Silicon Valley NOW シリコンバレーナウ
2010年03月31日

モバイルの祭典: CTIAワイヤレス2010

Vol. 128

モバイルの祭典: CTIAワイヤレス2010

まだまだ雨季が続くシリコンバレーですが、我が家の八重桜が花を開かせるほどに暖かくなりました。

そんな今月は、ラスヴェガスで開かれたモバイルの祭典をご紹介いたしましょう。注目のアンドロイド搭載機、クアルコムのスナップドラゴン、マイクロソフトの新しいスマートフォンOSと、3つの話題にフォーカスを当てております。

どうぞごゆるりとご覧くださいませ。

<今年の目玉は?>


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春うららの3月の第4週、ネヴァダ州ラスヴェガスでは、モバイル業界の祭典が開かれました。その名も「国際CTIAワイヤレス2010」。
CTIAという無線通信業界の国際団体が、毎年この時期にラスヴェガスで開く総合展示会です。

この手の展示会としては、年初にラスヴェガスで開かれるCES(コンスーマ・エレクトロニクスショー)が有名ではありますが、CTIAの方は、無線通信の技術に特化した祭典となります。
まあ、堅苦しく「無線通信」といいましても、今は携帯端末が中心的存在となっておりまして、今年はいったいどんな機種が発表されるのかなと、みんなが楽しみにしているイベントではあるのです。


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もちろん、「第4世代」の通信テクノロジーとは何かとか、ワイヤレス端末機は医療分野でどう使われるべきかなどと、眉間にしわを寄せて討論を行う場でもあるのですが、やはり多くの参加者にとっては、携帯電話の新機種や新機能の方に注目したいところなのです。

わたし自身はCTIAのイベントに行くのは初めてなので、テクノロジー業界最大のイベントであるCESほどに大きなものかと期待しておりました。
ところが、開催前日にラスヴェガス空港に降り立つと、タクシー乗り場も混んでいないし、チェックインしたホテルでも業界関係者をあまり見かけないし、始まる前からちょっと拍子抜けという感じではありました。
 


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そんなこんなで、当日、会場のコンベンションセンターに到着すると、まず目を引いたのが、緑色のアンドロイドのロボットでした。いうまでもなく、グーグルさんのスマートフォンOS(機能満載のケータイ基本ソフト)「アンドロイド」を代表するマスコットですね。

こちらは、会場前をフラフラと歩いていたアンドロイド・ロボットくん。日本のKyocera(京セラ)が提供しています。いよいよKyoceraもアンドロイド機を出すのですね!
Kyoceraといえば、アメリカ市場では携帯電話の老舗となるわけですが、遅ればせながらアンドロイド機を発表したことで、久方ぶりのスマートフォン分野への返り咲きとなります。
 


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このKyocera「Zio M6000」は、アンドロイド1.6搭載機で、第2四半期にアメリカ市場で発売されるそうです。
CDMA/EV-DOネットワーク対応なので、大手キャリアのVerizon Wireless か Sprint Nextel が販売するのかと思いましたが、どうやら、都市部でサービスを展開する MetroPCS と Cricket から発売されるようです。
コンパクトなデザインで持ちやすいし、電池も長持ちするそうなので、廉価版のアンドロイド機としては、お求めやすいものとなるのかもしれません。(キャリアの補填なしで200ドルくらいかといわれていて、かなり安価な機種ではあります。)

ただし、価格的に買いやすいにしても、Verizon や Sprint のような大手が販売しないと、台数は思うように延びないのかもしれません。
 


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一方、こちらは、会場入り口にでーんと構えるアンドロイド・ロボットくん。ちょっとボケていますが、モトローラが提供しているようです。
モトローラといえば、一般消費者の間でも大手携帯メーカーのイメージを築き上げている老舗。昨年11月号でもご紹介していますが、アンドロイド搭載機の「Cliq(クリック)」や「Droid(ドロイド)」を発売し、アンドロイドメーカーとしても名を上げつつあります。
 


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そして、このCTIAでは、「Backflip(バックフリップ)」が登場していました。3月上旬にアメリカの AT&T Mobility から発売された新機種で、AT&T が出す初めてのアンドロイド機となります。
AT&T といえば、あのアップルさまのiPhone(アイフォーン)を独占販売するキャリアなので、アンドロイド機を出すのがちょっと遅れていたのでした。
それでも、昨年末の時点では、アメリカ市場は iPhone を押す AT&T と、アンドロイド陣営の Verizon、Sprint、T-Mobile に二分される勢いでしたから、AT&T がアンドロイド機を出すことがちょっと意外でもあります。
まあ、いくら iPhone が好調であるとはいえ、世の中の流れには逆らえないことを悟ったのでしょう。それに、iPhone は、間もなく商売敵の Verizon も販売するようですし。
 


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そんな注目度満点のモトローラ「Backflip」ですが、その名の通り、クルッと宙返りするのが特徴となっています。「Droid」のように画面がパカッとスライドしてキーボードが出てくるタイプではなくて、キーボードが画面の裏側にあって、それがクルッと前にひっくり返るタイプなのです。
そして、画面の裏にはトラックパッドが付いていて、画面を見ながら指でトラックパッドを触って、メニューを操作できるようにもなっています。

おもしろいことに、こちらはアンドロイド機ではありますが、ネット検索にはグーグルではなく、ヤフーが設定されています。けれども、この「Backflip」でヤフーの検索シェアが一気に上がるかと問われれば、それは難しい、といったところでしょうか。
そして、残念ながら、アンドロイドの「何でもオープンに、自由に」の精神に反するところがあって、実際に使ってみたユーザによると、AT&T が認めたアプリケーションじゃないと走らないようになっているそうです。
しかも、「Backflip」はアンドロイド1.5搭載と、何となく力が入ってないなぁと思っていたら、AT&T は間もなく、パソコンメーカー・デル(Dell)のスマートフォン「Aero」を発売するそうですよ。(こちらもアンドロイド搭載機ですが、昨年9月号で触れたチャイナモバイル(中国移動通信)/ブラジル・クラロ向けの「Mini 3i」をベースにしているそうです。)

このモトローラ「Backflip」は、AT&T のショップだけではなく、家電量販店でも買えるそうですが、キャリアの補填なしだと350ドルもするので、それだったら、もっといいものを買いたいでしょう。
 


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さて、アンドロイドといえば、会場でびっくりしたことがありました。それは、中国・深圳(しんせん)に本社のあるフアウェイ(Huawei Technologies)が、アンドロイド搭載機を出していたことです。
フアウェイといえば、わたしにとっては、ルータのような通信機器メーカーというイメージしかありませんでした。以前、フアウェイが同業のシスコ・システムズのソースコードを盗んだとして、提訴された話をご紹介したこともあるくらいですから(2003年4月号の第1話でご紹介)。

それが、まるで当たり前の風情でスマートフォンを出しているところを見ると、フアウェイという企業の万能さと同時に、アンドロイド市場はまさに群雄割拠であることを痛感するのです。
なんでも、フアウェイは、OEMメーカー(他社ブランドの製造者)として世界市場にスマートフォンを出荷していて、とくにヨーロッパやブラジルでは着実に販売台数を伸ばしているそうです。
 


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ところで、今回のCTIAでは、Sprint がこの夏に発売する HTC「EVO 4G」が注目を集めていたようです。
台湾の HTC といえば、今では押しも押されもせぬアンドロイドのトップメーカーになっていて、記念すべきアンドロイド一号機「G1」や、グーグルさんが販売する「ネクサス・ワン」のメーカーとしても有名です。(「G1」については、2008年10月号で、「ネクサス・ワン」については、今年1月号でご紹介しています。)

CTIAで発表された「EVO 4G」は、その名の通り、Sprint が「4G(第4世代)」と銘打つ WiMAXネットワークと EV-DO(3.5G)に対応したアンドロイド高位機種となっています。
WiMAXとは、ざっくりと言って WiFi(無線LAN)を強力にして広域に広げたようなネットワークですが、アメリカでは今のところ27都市(シカゴ、ボストン、ダラスなど)でしか使えないので、多くのユーザにとって「4G」は未知の世界でしかありません。

それに、会場では HTCブースを散策したのに、わたしはすっかり「EVO 4G」を見落としてしまいました!
 


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なぜって、こちらの「Legend(レジェンド)」の方に気を取られたからでした。「EVO 4G」と同じくアンドロイド2.1搭載機ですが、まるでアップルさまのMacBook Airみたいにアルミニウムの筐体に包まれていて、クールなスマートフォンなのです。
4月にヨーロッパで発売される新機種ですが、アメリカ市場での発売日は未定なので、指をくわえて見ているしかない幻の機種なのです。

ま、一番の注目株は見落としてしまいましたが、とにかく、右を向いても、左を向いても、アンドロイド搭載機。そんな印象のCTIA会場ではありました。

グーグルさん自身は参加していないのに、あのアンドロイド・ロボットくんがいるだけで、なんとなく大きな存在を感じるのでした。

<クアルコムがんばる!>
CTIA会場を歩いていて、おもしろいことはたくさんありましたが、中でも、クアルコム(Qualcomm)のブースは一番おもしろかったかもしれません。どうしてって、クアルコムといえば、あの「Snapdragon(スナップドラゴン)」のメーカーだから。

Snapdragonとは、携帯端末向けの低消費電力のプロセッサのことですが、クロック(動作)周波数は1GHz(1ギガヘルツ!)と、とにかく処理能力が速いことで有名です。
グーグルさんが販売する「ネクサス・ワン」もSnapdragonを搭載していて、今年1月号でもご紹介しているように、サクサクと何でも素早く動いてくれるので、とっても小気味の良い製品となっています。
 


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CTIA会場に展示されるアンドロイド機の中では、たとえば、ソニー・エリクソン(Sony Ericsson)の新製品「Xperia X10」がSnapdragonを搭載しています。
こちらは同社初のアンドロイド端末だそうですが、ソニー・エリクソンらしく、薄型のおしゃれなスマートフォンとなっています。
4月にイギリスで発売されるそうですが、同じく4月からは、日本のNTTドコモも「Xperia SO-01B」という名で販売するそうですね。
 


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ちなみに、こちらはSnapdragonではありませんが、同じくクアルコム製の600MHzのプロセッサ(MSM7227、Kyocera「Zio M6000」と同じもの)を搭載した弟分で、「Xperia X10 Mini」といいます。
とにかく小さいことで目を引くスマートフォンではありますが、写真の黒の他に、赤、ピンク、白、黄色と4色の選択肢があるそうです。
そう、個人的には、スマートフォンは黒!という時代は、早く去って欲しいと願っているところなのです。だって、黒だけじゃ楽しくありませんからね。

ちょっと話がそれてしまいましたが、こんな風に、アンドロイド端末とは切っても切れない関係にあるSnapdragonではあります。が、CTIA会場では、おもしろい製品を見かけました。なんとネットブックにSnapdragonが載っているのです!
 


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こちらは、レノボ(Lenovo)の「Skylight」というリナックスOS製品ですが、機能を簡略化したネットブックに、スマートフォンの機能が加わっているので、「スマートブック(smartbook)」という新しい分野の製品となります。
まあ、名前はどうであれ、メールやネットアクセスができる WiFi内蔵の安価なネットブックに、3Gの電話機能や GPS機能が内蔵された便利なものと考えればいいでしょうか。

こちらの「Skylight」は、角が丸みを帯びていて、全体的に優しい雰囲気になっています。それに、外側が深みのある青色になっていて、うるしのように光沢があるところがとってもおしゃれです。(そう、女性好み!)
ブースの人に「軽いから持ってみてよ」と勧められただけのことはあって、とっても軽いところも女性好みにできています。
どうやら4月にレノボから500ドルほどで発売されるようですが、アメリカ市場では大手キャリアの AT&T も販売するようです。予定通りにリリースされると、スマートブック製品第一号となるそうです。
 


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一方、こちらはアンドロイドが載ったスマートブックで、HP(ヒュレット・パッカード)の「Compaq Airlife 100」といいます。
あれ、どうしてコンパックという名前なの? と思われたことでしょう。ご存じの通り、2002年、パソコンメーカーのコンパック社自体は HP に吸収合併されたものの、ヨーロッパではコンパックの名に愛着があるので、そのまま使っているそうです。
こちらの機種は、第3四半期にスペインで販売されるものだそうで、そういわれてみれば、何となくヨーロッパ的な香りもいたします。(どことなく素っ気ないといいましょうか。)

でも、アンドロイドを搭載しているだけあって、画面がタッチパネルになっていて、操作性もグンとアップしているそうですよ。ネットブックの形で、画面を触れるなんて、ちょっと驚きではありますよね!
 


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蛇足ではありますが、クアルコムのブースでは、こちらの基盤の展示もおもしろいなと思ったのでした。
クアルコムは、Snapdragonのような強力なプロセッサばかりではなくて、誰もが簡単にスマートフォンを作れる環境も提供しているのです。スマートフォンを作るに必要な複数のチップ(集積回路)が、クチュッとひとつにまとめられていて、自分で好きにコードを書いて、テストすれば、自分なりのスマートフォンが簡単にできるようになっているのです。
作る側にしてみれば、開発コストも少なくて済むし、短期間で製品を発売できるし、製品コストもグンと下がるし、市場に参入しやすくなるでしょう。
 


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ほーら、こんなに小さなスマートフォンもできました。まるでUSBメモリのように小型ですが、これで立派に電話なんですよ。

このようなクアルコム・チップ製品は、GSMテクノロジー(GSM/GPRS/EDGE、W-CDMA/HSDPA)にも、CDMAテクノロジー(CDMA2000)にも対応していて、まさに万能なのです。

というわけで、スマートフォン、スマートブックと、Snapdragonや関連製品でどんどん知名度を上げるクアルコムではありますが、上がっているのは知名度ばかりではありません。
ちょうどCTIAの期間中に、「3月末までの第2四半期の収支を上方修正する」と、強気のニュースを発表しています。売り上げは、今までの予想よりも最大1億5千万ドル(約150億円)多くなるし、利益は、一株あたり5、6セントは上がるであろうと。

昨年末の四半期では、市場をちょっとがっかりさせていましたが、近頃は、世界的なスマートフォンの伸びで、ずいぶんと鼻息の荒いクアルコムではあるようです。

<キーワードはソーシャル!>
第1話でご紹介したように、このCTIAでのキーワードは、何といっても「アンドロイド」でした。
そして、もうひとつのキーワードといえば、「ソーシャル」でしょうか。そう、日本のミクシィやアメリカの Facebook(フェイスブック)みたいな、人とつながる「ソーシャルネットワーキング」のソーシャルです。

近頃は、アメリカでは誰もがソーシャルネットワーキングのサービスに加入していて、たとえば友達とつながりたいなら Facebook、仕事を探したいなら LinkedIn(リンクトイン)、つぶやきたいなら Twitter(トゥイッター)、そして自分でソーシャルネットワークを立ち上げたいなら Ning(ニン、昨年4月号でご紹介したマーク・アンドリーセン氏設立のサービス)と、役割分担が明確になってきています。
ですから、ひとりが複数のサービスに加入しているケースが多く、接触する相手もたくさん。それに仕事の相手が加わったりすると、もう誰が誰やら、どのアドレス帳を見ていいのやらと、頭が混乱してしまいます。

そこで、近頃のスマートフォンでは、複数の連絡先を持つ同一人物を、あちらこちらのデータベースから引っ張ってきて、シャカッとひとつにまとめてあげましょうというのが流行っています。
そして、Facebook、LinkedIn、Twitterといったサイトで誰かが新しい文章や写真を掲載したら、瞬時にそれを知らせてくれる機能も重宝がられています。
 


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この手のソーシャルな機能を最初に打ち出したのは、パーム(Palm)でしょうか。ご存じ「パーム・パイロット」で有名な、シリコンバレーの携帯情報端末の老舗です。
昨年6月号でもご紹介していますが、新製品「Pre(プリー)」で発表した基本ソフトPalm webOSには、「Synergy(シナジー、相乗効果の意)」という新しいコンセプトの機能がありました。
まさに、あちこちに散らばる連絡先やスケジュールが、仕事やプライベートの区別なく、ひとつの画面にわかりやすく統合されるという、とても便利なものでした。(写真は、「Pre」の弟分となる「Pixi Plus(ピクシー・プラス)」。CTIA会場で新たに展示された AT&T 向けモデルです。)

そして、それを一歩先に進めたのが、モトローラの「Motoblur(モトブラー)」です。「ブラー」というのはぼやけるという意味で、いろんなデータベースの垣根がぼやけて、情報がひとつに見えるという含蓄があります。
昨年9月号でもご紹介していますが、「Motoblur」を搭載したアンドロイド端末のトップ画面には、ソーシャルネットワークを統合するウィジット(簡易プログラム)が載っていて、いちいち Facebook や Twitter のアプリケーションを立ち上げなくても、ひとつの画面で新しい書き込みがリアルタイムに見えるという、便利な機能です。
サービスサイトのサーバが自動的に新しい情報を送ってくる「プッシュテクノロジー」を利用しています。
 


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今回のCTIAでは、マイクロソフトの新しいスマートフォンOS「Windows Phone 7 Series」が、この手のソーシャルな機能を前面に打ち出していました。
マイクロソフトは、すでに「Windows Mobile」というスマートフォンOSを持ち、世界市場でさまざまな端末が出荷されていますが、こちらの「Windows Phone 7」は、今までの伝統を踏襲しない、まったく新しいものという位置づけになっています。

こちらは「Windows Phone 7」のトップ画面となりますが、まるで四角いタイル貼りのようになっていて、各々の「ライブ・タイル」は、電話機能を表す「フォーン」、友達を表す「ピープル」、メール機能を表す「アウトルック」、スケジュールを表す「カレンダー」と、わかりやすく表示されています。
 


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さらにトップ画面の続きを見ると、ここにはネットアクセスの「IE(インターネット・エクスプローラー)」、写真の「ピクチャー」、メディアプレーヤーの「Zune(ズーン)」、オフィススイートの「Office(オフィス)」と、さまざまに異なる機能が整然と並べられているのです。マイクロソフトの新しい検索サイト「Bing(ビング)」も登場しています。
2006年12月号でご紹介していますが、「Zune」というのは、アップル iPod(アイポッド)のようなメディアプレーヤーです。残念ながら、鳴かず飛ばずで終わった感はありますが、それがここで復活しているのです。)

こんな風に、今までのマイクロソフト製品が一堂に会する「Windows Phone 7」ですが、上で「ソーシャルな機能を前面に打ち出す」と述べた理由は、いろんなデータを便利にひとつにまとめてくれるからです。
たとえば、「ピープル」の画面では、あちらこちらに散在する友達のデータをひとつに統合してくれたり、Facebookの友達の最新の書き込みを知らせてくれたり、「カレンダー」の画面では、アウトルック上の仕事のスケジュールと、グーグルカレンダーのプライベートのスケジュールを統合してくれたりと、統合(aggregate)することに長けているのです。
これは、まさに、今流行りのソーシャルな一面といってもいいでしょう。要するに、友達にサクッと連絡したいとか、友達が今何をやっているかとか、何を考えているかを知りたいという、人とつながる欲求を満たすための機能となっているのです。
 


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とはいいましても、この「Windows Phone 7」が一般消費者にすんなりと受け入れられるかと問われれば、大いに疑問が残る、と答えざるを得ないかもしれません。
マイクロソフト自身は、このプラットフォームは普通の消費者を念頭に開発したとしていますが、たとえば「アウトルック」とか「オフィス」といわれても、一般消費者には何のことかはまったくわからないでしょう。
もしビジネス向けにもアピールしたいと考えているのなら、ビジネスマンには、すでにリサーチ・イン・モーションのブラックベリー端末があるので、こちらに乗り換える必然性はないでしょう。
そのブラックベリー端末だって、今となっては新しいアプリケーションが次々と登場し、ずいぶんと一般消費者にも受け入れられるようになっているのです。

それに、今は、誰もがソーシャルをキーワードとしています。CTIA会場でも、基本ソフトが何であれ、どの携帯端末も Facebook や Twitter のアイコンをトップ画面に持って来て、「ソーシャルネットワーク対応」であることをうたい文句にしていました。


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たとえば、こちらのノキアのスマートフォン「N900」。ノキア製品では珍しいタッチスクリーンとなっていますが、グーグルのアイコンの隣には、Facebook と Twitter が鎮座ましましています。
第1話で触れたデルのスマートフォン「Aero」では、カメラで撮った写真や動画を Facebook や YouTube に自動的にアップロードできるようになっています。
そんな風に、みんながソーシャルに取り組んでいるので、今は他との差別化が難しいのです。「この製品じゃないとダメ!」というユーザの信頼を勝ち取るのは、至難の業でしょう。

そして、スケジュール的に間に合うかという疑問もあります。「Windows Phone 7」は、先月スペイン・バルセロナで開かれた「モバイル・ワールド・コングレス」でお披露目され、実際の出荷は、今年の歳末商戦の時期とされています。が、現時点では、ブースで触れる試作機もありません。
予定通りに事が運んだにしても、その頃には、iPhone やアンドロイド搭載機は、アプリケーションをどんどん増やし、販売台数も日に日に伸びていることでしょう。

しかも、無償のアンドロイドと違って、「Windows Phone 7」は有料です。これを採用する端末メーカーは、マイクロソフトにソフトウェア使用料をたくさん支払わなくてはなりません。だったら、アンドロイドの方がいいかも、と思うメーカーも出てくるかもしれません。
 


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なんだか、ちょっと辛口の評価になってしまいましたが、「Windows Phone 7」には、ひとつユニークなところがあるのです。それは、マイクロソフトのゲーム機「Xbox 360」と連携プレーができるところです。
「Windows Phone 7」搭載機では、Xbox 360 のゲームがいくつか動くようになっていて、まるで手元にXboxを持っているかのように、ネットワークを介して他のXboxユーザと対戦できるのです。これで、出張中のお父さんだって、自宅にいる息子と対戦できるようになるのです!

まあ、これが俗にいう「キラー・アプリ」かと問われれば、何とも答えに窮するところではありますが、マイクロソフトならでは、といった芸当であることは確かですね。

というわけで、ごくざっくりと、今年のCTIAワイヤレスを振り返ってみました。

なんとなく大きな変化が予想される2010年は、スマートフォン業界にとって「プレートテクトニクスの年」となるのかもしれません。

夏来 潤(なつき じゅん)

 

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