです。



それは、屋根屋さんが発見してくれた、我が家の雨漏りの原因。



我が家には小さな「離れ(casita)」があって、2、3年に一度、大雨の時に限って、天井の照明の辺りに雨漏りが起きるんです。



それを聞いて、「暖房でできた結露(condensation)が、ライトを伝って落ちてきたんじゃないの?」と言う屋根屋さん。



でも、結露みたいな水滴だったら、バケツに半分もたまることはないでしょう。



そこで、屋根裏まで上がって見てくれたんですが、なんと、屋根に突き刺さった空気穴(ventilation pipe)から雨粒が入ってきて、天井の照明のまわりで、雨漏りがしていたとか!



我が家が建ったとき、施工業者には、「離れにはオプションとしてバスルームを設置できるよ」と言われていたんですが、もともと小さい部屋が狭くなるので、バスルームは作らなかったんです。



で、そのバスルーム設置のために、換気用のパイプを屋根に刺してあったのですが、単に「スポンとした」パイプなので、ひどく雨が降った時に、そこから雨粒が入ってきて、ライトのまわりからポタポタと落っこちていたんです。



だから、「換気パイプのふた(ventilation cap)」なるものを購入して、修理のときに取り付けてもらったのでした。



なんでも、クリクリっと締める「ねじ式」のタイプと、工事用ボンドでくっつける「キャップ式」のタイプがあるそうで、両方買ってみたのですが、後者は、実際に換気パイプを使用するときにパイプを切らないといけなくなるので、「ねじ式」を使ってもらいました。



ほら、なんとなく「ねじ」の部分が見えているでしょう。



それにしても、我が家に引っ越してきて20年近く、ずうっと「原因不明」の雨漏りでした。



もしかすると、引っ越してすぐの雨漏りは、これが原因だったんでしょう。でも、そのときの屋根屋さんは、それなりに「原因」を見つけて、修理して行きましたけれどね・・・。



「もしも換気パイプを使うことがなければ、キャップをしなさいよ」と、どうして施工業者が最初に教えてくれなかったんだろう?



と、うらめしい出来事ではあったのでした。



(まあ、なんともアメリカらしいお話ではありますけどね)



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